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» 2015年10月 8日 更新

コミュニケーションとマーケティングとオレとオマエと男と女と酒 プレイヤーは出揃った。2015年は定額動画配信(SVOD)元年

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2015年を振り返った時、この年は日本にとって「定額制動画配信サービス(SVOD)元年」であったと言えるでしょう。動画配信サービス自体は数年前から多く存在しますが、Netflixが遂に上陸したこと、それにアマゾン・プライム・ビデオが開始されたことにより、「定額動画配信元年」は決定的なものとなりました。

今回は、各サービスの成り立ちや違い、強味と弱味を今一度振り返ってみたいと思います。


hulu(933円/月)


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海外メジャーサービスの中で、もっとも早く日本上陸を果たしたhulu。現在のCEOは、元アマゾンの副社長が務めています。ユニバーサル、ディズニー、ニューズなど大手が合弁で設立した企業で、今年4月の時点で会員数は900万人を超えました。

2011年に日本で開始した際は、「多チャンネル時代の到来」「動画配信の黒船」ともてはやされました(SkyやPerfecTVの際も、同じような光景を見た気もします)が、苦戦。去年、倒すべき相手であった日本テレビに買収されました。

huluの「失敗」には、さまざまな原因が語られました。受け身な日本の視聴者には、多チャンネル制はなじまない。またはそもそも選択の必要がないくらい、NHK及び民放の作品の質が高いのではないか。はたまた、単一民族だからみな好みが同じなのだ、という説まで。

決定的な理由は不明ながら、どちらにしろhuluは、彼らが目指していたほどの結果は出せなかったと言えるのかもしれません。

とはいえ、国内サービスはもちろん継続中。依然として、動画配信サービスの一角を担うプレイヤーとして健在です。


Netflix(650円〜/月)


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今秋疾風のように現れ、IT界隈の話題をすべてさらっていったNetflix。huluが900万人なら、こちらはすでに6,000万人を超える会員を抱える世界一のSVODサービスです。全米のTV視聴時間の25%を占め、再生回数ではあのYouTubeをも上回るといえば、その凄さがお分かりになると思います。

元々はDVDレンタルから始まったこちら。今でもその事業は続けていますが、企業として急成長したのは、SVOD事業によるところが大です。

しかし、動画を定額で配信するだけなら、前述のhuluはじめ多くのプレイヤーがいます。その中で、Netflixがナンバーワンとなったのはなぜでしょうか。

独自コンテンツが豊富で、デビット・フィンチャーとケヴィン・スペイシーという、ハリウッド超大作かと見紛うほどの豪華メンバーで独自ドラマを配信したこともありますが、しかしその最大の強みは、「Netflixのユーザは検索をしない」とまで言われる、独自のレコメンドエンジンと言えます。

いくら多チャンネルに慣れているアメリカ国民とはいえ、膨大な量の中から自分が好きな番組を見つけるのは大変な作業。そこで「あなたへのオススメ」という機能が出てくるわけですが、Netflixはこの機能が大変すぐれており、75%のユーザがこのオススメから次の番組を選択しているそうです。

また、物理的な面でのアプローチも彼らを成功に導いたと言えます。Netflixは、自社のサービスに対応するテレビは、必ず「Netflixボタン」をつけるように、と定めました。毎日のように触るTVのリモコンですが、確かに物理的なボタンがあるのとないのとでは大きな違いがあります。彼らははじめからその重要性を理解していたのでしょう。今では「NetflixボタンがないTVは売れない」とまで言われるようになったのです。

個人的に、ネット企業は製造業その他従来産業に歩み寄らない雰囲気があるように思いますが、こういった柔軟かつ現実的な戦略は、大変参考になるのではないでしょうか。

はたして、世界一の巨人・Netflixは、難攻不落の砦、日本を攻略できるのでしょうか。


アマゾン・プライム・ビデオ(325円/月)


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Netflixの日本上陸を数日後に控えた8月末。まるでタイミングを見計らったかのように(実際に見計らったのでしょうが)、あのアマゾンが、独自の動画配信サービス、アマゾン・プライム・ビデオの開始を発表しました。

こちらの最大の魅力は、何と言ってもその価格。年会費3,900円、月会費に換算してわずか325円という価格は、前述の競合よりはるかに価格優位性があるものです。

しかもこれは「アマゾン・プライム」、要するにアマゾンの有料サービスの価格であり、普段アマゾンで買い物をした際のお急ぎ便や配送料の優遇も同時に受けられるということです。従来の利用者から見れば、タダで動画配信サービスがついてきたとも言えます。

アマゾンと動画配信。一見まったくの異業種参入に思えますが、ここに至る伏線はAWS(Amazon Web Service)にあると見ていいでしょう。AWSとは、簡単に言えばサーバの貸し出しサービスで、膨大なトラフィックをさばいてきたアマゾンがその経験とノウハウを活かして始めたビジネスです。その優れた拡張性や堅牢性から多くの企業の信頼を集め、前述のNetflixも全面的にAWSを利用しています。

動画配信は多くのデータのやり取りが発生するため、それに見合ったサーバシステムが必要になります。しかし、今や世界一と言ってもいいサーバサービスを提供しているアマゾン。「動画も結局はデータである」という認識に立てば、自分たちの強みを他ビジネスに転化した、ごく自然なビジネス展開とも言えます。


国内サービス


海外からの「黒船」ばかり紹介しましたが、国内でももちろん動画配信サービスは始まっています。世界規模ではないにしろ、国内に特化した分、日本人好みのコンテンツが揃っているといえるでしょう。

dTV(500円/月+従量)

おなじみのドコモ、そしてエイベックスの合弁会社によって運営されているサービス。月額500円という価格帯は他と比べても遜色はありません。

しかし実際に500円で見られるのは、レンタルビデオ店でいう旧作のみ。新作は別途レンタル料がかかるため、厳密にはSVODとTVODが混ざったサービスと言えます。

Gyao(380円/月+従量)

こちらも正確には完全定額制ではありませんが、ヤフージャパンの子会社として、最近TVCMなどもよく見かけるGyao。もともとは2005年にUSENが始めたサービスでしたが、09年にヤフーに売却。当時も今も「動画ビジネスは難しい」という認識があるからか、売却当日の株価はUSENが上昇、ヤフーが下落という皮肉な結果となりました。

多くの動画は無料。また、Yahoo! プレミアム(月額380円)の会員であれば見放題の動画も多く、国内コンテンツの豊富さに強みがあります。反面、海外特にアメリカ映画、ドラマが見たい方には向かないと言えるかもしれません。


いかがでしたでしょうか。特に旧来のTV関係者からなぜか敵対視されるネットですが、視聴者にとっては大変相性のいいものです。SVODによって日本のテレビが変わるのか、注目していきたいところですね。

Photo by Sarah Reid

参考:
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1509/02/news084.html
http://www.gizmodo.jp/2015/06/netflix_special2.html
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1508/27/news060.html

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筆者:渡邊徹則

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プロフィール

渡邊徹則

渡邊徹則

株式会社Version7代表取締役。Web・コンテンツ制作、分析、マーケティングなどを手掛ける。 執筆業では、主にソーシャル、EC、海外サービス、メディアなどが専門。Twitter / Facebook @brigate7

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