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» 2016年2月16日 更新

コミュニケーションとマーケティングとオレとオマエと男と女と酒 無料では届かなくなる日が来る? Amazonはなぜ有料会員の獲得にこだわるのか

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Photo by William Warby on Flickr


オンラインショッピングサービスとして、今や不動の地位を築いたと言って良いAmazon。もはやAmazonなしでは生活できない、という方は多いのではないでしょうか。

そしてそのAmazonが、EC部門で最も積極的に推し進めている施策が、Amazonプライム、いわゆる有料会員への誘導です。

Amazonプライムの特典は、実にたくさんあります。

    ・音楽ストリーミング(Amazon Music)
    ・動画配信(プライム・ビデオ)
    ・写真なら無制限に保存可能なクラウド(プライム・フォト)

その他にも、電子書籍端末のKindleが割引になるなど、企業体力にモノを言わせ、これでもかという物量作戦を展開しています。

しかし、Amazonプライムの最大の特徴といえば、やはり「お急ぎ便」でしょう。商品が通常より早く、場合によっては注文当日に届く便利さは、一度味わうとなかなか抜けられません。ついには、注文からわずか1時間以内という驚愕のスピードで届ける、「プライム ナウ」というサービスまで始めるに至りました。

一方で、Amazonは「黒字にしたがらない」と言われるほど、莫大な売上をほぼすべて設備投資に使うことでも有名です。Amazonはなぜこれほどまでに有料会員を増やそうと躍起になるのか、その理由を考えてみたいと思います。


■Amazonの売上高


2015年10~12月期、Amazonはおよそ4兆2400億円という巨額の売上を計上していますが、利益はわずか1%ちょっとの570億円。黒字ならまだいい方で、彼らは上場企業ながら平気な顔をして赤字を出すこともあります。「そろそろ収穫期に......」と言いたい投資家も、今や世界のリーダーの一人であるCEOジェフ・ベゾスの「まだまだ投資の時期だ」という言葉と上がり続ける株価の前には、当分文句は言えそうにありません。

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グラフ出典:Amazon


■プライム会員の推移


Amazonはプライム会員の正確な数値を発表していませんが、ビジネス系メディア、Business Insiderが2014年に独自で発表した数値では、その数はまさにうなぎのぼり状態となっています。

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グラフ出典:Business Insider

最新の発表では、2015年はこれよりもさらに51%増えたということですから、その上昇カーブたるやとてつもないものです。


■「有料会員が当たり前」の世界


しかしこの状況、アマゾンプライムの会員がどんどん増え、「お急ぎ便」が当たり前の世界になったらどうなるでしょう。流通業のリソースも無限ではありません(むしろ疲弊していますがそれは別の問題として)。普通に考えれば、通常会員の配達は後回しになる、ということになります。

特に地方在住者からは、すでにAmazonの配送は遅くなっているという声も聞きますし、実際にそのような事態が発生しているようです。

Amazonプライムの会員になっていないと配達時間がどんどん遅くなっていくことが判明 | GIGAZINE

実際、プライム会員は発送処理の「順番待ち行列」をすっ飛ばして先頭に入ることができる、ディズニーランドでいうファーストパスのようなサービスです。やがて、アマゾンプライムの会員数がある閾値を超えたら、通常会員にはいつまで経っても荷物が届かないという状況が発生しかねません。そして、Amazonが狙っているのはまさにそこだと考えられます。

無料ではいつまで経っても商品が届かない、しかし有料にすればすぐに届く。そんなプライム会員がデフォルトのような状態を、Amazonとジェフ・ベゾスは次のステップとして視野に入れているのではないでしょうか。そしてそれは勝者の抱え込み戦略としては常套手段であり、iPhoneがあの価格で売れ続けるのも、ある意味同じ戦法だといえます。

そうなれば、やがて有料会員の中でもさらにランクができるかもしれません。年会費3,900円なら1日、10,000円なら1時間など、「時間をお金で買う」傾向がますます加速する可能性もあります。

もちろんそうなれば、Amazonのライバル企業が現れ競争が起こるでしょう。国内ではヨドバシ・ドット・コムなどが筆頭に上げられると思います。しかし少なくとも世界規模で見ると、現時点でAmazonの向こうを張れるといえば、数の面で優位な中国企業くらいしか思い当たりません。


世の中のほとんどの人がAmazonのプライム会員になり、言うなれば「Amazon税」を支払い続けるような世界は、もしかしたらそう遠くないのかもしれません。

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筆者:渡邊徹則 | Twitter / Facebook

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プロフィール

渡邊徹則

渡邊徹則

株式会社Version7代表取締役。Web・コンテンツ制作、分析、マーケティングなどを手掛ける。 執筆業では、主にソーシャル、EC、海外サービス、メディアなどが専門。Twitter / Facebook @brigate7

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