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» 2015年8月15日 更新

価値観経営の時代。ソーシャルメディアが変えるマーケティング JR九州の観光列車「或る列車」がスタートダッシュに成功した3つの理由

前回の記事ではワインに「海底に沈んだ」というストーリーを加えて新しい商品ができたという話をした。

今回はJR九州の「或る列車」について考えてみようと思う。

或る列車は、JR九州が満を持して七つ星の後に送り出す、豪華客車で、世界的な鉄道模型の神様と言われた故・原信太郎氏が作成した模型を基に、水戸岡氏がデザイン・設計した列車である。

この列車は今年予約が始まったばかりだが、すでに人気の観光列車となっているようだ。そこで、今回「或る列車」がスタートダッシュに成功した3つの理由について考えていこう。

その1 列車にストーリーがある

これは先日の記事と同じように、列車が物語を持っているというのが大きな特徴だ。なんと、1906年にアメリカのブリル社に発注したものの九州鉄道の国有化によって活躍する機会が無かった列車を原信太郎さんが子供の時に実際にみて描いたデッサンを基に、模型を作成しておりその列車自体はもうすでに無く、幻の列車ということで「或る列車」という名前がついていた。その模型をJR九州の社長が見たことがきっかけでこのプロジェクトが始まったというのだ。

過去に幻と言われていた列車を復元する。

そう、こういった過去あったものを再現するというストーリーには人間はめっぽう弱いのだ。

理由その2 先行の観光列車がマーケットを切り開いた

七つ星の成功がなければ、今回の企画も無かったと考えるのが自然だろう。やはり、七つ星によって、観光列車の大きなマーケットに気づいたという事が、後に続く観光列車の開発に向かった可能性は大きい。すでに市場があるところに独占的に商品を投入できる。ちょっと普通の企業では難しいのだが、JR九州ならできるという事だ。

理由その3 違う価格帯で展開した

観光列車が流行るとい事で、同じような価格帯30~100万円の列車を運行してもそこまで大きな成功はなかったかもしれない。しかし、この豪華列車の旅に憧れる層というのは実際にはもっと大きな市場がある。 大人20000円~30000円という価格帯での商品を投入することで、今よりも大きな市場を獲得することが出来るという事だ。

しかも、さらに上のレベルの商品が待ち構えていることで、七つ星の利用者は減る事はないだろう。

しかも、最初に高価格帯の商品を出して、その後、低価格帯の商品を出すという戦略は非常に有効で、広島のある塾でも当初医学部への入試専門で非常に高額な塾を運営して、その後一気に100教室作った事例がある。 これは、まず高いブランドを確立する事で、そのブランドに憧れる層が利用できるような商品をその後一気に投入するという戦略だ。

もちろん、低価格の商品を一気に投入する事で、ブランド価値はある程度毀損してしまうが、今度は大きな店舗展開によって、安心できる大手の塾というブランドに転換できるのだ。

物語を持った商品を持って、すでにある大きな市場へ投入し、価格帯を下げて一気に顧客を獲得する。

そんな戦略が見える「或る列車」の事例だ。

私もいつか乗ってみたいと思う。

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プロフィール

石田陽之

石田陽之

株式会社サイバーブリッジ代表取締役、中小企業のSNS活用&リスク管理、海外企業の日本マーケティングコンサルタント。

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