ニュース
» 2014年9月16日 更新

一つ上のWebコンサルティング アクセス解析とヒートマップでは、サイト改善につながらない理由

 アクセス解析はWebマーケティングの必須ツールで、Googleアナリティクスを中心に有償/無償のさまざまなものが出ています。また最近では、これらのツールにはない「ページ内のどこが見られているか」を把握するためのツールとして、「クリックテール」等のヒートマップツール(説明は後述)も広がりつつあります。

 しかし、どの現場にいっても「アクセス解析をしても改善につながらない」「ヒートマップツールを入れてみたが、どうすればいいか分からない」という声を耳にします。

 本記事では、

・アクセス解析とヒートマップの違い
・アクセス解析で分かること/分からないこと
・ヒートマップで分かること/分からないこと
・アクセス解析・ヒートマップを補完するツール(ユーザーテスト)
・理想的な改善の流れ

を順に説明していきます。

アクセス解析はサイト単位、ヒートマップはページ単位

 アクセス解析とヒートマップの違いは、端的に言うと「サイト単位の分析」か「ページ単位の分析」かというものです。

 アクセス解析を使うと、

  • サイト全体でどのページが見られているのか(ボリュームゾーン)
  • サイト全体でどのページの直帰率が多いのか
  • 主要動線の中でどこで離脱しているのか

等が非常によく分かります。

 しかし、ある特定の1ページについては、あまり詳細な情報を得ることはできません。

 一方で、ヒートマップツールは、サイト全体の把握力はアクセス解析に劣りますが、

  • ページの中でどこが見られているか
  • ページの中でどこが押されているか

が詳細に分かります。

 これは、少なくとも現時点では、Googleアナリティクス等にはない強みです。

アクセス解析で「サイト内のどこを直すべきか」は分かるが、「どう直すべきか」が分からない

アクセス解析の真価と価値

 アクセス解析を用いると、ユーザーの行動データを非常に詳細に知ることができます。特にGoogleアナリティクスの近年の進歩はめざましく、

  • 高度なアドバンス・セグメント
  • 行動パターン(どんな経路をたどっているかの分析)
  • フォールアウト(特定経路のどこで離脱しているかの分析)
  • マルチチャネル(複数回接触の把握)
  • 性別/年齢/趣味などの属性付与

など、非常に多彩な機能が利用できるようになっています。

 これらの機能を組み合わせると、「新規訪問ユーザーの直帰率が高い」「フォームの2ページ目の離脱率が高い」など、どこを直すべきかを特定することは簡単です。(使い慣れない人は、これを見るのも大変ですが......)

 しかし、これだけでは「どう直すべきか」と言い切れるものがなかなか見えてきません。

「直帰率が高い」はわかったけど、どう改善すればいい?

 アクセス解析でよくある分析は、「流入数」と「直帰率」を掛けあわせて、「流入数が多くて、直帰率が高いページ」を導出し、どこを集中改善すべきかを特定するというものです。

 大体の場合、トップページや主要カテゴリページの流入数が高く、直帰率も高い結果という結果が得られるでしょう。ここまではアクセス解析で分かるのです。

 しかしながら、「じゃあトップページやカテゴリページで何を直せばいいか?」を特定しようとすると、途端に手が止まってしまいます。

アクセス解析では得られない「心理データ」が改善の鍵

 なぜ、「何を直せばよいか」の段階で止まってしまうのか。それは、アクセス解析には「行動データ」があるだけで「心理データ」がないからです。

 マーケティングの泰斗であるフィリップ・コトラーは、マーケティングデータには「ビヘイビア(行動)」と「アティテュード(態度/気持ち)」の2種類があり、これらの両方を把握することが不可欠であると説いています。

 アクセス解析はビヘイビア・データ(行動データ)の宝庫と言えますが、アティテュード・データ(心理データ)はほとんど含まれません(強いて言えばロングテールの検索キーワード程度)。

 つまり、アクセス解析だけではマーケティングデータとして「片手落ち」の状態であるため、改善にまで踏み込めないのです。

ヒートマップツールは「ページ内のどこを見られているか」は分かる

そもそもヒートマップツールとは

 まず前提として、ヒートマップツールで何が分かるか確認しましょう。以下は、ヒートマップツールの代表例である「クリックテール」の提供機能の一覧です。

  1. ヒートマップ
  2. マウスクリック
  3. マウスの録画(マウストラッキング)
  4. リアルタイムモニター
  5. フォーム解析
  6. コンバージョン・ファネル

 4~6はほぼ同じ機能がGoogleアナリティクスにもあるため、ヒートマップツール独自の特長は1~3と言えます。また特長3(マウストラッキング)については、現時点ではあまり有用な利用方法が見つかっておらず、特に利用シーンが多いのは特長1~2となります。

 ヒートマップやマウスクリックにより、ページ内のどの箇所にマウスが集まっているか(≒見られているか)が分かります。これにより「本当は見てほしいのに、見られていない要素がある」「予想外に見られている要素がある」という気付きが得られます。

ヒートマップツールで分からないこと

 では、ヒートマップツールでは分からないことは何でしょうか?

 上述のとおり、ヒートマップツールにも「ユーザー心理データが含まれない」ことは同様ですが、もう少し踏み込んで説明します。

1. 「現ページに存在しない要素の要否」は分からない

 ヒートマップツールは、あくまでも「ページ内に存在する要素が見られているかどうか」を把握するものです。当たり前ですが、「今のページ内に存在しない要素」に関する情報は一切得られません。

 筆者のコンサルティング経験では、多くのページの課題は「必要な情報がない」「知りたいことがしっかり書かれていない」ことですが、このような発見はヒートマップツールではできません。

2. 「そのページ要素が良いのか悪いのか」は分からない

 ヒートマップツールで「この要素が見られている」ことが分かったとします。しかし「なぜこの要素が見られているか」「その要素を見ることにより、購入につながるのか」ということまで知ることはできません。

 ある情報を見ている時のユーザーの心理は、

  • ただ見ているだけ(目立っているだけ)
  • よく分からないので長く見ている
  • とても参考になるので長く見ている
  • 参考になるでの長く見ているが、読み込んだ結果ネガティブに

などさまざまなバリエーションがありえます。

 ヒートマップツールを用いた調査の鉄板パターンは「予想外に見られている要素があれば上部に持ってくる」ですが、それが本当に妥当な施策といえるかどうかは、上記の心理を勘案しあいと判断できません。場合によっては「この要素は消すべき」という判断もすべきなのです。

アクセス解析/ヒートマップを補完する「ユーザーテスト」

 ここまで述べたように、アクセス解析やヒートマップはあくまでも「行動データ」に過ぎず、ユーザーの「心理データ」がないため、具体的な改善アクションに至りにくことを述べました。

 この2ツールを補完し、ユーザーの心理データを最も効果的に獲得する手段が、ユーザーテストです。

ユーザーテストとは

 ユーザーテストは、実際のユーザーがサイトを使っている様子を観察し、またその後のヒアリングを通じて、ユーザーの心理やサイトの課題を把握する手法です。

前職のビービットでは、とにかくこのユーザーテストを徹底的に行うことで、他社には出せない圧倒的なビジネス成果を創出しており、非常にパワフルな手法であると自信をもって断言できます。

ユーザーテストで心理が分かる

 ユーザーテストは、一般的には「ユーザーインターフェース(UI)の課題」を見つける手法と思われています。しかしユーザーテストの本当の価値は、UI課題の背景にある「ユーザー心理」まで分かることにあります。

 「ユーザテストの発見点」して一般的にイメージされるのは、

  • ボタンが押しにくい
  • 導線に気づきにくい
  • 言葉が理解できない

といった、サイトの使い勝手や課題だと思います。

 しかしユーザーテストの本来の価値は、そこから一歩踏み込み、「なぜボタンが押しにくいのか困るのか?」「導線に気づかないと、どうなるのか?」を考え、その裏にあるユーザー心理やニーズを把握することです。

  • 競合と比べた料金差が知りたいが、見積りボタンが押しにくい
  • 申込期限に間に合うかが知りたいが、Q&Aコンテンツへの導線が気づかれにくい
  • サービス仕様を正確に把握したいが、言葉が難しくて分からない

 このように記述することで、ユーザーテストの発見点を単なるUI課題でなく、「コミュニケーションの課題」として捉え直すことができます。

 UI課題をコミュニケーション課題に捉え直すことができると、改善施策も打ちやすくなります。

  • 単にボタンの大きさを変えるのではなく、料金差をアピールする(差がない場合は、別の優位性を同時に伝える)
  • 導線を強化するだけでなく、対応の早さを訴求して申込期限に間に合うという安心感を醸成する
  • 文言を直すだけでなく、図解などでサービス仕様を詳細に説明する

 データアーティスト社の代表取締役の山本さまは「ユーザーテストを行うと、コミュニケーションレベルに踏み込んだ様々な仮説が得られ、それがCVR4倍などの大きな成果に繋がる」と指摘しています。

ユーザーテストで「現ページに存在しない要素の要否」や「その要素がよいのか悪いのか」も分かる

 ユーザーテストで最も多い発見は「情報が足りない(もっと知りたい、疑問が解消できない)」というものです。これは、ヒートマップツールの弱点でした。

 例えば、ある女性向け化粧品のサイトでユーザテストを行うと、

  • この化粧品は何日ぐらい使えるの?
  • この化粧品の成分の効能は?
  • この化粧品がどんな人だと相性が悪いの?
  • モデルになってる芸能人は、本当にこの化粧品を愛用しているの? 広告だけでは?

など、次々と疑問/不安を掘り出すことができます。こうした疑問/不安を発見し、コンテンツの追加/補足を行うことで大きな成果につなげる、というのがユーザーテストの勝ちパターンです。

 また当然ながら、ある要素を見ている時に「それをどう思ったか」まで知ることができるため、「見た」ことと「その結果、この心理になった」ということを踏まえて、改善策を考えられることがユーザーテストのメリットです。

アクセス解析/ユーザーテスト/ヒートマップの整理

 アクセス解析も含めた、3ツールの位置づけを整理すると、このような形になります。

  • サイト単位の行動データはアクセス解析
  • ページ単位の行動データはヒートマップ
  • サイト・ページの心理データはユーザーテスト

図1.PNG

 これらの3ツールは、部分的には競合しつつも、本質的に「併用」が望ましいです。

アクセス解析/ユーザーテスト/ヒートマップを使った改善フロー

 それでは、これらの3つの手法をどのように組み合わせるとよいでしょうか? 私が実際にビービット時代の経験も踏まえた、現実的な改善フローをご提案します。

 まずアクセス解析により「どこを直すべきか」を特定します。一見難しそうですが、「訪問数/PV数が多い」「直帰率/離脱率が高い」の2条件を満たすページが大体の答えです。

 続いてユーザーテストにより、不足しているコンテンツを足したり(逆に要らないコンテンツを消したり)、表現/内容を変えるべきコンテンツを修正します。

 そしてリリース後、ヒートマップツールでの閲覧状況/クリック状況を踏まえて、要素の配置を調整します。

図2.PNG

リモート・ユーザーテストのご紹介

 さて、本記事の主張は「アクセス解析/ヒートマップとユーザーテストを併用すべき」というものですが、現実にはほとんどのケースでアクセス解析ツール・ヒートマップツールしか使われていません。それはなぜでしょうか?。

 ある企業のUX担当は、アクセス解析のみになっている理由について「アクセス解析レポートは10万円なのに、ユーザーテストは数百万で、コストが合わなかったから」という興味深い指摘をしています。

 確かに従来式のユーザーテストは、時間もコストもかかり、併用が難しいものでした。

 しかし、リモート・ユーザーテストであれば、アクセス解析と同程度(むしろ低価格)のコストで実施できるため、現実的にアクセス解析との併用が可能です。

 「分析力や提案力を強みとしたい」「そのためにユーザーテストを業務プロセスで使いたい」と考えるWeb系企業さまがいらっしゃれば、ぜひぜひお声がけください!

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

プロフィール

池田朋弘

池田朋弘

2013年1月、ポップインサイトを創業し、代表取締役CEOに就任。立ち上げ2年弱で、1000件を超えるリモート・ユーザテストを提供。講演やセミナー等の実績多数。

一つ上のWebコンサルティングのバックナンバー

カテゴリ

  • Webサイト構築
  • キャンペーンノウハウ
  • ソーシャルメディアマーケティング
  • マーケティング戦略

「マーケター通信」購読一覧