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» 2012年10月23日 更新

デジタルマーケティングの科学的アプローチ プロモーションを科学する(1)

9月上旬のある日、デスクワークをしながらふと、ある疑問が頭をよぎった。

「全く中身のない、題名さえないもの」をあえてプロモーションすることは可能だろうか?

世の中はデフレだと言われて久しい。良い商品を作っても売れない時代だという。商品の良さよりも売り方の上手さのほうがより大きな価値を持つのだとしたら、その売る方法そのものを突き詰めて体系化できればものが売れてデフレを脱却できるんじゃないだろうか。そんな妄想めいたことを考えたのだった。

仲間を集める


思い立ったが吉日。早速Twitterでつぶやき、Facebookに書き込み、WishScope *1で一緒に活動する仲間を募集した。

思いのほか反響は大きく、顔見知りだったデザイナーの谷津氏と、台東区界隈のスタートアップ系コミュニティで一緒のフリーランスエンジニア国信氏がすぐに参加表明してくれた。そしてWishScopeでは約20名の方が情報拡散に協力してくださったお陰で6名の方から応募をいただいた。

10月頭から活動を開始し、期間は年内とした。約3カ月の間に、中身も題名もないものをプロモーションする方法を考えだすという、恐らくは前代未聞であろう活動を開始することになった。

題して、「プロモーションを科学する会」。コアメンバーは上記2名と私、それにWishscope経由で最終的に参加して下さった坂本氏と田口氏の計5名。*2 カンや職人技に頼らない体系的な方法論に基づくシステマティックで再現可能なプロモーションを目指して、結成。

しかしコンセプトが存在するだけで、具体的な活動内容についてはまったく構想さえもない状態からの出発だ。今後が不安でもあり楽しみでもある。

キックオフ・ミーティング

簡単な企画書をでっち上げ、事前にSkypeで概要やスケジュール感などを説明した上で10/6(土)の午後にキックオフ・ミーティングを行った。場所は日比谷線三ノ輪駅から徒歩2分のところにあり今年9月1日にオープンしたばかりの「下町コワーキングオフィス」。メンバーの国信氏がそこの管理人をしており活動拠点として絶好の場所だ。コアメンバー5名の顔合わせと各自の自己紹介を早々に終えて、早速本題のブレストに取り掛かった。

企画主宰者である自分としては3カ月後に何らかのアウトプットを出さなければならないというプレッシャーを感じていた。最終的な成果物を何にするか、つまりゴールを何にするかを、このキックオフ・ミーティングで話し合うつもりでいた。しかしブレストを初めてすぐ、谷津氏から厳しいツッコミが入った。

「現時点でゴールを決めたら、本来やりたいことができなくなってしまう」

ハッとさせられる指摘だった。カタチにすることを焦っていた。誰もやったことのないことをやろうとしているのだから、もっとじっくり取り組むべきなのだ。そこで、ようやく本来のテーマである「中身のない、無題の商品・サービスをプロモーションする方法」についてのブレストが始まった。

石とカーテン

まず「中身がない」とはどういうことかについて議論。しかし中身のないものの具体例を挙げるのは難しい。そこで似た意味である「需要がない」ものの具体例を挙げていった。

  • 石。道端に転がっている石ころをプロモーションすることは可能だろうか?
  • カーテン。これは「下町コワーキングオフィス」がもともと倉庫として使われていたときにおいてあった「捌き切れない在庫」。

議論を重ねるうちに、「需要のなさ」にも色々な種類があることが分かってきた。

  • 道端に転がっている石は、それ自体に価値がない。しかし同じ石でもダイアモンドの原石にはそれ自体に価値がある。
  • 同じ「その辺に転がっている石」であっても、土産物という性質を帯びればそれ自体に価値が生まれる。
  • カーテンは、それ自体に価値がもともと備わっている。石と違って、通常の生活において「用途」がある。
  • 売れ残ったカーテンは、それを欲する人を見つけられていないだけかもしれない。しかし欲する人の数はゼロかもしれない。

僕らは発散を厭わず意見を出す空気を保ちつつ、そこから何らかの共通性を見出そうとしていった。その中で体系化の兆しのような観点がいくつか見えてきた。

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メンバーみんなでオフィスの外へ出て、実際に石を拾ってきた。

関連付けによるプロモーション

「その辺で拾った石」がもし有名人の石だったら。例えばスティーブ・ジョブスが拾った石だったら、石そのものに価値はなくともジョブズが拾ったという石に付随するストーリーが付加価値となる。また、その辺の石ではなく「月の石」だったら、ジョブズの石とは違った価値が生まれるだろう。また別の「価値の付与の仕方」として、たくさん集めて「(建材、庭材としての)砂利」にするという方法もある。

これらに共通するのは「他のものと関連付けることによって生まれる価値」だ。ジョブズの石は、ジョブズという既に価値が広く認知されている人物との関連付けによって付加価値が生まれるし、月の石も「月面」というレアな場所との関連づけによって付加価値が生まれる。また「砂利」については、価値の無いもの同士を関連させることによって価値が生まれる例だ。

つまり「関連付けのあり方の違い」が「価値を付与する方法の差」をもたらすといえる。もしかしたら脳科学と密接な関連があるのかもしれない、といった意見まで出たほどだった。

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実際の石を鉱物標本のように丁寧に触りながら、ブレストを続けた

という感じで

さらに議論はさらに熱を帯び面白い展開で進んでいったのだが、長くなったので続きは次回の記事でお伝えしたいと思う。次回もぜひご期待いただきたい。

ご意見や感想などいただければ適宜活動にフィードバックしていく所存なのでお気軽に書き込んでいただければ幸いだ(Facebookファンページはこちら)。

*1:ザワット株式会社が運営する フリーマーケットの買い手を見つけたり、活動の仲間を募集したりすることの出来るWebサービス

*2:10/20現在、活動には直接参加せずコメントを寄せたりするオブザーバがあと5名ほどいる計10名のグループとなっている。

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プロフィール

礒部正幸

礒部正幸

マルチデバイス向けのアドテクノロジーを研究開発するアドファイブ(株)代表取締役CEO。理系の大学院を卒業後、大手電機メーカーにてソフトウェア開発、ベンチャー数社を経て起業。

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