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» 2013年2月11日 更新

元・百貨店マーケッターが見た【住宅業界】の明日 最大の関心は【消費税増税】ではなく【金利動向】と【収入動向】

前回お話した「消費税増税」についてですが、「消費税増税」のように、あら
かじめ予定が確定していることについては、誰しもその影響を折り込みます。

 ところが、ここに来て自分たちでは先の見通しが予測できないことが2つあり
ます。


■ 住宅ローン金利動向がもたらす買い控え影響

 ひとつは、住宅ローン金利動向。
アベノミクスによる株高・円安という報道の影で、日経や朝日で大きく報じられ
ることはさほど多くありませんが、フラット35金利が2ヶ月連続で上昇している
ことなど、住宅取得にあたり関連性が強い【住宅ローン金利動向】が12月まで
続いた超低金利から大きく舵を切り、一転して金利上昇局面に入っています。

 この住宅ローン金利上昇について、みなさまもご存じの通り住宅ローンは国債
利回りと強い関連性を持っていますから、今後の国債利回りがどうなるかにより
そもそも自分たちの収入で住宅ローンを組めるかどうか、という論点になります。


 では、今後の国債利回りはどうなるのでしょうか?
私は経済アナリストではないので、個人的な見解は差し控えますが、シナリオは
大きくわけて2つあります。

 まず、いろいろなアナリストの意見をまとめると、国債の長期金利は近いうち
に急騰する、という予測が大半です。
ただし、長期金利が急騰したあとの動きは正反対の見解になっています。

 仮に長期金利が急騰したとして、金利の急騰は景気に対して大きなマイナス
になります。
長期金利が大きく跳ね上がったとして、その場合は日銀がもっと国債を買って
金利を下げる動きが功を奏し、極端な金利上昇は避けられる、という説。
次は、南欧の国々のように長期金利の上昇が金融システムの崩壊を招き、
制御不能に陥った為替相場や政治の混乱が地方や若年層の失業率上昇を
招き、中長期的な国内社会不安につながっていく、という説。
国債金利上昇による金融機関の含み損拡大は、メガバングの主要業務の
ひとつである海外での金融事業を停止させてしまうほどの破壊力を持ちます。

 どっちもどっち、という感想をお持ちになるかと思いますが、長期金利の
上昇が住宅の買い控えにつながる影響は強いものがあります。
その金利上昇タイミングは、最短で3月下旬とも噂されています。


■ 先が暗い収入動向見通しによる買い控え影響

 次に、自分では意外とわかりにくい自分自身の家庭の収入動向見通しが、
住宅の買い控えにつながっていく可能性が高いことを解説しましょう。

 当たり前の話ですが、収入が大きく減る、もしくはなくなると分かっていれば
たとえ住宅を買いたくても、買わないという選択肢になります。


 2012年の貿易赤字は、過去最大の6兆9273億円の赤字(財務省貿易統計)。
理由のひとつに、火力発電が貿易収支悪化要因と云われておりますが2010年
対比でもLNG(液化天然ガス)輸入額は2.5兆円程度しか増えていないのです。
 リーマンショックで輸出が減少したという側面も云われておりますが、最大の
理由は、魅力的な国産品がないこと=競争力の低下です。
バナソニック・シャープ・ソニーをはじめとする電機関連が典型的な例ですが、
その影響は富士通の1000億円近い最終赤字見込みで、さらに明確になりました。

 この上記4社に共通している品揃えは【携帯電話】。
携帯電話を含む通信機器は、ここ5年で年率1.5兆円弱程度輸出が減少しています。
あわせて、テレビを含む音響・映像機器も大きく収支が悪化しました。
 通信機器部品や音響・映像機器の国産化比率が減少の一途をたどっている現在。
日産マーチ(タイ製)や三菱ミラージュ(タイ製)などの国産完成車も輸入が増えて
いることを踏まえると、今後円安が進み外国系スマートフォンの値段が上がって
も、日本人が国産携帯電話を買うようにはならないでしょうし、大衆車クラスは
国産メーカー各社による事実上の輸入車シフトが進んでいきます。


 このような状況をうけ、みなさまご存じの通り昨今の円高から製造業海外生産
移転に伴う各地方の工場閉鎖など地方製造業の疲弊が一気に進みました。
このような状況のなか、いずれ経常収支(貿易・所得・経常移転・サービスという
4つの経常取引収支の総称)も赤字が定着すると、国内金利形成に対する影響など
国内の経済的影響はかなり深刻なものになります。

 わかりやすくいうと、今後は円安で輸入物価が上がり、電気料金・ガス料金・
灯油やガソリン・生鮮食品など価格などの生活必需品が大きく上昇していきます。
自動車などは低価格品と高級品に二極分化し、高級品を買える立場の方々は
自分にとってメリットを感じれる店舗でなければ購入しません。
また、テレビやPCなどだれでもどこでも組み立てれば売れるような商品は一層
の値崩れが進み、量販店の収益を圧迫します。
 最近驚いたのは、安売りで有名なドンキホーテに陳列されている商品価格がイ
メージ以上に高いこと。送料負担を考えてもネット(スマホで十分)で買ったほう
がずっと安上がりです。
 
 この感覚は、まちがいなく住宅でも同じ。
スマホで住宅が買えるかどうかは別ですが、ネットで各社比較検討を進める
可能性は、より一般化・高度化が進んでいきます。
 今年に入って《ハウスネットギャラリー》閲覧数が急上昇していること、地方
からの資料請求が急増していることは、これらの消費者感覚を裏付けるものです。



■ ひとことで【先行き不安】といいますが

 7月までは政府も物価上昇にそれなりの抑制をかけるでしょう。
しかし、参院選が終わっても、現在の支持率は維持されていくでしょうか。
インフレによって、高齢者の生活レベルが低下するかもしれません。
その場合、安倍政権への支持が低下することもあり得ます。

 現在は2012年度補正予算案や2013年度予算案で公共事業を大きく積み増し
ましたが、補正予算を追加しなければ来年は各種動向が落ちます。
この時期が消費税率引き上げと重なりますから、来年は景気が減速します。
そんな状況で本当に物価を押し上ることができるのか、2回目の消費税率引き
上げはできるのか、あるいは円安と輸入物価の上昇で消費が落ちてしまうか。
少なくても、来年以降の景気落ち込みは、間違いないことのようです。


 そもそも、『来年以降も自分たちの雇用や賃金の裏付けはあるのか?』 
ここが、現在家を建てる・買おうと検討している方々にとって、言葉に出せない
大きな不安かと私は考えています。


 現時点の株高局面でも日本をよく知る海外投資家や国内投資家ほど慎重な
立ち位置を崩しておりませんが、円安効果が一巡したところで財政出動反動減
や消費税率引き上げによる影響が参院選後から来年前半にかけて一気に訪れ
ます。

 基本は内需オンリーの住宅業界。
先行き不安からくる低予算化を前に、どう対応するか。
もしくは景気動向に関わらず住宅取得資金に困らない層を、どう組織化してどう
生き残っていくか。
 自分が10年以上【顧客戦略】の基幹業務に関わっていながら感じていた、時間
と手間がかかる割に短期的に結果の出ない【顧客戦略】への軽視が、前職業界
の構造不況を招いたように、ご存じの通り【顧客戦略】をもたない住宅業界も構造
不況業種に陥ります。

 読者のみなさまも事業戦略・メディア戦略だけではなく、経営戦略上軽視され
がちな【顧客戦略】についても、大規模小売業の弐の轍を踏まないように次の手
を打つ必要があることは間違いありません。


 ネクスト・アイズ株式会社 早坂 淳一    http://www.nexteyes.co.jp/

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プロフィール

早坂 淳一

早坂 淳一

中立の立場で住宅全般に関する対応を承るネクスト・アイズ(株)にて【ブチョ~】と呼ばれる立場で《ハウスネットギャラリー》という注文住宅リフォームポータルサイトを運営しながら、《ハウスネットギャラリー》でわかったお客さまの興味/関心と、あちこちから直接、間接的に聞いてくる市場/行政/政治の動きを掛け合わせて、主に新しいことを立ち上げるような仕事をしてます。

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