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» 2012年11月27日 更新

ちびクロの細かすぎて伝わらないネットサービスの話 リブセンスビジネスモデル研究 営業利益率45%を超える上場企業の作り方


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こんにちは、黒須敏行です。

今回の研究対象はリブセンスという上場会社です。早稲田大学在籍時に村上太一さんが立ち上げた会社ですが、25歳という市場最年少の若さで上場をしたというニュースで名前を聞いたことがある人も多いと思います。

リブセンスは創業から上場までの痛快なストーリーが魅力です。リブセンスにはベンチャー・キャピタルが入っていたわけでも、何社も上場をさせてきたような上場請負人的な人が経営に参画していたというわけではありません。またマザーズ上場時の営業担当者の数は両手で数えるほどしかいませんでした。

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そんな状態で彼らはリクルートやインテリジェンスなどの大企業と人材領域というリングで戦いを繰り広げています。その戦い方は金や人の力ではなく知恵と工夫をフルに使った極めてゲリラ的なものであり、その結果見事に勝利を収め史上最年少の上場企業になったのです。また社長である村上さんが東大や慶応ではなく早稲田出身というのもかなり「いいね!」を押したくなるポイントです。そんなリブセンスですが初めて社名を聞いたという方にどういった会社なのかを説明したいと思います。

リブセンスのIR情報を見て注目するのは45%を超える営業利益率です。営業利益というのは売上から仕入れ額と販売に関する経費(広告費など)を引いたもので、企業がどれだけ稼ぐ能力があるのかを図るバロメータとしてよく使われます。元ライブドア社長の堀江さんは世界で最も営業利益を稼ぐ企業にすることを目標としていました。

上場企業全体の平均営業利益率は5%前後なので、リブセンスの営業利益率は飛び抜けて高い水準にあるといえます。同じ水準の高さの会社だとディー・エヌ・エーやグリーですね。

なぜこんなにも、高い水準の営業利益率を叩きだせるのでしょうか?
そして史上最年少で東証1部に上場できたのはリブセンスのどういった強みが根源にあるのでしょうか?

結論を先にいうと高いウェブマーケティングの力がリブセンスの収益力の強みになっています。ウェブマーケティングという言葉をここで定義すると、サイトを使うユーザーを

・集客し
・コンバージョンさせ
・リピートしてもらう

というそれぞれの目的を達成するための施策をウェブマーケティングと呼びます。

マーケティングの施策にはそれこそユーザビリティ改善や、インバウンド・マーケティングなど様々な手法がありますがそれらは上記の目的を達成する手段に他なりません。このなかでも集客施策の力がリブセンスは飛び抜けて高いです。始めにそんなリブセンスのビジネスモデルを解説しましょう。

■リブセンスのビジネスモデル

リブセンスはいくつかの事業を手がけていますが、その中でも大きな稼ぎ頭になっているのがジョブセンスというアルバイト探しのウェブサービスです。リクルートが運営しているタウンワークや、フロム・エーみたいなサービスと思ってもらえれば問題ありません

フロム・エーなどのサービスと違う点は大きく2つです。それは
・成功報酬型掲載モデル
・祝い金モデル
という2つの要素を取り入れたビジネスモデルになっていることです。


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フロム・エーはリクルートのくらたまなぶさんという「創刊男」と呼ばれた生ける伝説の人が手がけた雑誌でした。今でこそ当たり前になりましたが、様々なアルバイト情報が業種などの目的別にインデックスされている方式を始めに採用したのがフロム・エーです。この方式はそれまでアルバイト情報を探す際に多くの人達にあった不満を解消する価値があり、フロム・エーは大きく成長することになります。ただし問題もありました。

フロム・エーのような雑誌にバイト求人を掲載する企業は採用が決まることを期待しているからこそ掲載費を支払うという前提があります。ただし求人に対して応募がない場合は、投資した広告費に対して見返りを回収することができません。媒体を運営する側からすれば当たり前っしょという話ですが、掲載企業にとっては不満や不安の種になっている場合もありました。

リブセンスが取り入れた成功報酬型の掲載モデルはこの不満を大きく解決しました。これは企業の掲載に対して求人が決まった際に初めて媒体に掲載費を支払うというモデルであり、求人が決まらなければ掲載費を払う必要はありません。これまで求人に応募が無いことを想定して掲載に二の足を踏んでいた企業はもちろんですが、リブセンスが創りだしたサービスによって全ての企業がノーリスクで求人を出せるようになりました。

また祝い金というモデルもリブセンスが成長した推進力になっています。通常アルバイトを探している人達にとってはフロム・エーを使ってもanを使っても、掲載案件の数の差こそあれ大きな違いはあまりありません。そこで彼らはアルバイトを探すユーザー達に対して、リブセンスが運営する媒体を使って仕事が決まった際はお金をプレゼントしました。要はユーザーがサイトを利用する動機を高める工夫を取り入れたのです。

■成長のターニングポイント

当然これほどまでに利用者、掲載企業の両社にとって良いサービスというのはありませんでした。それにも関わらず当初は全く儲かりませんでした。当時の様子が「リブセンス 生きる意味」という本にはこう書かれています。

2006年4月から秋にかけて、リブセンスは予想を超える窮状に直面している。売上がほとんど立たなかったのである。~中略~「初年度の年間売上は最終的に450万円になりました。~中略~メディアだけだとわずか250万円だったんです」

理由はウェブマーケティングがうまくいっていなかったためです。どんなに良いサービスであっても、集客ができなければ売上は増えません。これに気付いた村上さんはどうすれば効率的にサイトに人を集めることができるかを研究しました。そして辿り着いた答えが「SEO対策を徹底的に成功させる」ことでした。

ウェブの集客施策はバナー広告を始め、リスティング、メルマガなど数々の方法があります。その中でも検索エンジンからの集客というのは、通常の広告と比べて効果が高いというのは数多くのデータが実証しています。まあ検索している時点である商品や情報に興味がありますからね。検索エンジン集客の手法は大きく2つに分けるとリスティング広告と呼ばれる検索連動型広告と、SEO対策と呼ばれる検索結果の上位に自社サイトを表示させる方法があります。

このSEO対策というのは広告ではありません。これはgoogleやyahooに金を払って人を集めるという話ではなく、検索エンジンに好かれるサイトを作れるかどうかという話です。つまり自分達の力で成功させることができれば広告費を支払うことなく、お客さんになる確率の高い「見込み顧客」を集めることができます。2006年当時では誰も考えなかったような方法でSEO対策を実施し、リブセンスが運営するジョブセンスはユーザー数を大きく増やして行きました。そして2011年にマザーズに史上最年少で上場し、2012年10月には同じく史上最年少で東証1部に鞍替えを果たしました。

営業利益率を高める方法は仕入れ金額を落とすか、広告費を削減することです。リブセンスはウェブ集客をSEO対策を中心に成功させているため広告費を極端に削減することができています。そのため冒頭でお話した非常に高い営業利益率を実現しているのです。

ここまで読んだ方は先ほどの「誰も考えなかったSEO対策」というところが気になっていると思います。このコラムの目的は売上・集客数をアップさせるためのノウハウを提供することなので次回以降はそこをメインに話をする予定です。次の更新を楽しみにお待ちください。

またこの場所でお会いしましょう!

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出典 上阪徹「リブセンス 生きる意味」(日経BP社、2012年)
※この記事は公開情報をもとに作成しています
※株式会社アルコはリブセンス社とは一切関係がありません

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プロフィール

黒須敏行

黒須敏行

早稲田大学在籍時に株式会社アルコにアルバイトとして参加し入社。現在はコンサルタントとしてベネッセやラクスルなどが運営する大規模サイトを中心にウェブマーケティング改善のプランニング及びコンサルティング活動を行なっている。

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