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» 2012年12月11日 更新

ちびクロの細かすぎて伝わらないネットサービスの話 HOME'S(ホームズ)ビジネスモデル研究


こんにちは、黒須敏行です。

今回の研究対象は不動産ポータルサイトのHOME'Sです。HOME'Sはウェブマーケティング施策の水準が不動産業界のなかでもトップクラスです。

ネクストキャプチャ.jpg

もともと不動産業界は商材の単価が高い分、マーケティングコストが重くのしかかる業界です。一方ウェブ集客のメリットは反響に対してのコストがわかりやすいという点があります。HOME'Sは営業人数を多くして規模を拡大するのではなく、むしろウェブ集客を使って大きく成長をしてきているためどの施策をとって他業界のものと比べてみても、非常に高い水準になっています。価格.comやリクルートと並んでいるレベルでしょう。そのためHOME'Sを研究することで他の業界の施策に転用できる様々なヒントを得ることが可能です。

■HOME'S誕生の経緯

HOME'Sというサービスは代表の井上高志さんが元々リクルートコスモスにいたときの原体験がベースになってできたものです。それは井上さんが営業担当時代だったときの話です。新築マンションの物件をお客さんに紹介する際に、自社の物件だけではなく競合他社の物件も探し提案したことで上司には怒られるもお客さんにはえらく喜んでもらったということがありました。

このときに井上さんの頭には、自社の不動産物件を紹介することではなくお客さんにとって喜んでもらえるように多くの不動産情報から物件を選べる仕組みづくりをすべきなのではないかという考えが生まれました。そしてそれを形にすべく、1997年にインターネットを使った物件情報サイトを立ち上げ起業することになります。

当初は後発で参入していたリクルートに差を開けられていましたが、井上さんがHOME'S加盟店獲得の営業責任者を兼任することでHOME'Sは大きく飛躍することになりました。ポイントは営業スタイルをプッシュ型からプル型に切り替えたことでした。

具体的にはこれまでは不動産会社のリストにひたすらテレアポ営業を行なっていたやり方を、不動産会社の問い合わせを増やすためのセミナーを日本全国で開催し参加者に対して営業するという方法に切り替えたのです。その結果加盟店の数を1000店から2000店へと倍に伸ばし、継続収益を広告宣伝に大きく投資し成長していきます。その後2006年にマザーズに上場し、2010年には東証一部に鞍替えを果たしました。

今回はHOME'Sというサイトを研究することで、検索エンジン対策とユーザビリティ両観点における最良の実践例を考察するのが目的です。

章立てとしては
・ビジネスモデル比較
・SEO対策研究
・ユーザビリティ調査
の3本立てを予定しています。

■不動産情報サイトのビジネスモデル

HOME'Sのビジネスモデルを解説する前に、不動産関連のウェブサービスを一度整理しましょう。

分布図.jpg

今は数多くの不動産情報を探せるサイトがありますが、不動産会社とアカウントを持って、情報を直接仕入れているのはSUUMOHOME'S『at home』の3つのみです。ヤフーが運営するYahoo!不動産や価格コムのスマイティ、リブセンスの賃貸doorsなどは3社から情報を仕入れて、3サイトに対して送客支援を行うというビジネスモデルです。

こういった送客支援サイトを運営する会社の共通点は『SEO対策』の知見が高いことです。この他にもSEO対策を提供するいくつかの会社が不動産情報を探すことができるサービスを運営しています。

ここで問題となってくるのは、不動産会社の掲載に関するコストです。反響を最大化させるために数多くの不動産サイトに物件をひとつずつ掲載するのは非常に手間がかかります。この手間を一括掲載ソリューションを提供して解決しているのがレンターズという企業です。ちなみにレンターズはネクストの100%関連会社です。また最近は株式会社アクアという会社も一括掲載のソリューションを提供しています。

この両社の代表は共にリクルート出身です。こういった他社が手をつけないがニーズはあるという渋いビジネスを見つけて展開させるというのを見るのは面白いですね。今は情報を検索できるサイトは不動産業界だけではなく多くあります。一括掲載ソリューションというビジネスは様々な業界に展開できるものだと思います。

■HOME'Sのビジネスモデル

HOME'Sのメインビジネスモデルを一言で説明すると、HOME'Sに掲載する加盟店から固定掲載費+成果報酬の掲載費を頂戴するというモデルです。これまでは固定掲載費がメインでしたが、11年1月から問い合わせ課金制度に本格移行しました。賃貸仲介会社にとっては、掲載費が成果ベースに近くなるため広告費の負担がよりローコストになります。その結果ホームズの掲載件数が大きく伸びています。

掲載件数.jpg

これはHOME'Sを運営するネクスト社の営業人員が70~80人前後しかいない身軽さを逆手にとった営業方法です。競合のリクルート社は700人の営業担当者がいます。先日の記事ではリブセンスは掲載料金を成果報酬にすることで、営業コストを最小限まで落としているため営業担当者が上場当時は両手で数えるほどしかいないという話をしましたが構造はこれと同じ話です。

次回はHOME'SのSEO対策を研究します。楽しみにしてください。

それではまたこの場所でお会いしましょう!

出典 「リクルートの正体」(東洋経済新報社、2012年8月25日)
※この記事は公開情報をもとに作成しています


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プロフィール

黒須敏行

黒須敏行

早稲田大学在籍時に株式会社アルコにアルバイトとして参加し入社。現在はコンサルタントとしてベネッセやラクスルなどが運営する大規模サイトを中心にウェブマーケティング改善のプランニング及びコンサルティング活動を行なっている。

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