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» 2013年1月23日 更新

ちびクロの細かすぎて伝わらないネットサービスの話 クックパッドのUI・UX・ユーザビリティを楽天レシピと徹底比較 クックパッド研究最終回ユーザビリティ(UI・UX)研究


こんにちは、黒須敏行です。

クックパッド研究はビジネスモデル編SEO対策編に続いて今回が最終回です。今回の記事の目的はクックパッドと楽天レシピのユーザビリティを比較することで、コンバージョンアップに大きな成果を出す打ち手の一つであるユーザビリティテストのノウハウを伝えることです。

前回紹介したSEO対策は流入数をアップさせる施策ですが、ユーザビリティ改善はコンバージョンアップさせるのに必要な施策です。(厳密にいうと、ユーザが検索した際にアクセスしやすいという状況を作るというのもユーザビリティ改善に含まれるので実はそうと言い切れません)

これを読んでいるウェブマーケティングに携わる方はSEO、リスティング、純広告、LPO、EFO、DSPも全部やった。。もうやることねえよorzと悩んでいるかたもいらっしゃると思います。

そんな悩みを持っている人達に対して、コンバージョンを継続的に改善するためにはどういった視点で改善行うことが必要なのか?という根っこの考え方を持ち帰って欲しいと考えています。

章立てとしては
・100人中99人が間違っているユーザビリティに対しての考え方
・ ユーザビリティテストを行うノウハウ公開
・クックパッドと楽天レシピのユーザビリティ比較結果
の3本立てで進めたいと思います。

それではひとつずつ参りましょう!


■ユーザビリティは特定ユーザから見た特定サービスの使い勝手

まずはじめにクックパッドのユーザビリティがなぜ優れているのかを一言で説明しましょう。それは「ユーザビリティの本質を理解し、愚直にユーザビリティ改善を実践している企業姿勢」が答えです。

以前HOME'Sユーザビリティ研究でも話しましたが、ユーザビリティあるあるともいっていいよくある言説は最適なユーザビリティはある決められたフォーマットがあるというものです。

『六〇〇万人の女性に支持される「クックパッド」というビジネス』という本でクックパッド代表の佐野さんがこんなことを話しています。

「ユーザーは1000人いたら1000通りの動きをします。その1000人を満足させるのは並大抵のことではない。でも、それに挑みたいんです。なんとかして少しでも満足度を高めたい。なぜなら、そうすることで、料理が楽しくなるはずだから。」

この発言は本質を理解し、実践せんとするクックパッドの企業姿勢が表れています。

ユーザビリティ定義の誤解.jpg

ユーザビリティ改善というと
・フォームの使いやすさを改善する
・問い合わせの導線を改善する
・ボタンやバナーの色を変えてテストをする
などの表面の施策全般を意味していると考え、提案を行っていました。

こういったことも結果的にはユーザビリティ改善に含まれますが問題としては見た目やテクニックによる改善がメインのため、打ち手を出し尽くしてしまい、これ以上の成果改善が望めないということがよくありました。

反対にコンバージョンの継続改善に成功している事例を見ると、クックパッドのように「特定のユーザにとって、もっと快適に使いやすくするにはどうすればよいか」という考え方をもって改善を行っており、コンバージョン改善ができるかどうかの差がそもそもの考え方にあると感じています。


■ユーザビリティテストをどうやってやるか?

ユーザビリティ改善の方法はシンプルで簡単です。

①ターゲットと思われるユーザにサイトを使ってもらう
②思っていることを話してもらいながらサービスを使ってもらう
③なぜそういった行動をとったかを質問する

このプロセスで何がコンバージョンを妨げる要素になっているのかはだいたいわかります。

今回はまず始めにレシピポータルを使うユーザを区分してみましょう。方法としてはサービスを使っている人にヒアリングをして仮説を出すという形が良いです。何人かにヒアリングをしたところレシピサービスを使うユーザは大雑把にこういった分類になることがわかりました。

ユーザ定義.jpg

この区分の目的はサービスを使うユーザ像を仮説ベースで定義することです。そのため網羅的である必要もないですし、要素や属性が被っていても問題ありません。むしろ仮説を持っていることが大事です。仮説があれば、仮に仮説が間違っていてもユーザビリティテストの過程で気付き、修正することが出来るからです。

今回はクックパッドと楽天レシピを比較するため、上記の「楽をしたいアル子さん」のユーザ心理に沿ったコンテンツや機能が備わっているかを調査しました。本来は検証結果まで提示できるのがベストですが今回は手前までの比較になっています。

ここで大事なポイントは

「思ってもらっていることや考えていることを話してもらう」

という方法をとることです。ユーザビリティテストはアイトラッキングと呼ばれるユーザの視線を可視化する調査手法が一般的に有名で知られています。視線の動きを客観的に捉えることは一定意味のあるデータですが、それだけでは本当に意味のある改善施策に繋げることは困難です。

重要なのは、ユーザがサイトを使う中で、どんな心理か、なぜその心理になるのかをしっかりと把握することです。一人一人の文脈に即した心理状態を把握できれば、サイトの課題・機会が明確になり、より適切な改善に繋げることができます。

テストに対しての考え方.jpg

そのためにも「なぜそう思ったのか?」「なぜそういった行動をとったのか?」ということを質問し、具体的に回答をもらうようにしましょう。何よりもこの方法は手早く簡単に誰でもできるところがポイントです。


■クックパッドと楽天レシピのユーザビリティ比較

ヒアリングした結果をもとに、ユーザがレシピを探す際にどういった行動をとるのかというシナリオを考えてみました。

ユーザ行動.jpg

このシナリオを達成するための課題が何なのかを明確にするため両サイト毎にテストしてみました。比較方法はユーザの心理を定義し、その心理に対して機能やコンテンツが目的を達成できるかどうかを比較しています。

①認知・流入フェーズ

☆前提となるユーザの心理

テストをして見られた行動は、まずYahooで食材名を入力した際に関連検索に表示される「鶏胸肉 レシピ」というワードをクリックしトップに表示されるものをクリックするというものでした。ここから導き出されるユーザ心理は「検索して一番上にあるものを探したい」になります。

認知フェーズユーザ心理.jpg

このユーザ心理に対してのユーザビリティが達成できるかどうかを検証した結果を比較しましょう。

☆ユーザビリティ評価比較

前回のSEO研究でも紹介した通りクックパッドのSEOは半端ないので、ほとんどのワードでトップに表示されます。またYahooでは画像で表示されるためユーザはクックパッドのレシピを多く見るという結果が観察できました。

認知フェーズユーザビリティ評価.jpg

このようにユーザニーズの定義⇒ユーザビリティの評価という流れが、ユーザビリティ評価の基本です。

②情報収集フェーズ

☆前提となるユーザの心理

情報収集におけるユーザ行動でみられたのは、画像を見ながらレシピを探すということです。またどちらのサイトも人気のあるレシピをまず始めにクリックしていました。楽天レシピでは「鶏胸肉 塩麹」という関連レシピ検索の機能をユーザが使っており、他の食材と一緒に調理できるレシピを探していました。

ここから導き出されるユーザニーズはレシピを決定する上で写真をもとに決めるということと、人気のあるレシピを探したい、そして他の食材も片付けてしまいたいという動機が挙げられます。

情報収集フェーズニーズ.jpg

☆ユーザビリティ評価比較

ここでは両サイトともに、ユーザ心理に対して十分な機能をしていました。楽天レシピは他の食材も片付けたいというニーズにより応えています。情報収集フェーズは楽天レシピに軍配があがります。

情報収集フェーズユーザビリティ評価.jpg

③レシピ選定フェーズ

☆前提となるユーザの心理

ここで見られたのは、料理の工程毎時間の記載有無と工程毎の写真の有無を確認する行動です。根本にあるのは手早く簡単に作りたい、そして自分が作れるのかを判断したいとい。何よりも面倒なので失敗したくないといううユーザニーズです。他の人が作った写真を両サイトとも確認できますが、それらの写真をチェックする様子も観察できました。

選定フェーズニーズ.jpg

☆ユーザビリティ評価比較

上記のユーザニーズをもとにした評価ではクックパッドに軍配があがります。工程毎の時間はもちろん写真が充実しているクックパッドはストレスなくレシピを探していました。

一方楽天レシピは、トップの写真以外や基本の調理方法はあるものの工程毎の時間、工程毎の写真が無いものが多く探しているうちにモチベーションを失って離脱する様子を観察することができました。

選定フェーズユーザビリティ評価.jpg

■まとめ

行動フェーズ毎のユーザ心理をもとにした評価比較をまとめるとこのような形になりました。

総合評価.jpg

楽に料理を使いたいというユーザ像に対して、フェーズ毎のユーザ満足度を担保しているのはクックパッドです。

冒頭でも紹介しましたが、ユーザビリティは1000人のユーザがいれば1000通りの最適解があるという世界です。そのため今回定義したユーザ心理とは異なるもので評価をした場合は、総合評価がひっくり返ることもあります。それでもクックパッドのユーザビリティは素晴らしいと思います。

また今回はレシピを使うユーザに対してのテストを実施しましたが、フォームの改善や問い合わせの導線設計といった表面的なUI改善(ユーザインターフェース改善)であれば知人や社内の方でも問題ありません。

ただし今回のようにユーザとのコミュニケーション検証が目的の場合はターゲットのユーザを被験者にするのがベストです。

自分達が運営しているサービスをユーザが使っている様子を観察する体験は、コンバージョン改善つながるものですが、本当の価値はユーザの本当のニーズを肌で体感することができることです。

知人や社内の方でも構いません。是非一度行なってみることをオススメします。

またこの場所でお会いしましょう!


☆ユーザビリティテストについてもっと知りたい!という方へオススメの情報

ブログ百式の著者でありドットインストールの代表でもある田口さんが書いたユーザビリティテストをみんなやるべき!という記事です。サービスの運営者の思い込みがもたらす致命的なミスについてのエピソードは非常に興味深いです。

ビービットという日本で最もユーザビリティに知見があるコンサルティング会社がありますが、その会社が公開している事例ベースのコンテンツです。質量ともに日本で最も充実しているユーザビリティに関してのコラム集です。
http://www.bebit.co.jp/memo/

ユーザビリティテストの方法がまとめられた資料を手に入れることができます。テストを一度自分でやってみようかなと思う方にオススメの情報です。
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プロフィール

黒須敏行

黒須敏行

早稲田大学在籍時に株式会社アルコにアルバイトとして参加し入社。現在はコンサルタントとしてベネッセやラクスルなどが運営する大規模サイトを中心にウェブマーケティング改善のプランニング及びコンサルティング活動を行なっている。

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