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» 2013年3月 1日 更新

ちびクロの細かすぎて伝わらないネットサービスの話 超高難易度キーワードをSEO対策する際の考え方 エムスリー研究第2弾SEO対策編


こんにちは、黒須敏行です。

エムスリーの事業のひとつに医師の人材紹介業が挙げられますが、それはエムスリーキャリアという会社がサービスを提供しています。今回はその医師の人材系ポータルのSEO対策を比較研究します。

結論から先に話すと、医師系の転職系サイトで成果を出すためのSEO対策を行うのは費用対効果に見合いません。そのため仮に私が医療系人材ポータルのウェブマーケ担当者であれば、SEO対策は難易度の低いキーワードの獲得に集中します。そのためコーディングとリンク構造の最適化だけを行い、競合他社がリンクを購入して成果を上げようとしているような難易度の高いキーワードはそもそも成果を期待しません。

ただしこの結論は身も蓋もなさすぎるので、仮にリソースが潤沢であり、費用対効果を無視してSEO対策の成果を出すことが必須という環境であればどういった対策方法を行うのかということをまとめます。その際にエムスリーキャリアのサイトを他のサイトと比較しながら解説をします。

またそもそも医師求人系のサービスのようなSEO対策の難易度が非常に高い業界におけるウェブーマーケティングの必要な考え方も伝えたいと思っています。

章立てとしては
・業界によってポイントになるキーワードは異なる
・SEO対策を成功させるために必要なこと
・医師求人系媒体における必須となるウェブマーケ施策
という形で進めて行きます。

それでは参りましょう!


■業界によってポイントになるキーワードは異なる

以前HOME'SのSEO対策を研究した際に、彼らが成功した要因として
・コンバージョンを獲得でき
・競合他社が獲得していない
というキーワードの発見が大きかったという話をしました。リブセンスも同じ施策で大きく成長した会社です。ただし医療系求人の業界でこれと同じことができるか?と聞かれたら正直難しいでしょう。なぜならユーザが検索するキーワードが異なるからです。

医療系求人で大事なキーワードは「医師 転職」「医師 求人」です。HOME'Sやリブセンスが成功した要因である地域の掛け合わせや、3語かけあわせのキーワードはそもそもコンバージョンが獲得できません。獲得できたとしてもボリュームは少なくなってしまいます。

医療系求人のワードの特色.jpg

ここで大事なことは他業界で上手くいったSEO施策が、他の業界ではうまくいかない場合もあるということです。これはユーザの検索行動が業界によって異なるためです。医療従事者の検索リテラシーが向上することで10年、20年後はかけあわせの検索クエリがかなり増えると思いますが現状はビッグワードのニーズが非常に高いです。

そのため医療系求人サービスのSEO対策は「医師 求人」「医師 転職」というキーワードをいかに成功させるかが重要課題になります。


■成功させるための思考実験

検索するニーズが単一なので、競合他社がひしめきあう状況になりSEO対策の難易度は必然的に猛烈に高くなります。競争の基本は「差別化」なので私がマーケ担当者であればそもそも頑張りません。ただしそれはいってはお終いよという話なので、ここではビッグワードを獲得することを目的にした対策の思考実験をしましょう。

ビジネスモデルと費用対効果は完全無視して難易度の高いキーワードでSEOを成功させることだけにフォーカスを当てます。

ポイントは
・掲載案件量の最大化
・キーワードを定義する中立コンテンツの構築
・リンク
の3つです。1つずつ説明します。


☆掲載案件量を増やす

「医師 転職」や「医師 求人」のSEO対策を成功させるためには、紹介できる掲載案件の数を日本やベストは世界のなかでナンバーワンになることが重要です。そもそも医療系求人サイトのビジネスモデルは基本は月額固定の掲載費を医療従事者から頂戴するというものです。

掲載案件数の最大化を行うために最適な手段は掲載費をゼロにして掲載費を成功報酬にします。それによって掲載案件獲得の営業コストは最小限になります。そして成功報酬でも獲得できない案件はクローリングをかけて取りに行きます。

情報をクローリングして取得.jpg

掲載案件数の最大化を行うために最適な手段は掲載費をゼロにして掲載費を成功報酬にすることです。それによって掲載案件獲得の営業コストは最小限になります。また通常は募集が終わったものは掲載を取り下げるのが普通ですが、それも行いません。理由はサイトの情報量が少なくなるからです。ベターな施策はHOME'Sアーカイブのように別立てのコンテンツを作る。ベストはリブセンスのように募集が終わった案件でも掲載を続けます。

掲載案件数の最大化.jpg

医師の転職・求人掲載数はこのサイトが最も多い」という状況を目指すのがまず重要になります。


☆キーワードを定義する中立コンテンツの構築

以前別のブログで紹介した事例ですが、SEO対策が洗練されている会社としてシンバスという名前の会社を紹介しました。シンバスのビジネスモデルは媒体を立ち上げ、掲載企業を集めるというリクルートモデルです。SEO対策を含めたウェブのマーケティングに強みのある会社でGoogleがキーワードを定義するコンテンツを高く評価するというロジックを逆手にとり、低コストでビッグワード対策を成功させています。

シンバス.jpg

キーワードを定義するような中立的なコンテンツは
・クチコミ
・ランキング
・キーワードを説明する用語集や読み物
が主要コンテンツになります。

そのため病院で働いた医師の方達の体験談や、求人案件を年収毎や条件毎にランキング形式で紹介されるコンテンツ。また競合他社が(リクルートドクターズキャリア)が運営しているような読み物は、日本にある医療系求人サイトのなかでも最も量を集めることが必要になります

他媒体比較.jpg

クチコミやランキングは掲載型のビジネスモデルと利益相反しがちですが、その点は掲載費を成果報酬型にすることで担保します。

ここで大事な考え方は、エムスリーキャリアの強みや特徴を伝えることではなくキーワードを定義するような中立的な情報をいかに多く集めるかという視点です。


☆リンク

以前ウェブサービスにおける参入障壁を作るために必要なことを書きました。大事なことは自社で評価の高いサイトを多く持つことで、自前の強力なリンクファームを作ることです。

ウェブサービスに強い事業会社は、既に別ドメインで評価の高いサイトを多く持っています。こういったサイトに勝つために、今からそれらを上回るサイト群を保有する必要がありますが、自前で作るというのは時間がかかりすぎるでしょう。

これは「医師 転職」で検索結果のトップに表示されているサイトが保有するページランクとサイトをまとめたスライドです。

リクルートの強み.jpg

またこれらの差を埋めるために、自然にリンクが集まるようなコンテンツを作るという発想も同様に現実的ではありません。競合はそもそも別の業界でサービスを展開し、別の業界に従事するそれぞれの事業者やユーザからリンクを集めているためです。そこに対抗するためには、リンクが集まるようなコンテンツを作るよりもリンクを自分達で構築するという発想が必要になります。

まずヤフーカテゴリに登録されている医療系のサイトに対して上から順番に、リンク掲載依頼もしくは運営代行提案のバーターによるリンク掲載を行います。ただしこの方法も時間はかかります。ベストはそれと平行した形で、自社のコンテンツをAPIにしたうえで、様々な切り口のコンテンツをSEO対策用のサイト群として構築しリンクを増やしていきます。

もちろんこのサイト群はユーザが違和感なく使用できるものにするのが前提です。食べログが保有しているようなコンテンツが最良の実践例でしょう。

更にURLを直リンクで貼れるネット広告に継続的に大量に出稿を行います。この分野では競合が非常に強いためリンクは費用をかけてなりふり構わず集めるしかありません。


■医療系求人のウェブマーケティングを成功させるために必要なことは

この他にも、重要タグの最適化、コンテンツのユニーク化、URLの最適化、レスポンススピードの高速化などなど細かい施策を洗い出し全てを完璧にする必要があります。

問題はSEO対策はそもそも広告ではないので、これらを行ったとしても集客が約束されていると断言できないことです。これらの施策にかかる時間と労力はどれくらいのものになるのでしょうか。それを考えると仮に私が経営者やマーケ担当者であればSEO対策に割くリソースはPPC広告の効果改善やコンバージョン改善のための施策など割きます。

他にはサイト名を覚えてもらうために紙のチラシを病院に配布したうえで、PPC広告の「ブランド名」の獲得単価を落とす。もしくはアフィリエイターの方達にランキングサイトを立ち上げてもらい、SEO対策は彼らに頑張ってもらうでしょう。

ただしこれらのやり方も他の事業者が行なっているのですぐに限界がきます。大事な考え方は医師のリストを早期に集めるという発想です。例えば医学部学生の人たちが講座情報やレジュメ情報をみんなで共有できるようなサービスを作るという方法です。医師になった方達が数年経って転職活動をする際に、そこで収集したリストからサービスの提案を行うことができます。非常に息の長い施策ですが、長期的にはマーケティングコストは最適化できるでしょう。

リストを作るタイミング.jpg

ここまで読んでもらえれば、難易度の高いキーワードのSEO対策を成功させることはいかに大変なものなのかがなんとなくわかるのではないでしょうか。SEO対策は数多くあるマーケティング手法のひとつの手段なので、費用対効果に見合わないと判断すればそもそもそこまでリソースを割くべきものではありません。効果に見合わなかった場合は別の施策をトライして検証し最適化するというスタンスが重要です。

そんなことをスクーというオンラインで生放送の授業を受けることができるサービスで話します。もしよかったらご参加下さい。

※授業は無料です。

次回はエムスリーのユーザビリティについて研究する予定です。またこの場所でお会いしましょう!


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プロフィール

黒須敏行

黒須敏行

早稲田大学在籍時に株式会社アルコにアルバイトとして参加し入社。現在はコンサルタントとしてベネッセやラクスルなどが運営する大規模サイトを中心にウェブマーケティング改善のプランニング及びコンサルティング活動を行なっている。

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