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» 2013年3月26日 更新

ちびクロの細かすぎて伝わらないネットサービスの話 過去8年間のSEO対策案件の失敗事例を見てわかったこと SEO対策失敗事例まとめ


こんにちは、黒須敏行です。

プロ野球チーム楽天イーグルスの元監督野村さんの有名な言葉に「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」というものがあります。これは成功した理由は言葉で説明できないことが多いが、失敗した原因は分析が可能だという意味です。

SEOの提案に限ったことではないですが、世の中の営業提案というものは基本は成功事例がセットになっています。ただし成功した要因は結局タイミングが重要だったとか、競合がいなかったみたいな自分でコントロールできない要素が大きかったということが多々あります。Lineをヒットした要因を解説する記事があっても、それを読んで同じことができることがどうかは別という話ですね。

そういった成功事例から学べることももちろん多いですが、同じように失敗した事例から得ることができる学びも価値が高いのではないでしょうか。このブログも漏れずに、他の多くのブログや書籍は成功事例は紹介していますが、失敗した事例を紹介していることは非常に少ないのが現状です。

私は2006年の学生時代から今の会社で数多くの案件に取り組んできました。今回はこれまで手がけた案件のなかで失敗をしてしまった事例を紹介したいと思います。この記事のゴールは「同じ失敗をしないようにする」ことです。

章立てとしては
・SEO対策の失敗
・マーケティングの失敗
・ビジネスモデルの転換例
という3本立てで参りたいと思います。

それではひとつずつ見て行きましょう!


■SEO対策の失敗例

営業担当として様々な案件に携わって来ましたが失敗は大きく分けて2つあるなと感じます。ひとつはキーワードのランキングが全く上がらなく、集客数も増えなかったというもの。もう一つはあるキーワードのランキングは上がったがビジネスの成功に結びつかなかったというものです。

キーワードのランキングが上がらなかったというものは、難易度を読み間違えてしまったということが多いです。そして今回紹介するのは検索結果のランキングが上がったが肝心のゴールが達成できなかったという事例です。

あるカード会社にヒアリングをしたところ、カードの発券量を増やすために「クレジットカード」でランキングを上げたいという要望をもらいました。施策を行ったところ半年間で目標を達成することができましたが、継続した契約にはなりませんでした。理由は最終ゴールであるカード発券につながらなかったためです。

クレジットカードランキング推移.jpg

ユーザビリティテストをすればわかりますが、検索するユーザは1つだけサイトを見て情報を決めるわけではありません。様々な情報を見たうえで意思決定をし、行動するというのが普通です。

クレジットカードで検索すると様々なカード情報を中立的に比較し紹介しているサイトが軒を連ねています。あなたにあったぴったりの情報を提供するという提案と、私の商品だけを使って欲しいという提案を比較すると多くの人は前者を選ぶのではないでしょうか。

・ユーザは比較をする
・中立的な情報をユーザは信頼する
・ビジネスには競合がいる

という発想が当時はぽっかり抜けていました。今振り返るとクライアントのサイトとは別に比較サイトを立ち上げSEO対策で集客し、クライアントのサイトに送客をしたほうが最終的な成果は大きかったなと思います。


■マーケティングの失敗例

健康食品を販売している会社から問い合わせがあり、SEO対策を提案することになりました。キーワードは「ダイエット食品」です。

ダイエット食品ランキング.jpg
程なくしてダイエット食品とキーワードを入力した際に晴れて検索結果の1ページ目にランクインされるようになりましたが、クライアントからある日もらった連絡の内容は

「商品がまったく売れない」

というものでした。

当時「ダイエット食品」で検索した際の競合サイトが提供する同一商品の単価は2000~3000円でしたが、クライアントの商品単価は1万~2万という単価でした。リクルートの藤原和博さんが話していますが商品力は商品×サービスの価値が価格を上回っているかどうかと話しています。この方式に照らし合わせると商品とサービスに対してそこまでの価値を感じていなかったのです。

この高単価のダイエット食品はユーザ毎に専門の栄養士がダイエット食品を毎月コーディネートしてくれるというものであり
・ニーズが無かった
・ニーズはあっても、マーケティングが間違っていた
のどちらかだったと考えています。

そもそもダイエット食品を高単価でコーディネートするという商品はあまり無いものなので、芸能人などのブログで紹介されてまずは認知をしてもらうといったことが必要だったのかもしれません。これはマーケティングの失敗事例だなと思います。


■ビジネスモデルの転換で成功した事例

最後に紹介するのはウェブ集客は成功していたがビジネスはうまくいっていなかった事例です。この会社はビジネスモデルを変更したことで、ビジネスを成功させました。

葬儀のポータルサイトを運営しており、当時は「葬儀」という難易度の高いワードだけではなく、地域の掛け合わせや葬儀場名などの様々なキーワードでランクインしていました。そして「葬儀」というランキングは上がったものの契約が継続されることはありませんでした。

葬儀ランキング.jpg

最近この会社を特集している記事を知りわかったのですが当初多くのトラフィックを売り上げにつなげることができていませんでした。ポイントはビジネスモデルです。

最初のビジネスモデルは葬儀会社から固定で掲載費を頂戴するというモデルでしたが、同じ掲載料でも反響の数字に差が出るという問題が起こりました。

そのため掲載料は無料とし葬儀費用の一部を成果報酬としてもらう方式に切り替えたのです。注文確認方法は葬儀会社毎に専門の電話番号を割り当て、その記録をもとに注文があったかどうかを返信してもらう仕組みでした。

しかし返信率が極めて低いという問題と、ポータルサイトに問い合わせがあっても最後は葬儀会社に直接連絡されてしまうという2つの問題に悩んでいました。この問題を解決するために彼らは自分達が葬儀を提供するというビジネスモデルに切り替えたのです。

ユニクエストのビジネスモデル2.jpg

葬儀費用の相場は100万前後ですが、彼らはお通夜も告別式もない自社商品を10万~20万という低価格で提供したのです。面白いのは葬儀場を自分達で持たなかったことです。どういうことかというと葬主の注文をもらった後で、葬儀会社に対してその金額で葬儀を行うように交渉をすることでサービス提供を行いました。

彼らは葬儀会社の原価も売値も熟知しており、葬儀会社との情報格差がありません。また既にお金を払いたいという葬主のリストを持っているという強みがありました。葬儀会社側にしては断れば売上はゼロですが、稼働していない時期であれば利幅は少なくなるものの多少の売上が宣伝費をかけずに立ちます。

こういった状況があったため葬儀会社に対して強く交渉することができ、低価格の葬儀を実現できました。この会社の売上は成果報酬型のビジネスモデルだった頃は年間1億円前後でしたが、現在の売上は数十億になっています。

クックパッドでも同じような話がありましたね。彼らはこれまで一度も広告を打ったことが無いですが、それはSEO対策が強いためです。2005年当時ユーザは100万人を超えていましたが、巨大なトラフィックを支えるためのサーバー代を工面することに苦労をしていたという経緯があります。彼らはそれをとんでも無い方法で乗り切っていました。


これらの事例を見るとどんなにSEO対策が優れていたとしても、ビジネスモデルが機能していないと商売としてうまくいかないということがわかります。


■まとめ

どの事例も数年前の古いものなので、難易度の高いキーワードでSEO対策を実施するというものになっていますがこういったことは今後は難しいでしょう。またそこは重要なポイントではありません。大事な考え方はSEO対策を成功させるということの前にマーケティングの方法が正しいかどうか、または売れるビジネスモデルを作れているのかという視点を持つことです。

業界によっては商品単体で差別化が難しいものが最近は増えており、まずマーケティングでリストを集めることが重要という話はもちろんあります。リスティングやSEOなどのウェブマーケティングの分野まさにそうですね。それでも基本的にユーザは様々な商品や情報をたくさん比較したうえで行動するかどうか、買うかどうかを判断します。

マーケティングも大事ですが、自社のお客さんが商品を比較した際に自社の商品を使ってくれる、買ってもらえるという土台があることが何よりも重要です。これは商品力の強化でありビジネスモデルと密接に関係する話です。

様々な案件を見ていく中で感じるのはまずは訪れたお客さんが買ってくれるという状況を作って行くのが大事だと感じます。そして自分のサービスにニーズがあるかどうかというのは、お客さんにインタビューをしたりリスティング広告を打つことで検証はできます。

そして商品やビジネスモデルがイケてるものであれば、ガンガンマーケティングを実施してリストを集めるべきです。例えばリブセンスのビジネスモデルは3方両得の素晴らしいものであり、そういった前提でSEO対策を実施したからこそ大きく成長したということがいえるでしょう。


SEO対策をすべきかどうかを悩んでいる人はまずニーズがあるかどうかの検証を始めにやってみることをオススメしたいです。くれぐれも売れない商品に対して一気にマーケティングをかけるということは避けるようにしたいですね。

それではまたこの場所でお会いしましょう!


☆この記事を読んでなるほどなーと思った方にオススメの情報

スクーというオンラインで授業を受けられるサービスでもらった質問をまとめました


難易度が極端に高いキーワードを施策する際の考え方について書きました



※この記事は公開情報をもとに作成しています

参考情報誌
Bplatz press (大阪産業創造館 2010年8月)

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プロフィール

黒須敏行

黒須敏行

早稲田大学在籍時に株式会社アルコにアルバイトとして参加し入社。現在はコンサルタントとしてベネッセやラクスルなどが運営する大規模サイトを中心にウェブマーケティング改善のプランニング及びコンサルティング活動を行なっている。

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