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» 2013年6月 5日 更新

ちびクロの細かすぎて伝わらないネットサービスの話 100人中99人が間違っているUI・UX改善


下記は、Googleトレンドという検索ニーズを調査するツールで調査したウェブマーケティングのキーワードの検索ボリュームの推移です。

googleトレンド推移.jpg

ここ数年は『SEO』『SEO対策』というキーワードの検索回数が減り、その代わり『UI』や『UX』という言葉が検索されるようになっているのがわかります。

はてなブックマークも、UI・UXと名前がつくやつは人気な記事が多いです。

スマホのUI考 ? ボタンについて

UI&UX / 重要なのは、毎日さわって嬉しい UI UX!

【スマートフォン向け開発】ユーザビリティチェックリストを作ってみた

こういったUI・UXのノウハウ系の記事は価値があると思いますし、大量のはてぶやいいねが付くのも不思議ではありません。ただし問題だなと感じるのはユーザビリティ改善の理解の仕方を間違っているため成果が上がっていないというケースが散見されることです。

そしてそんな相談を受けるたびにこれは言葉の使い方が正しく理解されてないから起こっている問題なんだろうなと感じます。

そういった失敗を再び起こさないためにも、まずコンバージョン改善に必要な考えを整理することが今回の目的です。そしてそもそもなんでそんなことになっているのかということを理解してもらうことで更に学びは深くなると思います。

それでは参りましょう!


■コンバージョンを改善させるために必要な2つの方法

UI・UXの改善はユーザのコンバージョン率(アクション率や転換率、反響率など言い方は業界によって異なります)を改善させる文脈で使われる言葉です。結論から話すとコンバージョンを改善させる方法は大きく分けて2つあります。

ひとつは、冒頭で紹介した記事で挙げられているような、フォントの大きさや解像度の最適化、ローディングの時間調整をアナウンスするといったような見た目やユーザの期待値を調整するための機能やインターフェースの改善。

もうひとつは、ユーザの不安やサービスに対する先入観を取り除くことで、信頼関係を構築するというコミュニケーションに関する改善です。

どちらの改善がコンバージョン改善につながるのかというのはケースによって異なりますが、99%の事業者にとっては後者の改善がインパクトがあります。そして残りの1%は前者の表面的な改善が重要です。

そして巷のUI・UXという言葉に関する言説はその1%の事業者を対象とした表面的な改善に終始している傾向があり、冒頭で紹介した間違った理解が起きている原因になっていると感じます。

まず初めにコミュニケーションに関する改善って何?というところを説明した後で、なんで1%を対象とした話が盛り上がっているのかということを解説します。


■これを全部やればコンバージョンレートは倍になる!ユーザビリティ改善チェックポイント

コンバージョン改善をやってて感じるのは、UI・UX、ひいてはユーザビリティの改善は営業に似てるなということです。営業や商売の基本はお客さんと信頼関係を築くことであり、それを達成するためには様々なお客さんの不信をひとつずつ解消していくことが必要になります。

ユーザビリティ改善も似たようなところがあります。以前こんなことがありました。

SEO対策をテコ入れしたいということでサイトを見るとデザインはシンプルでお洒落なんですが、どうも違和感があります。

代表の方に聞くと「UI・UXに知見があるデザイナーが作った」ということでした。

わかりました、ではテストの答え合わせをするためにサイトの使いやすさをユーザに聞きましょうということで、ユーザビリティテストを実施しました。ターゲットユーザにサイトを使ってもらいながら思っていることをつぶやいてもらったところ課題が出るわ出るわということがありました。

たしかにデザインは綺麗で過不足無くサイトは使えることができるんですが、ユーザの様々な不安がどうも解消できていません。

ユーザビリティ改善において重要なコミュニケーション設計要素はたくさんあるんですが,どんな課題があったのかをいくつか説明します。


☆事例が大企業のロゴばかりで自分にあったものを提供してくれるか不安

BtoBソリューションを提供しているサービスに多いですが、これでもか!と大企業のロゴを敷き詰めているサイトを目にします。上記のお客さんも同じような情報を掲載しているので、有名な会社と取引があることに全く問題はありませんが、多くのユーザが感じるのは『自分は大企業じゃないけど大丈夫かな・・』という不安です。

ユーザビリティ改善の要素である誤認解消についての話です。

誤認.jpg

これは情報を規模別に整理することで解決できます。


☆どんな課題を解決できるのかがわからず頼めないという不安

サイトのデザインがお洒落でスッキリとしているため、ユーザはサイトの運営主体をコンサルティング会社だと感じていました。実際は事業会社であり、クライアントの実行支援も行なっていましたがそれが伝わっていませんでした。クライアントニーズは実行支援を行なってくれるようなパートナー探しだったので、不安を感じ問い合わせに至らないという行動が観察できました。

これはユーザビリティ改善要素である不安解消にあたる話です。

不安.jpg

これは訂正するメッセージをリピートしたり強く発信する必要があります。


☆訴求点に課題があった

他の会社よりも安い金額で商品を提供できるビジネスモデルを説明しているページにたどり着かないという行動が見られましたが、理由としては『我々に相談をして下さい』という訴求文言がユーザに広告と勘違いをされていたということがありました。

訴求の要素にあたる課題です。

訴求.jpg

ここはテストで得られたユーザニーズを解決する文言に変更することで解決できました。
(上記のスライドで紹介している文言は実際の改善案ではありません。)


☆しつこく営業されるんじゃないかという先入観が払拭できていなかった

高単価の商品だったため、以前同じ商品を購入検討をしたユーザが考えていたことは

「以前営業マンから凄いしつこい営業がきたけど、また同じようなことがあるだろうな。。」

という感情でした。その会社の営業スタイルはそういったことをしませんが、ユーザは過去の経験を元にした先入観を持っておりそれが払拭されていないためサービスを利用する気にならないということがありました。これは先入観についての課題です。

先入観2.jpg

問題解決のためには早いタイミングで強いメッセージを発信することが必要になります。

この企業のウェブサイトをユーザが使う様子を観察すると、フォントの大きさ、ローディングの時間、検索のしやすさなどのインターフェースの問題は全く見つかりませんでしたが、数多くのコミュニケーションに関する問題が発見できました。

要は「ちゃんとした髪型で小奇麗なスーツと靴は身につけてるけど、そもそもお客さんと全く会話ができてない営業マン」みたいな状況になっており、そりゃコンバージョンも増えんわということがわかったのです。そしてこれらの問題点を解決することで反響数は倍になりました。


■なぜこういった間違った理解が起こってしまうのか?

どうしてUI・UX改善というと表面的な話が幅をきかせてしまうのでしょうか?ぱっと思いつくところだとふたつあります。


☆アプリはビジネスモデルが単純明快なので機能や見た目の差が重要になる

ものにもよりますがサービスの価値がアプリによって大差が無いみたいな話だと、ちょっとした使いやすさやほんの少しの使いやすさの議論が馬鹿になりません。例えばLINEアプリに代表される有名アプリのUI・UX議論はこれが根本にある気がします。

あとアプリは費用が無料ですし、不満であれば削除ができます。そのため利用するために必要な信頼獲得のハードル低いということが考えられます

また突き抜けたインターフェースはそれ自体が議論の対象になります。


こういった記事を見るとたしかに凄いです。

appleやクックパッドが提供するサービスのユーザビリティは確かに称賛されるべきものですが、appleやクックパッドは知名度によって既にある程度信頼を得ているということを忘れてはならないと思います。

自分達の名前が知られていないという状況とappleやクックパッドなどの有名サービスを同じ土俵で考えるべきではありません。彼らの事例は参考になるところももちろんありますが、99%事業者にとってまず大事なことはユーザの心理を理解することで不安や先入観を特定・解消し、信頼関係を構築するという考え方です。


☆フォーマット幻想

あるテンプレートに従えば改善はできるという幻想がこういった事態を生んでる気がします。

結局コミュニケーション改善はユーザありきなので、要素を抽出することができますが最適な改善方法はユーザによって変わるためテンプレート化が難しくなります。

以前クックパッドのユーザビリティについて書いた『最適なユーザビリティはユーザによって異なる』という考え方です。


大事な考え方はこのひとことで済んでしまうため、ネット上にあるテンプレート的な情報の流通量に負けほんとに大事なことが理解されていないという背景もあると思います。

現に私もこんな記事書いてますからね。これは思いっきり表面的な話です。


もちろん信頼獲得をできているサービスであれば、表面的な使いやすさを改善すべきでしょう。ただ繰り返しますがほとんどの事業者にとってはまず信頼を獲得することが優先すべき課題になるはずです。

私たちの会社もまだ有名な会社ではないため信頼値は低いですそのためブログを運営して情報公開をしています。

ぶっちゃけブログのデザインは良いとはいえません。むしろバナーがでかすぎてダサいといわれることが多いです。

たしかにバナーが「すごく・・・大きいです・・」という感じになってますね。ただしブログのモットーを『みっともなく反響を取りに行く』としているので、ダサいといわれても構いません。

そしてその結果ポツポツと問い合わせをいただくので、狙いは多少なりとも当たっているのかと思います。

まあ愛生会病院までいくと完全OUTですけどね!



■UI・UXやユーザビリティ改善で大事な考え方のまとめ

こうしてUI・UXひいてはユーザビリティ改善についての考え方をまとめてみると

・ビジネスモデルが単純明快なゲームやアプリはデザインや表面的な使いやすさがビジネス成否を決める上で重要

金融・不動産・人材・ITなどの商品が高単価でユーザの検討期間が長いビジネスは、ウェブサイトのコミュニケーション改善によってユーザの不安・先入観を解消し信頼値を向上させるのが重要

と整理できると思います。くれぐれもUI・UX改善だー!といって一見綺麗で使いやすいけど、サービスの強みや意図や共通点が伝わっていないためユーザが使う気にならないというサービスにしないようにしたいですね。

そしてそれを防ぐために必要なのはユーザ理解とビジネスモデル理解です。そのためにもユーザビリティテストによってユーザを観察することが第1歩でしょう。私自身ユーザビリティテストを重ねることでこういった考えに至った度合いが大きいです。

自分のサービスをユーザが使っている様子を見るというのは発見が得られるのは何よりですが、単純に面白いのでオススメです。できればアイトラッキングのようなものではなく、思っていることをつぶやきながら使ってもらうと得られる学びも大きくなるでしょう。

それではまたこの場所でお会いしましょう!


☆この記事を読んで自社のサービスのUI・UXを改善したい!と思った方にオススメの情報


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プロフィール

黒須敏行

黒須敏行

早稲田大学在籍時に株式会社アルコにアルバイトとして参加し入社。現在はコンサルタントとしてベネッセやラクスルなどが運営する大規模サイトを中心にウェブマーケティング改善のプランニング及びコンサルティング活動を行なっている。

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