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» 2013年6月14日 更新

ちびクロの細かすぎて伝わらないネットサービスの話 ユーザの声を聞けば改善できるという幻想

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ユーザのことを考えてサービスを作ろう、ユーザファースト、ユーザありき、ユーザ中心そんな言葉をよく見聞きします。

これらの言葉はビジネスで成果を出すために大事な考え方ですが、言葉の意味を取り違えることでとんでもない失敗を引き起こす可能性もある言葉でもあります。私自身も以前思いっきり勘違いをしており、同じような失敗をしている人を見てきました。

今回は「ビジネスで成果を出すため、ユーザとどう向き合っていくのが良いのか?」というところを整理しようと思います。

ユーザとのアプローチ方法によって成果は変わるということを解説することで、ビジネスの成果を出すために必要な考え方を理解してもらうことが目的です。

結論を先にまとめると
『ユーザの声ではなくユーザの行動で判断すること』
です。

これがビジネスの成果を出すために大事な考え方です。

ひとつずつ解説していきましょう。


■ユーザを観察することで得られるインパクト

IDEOというデザインのコンサルティング・ファームが海外にありますが、代表のトム・ケリーさんが書いた『イノベーションの達人!』という本で紹介されているエピソードを紹介しましょう。

元々IDEOはユーザ観察によってもたらされる発見をもとに企業のイノベーション支援を行なっている企業ですが、IDEOの特集番組を見た人達がその手法を参考にし、駅の自動販売機の売上を急上昇させることができました。

どうやってやったのか想像できるでしょうか?少しだけ考えてみて下さい。

正解は『自動販売機の上に時計を置く』ことでした。

どういうことかと思いますが、本にこのように書かれています。

大勢の乗降客を観察しているうちに、彼らは繰り返し見られれる一定のパターンに気づいた。電車が到着する前の数分間、人びとはプラットホームに立ったまま肩越しに広報の飲料スタンドを振り返り、腕時計をちらっと見やり、それからプラットホームの先に視線を送って電車が入ってこないかどうかを確認する。
漫然と見ていただけなら、そのヒントは見逃していたかもしれない。しかし、ワルシャワの新進人類学者たちは、何か飲みたいと思いながらも次の電車には乗り遅れたくない、乗客のどっちつかずの悩みを察知した。

ユーザの行動を観察することでユーザが持つ不満や不安を発見して改善することで得られるインパクトがわかりやすく理解できる話です。この話はこちらでも紹介されています。


ビジネスを成功させるための大事なポイントは『ユーザの行動観察をもとに改善を行った』ことです。

そしてよくやってしまうのはユーザの声をそのまま改善に反映させてしまうことです。


■ユーザの声を聞くことで起こる問題点

マクドナルドの原田さんのコメントがわかりやすいです。

アンケートをとると必ずヘルシーなラップサンドやサラダがほしいと要望があって商品化したけども売れたためしがない。ヘルシーなサラダでなくメガマックが売れる。メガマックがお客様がマクドナルドに求める「らしさ」だからお客は言うこととやることが違うからお客の話を聞いてはだめ。http://plaza.rakuten.co.jp/workstream/diary/201201130000/

ユーザの声を聞くということは
・そのユーザはビジネスの成功につながるユーザか
・そもそもビジネスの成功につながるユーザは声を上げるのか
という議論がこの話をもとにすることができます。

クックパッドが先日スマートフォンのアプリをリニューアルしましたが、レビューが炎上したというニュースがありました。


記事についてのコメントもこういったものがありました。

クックパッド炎上ツイート.jpg

クックパッド炎上についてのツイート2.jpg


そして記事の最後にはこのように書かれています。

レビューに投稿される声は辛らつだが、ユーザーの動きからは、便利に使ってくれている様子も見て取れるという。アプリの週間ユーザー数はリニューアル後に2割増しになり、1人当たりの訪問頻度も上昇。新アプリを不満なく使う「サイレントマジョリティー」も多いのだ。

炎上は目立っているが、当初のゴールである成果改善は成功していることがわかります。

また遠藤雅伸さんという元々ゼビウスなどの有名ゲームを作り、東京大学大学院などで教師をしているゲーム作家が書いた『遠藤雅伸のゲームデザイン講義実況中継』という本でも似たような話があります。

この本ではオンラインゲームのビジネスモデルの大事なポイントは『快適にプレイをさせないようにすることが逆説的に大事である』と書かれています。

ゲームの中で提供できるコンテンツがユーザに消費尽くされると、「もういいや」となって過疎化してしまいます。それを防ぐためには、コンテンツの消費を遅らせることによってコンテンツを維持させるゲームデザインを設計する必要があります。

このジレンマはオンラインゲームビジネスを成り立たせるポイントになる点ですが、ユーザからのネガティブキャンペーンは凄まじいものがあります。本ではこう書かれています。

「作ってるやつはごみだ」「とか「くそだ」とか「やってみたのかよ、バカ、死ねよ」というのが山のように書き込まれるし、メールもサポートにもくるんだよね。でもこういうのに対して「はい、はい、元気だね、君たちは」と軽くあしらって、「お金、払っていない人はそれでいいいんだよ、おまえら苦しめや」というふうにニコニコ笑いながらそういうやつらに苦しみを与えていけるやつこそが優秀なゲームデザイナー、というのがオンラインゲームの世界なんですね~中略~で、実は、お金を払っているやつは文句を言わないという特性があります。お金を払っているやつはお金を払って快適にゲームができているから文句をいわない。

これらの話でわかるのは、ビジネスの成功につながるユーザが何もいわないケースがあるということです。もちろんそうでないケースもありますが、ネガティブなものは、それらがどうしても目立ちやすくなり正しい判断が難しくなります。またAppleのipodのような商品はユーザ意見からは生まれません。なぜならまだ見たこともない新しい価値や刷新をユーザが想像することはできないからです。

またユーザテストの方法によっては、本音ではなく「こういったら喜ぶかな」というテスターの期待を汲み取った意見を話すケースもあります。面と向かってそのサービスに対しての駄目だしをするのが苦手だったり、謝礼をもらえるから良いことをいわないといけないと思っていると起こります。

こういったことを防ぐためには何が必要なのでしょうか?

重要な考え方は

・ユーザを行動で判断すること
・プロトタイプを作って小さく試すこと

です。説明しましょう。


■まずは小さく試そう!

Yコンビネータというアメリカのベンチャーキャピタルがありますが、彼らが提唱している考え方に
「Sell it before you built it」という言葉があります。

これはサービスを作る前にまずそのサービスを欲しい人を探そうぜという話です。

会議や打ち合わせのなかで妄想したユーザニーズをもとにサービスを立ち上げるよりも、既に買ってくれるお客さんがいればビジネスは立ち上がるよ、という話でこれもビジネスのアイデアの良し悪しはユーザの行動で物事を判断しようということです。

またIDEOでは、ユーザ行動を観察する際にプロトタイプと呼ばれる試験品をまず作りそれをユーザに見せるという方法をとっています。

この方法を行う際に大事な考え方として提案していることがふたつあり、ひとつめはプロトタイプは荒っぽくても大丈夫であること。もうひとつはなるべく多く用意することと話しています。

cyta.jpというサービスの立ち上がりはまさにこんな感じですね。


それで早速、週末に簡単なソースコードを書いてホームページをつくってみたんです。ぼくの弟がドラマーなので、試しに弟の写真を貼ってドラムのレッスンの告知をしてみたんです。そうしたら、その日の午後に体験レッスンの申し込みが入ったんですよ。最初、弟がふざけてハメようとしているんだって思ったのですが、本当にOLの方からのお申し込みでした。顧客インサイトが大事だということはユニリーバ時代に染みついていたので、ぼくも体験レッスンの現場に行って話をして、結局正式に入会してくださったんです。そういう例が、1カ月で10人ほど集まりました。ドラムでいきなり10人集まるんだったら、これはビジネスになるなと。あらゆる楽器、あらゆる言語、あらゆる趣味の領域と、何でもイケるなと。それで、一気に事業を立ち上げたんです。http://wired.jp/2013/05/15/founders-mafia-meets-bombay-sapphire-3/2/


これまでの話をまとめましょう。

・ユーザの意見はあてになるものとならないものがあることを理解、そしてあてになる意見が手に入るとは限らない
・そのためユーザの行動で判断するという考え方を持つ
・失敗を回避するためにもまずは試験品をもとに小さく試す

これらの考え方が成果を改善したり、新しいビジネスを作る上では重要だと思います。

成果が出たかどうかというのは解釈が必要ないので、凄くシンプルに正解かどうかがわかります。まあ父親や母親に何が欲しいと聞いても「何もいらない」というコメントがくるみたいな話ですね。

母の日の憂鬱

団塊の世代よ、もっと素直になろうぜ!と思いますが仕方ありません。

それではまたこの場所でお会いしましょう!

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ビービットというユーザビリティコンサルティング・ファームが運営している質量ともに日本で最も充実した、ユーザビリティテスト事例まとめです。テストをもとにした発見点などがまとまっており、改善点のヒントになる情報が多く掲載されています。

ユーザビリティテストを自分で行うための方法や、有名サイトのユーザビリティ評価をブログでまとめています。こういった情報をもとにまずは小さく試してみましょう!

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プロフィール

黒須敏行

黒須敏行

早稲田大学在籍時に株式会社アルコにアルバイトとして参加し入社。現在はコンサルタントとしてベネッセやラクスルなどが運営する大規模サイトを中心にウェブマーケティング改善のプランニング及びコンサルティング活動を行なっている。

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