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» 2013年9月 2日 更新

ちびクロの細かすぎて伝わらないネットサービスの話 マーケティングを成功させるために必要なのは商品を売らないこと ゴルフダイジェスト・オンラインビジネスモデル研究

先日ITメディアマーケティングで私のインタビューが掲載されました。


どういった経緯で私が今の会社に参加したのかと、最近面白いと思ったビジネスモデルを話しました。会員登録をしないと見れないという面倒なことはありますが、読んだ友人から『安定感がある』という感想をもらったので是非一読をオススメしたいです。

本題に入りましょう。今日はスポーツビジネスを取り上げます。

スポーツビジネスというとサッカーや野球に代表される派手目な分野に目が行きがちですが、日本のスポーツを支えているのは多くのアマチュアスポーツです。

アマチュアスポーツといえば部活ですが、みなさんも部活やってましたよね?私はラグビーやってましたが高校3年の引退試合にトンガの留学生が複数人いる強豪校(野球でいうところのPL学園みたいなとこ)に108対0で負けたのが懐かしく、日本で開催されるラグビーワールドカップが今から楽しみです!

そして今回はゴルフダイジェストオンラインというアマチュアスポーツにITを活用したビジネスで上場をした企業を紹介します。

ゴルフ市場はアマチュアスポーツビジネスのなかでも最も大きな市場ですがバブル崩壊前後の市場規模が約2兆がピークで、その後は縮小し続けています。接待ゴルフなどが減ったということもありますが、少子高齢化に伴い競技人口が減っているのが大きいのではないでしょうか。

そういった逆風の市場でビジネスを立ち上げ上場したのがゴルフダイジェストオンラインという会社です。

人口が縮小しているためスポーツの市場はゴルフだけでなく縮小傾向にありますが、様々なアマチュアスポーツにインターネットやITが掛け合わされることで新しい市場が創出されることは今後も増えると考えています。

そしてそういった市場で一旗挙げたい!という人達にとって有益な情報を届けたいと考えています。

この記事の目的はゴルフダイジェスト・オンラインのビジネスモデルと集客施策を理解することで、『アマチュアスポーツビジネス立ち上げのポイントを抑える』ことです。

それでは参りましょう!


■ゴルフダイジェスト・オンラインのビジネスモデル

ゴルフダイジェスト・オンラインのビジネスモデルは
・ゴルフ場への送客
・広告
・物販

の3本柱で成り立っています。

ゴルフダイジェスト・オンラインビジネスモデル.jpg

彼らはこのモデルをトライシクルモデルと提唱していますが、凄いなと感じるのは

・利害関係者が多くて調整が大変そうなビジネスがいくつかある
・それらを両立させて今も会社を成長させている

というところです。

ゴルフ場の送客ビジネスのきっかけは、創業者の石坂さんが学生時代にゴルフをやっていた関係で社会人時代にコンペを依頼されゴルフ場を予約するのが大変だったということが経緯としてあります。

商社に勤めている時、ゴルフコンペの仕切りが憂鬱でした。参加者の希望が叶うのか、費用はいくらかなど、いろんなゴルフ場に電話しなければ比較できなかったんです。'97年に(MBAを取得するため)米国へ留学してゴルフ場のクチコミサイトを見た時、「こんな便利なものが」と驚きました。利用者のクチコミ情報が的確で、すごく役に立ちました。http://gendai.ismedia.jp/articles/-/31615

その後アメリカのビジネススクール在学中にゴルフ場の予約ができるクチコミサイトに衝撃を受け、日本に帰って事業化をしました。

ゴルフの予約は会員権を持っている方が有利なこともあり、このゴルフ場予約ビジネスというのは会員権の価値を引き下げる側面もあります。会員権を持っていない新規ユーザにとってや、会員権を持っているゴルファーが主体ではないゴルフ場にとっては非常に良いサービスですが、下手をするとゴルフ場の経営にマイナスのインパクトをもたらす可能性もある事業です。

また広告事業についても同じような利害関係の構造があります。

ゴルフダイジェスト・オンラインはゴルフダイジェストという雑誌に出資を受けることで、サービス立ち上げの認知度とユーザからの信頼を獲得できたことが成功要因の一つであり、これはゴルフダイジェストの社長が石坂さんの従兄弟だったという関係があったからできたことだと話しています。

雑誌「ゴルフダイジェスト」は、ゴルファーであれば、誰もが目にし、その名を聞いたことのある、高いブランド力を持ったメディアだ。そのゴルフダイジェスト社の社長が石坂の従兄弟だった。石坂は、ゴルフポータルサイトの立ち上げにあたって、高いブランド力を持つゴルフダイジェストの名を冠する一方で、会社の形態は同社から独立した形で立ち上げたいと申し出た。

「ネットメディアを展開する上で、従来型のメディアとのかかわりを深くするよりは、反対に、従来型のメディアを知りすぎないほうが、チャレンジャーらしく型破りで、一方でネットに合った、ネットユーザーにとって自然なことができるだろう、そう思っていたのです。従兄弟は、その条件を承諾してくれました。サイトの立ち上げ当時に、このブランドを使わせてもらえたというのは、本当に大きなことでした」http://www.bizcompass.jp/interview/032-1.html

ネットサービスの売上を増やすためには、紙で同じ情報を取得しているユーザに提案をして会員を増やすのが最もシンプルな方法でしょう。既にゴルフダイジェスト社の読者に対しての営業は完了していますが、競合問題を回避できたのは血縁の信頼関係があったからです。

もちろんいきなりゴルフダイジェストへの広告費がゼロになるわけではありませんが、長期的に考えるとゴルフダイジェスト・オンラインの成長とゴルフダイジェストの成長はイコールになりません。

予約・送客のビジネスや広告ビジネスはリクルートなどに代表される多くの企業が取り入れているビジネスモデルです。ゴルフダイジェスト・オンラインは物販もやっていますが、物流と配送を自社でやっています。

通販事業の課題が利益率の低下です。ここは仕入れと名簿の数を増やして、卸やパートナーに対しての交渉力を高めていくことが必要と話しています。

ただ、このところ専業のネット小売りでは、価格競争激化による利益率の悪化が問題になっている。ベンチマークは家電小売りだ。家電で起きたことはゴルフ用品でも起こる。自社商品でないものを仕入れ販売するネット小売りは、最終的に価格勝負。「規模の経済」がないと耐えられない。

米国ではアマゾンを除けば、ネット小売りの上位プレーヤーはシアーズ、ベストバイなどリアルの大手量販店。彼らのネットでの売り上げは1000億円以上の規模に達している。一方、日本のネット小売市場ではネット専業が比較的上位を占めているが、売り上げ規模は米国に比べ圧倒的に小さい。仕入れ販売する以上、規模の経済に訴えないと生き残れず、統廃合、淘汰が進む。

それは最近のネット小売りに対するM&Aの動きを見ても明らか。ケンコーコム(楽天が51%出資し子会社化)のように、独立系のネット小売り専業は少なくなっていく。(ネット専業でないが)アスクル(ヤフーが42%出資し筆頭株主に)のような例もある。背景にあるのは、仕入れ販売を行うネット専業小売りの利益率の悪さだ。ネックとなるのはシステム投資、マーケティングコスト、物流費の3つが重いことだ。http://toyokeizai.net/articles/-/9376

通販事業は売上の大部分を占めますが、インタビューの通り競合他社との価格競争が原因で利益率が低くなっています。一方予約ビジネスの利益率は90%以上あり、この事業がゴルフダイジェスト・オンラインの屋台骨になっています。このように一つ一つの事業だけ見ると難易度が高そうなビジネスをそれぞれを走らせることで会社を両立させているのがゴルフダイジェスト・オンラインです。

ゴルフダイジェスト・オンラインセグメント別業績.jpg

利害関係があったり、利益率が低かったりと1長一短あるためどれか一つの事業というのも難しいと思いますし、それらを両立させているというのも凄いなと感じます。そしてなぜこういった難易度の高いビジネスモデルを構築できたのかという話は、ゴルフダイジェスト・オンラインのマーケティングにポイントがあると考えています。

ゴルフダイジェスト・オンラインがどうやって会員を獲得したのかを解説します。


■ゴルフダイジェスト・オンラインのマーケティング

結論からいうと、ユーザに価値のあるサービスを無料で提供することで会員を集めました。

広告やマーケティングの費用対効果を最大限にする方法は「商品を売る」のではなく「得になる情報や商品を無料でオファー」することです。これはダイレクト・マーケティングで昔からある手法で、神田昌典さんの「小予算で優良顧客をつかむ方法」という本や紹介されている方法です。

ゴルフというスポーツを経験された人はわかると思いますが、ゴルフはハンディキャップという変わった仕組みのあるスポーツです。これは上手い人と初心者が同じ土俵で戦えるように、初心者やそれほど上手くない人は予め下駄を履いてプレーすることができるというものです。

ハンディキャップの付け方は過去のスコアから集計して算出することもできますが、ゴルフ場の難易度によっても差がありますし、人のプレーの実力を正確に評価することは誰もができるものではありません。

そのため信頼できるハンディキャップを発行するサービスが必要になります。

実績のあるハンディキャップを取得するためには、日本ゴルフ協会(JGA)に加盟するゴルフ場に会員になり

・JGA公認コースで
・2年以内にプレーしたスコア10枚

を提出する必要があります。

会員になるためには年会費を支払う必要があったり、ゴルフ会員権を購入する手間が発生するため一般的なアマチュアゴルファーにとって少し敷居が高い点がありました。

そういった状況でゴルフダイジェスト・オンラインは、スコア管理機能と、ラウンド3回以上のスコアカードを登録することでゴルフダイジェスト・オンラインが独自に認定したハンディキャップが発行する機能を無料で提供したのです。

スコア管理ができるとハンデの比較によって同じ力量のゴルファーを探しやすくなることができますし、ゴルフダイジェスト・オンラインのサイトの利用頻度も上がります。

ゴルフダイジェストという名前の信頼感や、立ち上げ初期に行った雑誌の読者に対しての営業活動などの影響も大きかったと思いますが、こういった施策を積み重ねていくことで会員数は右肩上がりで増え続け、今は日本一のゴルフポータルになっています。

ゴルフダイジェスト・オンライン会員数.jpg

このように「得になる情報や商品を無料でオファー」という方法で本丸事業のリストを集めてビジネスを成功させている会社はゴルフダイジェスト・オンライン以外にもあります。

以前紹介したリブセンス社運営の転職会議などもそうですし、人材ビジネスなどで媒体の求人営業の際に飲食店探しの情報媒体を作り「無料で掲載しますよ」というオファーでお客さんのリストを集め人材紹介を提案するという昔ながらの営業手法なんかも該当します。


手前味噌ですがこのブログ無料診断提案もそうですね。

私のお師匠さんもいってましたが声高に自分達の商品を買ってくれ!というのも有効なときはありますが長い期間お客さんと関係を築くのが難しいです。まずは自分達のことを知ってもらったうえで信頼をしてもらったほうがビジネスは継続するというのはゴルフダイジェスト・オンラインを見ても感じます。

次回はそのゴルフダイジェスト・オンラインのウェブマーケティングを競合サービスと比較していきます。

それではまたお会いしましょう!


出典 JNEWS アマチュアゴルファー向けハンディキャップの発行ビジネス

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プロフィール

黒須敏行

黒須敏行

早稲田大学在籍時に株式会社アルコにアルバイトとして参加し入社。現在はコンサルタントとしてベネッセやラクスルなどが運営する大規模サイトを中心にウェブマーケティング改善のプランニング及びコンサルティング活動を行なっている。

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