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» 2013年10月23日 更新

ちびクロの細かすぎて伝わらないネットサービスの話 マザーズ上場承認を受けた株式会社じげんのビジネスモデルから見るスタートアップ立ち上げの失敗を回避するための考え方


※この記事は公開情報をもとに作成しています

人材や不動産など中心に数多くの分野のポータルサイトを運営する株式会社じげんという会社が2013年10月21日にマザース上場の承認を受けました。


主要運営サービスの作りを見るとリクルートやリブセンスが運営しているような大規模サイトに似ています。

じげんリブセンスキャプチャ.jpg

ぱっと見似たようなサイト構成ですがビジネスモデルを見ると多少異なっています。

今回の記事の目的はじげんとリブセンスのビジネスモデル違いを説明することでスタートアップの失敗リスクを減らすための考え方を理解することです。

結論としては
スタートアップの失敗を避けるためにはBtoBビジネスで稼ぐという視点を持つことが重要
というものになります。

よくGoogleやappleを超える企業を作る!という意気込みを持ってサービスを立ち上げるケースをよく見かけますが現実問題そこまで大きく成功することは確率的に多くありませんし、失敗して会社をたたんでしまうというケースもあります。

今まで世の中に無かったようなインパクトのある価値を作ることがスタートアップの本当の価値という意見に反論することは無いですが、BtoBビジネスという視点を持っていれば失敗することは無かったのかもしれないと思うケースも多いです。

そのため今回はじげんとリブセンスという企業のビジネスモデルを比較することで、企業向けビジネスの良い点を理解してもらいたいと考えています。こういった話に非常に疎かった大学生時代の自分に向けて書きました。

・じげんとリブセンスのビジネスモデルの違い
・じげんのビジネスモデルのメリットとデメリット
・BtoBビジネスの重要性

という流れで解説します。

それでは参りましょう!


■じげんとリブセンスのビジネスモデルの違い

じげんの主要事業のビジネスモデルを一言で説明すると
リクルートやリブセンスなどの会社が運営するポータルサイトにユーザを集め、ユーザが登録などの行動を起こした時点で対価をもらう
というものです。

ビジネスモデル.jpg

求人を探している会社はリクルートやリブセンスに出稿をし、じげんはもっとユーザを集めたいというリクルートやリブセンスに対してユーザを集めてくるという関係です。

じげんにとってリクルートやリブセンスはお客様になるわけです。ただし検索結果では競合関係にあたります。

この関係は不動産になると異なってきますが、じげんの現状のビジネスモデルはポータルサイトへの集客支援という理解で問題ありません。

そしてじげんのようなビジネスモデルのメリット・デメリットを説明しましょう。


■じげんのビジネスモデルのメリット・デメリット

メリットは
・営業コストが低い
・事業構造的にSEO対策が強くなるため集客が強い
・事業リスクが低い
ことです。

まずじげんは営業対象の企業の数がリブセンスやリクルートと大きく異なります。じげんのビジネスモデルでは、営業先が媒体運営社なのでそこまで多くありません。

一方リブセンスやリクルートは求人を探している企業全てが営業先になります。

そもそもじげんの代表の平尾さんは元々リクルート出身の方です。

ビジネスの立ち上げ方はクライアントを先に見つけてサービスを作るケースとサービスを作ってクライアントを探すという2通りの方法がありますが、じげんはおそらく前者でしょう。

2つ目の集客が強いという点ですがじげんの事業は様々なポータルサイトの情報を横断して掲載できるため、サイトの情報量が多くなり、これによってSEO対策が強くなりやすいです。

ここでいう強いという意味はキーワードに対応したページが多くなることで、検索エンジン流入の伸びしろが増えるという意味です。

ちなみによくあるSEO対策の誤解にインデックスの数が増えることで流入数が増えるというものがあります。

インデックスされたページがビジネスゴールにつながるキーワードに対応したものであるという前提であれば間違っていませんが、この考え方が使われる多くの文脈でキーワードという視点が抜けているなと感じます。

要は脈絡なくインデックスを増やしても、集客数がアップするということは無いということです。じげんは検索ボリュームの多いワードのランキングのパフォーマンスはそこまで高くないため、非常に細かいキーワードに対応した掲載情報を検索結果に引っ掛けることでSEO集客を成功させています。

例えば中古車EXというサイトでは『車種×金額』という非常に細かいキーワードに対応したページをきちんと用意しています。Goo-netも非常にSEO対策が強いサービスですが、そこまではできていません。

じげん比較.jpg

このブログの記事ではじげんの利益率が非常に高いと指摘されていますが、これはビジネスのゴールにつながるキーワードを特定したうえで対応させたページを用意するというリブセンスと似た考え方でウェブマーケティングを成功させているのが大きいと思います。


最後のリスクについては事業者と直接アカウントを開くわけではないので与信リスクが低減します。

一方のデメリットが成約単価の低さです。

例えば求人を探している会社がリクルートのような会社に採用コストととして30万円を払ったとしても、じげんがリクルートに対して30万円を超える広告単価を請求することはできません。

それをやってしまうとリクルートの取り分がなくなるためです。

求人を募集する事業者と直接アカウントを開くビジネスと比べると成約単価はどうしても低くなります。この成約単価の低さを補うため、人材だけではなく様々なサービスを立ち上げています。実際リブセンスが運営しているサービスとじげんのそれの数を比較すると大きな差があることがわかります。

運営サービス数比較.jpg

売上が集客数×支援するポータルサイトの数になるため、営業先のポータルサイトのサービスの数によって売上の要素が決まってきます。成長させるためには難易度が高くなっているSEO対策を成功させ続けること、そして集客支援対象のサービスを国内外で開拓し続けることです。

もしくは自社で直接事業者とアカウントを開いてビジネスをすることです。引越し見積もりなどの比較系のサービスなんかはそうですね。

じげんの強みは有価証券報告書でこのように書かれています。

じげん強み.jpg

こういったビジネスの事業課題はリブセンスと似通ってきます。



■BtoBビジネスは大事だぞという話

リクルート、リブセンス、じげんに共通することはBtoBビジネスであることですが、BtoBビジネスの利点はBtoCビジネスと比べてリスクが少ない点です。

ビジネスがどの程度成長するかは

・どの市場に参入するか
・その市場がどれくらいの規模の大きさか
・いつ市場に参入するか

が重要な要素になってくるという前提があり、規模でいうと電子商取引のBtoBの市場は262兆に比べBtoCは9.5兆と大きな差があります。そのためそれだけチャンスも多くなります。


また成功しているBtoCサービスを展開する事業者も、成長を下支えしているのは実はBtoBビジネスということがよくあります。

例えばzozoタウンを運営するスタートトゥデイは他のECサイトとくらべて営業利益が高い点が特徴としてありますがそれはBtoBビジネスを行っているからです。

シップスやユナイテッド・アローズのような小売店に対してECのコンサルティングサービスや物流代行を行っています。単価はtoCと比べると低いですが利益率が非常に高いという長所があります。

ohmyglassesという眼鏡をインターネットで購入できる注目スタートアップがありますが、彼らも同じようなサービスを最近始めました。


以前紹介したごちクルというインターネットでお弁当を発注できるサービスが非常に伸びています。

ごちクル会議弁当.jpg

このようなサイトの表現をみると、法人向けに訴求していることがわかります。ぱっと見C向けのサービスですがBtoB向けの課題を解決することで成長しているサービスでしょう。


■まとめ

起業というとユーザに直接価値を提供して対価を得るというビジネスを発想するというシーンをよく見ます。私は学生時代ビジネスコンテンストを運営するサークルに所属していましたが、そこで提出されるビジネスモデルはほとんどBtoCモデルでした。

たしかにBtoCビジネスはサービスの価値が伝わりやすかったり、成功したサービスは注目を浴びやすいという特徴があるためそういったことは仕方がないと思います。実際学生時代の私はBtoBという言葉は知っていたものの、BtoCビジネスの立ち上げと比べてどういった長所があるのかわかっていませんでした。

またそもそも
・スタートアップの成功の定義は収益化の成功ではなく新しい価値を多くのユーザに提供すること
・そのためBtoBサービスは堅実すぎて新しい価値を提供できないのではないか
という話もあります。だから仮に赤字であっても、資金調達をし続ければ問題無いと。

これはこれでひとつのやり方だと思いますが、様々な会社のBtoBビジネスの方法や、じげんのようなビジネスモデルを頭に入れておくことに損は無いです。

とりあえずユーザを集めて後は考える!というやり方もあるとは思いますが失敗の確率を減らすためにスタートアップ=BtoCビジネスという発想にならないことが重要です。

それではまたこの場所でお会いしましょう!

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プロフィール

黒須敏行

黒須敏行

早稲田大学在籍時に株式会社アルコにアルバイトとして参加し入社。現在はコンサルタントとしてベネッセやラクスルなどが運営する大規模サイトを中心にウェブマーケティング改善のプランニング及びコンサルティング活動を行なっている。

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