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» 2013年11月 7日 更新

ちびクロの細かすぎて伝わらないネットサービスの話 ヤマダ電機のタブレットの比較方法が酷すぎると話題になっている件から考える『競合他社よりも高い商品をインターネットで買ってもらうためのユーザビリティ改善方法』


タブレット市場が年率120~30%のペース成長しています。

タブレット市場.jpg


ビジネスがどの程度の規模に成長するかは

・どの市場に参入するか
・その市場がどれくらいの規模の大きさか
・いつ市場に参入するか

が重要な要素になるという前提があるため、成長している市場であれば堀江貴文さん曰く偏差値50の実力があってもビジネスを成長させることができます。

ヤマダ電機がタブレット市場に参入したのもそういった前提があってこそだと思います。普通であれば『マジで!?』となりますが市場が伸びていれば失敗のリスクが少なくなるためです。

そしてそのヤマダ電機のタブレットの店頭POPが話題になっています。

every.jpg


比較判断の前提としては、同じ条件で比較をするというセオリーがありますが
「Yamada Multi SNS対応しているのはEveryPadだけ!」
という訴求は実に清々しいですね。

ヤマダ電機の提案についてのリアクションはこのようなものが多いです。

comment.jpg


compare2.jpg


今回の記事の目的は
競合よりも高く売りづらい商品をインターネットで買ってもらう方法を理解する
ことです。

結論から伝えると『ユーザに判断基準を提供する』ことが重要になります。

そしてこれはまさにヤマダ電機が行っていることなんですが、提案する判断基準によってはユーザから
「それ岩と比較してんのと同じだぞ!」
という風になるため、どうすればヤマダ電機はこういったことを防げたのかも理解してもらいたいと思っています。

・判断基準を提供することで得られる成果
・なぜ判断基準を提供することが重要なのか
・ヤマダ電機のようなケースにならないために必要なこと
・まとめ

という流れで説明します。

それでは参りましょう!


■判断基準を提供することで得られる成果

ビジネスをやっているなかで、競合は自社の商品よりも質は低いが値段は安く、自社の強みをお客さんに知ってもらえれば多少高くても買ってもらえるはずだけどそうなっていない。。という悩みを持つなんてことはあると思います。

私達のお客さんの音楽教室は他社の教室よりも高い初期費用がネックになって、申込者数が伸び悩むことがありました。これを解決した方法がユーザに判断基準を提供することでした。

音楽教室のよくあるビジネスモデルとして生徒に楽器を買ってもらったらマージンが楽器メーカーから教室や講師に入る方式があります。

良い楽器と適正な金額であれば問題ありませんが、ユーザが楽器を目利きできるとは限らないためそういった状況がユーザの不利益になっている側面がありました。

この音楽教室はそういった業界の慣習を変えるために無料で楽器を生徒にプレゼントしたのです。

これが彼らのビジネス上の強みの一つになっていました。

一方その分初期費用が他の学校と比べると多少高くなり、その点がユーザの意欲を下げているという行動が見られたのです。

ここで重要なのは『なぜユーザがそういった行動をとるのか?』という心理を特定する発想です。

『そりゃ安いほうがいいに決まっているからだろ』というのはもっともなんですが、もう少しユーザの行動を掘り下げるとユーザは初期費用という判断基準でしか比較していないためそういった行動になっていることがわかります。

音楽教室を選ぶ際に発生する費用は
・初期費用
・事務手数料
・月謝
・楽器代
などがかかりますが、初期費用だけを見比べてしまうと他の要素とあわせた比較ができません。

そのため仮に1年間通い続けた際に他の教室とどの程度の費用差が生まれるのかという疑問を解決するコンテンツを用意し、判断基準を初期費用の安さではなくトータルコストの安さで選んでみましょうと提案をしました。

その結果申込者数は大きく改善されたのです。

似たような事例がbebit社でも公開されています。


UI・UXという言葉の検索数の伸びからもわかるように、昨今ウェブサイトやアプリケーションだけでなくプロダクトの使いやすさを改善させる情報は様々なものがあります。

これらも価値のある情報なので参考になるものは採り入れたほうがいいですが、大事な考え方は成果を出すための改善を

・デザイン見た目などの機能改善
・ユーザとのコミュニケーション改善

に分けて考えることです。

ウェブサイトはよく営業マンに例えられることが多いですが、前者の改善はスーツや髪型を清潔にするといった見た目の改善、後者はお客さんの欲しいものをヒアリングして最適なものを提案するというセールストークにあたる改善です。

様々な案件を見ると後者の改善のほうがビジネス上のインパクトは大きいです。

もちろんアプリやゲームといった一部のビジネスモデルはセールストークよりも、見た目や機能の改善を行うほうが優先度が高いでしょう。それは商品が無料か安価なので、ユーザがサービスに対して抱く不安が他の業界よりも少ないからです。

ただし99%の事業者にとってはユーザとのコミュニケーションひいてはユーザに対してのセールストークを改善するほうが重要であると感じています。

ただしこういった改善ができていない、そもそも理解が間違っていることが多いです。

それはなぜかと考えると

・コンバージョン改善を見た目や機能の改善と捉えている
・インターネットという情報媒体の性質が理解できていない

このあたりが大きいと考えています。そしてこのインターネットという情報媒体の性質の話をしましょう。


■インターネットという媒体の欠点

結論からいうとインターネットは紙やテレビなどの媒体とくらべて、比較されやすいという特徴があります。

インターネットのメリットは誰もが簡単に様々な情報にアクセスができることですが、一方で様々な情報と比較されるためビジネス上の明確な強みや特徴がなければ選んでもらえません。

店舗や対面販売で成長した企業がインターネットに参入した際に失敗するのは、この比較されるという発想が無かったということがよくあります。

また比較されることを念頭に置いた提案が、自社のビジネス上の都合を一方的にユーザに押し付けているだけになってしまっているためユーザの関心に全く応えられていないということもよく起こります。

ヤマダ電機のケースがまさに該当しますね。

背景としては対面の接客や営業であれば営業担当者のスキルや人間力でなんとかカバーするといった力技ができるためです。

そう考えるとひょっとするとヤマダ電機が提供する比較基準は、現場で接客を極めた販売担当者によってある程度機能してるかもしれません。

そして大事なのはどうすればヤマダ電機のような押し付けの提案ではなく、ユーザの関心事に応えることでビジネス上の成果につながるような提案をできることができるかという話です。

これを達成するために重要なことがユーザの関心事を特定し、応えることです。


■大事なことはユーザ理解

ユーザとのコミュニケーションを改善させる主要な要素は
・ユーザの関心事を特定しそれに応える
・ユーザの訴求を高める情報を用意する
・ユーザが不安になる要素を解消させる
という3点です。

これらを発見するために誰でも簡単にできる方法がユーザを見て、ユーザに聞き、ユーザの行動で判断することです。

リクルートが運営する情報誌R25の創刊時にあったエピソードに興味深い話があります。

現在のR25のコンセプトは
「人生の不思議がハラオチする」
です。
※ハラオチはなるほどと思う、納得するという意味

池上彰が政治や経済のニュースを超絶わかりやすく解説してくれるみたいな話ですね。

このコンセプトは当初は毛色が異なり、政治や金融などのニュースを20~30代の若いビジネスマンに提供するというものでした。

背景としては20~30代のビジネスマン1万人にどんな雑誌があれば読みたいと思うか?とインターネットの定量アンケートを実施したところそういった回答が多かったからです。

これらの調査結果だけを切り取ると今の20~30代のビジネスマンは普段日経新聞を読み、政治金融やビジネスの話に興味がある意識の高いやつばかりという結果です。

ただし実際にお酒を飲みながら「日経もいいけどアメトークも面白いよね」みたいな感じでユーザと面と向かって話を聞いてみると

・新聞なんて読んでないけど、なめられたくないから「日経新聞を読んでいる」と答えている
・そもそも日経新聞に書かれている内容が理解できない
・書かれている内容を理解できないのはなんとなくやばいと感じている

などの不満を持っていることがわかったのです。

そういったユーザの本音を解決するためにつくられたのがR25という媒体でした。R25によってリクルートはこれまでアカウントが開いていなかったナショナルクライアントと呼ばれる広告主を獲得することに成功しましたが、このような方法によって多くの20~30代のビジネスマンに見てもらう媒体を立ちあげられたことが成功要因の一つとして挙げられます。

この話はR25のつくりかたという本に詳しく書かれています。

ユーザの声を聞けば改善できるという幻想という記事で書きましたがユーザの声は

・そもそも言語化できないケースがある
・インタビュワーにおもねって本当のことをいわない(恥ずかしくて言えない)
・言語化できてもそれがビジネスの結果につながるものとは限らない

という問題がありますが、R25は2つ目の恥ずかしくていえなかったというケースに該当しますね。

これらを解決するためには1人ではなく複数のユーザに対して仮説を提示し、なぜそう感じているのかを何度も掘り下げていくことが必要になります。

そしてその仮説がビジネスの結果に結びついているのかは、ユーザの行動を見て判断するしかありませんがそういったプロセスを挟むことで仮説の精度を高くすることができます。

ヤマダ電機のケースでは、POPを3人ぐらいのユーザに見せて

『この情報を見てどんな印象があるか』
『それはなぜそう思うか?』
『この情報を見てヤマダ電機のタブレット製品を買いたいと思うかどうか』

と聞くだけで回避ができたはずです。


■インターネットを使って商品をお客さんに売るために大事なことのまとめ

大事なことは
・インターネットは比較されやすいという前提を持つ
・比較されることを前提にユーザに判断基準を提供する
・ユーザの声だけではなく行動を見て判断する
ことです。

ただし、例外もあります。

ビジネスモデルや業界によってはそもそも競合と差別化ができず、判断基準を提供しようにも提供するものが無いということが起こってきます。

例えば引越しや水道工事、リサイクルなどの業界なんかが該当しますね。こういった業界の細かいテクニックですがリスティングで1位に出稿し続けるのも有効な方法です。

ユーザと一言でいっても、ぼったくられたくはないので様々な情報を比較してサービスを決めたいというユーザと以前相見積もりをした際に様々な会社から怒涛の営業を受けた経験から比較検討したくないというユーザもいます。

時間が無い、めんどくさいという理由で比較しないというケースもありますね。

ウェブサイト上で展開しているセールストークに自信があるのであれば、リスティングに1位に出稿することは有効です。なるべく手っ取り早く今の問題を解決したい課題を持つユーザに提案できるためです。

というわけでユーザ理解も大事ですが、ほんとに大事なのはビジネス理解ということも忘れないで欲しいです。

それではまたこの場所でお会いしましょう!


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プロフィール

黒須敏行

黒須敏行

早稲田大学在籍時に株式会社アルコにアルバイトとして参加し入社。現在はコンサルタントとしてベネッセやラクスルなどが運営する大規模サイトを中心にウェブマーケティング改善のプランニング及びコンサルティング活動を行なっている。

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