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» 2016年4月 1日 更新

ちびクロの細かすぎて伝わらないネットサービスの話 HOME'Sを運営するネクスト社が出資した北米賃貸メディアZumperのSEOを見ると日本のこれからの不動産業界のSEOがうっすらとわかる

ホームズを運営するネクストが北米の賃貸不動産情報サイトを運営するZumperを買収しました。

zumperTOPキャプチャ

Zumperのビジネスモデルは大きく分けて2つ。一つはZumperに掲載する仲介会社がマーケティング強化のためにZumper内の上位掲載費用を支払う収益。要はリスティング広告と同じです。

もうひとつは日本では馴染みが無いのですが、物件を探すユーザの申請料/事務手数料で1回の申請あたりに数万円かかるようです。

Application Feeという「申請料/事務手数料」が必要になります。これは入居審査にかかる費用です。社会的履歴、収入など、借り主のバックグラウンドを調べて、入居してもらっても大丈夫かを審査するのです。
http://woman.mynavi.jp/article/140129-15/

このZumperであればそれが簡単に申請できるようです。

年間の売上は100万ドルということでした。

このあたりの話は以下の記事を参考にしています。

Real Estate Startup Zumper Raises Another $6.4 Million
http://techcrunch.com/2015/06/25/real-estate-startup-zumper-raises-another-6-4-million/

Zumper Aims to Take the Pain Out of Renting, If Not the High Prices
http://www.xconomy.com/san-francisco/2014/03/17/zumper-aims-to-take-the-pain-out-of-renting-if-not-the-high-prices/

ネクストは2014年にTrovitというクローリングメディアを買収しており、Torovit買収時のIR情報を見ると今後も海外事業の投資を継続していくようです。

ネクストの海外事業展開イメージ

http://www.next-group.jp/wp-content/uploads/2014/11/Trovit_20141009.pdf

またネクストは出資条件として自社のSEO技術が活かせるかを重視しているようです。

海外展開については、 いずれ国内市場が飽和状態に達し、 さらに縮小へ向かうことを見据えて、 5 年~ 10 年の長期スパンで取り組んでいる。 ネット普及率、 不動産市場の状況などをふまえ、 これまで培ってきた SEO 技術をベースに、 Google 検索エンジンが強く、 1 言語当たりの人口が多い国などをターゲットとしている。 もっとも、 現地拠点を原則置かずにローコストで強みを活かせる地域で Web サイトを展開する戦略であるため、 投資リスクを抑えつつ、 試行錯誤を繰り返しながら育成していく方針である
http://www.fisco.co.jp/uploads/next20140630.pdf

Zumper創業者のインタビューを読むと、モバイルアプリや物件情報の品質が強みと語っていましたが、SEOも特長があるだろうなと思い調べてみました。

そもそも不動産ウェブサービスのサイト構造はざっくり分解すると

・トップページ
・エリア毎に物件を一覧で見れる検索結果ページ
・物件を個別に説明する個社ページ

の3つに分けることができ、Zumperは検索結果ページの作り込み方が参考になります。

日本の不動産業界にいる方だけでなく、ユーザと事業者をウェブサービスでマッチングさせるビジネスモデルに携わる方に是非とも参考にしてもらいたいです。

・リボン型ビジネスモデルにおける昨今のSEOとは
・あまりに極端なZumperの検索結果ページのSEO
・日本の不動産ウェブサービスに足りない視点

このあたりを一つづつ説明しましょう。


リボン型ビジネスモデルにおける昨今のSEOとは

ユーザと事業者をメディアによって仲介するビジネスモデルをリボンビジネスモデルと呼びます。

リクルートリボンビジネスモデル
http://www.recruit.jp/company/about/involvement/uniqueness/detail.html

これまでこのビジネスモデルのSEOは検索結果ページを大量に用意し自作自演でリンクを集めるというものでしたが、ここ数年検索エンジンアルゴリズムの変化により潮流が変わっています。

現在の潮流は

・検索結果ページの情報量を増やす
・検索結果ページをコラム記事を使って構造化
・外部メディアで被リンクを集め、パンくずやコンテンツ内リンクで検索結果ページにリンクを集める

このあたりの施策が挙げられると思います。

これをZumperと照らしあわせて見ましょう。


Zumperの極端な検索結果ページ

Zumperがどのページで何のワードで自然検索流入を得ているのかをahrefsという外部ツールで調査すると

「apartments for rent」
「apartments for rent nyc」

などのワードでこちらのURLが表示され、多くの流入があるのがわかります。

Zumperの検索結果を見てもらうとわかりますが日本の不動産メディアの検索結果ページ比べて物件を紹介するボディ以降のコンテンツ構成が極端に充実しています。充実しているだけでなくh1+p→h2+p→h3+pと構造化されています。

zumberとホームズの検索一覧ページ比較

構造化の要素の一つがブログコラムです。

コラム記事と連携するzumper

ブログコラムには多くのナチュラルリンクが集まっており、コラムから検索結果ページへのリンクも用意されています。

4cca625ef505b3288379d631ba69f2c26bbd4ed5.png

※この結果はあくまでもFacebookのシェア数なのでSEOを考えると特にはてなブックマークの数も比較したほうが良いですが、Zumperはブックマークされていませんでした。またTwitter数はホームズプレスが取得できなかったため外しています。

これを見るとコラムを増やすことでリンクが集まり、検索結果ページが強化される構造ができているのがわかります。

こういったエリアに関する情報は

・ユーザニーズもあり
・各情報がユニークになり
・不動産物件のマッチングとも相性が良い

と良いことづくめですが問題もあります。

以前私自身がエリアの情報を作るプロジェクトに関わったことがありましたが、他人に作ってもらった情報をチェックしようと思っても自分が知らない地域だと正しいかどうかがわからないという問題に直面したことがありました。

Zumperは統計データをもとにコンテンツを作っているため上記のようなリスクを抑えることができます。

The Cheapest And Most Expensive NYC Neighborhoods For Renters This Fall
https://www.zumper.com/blog/2015/11/the-cheapest-and-most-expensive-nyc-neighborhoods-for-renters-this-fall/

統計データを使ったコンテンツは

・継続的に作れ
・ユーザ価値があり
・テンプレート化でき企画コストも低くなる

とメリットが多く参考になります。

以前リクルートが買収した海外の不動産サービスMOVOTOが同じような施策を行っており、こちらの資料にまとめています。


ZumperのSEOから学べること

北米で最大手のサービスはZillowで売上が200億以上あります。Zumperの売上は大きく見劣りしてますが、そういった後発の立ち位置だからこそ採用している手法は参考になるなと感じました。

大手と同じことをやっても追いつけないわけですから。

今後不動産だけでなくリボン型ビジネスモデルのウェブサービスのSEOの成否は

・検索結果ページの情報量強化と構造化
・品質の高いコラム情報を継続的に用意してリンクを集める
・検索結果ページにリンクを集める

このサイクルの質量とスピードで決まるでしょう。

ただしちゃぶ台をひっくり返しますが、後発の不動産サービスがZumperの手法と同じことをやっても完全に市場をまくるのは難しいと思います。

SEOは塗り絵のようなもので、SUUMOやHOME'Sなどの既存大手によって白地が全て塗られており参入する余地が無いためです。

ただしジャンルを

・ペットやシェアハウスなど何らかの専門に特化させる
・対象エリアを特化させる
・BtoBも同様に専門特化

など少し領域をずらすことで成長できる余地はあります。そんなときにZumperの施策は参考になるはずです。

それではまたこの場所でお会いしましょう!

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プロフィール

黒須敏行

黒須敏行

早稲田大学在籍時に株式会社アルコにアルバイトとして参加し入社。現在はコンサルタントとしてベネッセやラクスルなどが運営する大規模サイトを中心にウェブマーケティング改善のプランニング及びコンサルティング活動を行なっている。

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