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» 2013年2月14日 更新

データとデザイン研究室 データの"意味"を伝えるためのチーム

今回は引き続きインフォグラフィックを使った情報伝達の仕方の方向性と、先行事例について書きたいと思います。

経済産業省が主催し、株式会社ロフトワークが企画・運営を担当している「ツタグラ」というプロジェクトがあります。

ツタグラ

社会的な課題を各分野の専門家が提示し、その課題を的確に伝えるインフォグラフィックを募るサイトです。
インフォグラフィックに使用するデータは、各省庁が定期的に行っている調査や各種統計資料を用います。

このプロジェクトは、社会的課題に精通する専門家が「こういうメッセージを社会に発信したい、だからインフォグラフィックで的確な伝え方をしてほしい、」というお題が出されます。それにアナリストやデザイナーで構成されるチームが応募するという仕組みです。

サイトには、「情報や知識のゆくえは、伝え方次第」と書かれています。データを読み解き見せ方をインフォグラフィックの手法を用いて工夫することで、社会的課題を伝え、アクションを促す空気を作り出そうとしています。

私は、これは国だけではなく、企業や非営利団体などが内外の関係者に自分たちのメッセージを伝えていく時にも使える手法なのではないかと考えています。
では、企業や団体の中でこのやり方を実行する時に何が必要となるのでしょうか。


(1)データからメッセージを伝えるチーム構成

ツタグラでは、「データとビジョンを持つ専門家と、伝える力を持つデザイナーがコラボレーションをする」ことを推奨しており、異なる専門性を持つもの同士のプロフェッショナルチームでの応募が可能です。また見せ方のアイデアだけを投稿し、それに他のデザイナーが乗っかることも可能です。

昨今よく開催されるオープンデータアイデアソン・ハッカソンでも、アナリストとエンジニア両方の参加者を募集するケースが多くなっています。

この流れをヒントに、企業や団体にいそうな職種名に置き換えてみるとチーム構成はこうなると考えています。


1. エバンジェリスト

データを元に、社内や自社の顧客・消費者にキーメッセージを伝え、その後のアクションまでデザインする人。
外資系企業でよく聞く自社サービスの伝道師的職種ですが、データ活用に関してもデータを見ることが好きで、そこから得られる面白い情報を広めていきたいという熱意が必要だと思うので、エバンジェリストとしました。

2. アナリスト

エバンジェリストのビジョンを理解してデータで裏づけする人。そのデータを見つけて統計的に解析することも含む。
アナリストはエバンジェリストの右腕とも言える存在だと思います。ありとあらゆるデータを探し特徴を発見する役目。デザイナーが可視化しやすい形にデータを加工することもあると思います。

3. エンジニア

エバンジェリストとアナリストのイメージするアウトプットを出力するプログラムを書く人。(RやJavascript)
2種類のタイプが存在すると思います。
まずは統計解析の知識を持ちアナリストと一緒に大量データの解析を行うための環境整備を行うエンジニア。
そしてデータの可視化において動的なWebサイトを作成するエンジニアです。後者はデザイナーと比較的近い立場だと思います。

4. デザイナー
  
インパクトがあり伝わりやすい情報の見せ方を考える人。
1~3の全てと密接に関わることになりそうなのがデザイナーだと思います。アイコンのデザインやレイアウトだけではなく、自社のブランドイメージとの整合性も含めた色のトーンなども気にしながら、作成する立場だと思います。


1~4はそれぞれ独立したスキルに見えますが、よりデータを効果的に活用するには、軸足をいずれかに置きながらもマルチスキルで考えられる人材が多くいた方が望ましいと思います。



(2)有効なインフォグラフィックの作り方(実践報告)

実は先日、ツタグラのワークショップに参加して、いくつか見せ方のヒントを得てきました。
その後、自分自身でも試験的にインフォグラフィックを作成してみたので、その一連の流れに沿った作業フローをまとめてみます。(つたないインフォグラフィックですが)


Volunteer.jpg


1. キーメッセージを決める

<どんなアクションを促したいかのビジョン>
今回私が取り上げたかったのは、「社会貢献意識と実際の行動のギャップ」というテーマです。震災などをきっかけにボランティア活動に興味を持つ人や参加する人数は増加しているのですが、参加率という点では20%台と言われています。実データを示すことで、企業や非営利団体の社会貢献支援活動の促進を促したいという目的を立てました。

2. データを探す

今回は、意識と行動のギャップがテーマなので、「内閣府 社会意識に関する世論調査」と「総務省 社会生活基本調査」を用いました。
検索エンジンのほかに、国が実施した調査結果のポータルサイトであるe-Statから検索しました。

e-Stat

※今回のようにデータソースが違う調査データを併用する時には、単純に比較できない場合もあるので注意が必要です。(対象者の条件が違うため。今回は基準が近いデータをそれぞれ選んでいます)


3. キーメッセージの特性がわかるデータ加工の実施

今回は要素として、
・震災前後の変化を見る
・意識と行動のギャップを可視化する
というポイントがありましたので、下記のような基準でデータを選別、加工(再集計・計算による推計値の算出)を実施しました。


・「社会生活基本調査」が5年後との調査であるため、同様の比較を行うために「社会意識に関する世論調査」も2006年度と2011年度のデータを選択

・「社会の役に立ちたいと思う人の割合」を人数に換算
⇒2006年の62.6%という数字を、「世界がもし100人の村だったら」をヒントに男女別に100人換算の際の人数を算出

・「社会の役に立ちたいと思う人の割合」と「実際にボランティア活動に参加した人の割合」を比較し、実際の行動率を推測。
⇒役に立ちたい人数を、実際のボランティア活動参加者で割ると4割前後
⇒つまり6割はきっかけがあればボランティア活動をする予備軍と言える


4. キーメッセージを際立たせる情報精査

<キーカラー、量的な差を見せる時の比率、カテゴリーの見直し>
本職がデザイナーではないので理論的なことは良く分かりませんが、帯の色、座布団の色などをトピックごとに統一したり、男性と女性のアイコンの色を変えてパッと見わかりやすくするなどの工夫をしました。
また意識と行動のギャップがわかるように、男性と女性のアイコンの数で、「差がある」ということを表現しました。

5. 図形やモチーフを用いたでの表現

<グラフだけではなく、地図や図形・アイコンの形、大きさでも表現する>
今回は男女別の人数を算出したので、人間のピクトグラムを使い、色で性別、大きさや数で人数の差を表現してみました。



(1)で言うところの役職では、私はエバンジェリストかアナリストに相当するため、実際作ってみると慣れないデザイン作業で非常に時間がかかりました。
ただ見せ方を考えながらデータを読み解くという作業を並行して行ったため、「100人で換算してみる」などの発想が自然と出てきたのではないかと思います。
この一連の作業をデザイナーやエンジニアの方と一緒にチームを組み、ディスカッションしながら進められれば、データの真の意味や伝えるための工夫が一気に解決できると実感した次第です。



<補足>
今回作成したインフォグラフィックは、ブラウザでインフォグラフィックが作れるPictoChartという無料ツールを使いました。(有料版もあり)

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プロフィール

後藤真理絵

後藤真理絵

大学時代はエスノグラフィからのモノ作り研究。卒業後は某広告代理店系の制作会社を経て、通信キャリアでマーケティングリサーチ業務および、データを活用した新規事業企画に携わる。現在は、ヤフー株式会社にてアドテク周辺のデータコンサルとして、DSPやDMPのデータ活用支援に従事。

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