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» 2013年7月25日 更新

データとデザイン研究室 企業と顧客のツナガリ(2)NPSと消費者の行動変化

前回のコラムで紹介したNPS(Net Promoter Score)について、顧客ロイヤリティを測るスコアとして注目されている背景に、

・消費者によるソーシャルメディアやクチコミサイトにおける情報発信や情報収集が浸透してきたこと
・企業の商品/サービス、および対応に関する評判の伝播(時にアンコントローラブルな状態に陥る)が重要視されるようになったこと

が関係しているのではないか、ということに触れました。

今回は、少しそれに関係する調査データをいくつかご紹介していきます。


(1)消費者のカスタマーサポートに対する意識

Chief Marketing Officer (CMO)のグローバルネットワークである、CMO Councilが行った2011年の消費者調査によれば、
「商品やサービスについて助けが必要な時に、どのような行動をとるか」という質問に対し、77%が「企業のWebサイトを訪問してそこで検索をする」と回答し最多となりました。
次いで63%が「同じ問題を持つ人をネット上で探す」、46%が「その商品に関するエキスパートをネット上で探す」と回答し、「企業のウェブサイトから問い合わせをする」「企業に電話をかける」よりも上回っています。企業の公式情報を見に行くことがメインではあるものの、それと同時に他の消費者はどうなのか横のつながりから情報を収集しているのです。私自身、企業の公式情報とクチコミサイトなど様々な情報を見た上で判断することが多いと実感しています。

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企業に問い合わせをしてからフィードバックされるまでの望ましい所要時間について聞いた質問では、47%が「24時間以内」、22%が「すぐ」、19%が「1時間以内」、12%が「数日以内」と回答しています。「すぐ」と「1時間以内」を足すと41%がリアルタイムに近い対応を求めているという意識が見て取れます。

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また企業から優れたカスタマーサポートを受けることについて、46%が「期待している」と回答し、33%が「ロイヤル顧客でありつづける」、14%が「友達に(その体験を)語る」としています。企業と顧客の接点におけるサポートの度合いは、その企業とのコミュニケーションについて他人に伝えたり、ロイヤル顧客になったりとその後の行動に差を与えるものになっています。


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(2)ソーシャルメディアの登場による消費者行動の変化と影響

ソーシャルメディアを使うようになったことによる自分の行動変化に関しての質問では、80%が「友達の勧めで新しいもの(商品やサービス)を試すようになった」、74%が「友達に新しい商品を試すよう促すようになった」と回答しています。割合としては多くないものの、「ブランドや商品に関する不愉快な体験をシェアするようになった」「不愉快な体験について言及されている商品を買わないようになった」などを挙げる消費者もいます。

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先ほどまでの企業からのカスタマーサポートのあり方については、企業側でコンタクトセンターの対応品質改善や標準化を進めるなど企業側でコントロール可能な領域がありますが、ソーシャルメディアにおける消費者同士のコミュニケーションはコントロールが難しい状況にあります。
それだけではなく、企業の商品やサービスに関する僅かなネガティブな投稿は、多くのポジティブなコメントを打ち消してしまう威力を持っています。

CS調査関連でよく取り上げられる「ジョン・グッドマンの法則」という法則があり、その中で「不満を述べるネガティブなクチコミは、ポジティブなクチコミの2倍の影響力を持つ」とされています。ポジティブなコメントは4~5人に伝わる一方、ネガティブなコメントは9~10人に伝わるため、せっかくのポジティブなコメントが打ち消されてしまうのです。


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グッドマンの法則に関しては、企業に対し不満を感じた顧客の91%が何も言わずに他社に乗り換えてしまうという「Silent Customer is silent gone(クレームを言わないお客さまは何も言わずに去っていく)」でご存知の方も多いかもしれません。

ソーシャルメディアというツールを手にした消費者は、企業に不満を感じた時に直接クレームを言うのではなく、周囲の友達やその周辺の人々に向けて不満を口にしてそのまま他社に行ってしまう可能性が出ています。これは企業には何もいわないSilentな顧客が離れていき・新規の顧客も取り逃すリスクとなります。

NPSに話を戻します。
NPSは「(商品/サービス/ブランド)を、親しい人や同僚に薦める可能性はどのくらいあるか」という質問を行って、回答結果から顧客を「推奨者(Promoter)」「中立者(Passive)」「批判者(Detractor)」の3タイプに分類し、スコア化するものでした。
また「推奨者」の理由から良いところを伸ばし、「批判者」の理由から改善点を見つけるサイクルを回す時に、スコアの推移を活動振り返りのための定指標の一つとして活用しています。

グッドマンの法則のように、商品・サービスの推奨度が高い人の声よりも低い人の声がインターネット上で影響力が強いことを考えると、NPSで言うところの「批判者」の不満の要因を探り、適切な改善策をとることで影響力を下げることが重要になってきます。
そのため、NPS自体は単にスコアを算出して終わるのではなく、最終的に企業にとってリスクとなる不満を持つ顧客の声を減らし、推奨する声を広めていって新しい顧客を呼び込むサイクルを作る一連の「仕組み化」として語られることが多くなってきているのです。

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プロフィール

後藤真理絵

後藤真理絵

大学時代はエスノグラフィからのモノ作り研究。卒業後は某広告代理店系の制作会社を経て、通信キャリアでマーケティングリサーチ業務および、データを活用した新規事業企画に携わる。現在は、ヤフー株式会社にてアドテク周辺のデータコンサルとして、DSPやDMPのデータ活用支援に従事。

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