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» 2014年3月 3日 更新

ハイ・コミュニケーション私論 「Kawaii」の独自性とポジショニング戦略

この数年来、私は一部(NHK、テレビ東京など)のニュース(ワールドWave)、ルポルタージュ(クローズアップ現代)、ドキュメンタリー(NHKスペシャル)や経済情報番組(ガイアの夜明け、カンブリア宮殿、WBSなど)を除けば、地上波ほとんど見たことがない。
もう何年ものあいだ民放にチャンネルを合わせたことがなく、何が放送されているかそして誰が人気なのかも知らない。
それで仕事でも私生活でも困ったことはない。要するに知らなくても差し支えないことなのだ。

私にとって、TVはスカパー!のためだけにあると言っても過言ではない。地上波を見ない理由は、見ても得ることや益することがないということに尽きる。したがって、最近のテレビはくだらにとかつまらないと文句を言いながら、それでも見続けている人が理解できないでいる。

スカパー!では、ディスカバリーチャンネル、ナショナルジオグラフィックチャンネルなどでは、人類(地球)の歴史、この10年ほどで次々に新しい事実が発見されている宇宙に関する番組が特に好きだ。
さらに、面白い海外ドラマ専門チャンネルはもとより、ニュース専門、映画専門、スポーツ専門、そして日本映画専門など、お好みで多彩なチャンネル(コンテンツ)を楽しめる。
だから、海外ドラマにはまってしまう女性がいるという話しはよく聞くが、それも納得できることである。


さて、安倍晋三政権の成長戦略のひとつとして経済産業省が主導するクールジャパンがある。これにともない、昨年(13年)、官民ファンドによる株式会社海外需要開拓支援機構(通称:クールジャパン機構)が設立され、大手広告代理店の電通では「チーム・クール・ジャパン」、ライバルの博報堂は「クール・ジャパン推進室」と、両者とも早速専従組織を立ち上げている。

クールジャパンという言葉が知られるようになったのは、06年からNHK-BSで放送されているテレビ番組「COOL JAPAN〜発掘!かっこいいニッポン〜」ではないだろうか。
その後、ネット(ソーシャルメディア)でもクールジャパンという言葉が広まり、また前(民主党)政権がそのきっかけをつくったことで、一般的にも知られるようになったと思う。
当初は、アニメ・マンガだけのようなイメージであったが、和食が世界文化遺産に登録されたことも追い風となり、広く日本文化を海外に普及させようということのようだ。

■Kawaiiという独自のポジショニング

つい最近、「カワイイ大使」というのがいることを初めて知った。なんでも、日本ロリータ協会の会長(この存在も初耳!)で「カワイイ大使」の青木美沙子さんについてのニュースを目にした

原宿で生まれた「ロリータファッション」。ロココ調の服を日本風にアレンジしたジャパンオリジナルのスタイルとのこと。「カワイイ」という言葉は、いまではWikipediaにもKawaiiとして項目があり、世界的な共通語になりつつある。

これこそ、海外では産み出しえない。まさに日本独自の感性によるものだろう

これは、単にアニメやマンガばかりの影響だけではないと思う。
日本では、子どもができると、とにかく子ども中心に夫婦生活もまわっていく。
従って、何事においても子ども優先されことから産み出されるような文化は、ある意味でとても日本的であり、それがカワイイという感性を醸成したように思える

一方では、大学のお受験はもとより、就活の内定辞退も親が代わって会社に連絡を行い、新入社員式にまで七五三のように親が付き添って記念写真まで撮るというほどに、子離れ=親離れできない親子関係という副産物まで現象化する社会でもある。
しかし、これは単純に善し悪しの問題ではなく、そうした日本の現実であり文化や価値観の問題である。

そうしたカワイイ文化(この場合「ロリータファッション」)は、大人社会の欧米では不可能な、日本独自の文化が創造したものであり、ポジショニ ング戦略の第一人者ジャック・トラウトのいうまさに"Differentiate"(識別する)ということだろうと感じる。

■海外ドラマに見る大人中心の社会

ところで、そもそも欧米は大人中心社会だ。子どもをベビーシッターに預けてでも、夫婦で演劇や映画、あるいは会食に出かけたり、夫婦二人だけで楽しむ大人の時間を優先するような文化だからだ

それは海外ドラマを見ていても、よくわかる。どのドラマも成熟した大人が主人公である。女性が主役の場合でも、いわゆるアラフォーやアラフィフが当たり前で、20代で主役というのはめったにない。
また、ドラマの舞台が警察(FBI)であれ、病院、弁護士事務所など各々であっても、描くのは人間ということでは一貫している。「スタートレック」などを見ると、例え24世紀の宇宙でも、人間は同じようなことで結局は悩むのだということがドラマ化されている。

例えば、『HOMELAND』『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』のようなドラマは、日本では作り得ないだろう。

もちろん、ティーンエージャー向けに制作されたドラマもあり、その場合の役者は別であるが、そうした若者の人間関係などの懊悩が描かれる点では共通している。しかも人気シリーズともなれば、5年でも10年でも番組は継続され、その中で登場人物の意外な過去、複雑な人間関係、その成長の過程をさらに深く人物を作っていくようになっている。

私には、以前から気になっていたことがあり、あるとき外国人に尋ねたことがある。
それは海外ドラマや映画を見ていると、女性は多くの場合がガーターベルト姿からである。日本ではありえないことだ。すると、その女性は答えた。女性は、全てではないが小さな頃から一刻も早くそれが似合う大人の女性になりたいと思っているということだった。
すなわち、それは子どもではなく成熟した大人の女性の証しなのだと。

確かに言われてみれば、そのとおりだと感じる話しではある。そもそもガーターベルトは、花嫁がウエディングドレスの下に身につけるフォーマルウエアである。子どもが身につけ似合う装いではない。同様に、パーティーなどではイブニングドレス似合う女性は、これもまた成熟した大人の着る服なのである。

今後、「クールジャパン」を世界にアピールしていく際、官民ということで従前のプッシュ戦略に陥ることなく発想を転換し、今のコミュニケーション環境に合わせたインバウンドマーケティングをいかに円滑に行えるかも、重要なファクターやキーになるだろうことはもちろん述べるまでもないだろう。


(関連リンク)
(1)NYに「カワイイ大使」上陸-ロリータファッションの魅力語る
http://newyork.keizai.biz/headline/1122/

(2)日本のオタク女子たちがアニメ文化外交で切り拓く、世界をつなぐ接点!
http://asianbeat.com/ja/jjj/jjj091.html

(3)世界で密かにブーム。OBENTO (お弁当)はいかに広まったか?
http://asianbeat.com/ja/jjj/jjj092.html

(4)クールジャパンとして、世界に紹介したいモノ
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1402/12/news113.html

(4)クールジャパン 海外展開、低金利融資で支援 政府、中小向け創設へ
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140103/plc14010312010006-n1.htm

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プロフィール

梅下武彦

梅下武彦

コミュニケーションアーキテクト兼ブロガー。20世紀は広告代理店の“傭兵マーケッター”、21世紀はベンチャー企業のマーケティング責任者を歴任。現在、マーケティングコミュニケーション領域の戦略立案や設計、アドバイザー・メンターとして活動している。また、様々なソーシャルメディアで活動するSocialmediactivisとして、現在をDigital Ambient Society、Communication Metamorphosesと定義し、多様に激変する社会現象・事象、時代情況を独自のマーケティング視点で語るコラムを執筆中。 ソーシャルテクノロジー社会におけるMarketing DisruptionとCommunication Ecosystemの関係を探求している。

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