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» 2014年3月10日 更新

ハイ・コミュニケーション私論 新しい教養の場としての読書会〜活字離れと読書会人気に思う

最近感じていることなのだが、つながりやコミュニケーションの場として、やはり読書会が人気だ。

私の友人たちには、読書好きが多い。そうした人の中には、自ら読書会を開催している人もいる。そのほかにも、私は様々な読書会の案内を頂戴する。
特にここ2〜3年ほどは増えているように感じている。

活字離れという言葉が聞かれて久しい昨今、特に若者が読書をしなくなったということが言われる。
つい先日、全国大学生活協同組合連合会が実施した「学生生活実態調査の概要報告」でも、大学生の4割が読書時間ゼロで全く本を読まないということが公表され、ネット上でもだいぶ話題となっていた。

しかし、一方では、ここのところ読書会が増加している。
これは、学生も参加しているがむしろ社会人が多い。もちろん、企業においてはこうした読書会はこれまでにもあったが、それは業務に活かすための勉強会という趣が強かった。例えば、ドラッカーを読んでそのマネジメント手法を日常の業務に役立てようというようなものである。

今日の読書会人気は、そうしたものとは異なっている。
そうした背景には、ソーシャルメディアが大きく貢献しているだろう。ここ数年、いわゆるソーシャルリーディングがいくつも登場しているし、facebookなどのSNSを活用することで人が集まりやすく、また読んだ本の情報をシェアすることが容易であることが大きな理由である。

以前、ライフネット生命の出口さんから、何を読んだらいいのかわからない人が意外にも多いという話を聞いた。
読書をしない原因(理由)にそういうものがあるとは、私には思いもよらなかった。その原因を聞いたとき、就活の学生が何をしたいかわからいというのと同じように感じた。
出口さんは、その処方箋として、新聞の書評欄で紹介されている本をまず読むように薦めている。


■読書会のタイプ

現在、全国各地で開催されている読書会は、大きく分けると2つのタイプがあるようだ。

1つめは、課題図書が決められ、それを全員で読んで参加者同士で意見を交換し合うタイプ。これは、読書会に参加しようと思えば否応なしに読むことになるし、同じ本を読んでいることで意見交換がしやすい。こうした読書会は、ビジネスに役立つことを目的にした会もあれば、特定の趣味的な読書会もある。

2つめは、各人が読んだ本を持ち寄り、その本の紹介を兼ねて感想をシェアするタイプである。これは、各々の参加者が自分の興味や関心、あるいは人に読むことを薦めたい本を持ち寄ることで多様性が出てくる。
話題のビジネス本、好きな作家の本、エッセイやコラム、趣味の本など様々だ。こうした読書会では「ビブリオバトル」を取り入れているところもある
「ビブリオバトル」とは、各自5分程度の持ち時間でその本の魅力や読みどころを紹介する、一種の書評プレゼン大会である。これは人前でのプレゼン練習にもなるし、ゲーム感覚的にも楽しめるので人気が高いようだ。

こうした会は、週末に行われる会、平日の朝活として出勤前に開催されているものがある。


■教養の場としての読書会

私が参加している唯一の読書会、それが「10 over 9 reading club」で、先月(2月)から開催されている。
この読書会は、友人の河尻亨一さんとその仲間が中心となって開催しているユニークな会である。

なにがユニークなのかというと、2回で1セットの会だということ。
1回目は、ゲストを招いてのレクチャーとそのゲストが推奨する(読んで欲しい)本の紹介。2回目はそのゲストが推奨した本の中から3冊を選定し、そのいずれかを読んでから次の会に臨んでワークショップ(セッション)読書会を行う。

そこで読んだ本ごとに3つのグループに分かれ、各グループでの意見や感想などをシェアする。次いで「ビブリオバトル」を行い、参加者全員による投票でどれが一番読みたいと思ったかを競うのである。最後に、全員でその3冊についてのコミュニケーションタイムとなる。

初回レクチャーの会も、時間的な都合が許せばそのゲストを交えて楽しい懇親会となる。この2回とも、懇親会では皆が様々な意見や感想を述べるので白熱して面白い。

先日(2/8)のゲストは、東洋経済オンライン編集長の佐々木紀彦さんだった。
レクチャー内容は「本物の教養を育むための読書とは?」だった。佐々木さんはスタンフォード大学に留学していた体験談を交え、教養をはぐくむ重要性を語った。しかも、なんと10ジャンル60冊もの本を紹介してくれたのだ。

多くの人は、レクチャーする人の仕事に関係ある本が紹介されるのだろうと思っているかもしれないが、それが違うのだ。
例えば、3/8は俊英の若手デザイナーとして知られる太刀川英輔さん(NOSIGNER)のレクチャー(「NOSIGNER」をつくった本)だったが、デザインとは関係のない本がほとんどである。むしろ、デザイナーやデザインに関心がない人が読むと良い書ばかりである。佐々木さんの時も編集やビジネス関係が多いだろうと思うと大いなる勘違いだ。

ちなみに、私が選んだ図書は、佐々木さんレクチャーのときはカント『永遠平和のために』、太刀川さんレクチャーではジャック・アタリ『21世紀の歴史』。しかも、後者の書籍は300ページを超える分厚い大著。我ながら、両方ともしんどい図書を選んでしまったと思うのであるが、人文学・社会科学系が好きな私なので、どうしてもこうした本になってしまう。
しかし、思考力を鍛えるのには格好の書だろう。そういう意味では、教養を深めるための読書会という趣であり、それがまた実に私好みの会なのだ。

河尻さんは、こうした読書会人気についての記事("若者の本離れ"はウソ!? 「読書会」がジワッと人気なワケ)の中で、「この中で筆者は(3)に特に着目している。ソーシャルメディアの普及によって"横のつながり"は築きやすくなったが、多くの識者が指摘するようにそれは狭く閉じやすい。接触する情報が限定される傾向があり、今後は"縦軸とのつながり"、例えば歴史などの教養を望む動きも広がるだろうと予測される。そのためのツール、トリガーとして本は最適といえるだろう。」と語っている。

故スティーブ・ジョブズの、その革新的なアイデアの源泉について「リベラルアーツ(教養)とテクノロジー(技術)の交差点に立つ」という言葉は有名だし、池上彰も教養の意義と価値をさまざまなところで指摘している。

私も、今日の読書会人気は、そういう意味では社会人が教養を豊かにする場を求めている、あるいは教養を養うこととして機能しているのではないかと感じている。


<関連リンク>
(1)第49回 学生生活実態調査の概要報告
http://www.univcoop.or.jp/press/life/report.html

(2)"若者の本離れ"はウソ!? 「読書会」がジワッと人気なワケ
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20140224/1055417/

(3)新顔が続々 SNS時代に読書会がはやる理由
http://www.nikkei.com/article/DGXBZO60911020Q3A011C1WZ8000/

(4)朝活としても人気の「読書会」に参加する3つの目的
http://u-note.me/note/47487652

(5)東京で行われている読書会まとめ
http://matome.naver.jp/odai/2135489489421994201


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梅下武彦

梅下武彦

コミュニケーションアーキテクト兼ブロガー。20世紀は広告代理店の“傭兵マーケッター”、21世紀はベンチャー企業のマーケティング責任者を歴任。現在、マーケティングコミュニケーション領域の戦略立案や設計、アドバイザー・メンターとして活動している。また、様々なソーシャルメディアで活動するSocialmediactivisとして、現在をDigital Ambient Society、Communication Metamorphosesと定義し、そうした多様な社会現象・事象、時代情況を独自のマーケティング視点で語るコラムを執筆中。 ソーシャルテクノロジー社会、Marketing DisruptionとCommunication Ecosystemの関係を探求している。

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