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» 2014年4月17日 更新

ハイ・コミュニケーション私論 セレンディピティ、キャリアのピボット、またはレイヤーとしての人付き合いについて考えてみた

え!? そのようなものがあるのかと初めて知った。最近、たまたま何かを検索していたとき、人脈マーケティング、マーケティング的人脈なる見出しが目を引いた。
恋愛や合コンについて、マーケティング視点による記事には何度か接したことがあるし、マーケティングは戦略発想なので人脈にも応用は可能だろうなと妙に感心した。

それらの記事を読んだ印象は、視点や語り口が旧来の「実施する側の論理」に立脚しているようで、レガシーマーケティング発想のような印象だった。それに、こうしたことは、なにもわざわざマーケティング戦略に引き寄せて語らずとも良いのではないか、とも私個人は思ったのだが。

今日、書店に出向けば、人脈術、人脈力、人脈開発につくり方、はては人脈塾、人脈の教科書、人脈の科学と、人脈とタイトルがついた書籍をたくさん並んでいる。そうした人脈作り(拡大)のノウハウやテクニックを教えるセミナーもあって、それなりに盛況だと聞いたことがある。現在では、当然ながらソーシャルメディアを使った人脈構築(獲得)術が人気だ。
むしろ、ソーシャルメディアが普及したことで、逆にビジネスなどとは関係のない普通の人たちまでが、「人脈、人脈、人脈」と奔走しているような気すらする昨今。

最近では、雑談の仕方を教える書籍やセミナー(鍛える)もあるご時世で、今日のような変化の激しい時代、ビジネスマンが抱えている課題や悩みは尽きることがない。従って、そうした人たちを対象にしたビジネス書やセミナーが繁盛するのだろう。まさに、「ビジネス書は世につれ、世はビジネス書につれ」といったところだ。

これほど、多様にコミュニケーションツールが発達しているのとは反対に、人脈の作り方や雑談など、コミュニケーションに必要なノウハウ・テクニックをそれほど多くの人々が求めているのは、むしろなんとも皮肉な社会だ。

なお、ビジネス書が繁盛している社会状況については、2年ほど前(12年)に「【書評】ビジネス書という「無間地獄」に思う」というブログ(下記参照)を書いたので、関心のある方はご笑覧願えればありがたい。


■人脈ってポジティブ or ネガティブ?

一般的に「人脈(顔)が広い」というのは、ポジティブな褒め言葉だろうと思う。しかし、一方では人脈開拓=営業開拓というように、売り込みや相手の人を値踏みしているようなネガティブなイメージもある。つながり、ネットワークと言い換えても同じだが、人脈獲得ためのセグメンテーション、ターゲティングなんて書かれると、思わず仕事のために計算ずくで人と縁を得るこことが目的な感じがどうしても拭えない。

いまとなっては状況は違うだろうが、象徴的なのがfacebookに懸命な人たちが書籍を読んだりセミナーに参加して、ソーシャルメディアコンサルタントやセミナー講師などに「とにかくリクエストを申請して友達を増やしましょう」と、その"ありがたいご託宣(教え)"を素直にそのまま実践した人たちがなんと多かったことか

そもそも、人脈さえあれば仕事が上手くいく、逆に人脈がないと仕事ができないといことでもないだろうに。もちろん、人によっては縁ある人が多い(広い)ということが職業柄好都合な人たちも当然いることは理解できる。

ところで、人は、かつてはある一時期には親しくお付き合いをした人でも、今ではまったく会う機会がなく疎遠になっているというのは、思いのほか多いと感じることがあるだろう。

故事にいう「去る者は日々に疎し」のことで、英語でも似たような表現「Out of sight, out of mind.」がある。
これについては、洋の東西を問わず普遍的で世界の共通認識だ。

私は企業組織で働いた経験がほとんどなく、20世紀末から21世紀へ向かって、テクノロジーにより大きく社会が変貌する最前線で仕事してきたので、他の人たちとは少し違った特殊な事情にもよるのかもしれない。
それに、私が生業としているいまの仕事がそれ以前(例えば20年前)とはまったく異なり、今日ではお付き合いする人間関係が劇的に様変わりしているということもあるのだろう。

そういう意味では、四半世紀を超えてもなお付き合いをいただける友人は片手で数えるほどで、非常に貴重でもありまことにありがたくもある。

もちろん、サラリーマンで企業、それも大きな組織(企業)で働いている人であれば、まずは会社の同僚や上司、そして様々な関連企業や取引先などの人たちとは長くお付き合いをするだろう。仕事上とはいえ、長くそして深く人との付き合いというものも、またその人の生き方でありその人の人生である。


■人生のセレンディピティとピボットについて

人生には、人、出来事(環境の変化)、本などとの"偶然の出会い(セレンディピティ)"で、それまで自分が続けてきた仕事とは別に、望む仕事や本当にやりたいことに偶然気づかされることがある。それがどのように、いくつ(年齢)で訪れ、気づいたり発見できるかは十人十色でまさに人それぞれだ。

この人との巡り合わせがあったからこそ現在の自分がある、この出来事があったとで自分の人生が変った(転機)、この本との出会いあったことで自分の生き方の指針となったという経験は誰でもある。特に人との縁や出会いは、その人の人生を大きく左右する

セレンディピティという言葉は、「思いがけず、偶発的に起こった幸運な出来事や遭遇した経験」というように、一般的には偶然の幸運、思わぬ遭遇のような受け取られ方をしている。この意味からは、「果報は寝て待て」あるいは「待てば海路の日和あり」のような印象を受けるかもしれない。

しかし、wikipediaには、以下のように書いてある。

「セレンディピティ(英:serendipity)は、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値あるものを見つける能力・才能を指す言葉である。何かを発見したという「現象」ではなく、何かを発見する「能力」を指す。平たく言えば、ふとした偶然をきっかけにひらめきを得、幸運をつかみ取る能力のことである。」

私は、このwikipedia解釈の方が正しい気がする。能動的あるいは主体(自主)的に行動し続けていることで、幸運や偶然を自分に引き寄せるのではないかと感じている。

ある日、突然に訪れる人生の様々な転機。それは人生(キャリア)における、その人にとってのピボットなのかもしれない。
ピボットという言葉自体、ビジネスの世界、特にベンチャーやスタートアップでよく使われる言葉である。それは、人のキャリアや人生にだって訪れることで、まさに「人生の転機」というやつだ。
それにより、それまでとは異なる仕事や仲間、人間関係、まったく違う世界の人たちと仕事や個人的にもなつながりが形成されることになる。

そうしたことは、なにも仕事に限らないだろう。
例えば、偶然にどこかで人に会い、話をしているうちにその人の趣味に興味をもち、自分も試しに始めて(挑戦して)みたのが今では趣味や生きがいとなるようなもので、それは積極的に行動してみたことで、新たな楽しみを発見することと同じである。

そうした視点で考えると、人と本の出会いが"一石二鳥"で手に入る読書会が最近は人気が高いのも頷ける話し。

私自身についていえば、大学を卒業するとき(就活時)、社会人30歳の頃から考えると、その後にスタートアップやベンチャーを渡り歩き、ブロガーあるいはソーシャルメディアクティビスト、スタートアップのメンターのようなことを仕事にするなるなど、当時からはまったく想像すらしできなかった。もちろん、これはインターネットによる社会(ビジネス)環境の大きな変化が影響している。

そうした経験を経ても、これまで同様に変わらずお付き合い続けていく人もいる。一方でいつの間にか自然と縁が消滅してしまった人たちもいる。


■レイヤーとして考えたみた人付き合い

私は20世紀中は広告代理店やその周辺の業界関係者とのお付き合いが多かった。それは、私が「企画請負人」(傭兵マーケッター)として仕事をしていたからだ。仕事はもちろん、プライベートで付き合う友人もそうした仕事関連で知り合った人たちばかりだった。

21世紀になり、スタートアップなどいくつかのベンチャーでマーケティングの渡世人(責任者)をしてきたので、今度はそうした業界に関わりのある人たちが一気に増え、かつての友人や知り合いとは徐々に疎遠となってしまった。
そうした中で、以前ほど頻繁ではないにしろお付き合いの続いている人もいる一方で、現在では残念ながらその消息もわからない人もいる。あるいは逆に、再び数十年ぶりに一緒に仕事をしている人もいたりする。

人は、ライフステージにより人付き合いのレイヤーがかなり異なるように思う。ただし、本当にご縁のある人というのは、疎遠になっていても数年ぶりあるいは数十年ぶりに再び縁を得るというのは私の経験からの実感だ。

もちろ、今日ではfacebookのようなSNSがあることで、こうしたつながりを発見することも容易になって旧交を温めるということに貢献している。

かつては、地方や海外に在住している人たちと連絡するには手紙か電話しかなかった。
現在では、Eメールにはじまり、SMS、SNS、Skypeと、コミュニケーションを行えるツールはいくつもあり、実に便利な世の中となった。SNSの中には、LinkedInのように転職や会社でのポジションが移動になると、その都度通知してくれる親切なサービスも用意されている。


■人付き合いに方程式はない

書店に出向くと、人付き合い(人間関係、対人関係)やコミュニケーションに関する書籍で溢れている。これほど、コミュニケーションツールが進展して便利になっても、そうしたことに関する悩みが尽きないのが人間という生き物だ。

人付き合い(人間関係)には方程式がないので、難しい部分もある。
一時期は、親しくあるいは仲良お付き合いができても、何かのきっかけでそれが不可能になってしまうこともある。

かつて(今でもかもしれないが)、長らく仕事(会社)一筋に務め、人付き合いも取引先や下請けなど仕事関係者だけで過ごしてきて不自由ない生活だった人が、定年退職したとたん、誰からも電話がなくなり、訪問者もなくなり、自宅にいると奥さんに粗大ゴミ扱いされる悲哀の漂うおじさん達の話しというのが、一時は随分と話題だったような気がする。

そうした人たちとは対照的に、定年後に本当にしたかったビジネスで起業する人、やりたかった趣味の世界で生きていく人、社会貢献活動で生きがいを見いだす人などもいる。
こうした人々は、またそこで新たな縁を得ることでそれまでとは違う人間関係を構築し続けていく

世の中、せっかくのご縁をいただいても、そうしたすべての出会いを満遍なく維持するのは、現実的に考えれば不可能である。私の場合、新しい人とご縁を得るのは年間350〜400人ほどなので特に多いというわけではないだろうが、毎年それだけの人たちとご縁をいただけるのはありがたいことだと思っている。それでも、その後にオン&オフを含めて縁を継続できる人となると、実際にはそのうちの10〜15人ほどになる。つまり出会った人たちの5%未満ということだ。
そうした人たちは、オンラインであるいはリアルな場などで継続的なコミュニケーションや定期的な接点のある人たちだ。

だから、知り合った人たち数百人あるいは数千人といった人たちときめ細かく行き届いたお付き合いしている人がいると、私にはとても真似できないことだとそれだけで尊敬してしまう。
疎遠になる人がいる一方で密になる人、新たに出会うがただすれ違っただけの人など、出会った人たちの接点のあり方は実に様々だ。

人は生き物なので、その生き方、働き方、そして心のあり方や人間関係も常に流動し続け、進化することは止められないように感じる。

こうして思うとき、生涯変わらぬつきあいができる友人とは得がたいものだと実感する今日この頃の私である。


(参考リンク)

▼『一生モノの人脈力』(書評)
http://www.bookvinegar.jp/book/12175/

▼自己啓発ビジネスの餌食になる人々...夢実現のために、能力や資格より大切なこととは?
http://biz-journal.jp/2013/06/post_2420.html

▼20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/03/20-3.html

▼『ハーバード、オックスフォード...世界のトップスクールが実践する考える力の磨き方』(書評)
http://www.bookvinegar.jp/book/12560/

▼『才能を磨く ~自分の素質の生かし方、殺し方~』(書評)
http://www.bookvinegar.jp/book/12587/index/


【おすすめブログ】

●【書評】ビジネス書という「無間地獄」に思う
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/1741262.html

●「レイヤーで考えること」の意義と価値とは
http://blog.marketing.itmedia.co.jp/macume/entry/312.html

●SNSとパーティー文化に見る「相似性」
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/779313.html

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プロフィール

梅下武彦

梅下武彦

コミュニケーションアーキテクト兼ブロガー。20世紀は広告代理店の“傭兵マーケッター”、21世紀はベンチャー企業のマーケティング責任者を歴任。現在、マーケティングコミュニケーション領域の戦略立案や設計、アドバイザー・メンターとして活動している。また、様々なソーシャルメディアで活動するSocialmediactivisとして、現在をDigital Ambient Society、Communication Metamorphosesと定義し、多様に激変する社会現象・事象、時代情況を独自のマーケティング視点で語るコラムを執筆中。 ソーシャルテクノロジー社会におけるMarketing DisruptionとCommunication Ecosystemの関係を探求している。

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