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» 2014年12月15日 更新

ハイ・コミュニケーション私論 ネット社会で、改めてリアルな場、リアルなコミュニケーションの意義について考えた〜10 over 9 reading club 2014年活動を振り返って

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今年(14年)2月から活動をはじめた10 over 9 reading clubは、他にないユニークでイノベーティブなユーザー体験を提供する読書会だ。いまもっとも参加が楽しく、ともかく意義を感じるリアルな活動の場だ。
また、スペシャルイベントも開催し、従来とは異なるアプローチで積極的に企画している点も、これまでの読書会とは異なる活動だろう。

その活動の1年間を振り返って感じたこと、あわせてこの読書会に関連する備忘録としておこうと思う。
それというのも、私はこれまで趣味の集まり(この場合は読書)、それも定期的にイベントに参加した経験がないからだ。
単発のイベント、オンラインで繋がっている人たちとコメント欄、メッセージなどを通じて意見や情報交換することはあっても、共通の趣味の集まりに参加した経験がゼロに等しい。

ソーシャルメディアの普及(特にSNS)と恩恵で、国内だけではなく全世界とつながれる同じ趣味や嗜好の人たちとオンラインでつながれる時代である。
サテライトオフィス、コワーキングスペース、ノマドワーカー(早くも死語?)、しかもクラウド環境で仕事ができる時代となっている。Skypeをはじめとするテクノロジーの活用で顔を見ながらも会議もできる。
20世紀的な仕事スタイルから、21世紀のテクノロジーを活用した新しい働き方、生産性を上げる仕事環境も求められている。

確か昨年(13年)、米Yahooのマリッサ・メイヤーCEOによる「在宅勤務原則禁止」通知が、ネット上で賛否両論の議論を呼んだ。
職種や仕事内容あるいは組織形態によっては、フレックス制や必要なときだけ出社して働くという方が成果や結果に結びつくこともある。

しかし、やはりリアルに集まって、例えば、休憩時間の何気ない雑談や会話から、イノベーションや新企画のヒントなどが生まれることがあることもある。特に、クリエイティブと言われている職種の人ほどそうした傾向がある。
会議のあとに居酒屋などの雑談でヒントを得たり、新しい企画のひらめきを思いつくというのはよく聞く話しだ

世界各国の首脳が集まり、あるいはダボス会議(世界経済フォーラム)のようなもが開催され、レセプション(晩餐会)が開催されるのも、会って握手をして、顔を見ながらともに食事や酒を飲みながら意見交換し合うことに重要な意味があると思うからこそ、多忙にもかかわらず時間と費用を使ってまで開催されるのだ。

私は、20代のサラリーマンの頃、仕事や上司・会社の愚痴をシェアし合うような飲みにケーションが嫌いであった。しかし、今日ではそうストレスのはけ口でなければ、むしろ飲みにケーションは大変に有意義であるとすら思うようにすら感じられる。

人付き合いには、だれとでも平等にというわけにはいかず、どうしてもその度合いに濃淡ができてしまう。
これは仕事でも同じだ。それでも、人はリアルな場で、顔を見ながら生で直接コミュニケーションする動物だとつくづく実感する。

そうした点では、皆が一つの場に集い、リアルな場でコミュニケーションすることの意義や価値はそれなりにあると思う。
また、そうしたことを促す環境も大事だ。だからこそ、Googleなどの先進的な企業のオフィス環境を快適にして遊び心に溢れて創造性を誘発するように創意工夫しているともいえる。

たまたま、佐藤可士和のインタビュー記事に以下のような言葉を見つけた。

「そういう時代に顔を合わせた打ち合わせの場で重要なのはディスカッションですよね。あなたはこの情報についてどう思うかという。大きな意見の違いはもちろん、ディテールやニュアンスの違いも会って話すからこそわかりますから、意志を統一していくための細かい方向性のすり合わせができるのが打ち合わせ。「大枠OKだけど、ここだけはちょっと違うんじゃないか」とか、そういうことはやはりネットではなかなか伝わらないと思います。会って話すからこそわかることはたくさんあるでしょう。」

日本人は会議好きと言われたのを聞いたことがある。たしかに、ただの進捗状況確認、業務報告も会議なのだが、そうした情報共有はわざわざ集まってするまでもないことだと感じる。

▼「情報共有したいだけの人は、打ち合わせに来ないほうがいい」佐藤可士和さんインタビュー
http://www.huffingtonpost.jp/kazuhiko-umeda/kashiwa-sato_b_6302944.html


(1)月例イベント:レクチャー&セッション読書会

2月8日(土)のキックオフには参加が叶わなかったが、2回目からはほぼ参加している。
今年、レクチャーにおいでいただいた主なゲストは以下の通り。

・佐々木紀彦NewsPicks編集長(当時・東洋経済オンライン編集長)
・太刀川英輔さん(Nosigner代表)
・三浦展さん(社会デザイン研究者/カルチャースタディーズ研究所主宰)
・山田敏夫さん(Factelier代表)
・小田嶋隆さん(コラムニスト)
・藤村厚夫さん(SmartNews執行役員)
・出口治明さん(ライフネット生命保険 代表取締役会長兼CEO)

編集者、ジャーナリスト、コラムニストなどだけではなく、デザイナー、スタートアップ企業のCEOなど多彩な方々から、各々の読書体験と読んで欲しい推奨図書をたくさん紹介していただいた。
どれも読みごたえのある本ばかりで、それらの中から各々3〜5冊ほどを読んでセッション読書会を開催した。
また、藤村さん、出口さんのお二方には私がお願いした経緯もあり、レクチャー当日の司会進行役の大役まで仰せつかった。

通常は10〜30冊程度の本をご紹介いただいているのだが、佐々木さんは10ジャンル各6冊づつの計60冊、三浦さんはなんと70冊も紹介してくださった。

そうした中で、私が課題図書に選んできたのは、カント『永遠平和のために』、ジャック・アタリ『21世紀の歴史―未来の人類から見た世界』、福田恆存『人間・この劇的なるもの』、ジャン・ボードリヤール『消費社会の神話と構造』、イーライ・パリサー『閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義』、広河隆一『パレスチナ 新版』など。
私自身、人文科学・社会科学系の本が大好きなので、どうしてもそうした関係の図書を選んでしまう。

セッション読書会参加者の中には、毎回の課題図書を複数(2〜4)冊読んでくる猛者もいるほどだ。
レクチャーでもセッションでも、時間や都合が許せばゲスト交えて居酒屋での二次会となる。その場で、話しているうちに課題図書にどれを選ぶかが決まることも多い。

▼10 over 9 reading club(トップ)
http://10over9-readingclub.jp/

▼これまでの出演ゲスト
goo.gl/JzcHMR

▼ゲストからのおすすめの本&課題本
http://10over9-readingclub.jp/?page_id=607

▼10 over 9 reading club(facebookページ)
https://www.facebook.com/10over9

(2)特別イベント:「カンヌライオンズ2014」と「Creative Mason」

10 over 9 reading clubは、月例会でもほかの読書会とは異なるユーザー体験を提供している。今年は2回の特別イベントを開催した。

6月、世界最大のクリエイティブ広告系フェスティバルとも称される「カンヌライオンズ2014」に関連するイベントを2回開催した。プレ勉強会(5日)と帰国報告(28日)で、両方とも普段の読書会以上に大勢が詰めかけた。

11月1日(土)、「クリエイティブ(表現)× テクノロジー(技術)× リベ ラルアーツ(教養)」をテーマに、多彩なゲストを招いて8つのトークセッションで開催。そのうちの1コマ「家族からはじめよう〜 ベテラン起業家が集う、新しい創業のカタチ」は、なんと私がモデレーターを務めることに。こちらも130人ほどの申し込みがあったが、当日はあいにくに冷たい雨となり、それよりは少なかった。
ゲストには、多忙の中をぬって石川淳哉さん(ドリームデザイン/ CEO)と斉藤徹さん(ループスコミュニケーションズ/ CEO)をおいでいただいた。
そのほかにも、博報堂クリエイティブディ レクター須田和博さん、「情報考学 Passion For The Future」ブロガーとしても知られているデータセクション/取締役会長橋本大也さん、スマートニュース/マーケティングディレクター松岡洋平さんなど、多彩な人たちをお招きしてのトークセッションが組まれた。
主催者の河尻さん自身による記事「書を持って、街へ出よう―新宿の昭和な住宅で文化なトークやってみた―」(前編)にも以下のようにある。

「それはリアルスペースでのイベントだ。私の場合、広告・出版・教育業界関連のセミナーやワークショップが多いのだが、みずから主催して司会する場合も、よそ様に呼んでいただく場合も、生のやりとりがとにかく面白い。いま刺激的な仕事をしている人たちの話が興味深いのはもちろん、学生が対象の講義でも、相手のレスポンスによるこちらの気づきは大きい。」(前編)

また、(後編)では以下のようにも語っている。

「ソーシャルメディアのソーシャルが"社交"の意味であるように、これほど「人と人のつながり」とか「コミュニティ」みたいなことが言われる時代はない。これだけ強調されるということは、それが希薄になってる面が大きいのだろう。足りていれば、ことさら言う必要もないわけだから。」(後編)

確かにそのように感じる。
もちろん、今日ではネットで様々なコンテンツを公開することで、世界からの注目を集めることができる時代であり、ネットがあるからこそ本人の希望や望むことが手に入ることもあるし夢が叶うこともあるのは十分に承知している。

しかし、一つの場に集まり、空気感を共有し、ライブでインプロビゼーションする感覚に近いと思う。本でも人でもセレンディピティは、やはりリアルな場、リアルなコミュニケーションにまだまだ多くを依存していると思う

例えば、SNSなどで実際に会ったことがなくても、メッセージやコメントで頻繁にやりとりする人はいると思う。
特に、地方在住者で一度しかあったことがない人とのこうしたコミュニケーションは大切だ。むかしなら文通仲間という感じだろう。

そうした人と直接会って話し始めると、初対面ではないような気がすることがある。それまでのコミュニケーションが効いているからだ。しかし、実際に会って飲みながら話すとぐっと距離感が縮まるものだし、それまでメッセージとのやりとりだけではわからなかったことを、話しをしている中で意外な発見や気づきをえることもある。
やはり、生でのコミュニケーションに勝るものはないと感じる次第。

また、12月にはワンテーマによるセッション読書会イベントも開催した。
これは、通常のレクチャーなし、あるテーマ(ヒト・モノ・コト)にフォーカスし、課題図書だけを選定してどれか読みたい本を読んで参加するというもの。
記念すべき第1回目は、「吉本隆明を読む会」を開催。いまのご時世でこのテーマで開催するなんてそうとうな好事家だと思うのだが、なんと10名近くも集まった。

▼「書を持って、街へ出よう ―新宿の昭和な住宅で文化なトークやってみた―」(前編)
http://dotplace.jp/archives/14342

▼「書を持って、街へ出よう ―新宿の昭和な住宅で文化なトークやってみた―」(後編)
http://dotplace.jp/archives/14434

(3)アウトプットする:読書とブログ

読書会に参加するようになり、常にアウトプットすることを念頭に置くようになった。これまでは、自分一人で読んでいるだけだったが、セッション読書会に参加するようになり、参加者同士で内容をシェアしたり意見交換することが多く、それにより内容を要約して伝えたり、的確に理解を促す必要性が出てきたためだ。

また、同じ本を読んでも、自分ではなにげなく読みすごしたような文章や表現に、別の参加者が関心を持つことで、そうした他者の意見や視点から気づきや発見、確認ができることも良い成果だと実感している。

この読書会に参加するようになり、特に書評を書こうという気がなくとも、そこでインスパイアされたことで、思わずブログを書きたくなるようになり、毎回ではないがこれまで以上に積極的に書評や読書などに関するブログが増えている

ただし、書評というのは、雑誌や新聞のメディアではだいたいが800〜1,200字程度であるが、私の場合は長いブログになってしまう悪い癖がある。
そうしたメディアでの書評は無理だと自覚させられる。

さて、15年2月から2年目の活動にはいる。
今後、この読書会はどのようにイノベーティブに進化していくのか、2年目以降も大いに楽しみにしている。

▼トマ・ピケティ『21世紀の資本』刊行によせて(上)
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/1874748.html

▼トマ・ピケティ『21世紀の資本』刊行によせて(下)
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/1875184.html

▼ついに開催した「吉本隆明を読む会」によせて
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/1874083.html

▼「読めば即ち教養となる」ーーライフネットの出口さんは、読書だけではなく人生の「名人」
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/1866710.html

▼【書評】セレンディピティや多様性が失われ、「類は友を呼ぶ」だけの世界になってしまうのか?ーー『閉じこもるインターネット』
http://blog.marketing.itmedia.co.jp/macume/entry/671.html

▼【後記】セッション読書会と『閉じこもるインターネット』書評を終えて思うこと
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/1865329.html

▼特集「人文書入門」ーー『文藝』2014年夏号
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/1858840.html

▼世界が注目、トマ・ピケティ教授へのインタビューに思うーーはたしてマルクスは甦るか?
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/1858306.html

▼【書評】現代の「パンドラの箱」─『21世紀の歴史―未来の人類から見た世界
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/1841572.html

▼新しい教養の場としての読書会〜活字離れと読書会人気に思う
http://blog.marketing.itmedia.co.jp/macume/entry/576.html

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プロフィール

梅下武彦

梅下武彦

コミュニケーションアーキテクト兼ブロガー。20世紀は広告代理店の“傭兵マーケッター”、21世紀はベンチャー企業のマーケティング責任者を歴任。現在、マーケティングコミュニケーション領域の戦略立案や設計、アドバイザー・メンターとして活動している。また、様々なソーシャルメディアで活動するSocialmediactivisとして、現在をDigital Ambient Society、Communication Metamorphosesと定義し、多様に激変する社会現象・事象、時代情況を独自のマーケティング視点で語るコラムを執筆中。 ソーシャルテクノロジー社会におけるMarketing DisruptionとCommunication Ecosystemの関係を探求している。

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