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» 2015年3月16日 更新

ハイ・コミュニケーション私論 ついに終焉を迎えるすばらしいのに使われなかったサービスーーTwitterとFriendFeedの命運をわけたものは何か

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私的公開日誌@ウェブ歴150316.01

08年4月、TechCrunchに「FriendFeed―すばらしいが誰も使わないアプリになる危険あり」という記事が掲載された。

「結局のところ、FriendFeedはすばらしいサービスではあるが、流れに逆らって泳ぐのに疲れはて、簡単な現金化の道を選ぶかもしれない。FriendFeedのテクノロジーとユーザーベースを買い取るために金を払う有力企業はいくらでもあるだろう。その有力企業の中にはGoogleが入っているかもしれない。私が間違っているといいのだが、どうもそうは思えない。」

その懸念は、この記事から1年ちょっとのち、facebookが同社を買収したニュースとして現実となった。私が使いはじめて1年にも満たなかった。
真実か否かはわからないが、噂ではTwitterとどちらを買収するかでfacebook内でかなり以前から検討していたそうだが、爆発的にユーザーを増やし続けているTwitterに対し、すでに勝敗がつき劣勢に立たされていたFriendFeedを結局は買収したらしい。

08年、facebook、Twitter、Friendfeedはほぼ同じころに使いはじめたサービスだった。その直後にはTumblr、さらにその後はGoogle+、LikedInなどほかの各種ソーシャルメディアへと続く。

これら 数あるサービスの中でも、じつはFriendFeedとTumblrがもっともお気に入りだった。
私は「すべての道は「FriendFeed」に通ずーーソーシャルWebのアグリゲーション、マルチポストサービスの未来」というブログまで書いたほどだ。

久々にアクセスしてみた。そこには、「15年4月9日をもってFriendFeedを閉鎖する」との告知が表示された。愛着のあるサービスだったが、完全閉鎖になるのでは仕方がない。

今回、そのFriendfeedについて考えてみたい。残念ながらTumblrとともに我が国ではほとんどのユーザーを獲得できなかった。また、大手企業に買収されてしまった点でも共通している。


■FriendFeedについて

FriendFeedは、Googleをスピンアウトした元社員たちが開発したサービスだった。

確かにTwitterと似たようなサービスではあったが、文字数に制限がないうえにデフォルトで画像もアップできた。さらに一旦投稿して書き間違いなどがあってもすぐに編集も可能なすぐれたサービスであった。もちろん「フォローする/されるも」も機能として備えていた(フィード購読する)。

だから、私は素晴らしいサービスだと思った。ブログ、facebook、Twitter、Tumblrなどの投稿はすべてFriendFeedに集約していた。また、Friendfeedに投稿すれば、ブログを除いて全てのほかのサービスへフィードが送れるようにもしていた。
各々のソーシャルメディアを利用していない人でもFriendFeedさえ利用すれば、私の様々なソーシャルメディアでの活動は全部が把握できたのだ。

08〜09年当時、ソーシャルメディアの各種サービスは、言葉自体が一般的ではなく、ユーザーもいわゆるイノベーターやアーリーアダプターがユーザー層だった。facebookも、当時の日本人のユーザーは十数万人、それも海外在住ユーザーをふくめた数で、国内では、圧倒的な知名度とユーザー数を誇るSNSの巨人mixiに比べれば、ほとん誰も知らない状況だった。

facebookがFriendFeedを買収したことで、現在のようなリアルタイムによるフィード(タイムライン)の実装できるようになった。最近フォローするに名称を変えたが、それまではフィード購読するを使っていたのは、買収後もFriendFeedの名称をそのまま使っていたからだ。
買収されたあと、サービス自体も単独で存在し利用もできていたので、私はそのままずっとつい最近までブログのウィジェットとしても使い続けていたのだった。

歴史に「れば」や「たら」はないのだが、FriendFeedがTwitterなみにユーザーを獲得していれば、私はいまでも利用しているだろう。


■成功と失敗を分けるもの

市場で似たような競合サービスがあるとき、どこが抜け出すのか。その成功と失敗の命運をなにが分けたのか。それについてのヒントは、先の米TechCrunchの記者の下記の文章の中にある。

「実をいえば、FriendFeedの機能は一般ユーザーがすぐに理解するにはいささか複雑すぎる。Twitterはまったくシンプルだ。自分の好きなことを140字以内で投稿する。そのユーザーが興味ある人物なら次第にフォローするユーザーの数が増える。それに対してFriendFeedはありとあらゆる機能が備わったずっと複雑なシステムだ。パワーユーザーには人気が高いが、初心者は圧倒されてしまう。」

私は複雑だと感じたことは一度もないが、これはその通りだと思っている。
パワーユーザー(イノベーターやアーリーアダプター)にとっては、人気が高く便利で重宝するようなサービスでも、機能は限定されているがそれでも利便性があって使いやすいことが、大多数の一般ユーザーや市場では受容されやすい。
月並みな言い方をすれば、FriendFeedは「キャズム」を超えられなかったということになる。

かつて、ソニーのウォークマンの企画を役員の前で披露したとき、他の役員からはラジカセは高機能化が売りなのに、携帯できても録音もできず再生しかできない製品なんて誰が買うのかといわれたが、盛田だけが面白いといって開発がスタートして世界的な大ヒットにつながったことはあまりにも有名だ。
各社が多機能を競っている市場環境のときに、あえて競合他社とは異なる着眼・着想で単機能に絞り込み、独自性を発揮した製品だ。これこそが本来のdifferentiation strategy(独自性戦略)であり、ライフスタイルまで変えてしまったイノベーションの手本だ。

盛田が、もし居並ぶほかの役員と同様にぼんくらな判断していたら。ウォークマンの誕生はなかった。この製品は、それまで音楽は自宅やクルマで聞くものだったのを、個人がいつでもどこでも携帯し音楽を楽しめるライフスタイルに変えてしまった。

その後、競合他社もウォークマンに追随する製品を開発することになり、そこでの差別化は機能しかないということになる。


■differentiation=差別化という言葉の勘違いによる陥穽

「差別化」というとき、なぜこうした機能を競う(追加による)製品開発となってしまうのか

例えば、ある製品やサービス開発を提案したとしよう。役員会などで、こういう機能があれば便利だよね、こういうことができるとありがたいよねなどと言うたびに、それぞれの機能を加えていくようになり、その結果として開発は遅れてコスト負担までも増大しいく。

こういう場合、人というのは「ないより、あったほうが便利でありがたい」と考えるし答えるものだ
しかも、かりにその機能がユーザー100人のうちの数人が年に一度、あるいは壊れるまでに一度しか利用することがないようなものだとしてもだ。

こういうのを差別化の陥穽というのだが、これは日本に限ったことではなく米国でも同様で、ポジショニング戦略の第一人者ジャック・トラウトの名著『独自性の発見』(海と月社:原書の08年刊を復刊)の中でも書いていることだ。
要するに、その企業あるいは製品の発揮する独自性ではなく、競合他社と同じ土俵(製品市場)で、微細な違い(機能追加による差別化)で勝負しようとしてしまう傾向に陥りやすいということだ。
 
どうしてそうなってしまうのかと言えば、それは「同質的なもの」だという前提が根っこにあるからだ。つまり、最初から似たような人気製品を模倣し追随した製品なのだ。だから、差別化しようとすればするほど、競合も機能追加で追いかけてくるという、同質性のループ状態に陥ってしまうというジレンマだ。
そもそも独自性があれば、あえて「差別化、差別化」と騒ぐ必要性がないではないか。

differentiationとは「区別・識別」という意味である。
13年に『スティーブ・ジョブズ 1995 ~失われたインタビュー~』というドキュメント映画が公開されたが、そこでもジョブスがインタビューに答えて発言したDifferentiationは「差別化」と字幕に書かれていた
DifferentiateまたはDifferentiationを、マーケティング業界では「差別化」と訳しているが、辞書の訳語には「識別・区別」とあるし、こちらのほうがより本質的な意味だろうと思う。
したがって、明確に識別されるものあるいは区別されうるものが、本質的なdifferentiation strategyなのだ。だからこそ、「独自性」という言葉のほうが適切なのだ。

その故スティーブ・ジョブズであるが、彼は差別化について、典型的でわかりやすい例を語っているのでそれを以下に紹介しよう。

「美しい女性を口説こうと思った時、ライバルの男がバラの花を10本贈ったら、君は15本贈るかい?? そう思った時点で君の負けだ。ライバルが何をしようと関係ない。その女性が本当に何を望んでいるのかを、見極めることが重要なんだ。」

うまいこというねジョブズは。
要するに、企業が差別化と言っているには、所詮は15本、20本あるいは25本のバラを送るか、その本数だけで競っているということだ。なんとも、わかりやすいたとえ話ではないか。


■Apple社の成功という教訓

今日の音楽の試聴スタイル革新したiPod、携帯電話の価値観を根底から覆したiPhoneの発表時、メディアや他メーカーの反応は冷ややかなものだった。

もっと機能的に優れた製品が市場に溢れている、あるいは同様な製品もすでにあるが、ユーザーはニッチで多くの消費者を獲得できずに失敗すると。

しかし、そうしたネガティブ予想とは裏腹に大ヒットすると、今度は他のメーカーも一挙にApple社に結局は追随することになった。

独自性をブレることなくに見事に実践してきたのがApple社であり、最近のDyson社であろう。
後者は、日本のキャニスター掃除機を徹底研究した製品であることもよく知られているが、いまでは様々な国内メーカーも同社の製品に追随している。

20世紀型工業製品で成功をおさめた日本は、多機能が高付加価値でユーザーに便利さを提供するものだという思考方法にいまでも囚われている。
いまでも、21世紀の市場動向やユーザーが依然として見えない、あるいは感知できていないのだ。しかも、そういう人たちが意志決定権も予算も握っているような企業では、市場(=ユーザー)や時代に取り残されるのは明らかだ。

しかし、それだけではない。かりに、そうかりに、マーケティング戦略において最適な選択(判断)を実行しても、それが市場での支持につながらないあるいはユーザーの獲得をできないということがあることを、私は知っているしそうした状況をいくつか経験してきた

私もスタートアップの若い人たちから相談を受けることがあるのだが、必ずそのサービスのコアとなる機能だけにフォーカスする以外はあと回しにするようにとアドバイスしている。

すなわち、そのフォーカスした機能やサービスこそがレゾンデートル(存在価値・存在理由)であり、これさえ理解してもらえれば、あとは理解されなくてもいいという覚悟が必要だと。
こうした機能もあればより便利だとわかっていても、それらを捨ててこの機能だけでも使いたいと思わせるコアがなければ、その時点で考え直したほうがよいだろう。
そうした機能やサービスだけにフォーカスし、ユーザーを獲得した後になって、必要に応じて様々な機能を追加していけばよいだけだ。

テクノロジーの進化がスピーディーで激しい今日、製品はソフトで動かすことが主流になりつつある。新しい製品や製造ラインを必要とせず、ソフトを1つを追加するだけで、その機能を利用したり制御できるような時代である。ましてやウェブ上でのサービスであればなおさらだ。
進展が劇的に早く複雑化する一方のテクノロジーだが、それらとは反比例するかのようにユーザビリティー(UI/UX)はより簡素になっていなければばらない。

かつては、「先行者利益」という言葉もあった。だが、Googleは検索エンジン分野では最後発だったし、Web2.0以降はそうした先行者がかならず成功するわけでないことは証明されている。
故スティーブ・ジョブズも言っているではないか。「最初」より「ベスト」だと。
And one more thing、彼の含意ある下記の名言を、私たちも胸に刻んでおこうではないか。

「シンプルであることは、複雑であることよりもむずかしいときがある。物事をシンプルにするためには、懸命に努力して思考を明瞭にしなければならないからだ。だが、それだけの価値はある。なぜなら、ひとたびそこに到達できれば、山をも動かせるからだ。」


■どうなるのか気になるTumblrとPaper.li

ところで、13年にTumblrは米Yahooに買収されてしまった

そのYahooのCEO Marissa Mayerは、買収発表時、Tumblrは「台無しにしない」と約束し、買収後もTumblrはYahoo本体とは「別個のビジネス」として独立運営していき、CEOはDavidが引き続き指揮することを公式に表明した。

利用したことのある人たちはわかっていると思うが、Tumblrも本当に素晴らしいサービスだ。米国では若年層を中心に知らない人はいないほどだ。
テキスト、画像、文章引用、音声、動画、チャットなど多彩に利用でき、ツイッターのRTに相当するリブログやフォローしたりすることもできる。カスタマイズも簡単で、米国では、UIなども洗練されいることから、VOUGEやGQのようなファッションメディアやファッションブランド、レディ・ガガはじめとしたセレブなども活用し、あのビヨンセが第一子をTumblrで初披露、さらには米政府内にも一部導入されるなど、日本では信じられないほどに人気が高い

これまでにも何度か国内でも「今年こそTumblrがブレイク!」と喧伝されたが、残念ながらいまだに知名度もユーザーも獲得できていない。

買収の前年(12年)、都内で開催されたSocial Media Weekでの講演のため、創業者CEOのDavid Karpが急遽来日した。そのイベント後、青山の焼き鳥屋で楽しく一緒に飲んだので、米Yahooに買収される話しを耳にしたときは大きなショックだった。
Davidは本当にいいヤツだった。日本でもせめてEvernoteなみに人気がでれば、フィル・リービンほどではないにしても、気をよくして何度か日してくれるだろと期待したのだが......。
これからも、単独のサービスとして使い続けることができることを心より祈るばかりだ。

ところで、アグリゲーションサービスでは、12年からスイス発のpaper.liというサービスをとても気に入って利用しているのだが、これも日本では知名度もユーザー数が極めて少ない。
このサービスも、なんとか事業継続して成功して欲しいと切に願っている次第である。


<関連リンク>

▼FriendFeed―すばらしいが誰も使わないアプリになる危険あり
http://tcrn.ch/1COsIJT

▼ブログを書いている人が FriendFeed を始めるべき7つの理由
http://lifehacking.jp/2009/07/why-you-should-start-friendfeed/

▼FacebookがFriendFeedを買収
http://jp.techcrunch.com/2009/08/11/20090810facebook-acquires-friendfeed/

▼Facebook、フィードアグリゲーションのFriendFeedを買収
http://www.atmarkit.co.jp/news/200908/11/facebook.html

▼すべての道は「FriendFeed」に通ずーーソーシャルWebのアグリゲーション、マルチポストサービスの未来
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/931422.html

▼BianchiのTumblog(Tumblr)
http://macume.tumblr.com/

▼つぶやきや写真を新聞風に 「Paper.li」が日本語対応
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1102/08/news043.html

▼THE ALL TWEET JOURNAL(paper.li)
https://paper.li/macume


【おすすめブログ】

・TwitterよりFriendFeedを使う3つのメリットーー悩んでいた使い方に光明か?
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/1486702.html

・【書評】『独自性の発見』復刊によせてーーマーケティングにおける独自性と差別化(1)
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/1556667.html

・映画『ロスト・インタビュー スティーブ・ジョブズ 1995』を見て改めて感じること
http://blog.marketing.itmedia.co.jp/macume/entry/519.html

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梅下武彦

梅下武彦

コミュニケーションアーキテクト兼ブロガー。20世紀は広告代理店の“傭兵マーケッター”、21世紀はベンチャー企業のマーケティング責任者を歴任。現在、マーケティングコミュニケーション領域の戦略立案や設計、アドバイザー・メンターとして活動している。また、様々なソーシャルメディアで活動するSocialmediactivisとして、現在をDigital Ambient Society、Communication Metamorphosesと定義し、多様に激変する社会現象・事象、時代情況を独自のマーケティング視点で語るコラムを執筆中。 ソーシャルテクノロジー社会におけるMarketing DisruptionとCommunication Ecosystemの関係を探求している。

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