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» 2015年8月19日 更新

ハイ・コミュニケーション私論 「注目すべき海外先進メディアとトレンド最前戦」に参加してーーメディア"感覚"とその未来について思う

私的公開日誌@150819.01

先日、スマートニュース社のイベントルームで、「注目すべき海外先進メディアとトレンド最前戦〜気鋭のブロガーが語る、2015年注目トレンド、キュレーション方法」と題されたセッションが開催され参加した。

ここのところ、メディアに関するフォーラム、カンファレンスの情報あるいは案内をいただくこと多いような気がする。
先頃、英国の名門経済紙"The Financial Times"を日本経済新聞社が買収、同じく有力経済誌"The Economist"はイタリアの投資会社に買収された。

また、米国メディア業界の相次ぐ買収劇や再編、有名出版社や新聞・雑誌の編集者が新興メディア企業に移籍するニュースなど、日本でもしばしば目にしている人も多いだろう。
一方、オランダのスタートアップメディア"De Correspondent"が欧州で注目を集めている。同メディアは、クラウド・ファンディングで100万ユーロ(約1億3000万円)余の資金が集めた話題になり、既存ジャーナリズムを破壊するとまでいわれている。

先日発売されたあの『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』(15年7月号)の特集も、「メディアの未来 コンテンツで儲ける可能性を探る」だった。執筆陣もいつもとは異なる顔ぶれだが、トップはなんと松岡正剛なのだ。
既存メディアのビジネスモデルの限界がいわれて久しいが、他方ではそれにかわる新しい収益化への道筋が困難に直面し、新旧のメディアを問わず喫緊の課題となっている。
さらに、ここしばらくは「プラティッシャー」という言葉が、メディア界でのキーワードとして議論されている。

それにしても、これほどインターネットやウェブに依存してしまうほどの生活や社会環境になると、一体誰が予想しただろうか。

当日、登壇したのは下記のお三方で、いずれも90年前後の生まれで全員20代という若者たちである。しかも、メディア編集責任者あるいは自らメディアビジネスも展開している。参加者は60人ほど。

1.大熊将八さん
2.佐藤慶一さん
3.石田健さん

この日のモデレーターを担当された、スマートニュース社の執行役員兼メディア事業開発担当である藤村厚夫さん、主催者で株式会社ソーシャルカンパニー代表の市川裕康さんを含め、いずれも各自が自分視点による情報発信や活動を行っており、また海外メディア事情に精通していることでも共通している。

このイベント当日の内容は、すでに十分なまとめが用意されているので、それらは下記の(関連リンク)を読んでいただければと思う。
一知半解な私があらためてなにがしかを付け加えたり述べるようなことなどはなく、ここではイベントで私が気づいたり考えたことを備忘録として残しておこうと思う。

■現在はメディアの大転換時代

いま、メディアは大転換時代を迎えている。
テレビ、ラジオ、雑誌、新聞といった20世紀型メディアが、テクノロジーとコミュニケーションの進展による大波にのみ込まれながら、これからのあり方や方向性を模索している。

新聞や雑誌とは異なり、かつてはラジオやテレビは携帯したり持ち歩いたりできるものではなく、自宅で聞いたり見たりするしかなかった。
しかし、前者は、携帯ラジオの登場で持ち歩けるようになった。とくに野球や競馬好きなおじさんたちにはいまでも人気の高いアイテムだろう。一方、テレビもポータブルが製品化されたがこちらはラジオほどには普及はしなかった。

ラジオ、テレビ、そして新聞(ニュース)や雑誌など、個別のメディアで消費してきたコンテンツも、今日ではすべてスマートホンで済ますことが可能な時代となっている。
テキスト、写真、動画、ゲーム、音楽など、どのようなコンテンツでも、常時携帯しているスマートフォンで楽しむことができる。

デバイスもデスクトップPCからノートPCへと主役が交代し、子どもから「お父さんデスクトップPCってどいうPCなの」という質問が出るほどだ。
初めて見たり触ったPCが父親のノートPCであれば、それをPCと思うのは当然でデスクトップPCを知らない世代が育ちつつあり、小学生でもスマートフォンを持っているご時世なのだ。

この日の発言でも、メディアの転換点として、スマートフォン、ソーシャル化、動画の加速の3点があげられていた。

■検索エンジンに依存する時代の終焉

インターネットの最初の10年間(95〜05年)、誰でも検索エンジンと併走することを強いられてきた。
その後の10年間(06〜15年)、今度はソーシャルメディアさらにはスマートフォンが加わったことで、ウェブやコミュニケーション環境はさらに変化を加速させた。

まず、ソーシャルメディアの登場で、自社のホームページに消費者を呼び込む時代は終わり、情報を届けるにはソーシャルストリームの中へ出て行くあるいは入って行かなければならなくなった。
消費者は、ソーシャルストリームからコンテンツごとにアクセスし、トップページはスルーされるような状況となった。それにより、トップページはいまでは見られることすらなくなりつつある。

もちろん、いまでも検索エンジンは重要であるし今後とも必要であることに変わりはないが、かつてほど絶対的な存在ではないということである。

例えば、ブログは検索エンジンの中で発見されなければならないのだが、今日ではソーシャルストリーム、そしてスマートフォンのアプリの中でも存在感を発揮しなければならないということなのだ。
だからこそ、スマートニュース社では「オピニオンチャンネル」を開設してブロガーなどを支援しようとしているのだ。これはブログに限らず、これからはあらゆる情報(コンテンツ)についていえることである。

また、スマートフォンの登場によりブラウザからネイティブアプリ全盛時代となっている。
各企業はこぞってネイティブアプリを用意し、逆にそこに消費者を呼び込もうとしている。なにをするにしても、そのアプリが必要で気がついたら増える一方だ。ただ、ポイントカードのように、財布が分厚くなるようなことがないだけだ。
当然ながらそれは提供する企業のサービス以外にはまったく利用できない。私はできるだけアプリなしで済ませたいと考える方だ。

これはマーケティング視点で捉えれば、ネイティブアプリは21世紀に最適化した囲い込み戦略であると私は考えている。

■アグリゲーションやキュレーションの登場

今日では、だれもがアグリゲーションあるいはキュレーションサービスのお世話になっている。

たぶん、最初はGoogleニュース、Yahoo!ニュースだっただろう。
独自のサービスで私が最初に利用しはじめたのはFriendFeedだった。同サービスは、07年に元Googleの社員たちが開発したサービスで、様々な更新情報をフィードでまとめてくれるのでありがたかったが、私が使いはじめて1年にも満たない09年にfacebookに買収された。その後も単独でも利用できたが、今年4月にひっそりとサービスを終了した。

11年、CrowsnestVingowが登場する。前者は、SmartNewsの原型となったウェブサービスだが、つい先月にはこちらも静かにサービス提供を終了したが、ブラウザ大好きな私にはとても残念だった。
ほかにもGunosy、Antenna、NewsPicks、Mynd、News Socraなど、そしてLINEニュースまでも登場するほど群雄割拠の様相を呈している。

また、スイス発のベンチャー企業が提供するPaper.li、様々なソーシャルメディアを一元管理・運用するためのツールのHootsuiteなどもあり、私はそうしたサービスの恩恵にずっと与ってきた。

PCの前に座り、その利用時間中にニュースや様々な情報に接していたかつての時代とは異なり、スマートフォン普及後にはいつでもどこでも空き時間でソーシャルストリームやこうしたアプリでニュースや情報をチェックできるようになった。

これは、あたかもかつてウォークマンが音楽の試聴スタイルを変え、近年ではiPodがもたらしたのと同じような現象だろう。スマートフォンが、メディアや情報への接するスタイルそのもを変えたのだ。

■「メディアの行く末」には関心が薄い?

登壇した若手3人で私が一番印象的だったのは、メディアの将来についてあまり関心をもっていないようだと、藤村さんからの指摘があり、そこがこの若手登壇者たちとは考えが異なると語った(私も藤村さんとはほぼ同世代なので実によくわかる)。
彼ら若い世代がメディアの未来などに興味がそれほどないとしても、私には彼ら若い人たちの"メディア感覚・感性"に頷ける部分もある。

95年のインターネットとブラウザの登場、そしてメールによるコミュニケーション、その後はブログやSNSなどのソーシャルメディアが登場し、さらにスマートフォンではメッセンジャーサービス、ネイティブアプリの時代となっている。
デバイスもPCからスマートフォンやPad類など、そしてウエラブル、IoTへとどんどん進化しつつあるのを目の当たりにしている。

5年ほど前、あるウェブ制作者の友人との会話をきっかけに、私は『世代により異なる「Web感覚」について』という記事を書いた。その友人は30代後半なのだが、仕事で20代の若手制作者のウェブに関する感覚の違いのようなものを感じている、との話しだった。
20代の彼らがものごころがついたとき、すでにインターネットは存在していたし、青春期にはソーシャルメディアとスマートフォンが登場してきた。

デジタルネイティブ世代がライフスタイルを満喫するには、テレビや新聞などのメディアはもとより、ホームページもEメールも必要ではなく、すべてがスマートフォンだけで十分だという意識なのだ。
メディア環境が変化するのがあたり前の中で成長してきた彼らにとって、メディアは常に変わり続けるものであるという自明の意識(前提)があるのかもしれない。あるいは、こういう視点があるかもしれない。

それはメディアとジャーナリズムは常に対だと考えている人たちとは違う感覚だとしたら、それらの将来をどのようにとらえているかという問題だ。

悲しいことに、我が国ではマスコミやマスメディアという業界は存在していても、ことさらジャーナリズム精神がないに等しいというのが、私の学生時代からの持論である。
その考えはいまでもほとんど変わっていないが、それは別の機会に譲ることにする。

石田さんは、メディアビジネスにおいて、オンラインは確固たる収益基盤がないあるいはあっても弱い。しかも、スマートフォンの場合、広告単価が安いので収益化はより一層に難しい。とくに調査報道は、ストレートニュースとは違いコストもかかる。
だから、収益のあがるほかのメディアビジネスと複合的に運営することでジャーナリズムを維持するというような趣旨の発言があり、その視点が面白く印象に残った。その例として、英国の大手一般紙の"The Guardian"を上げていた。

これは日本だけではなく、米国でも同様のようだ。
昨年、友人主催の集まりで米Wiredの元ライター二人が登場し、彼らから米最新のメディア事情について話しを聞く機会があった。メディア業界では先進国であるはずのアメリカでも、やはりウェブより紙メディアの方が実入りが良いので、できれば紙メディアでも執筆していきたいという発言があったのが私には以外に思えたのだ。
米国においても、ウェブメディアで稼ぐのは厳しい状況がうかがい知ることができる話しだった。

"The Huffington Post"は設立当初、アグリゲーションが主体でかなり顰蹙を買っていた。しかし、その後に調査報道に注力することで、12年にはブログとして初のピューリッツァー賞を獲得するほどのメディアになった。
一方、"BuzzFeed"もバイラルメディアと批判を浴びていたが、同じように調査報道に舵を切った。

今後、テクノロジーが加速度的に進化し、日常のあらゆる場所がデジタル情報に"包摂された社会"ーーそれは私が定義しているDigital Ambient Societyーーとなったとき、すなわち数十年後、デジタルコンテンツ(データ)が社会生活と渾然一体化した環境において、それでもはたして「メディアの未来とは」という問いは生き残っているのだろうか

そのようなことを考えながら会場を後にした、こういう気づきや示唆をえられる刺激的なイベントはやはり楽しいと感じた夜だった。


(関連リンク)
▼注目すべき海外先進メディアとトレンド最前戦〜気鋭のブロガーが語る、2015年注目トレンド、キュレーション方法
http://globalmedia.peatix.com/

▼[イベントレポート] 注目すべき海外先進メディアとトレンド最前戦
http://bit.ly/1JVrZJj

▼ソーシャルカンパニー市川裕康氏の注目する海外メディアとは(まとめ1)
http://livepad.jp/2015/08/07/globalmedia-1-opening/

▼若手論客が語る注目メディア、トレンドとキュレーションスタイル(まとめ2)
http://livepad.jp/2015/08/07/globalmedia-2-introduce/

▼登壇者と聴衆の質疑応答で紐解く、メディアビジネスの未来(まとめ3)
http://livepad.jp/2015/08/07/globalmedia-3-pannel-disucussion/

▼米国における10の新興メディア:その概要と特徴
http://newclassic.jp/25374

▼デジタル戦略が革新生む 「日経、FT買収」の衝撃
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO90289270X00C15A8H56A00/

▼在英メディアアナリスト・小林恭子氏に聞く(前編)
http://dentsu-ho.com/articles/824

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梅下武彦

梅下武彦

コミュニケーションアーキテクト兼ブロガー。20世紀は広告代理店の“傭兵マーケッター”、21世紀はベンチャー企業のマーケティング責任者を歴任。現在、マーケティングコミュニケーション領域の戦略立案や設計、アドバイザー・メンターとして活動している。また、様々なソーシャルメディアで活動するSocialmediactivisとして、現在をDigital Ambient Society、Communication Metamorphosesと定義し、多様に激変する社会現象・事象、時代情況を独自のマーケティング視点で語るコラムを執筆中。 ソーシャルテクノロジー社会におけるMarketing DisruptionとCommunication Ecosystemの関係を探求している。

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