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» 2015年10月14日 更新

ハイ・コミュニケーション私論 Apple、Microsoft、Google、facebook。大物プレイヤーが勢揃いしたVR(仮想現実)・AR(拡張現実)が本格的に離陸するーーSCHOLAR.professorに参加して

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私的公開日誌@151013.01

グーグル、アップル、マイクロソフト、フェイスブック、ようやく本格的なプレイヤーが勢揃いした。
これら世界的企業の次のプラットフォーム覇権争い(競争)が、Virtual Reality(以下VR)とAugmented Reality(以下AR)になるということだ。

それはつまり、VR・ARがもはや従来のように最先端テクノロジーを実験室で披露するのような段階から、本格的にユーザー体験を提供する(コンテンツを楽しんでもらう)時代に移行することを意味している

13年、グーグルは、ほかに先駆けてメガネ型のGoogle Glassで参入した。
14年、フェイスブックは、Oculus Riftで知られるVR新興企業Oculus VR社を買収し、ザッカーバーグ自身が「じきに人は、VRをシェアし始める」と語ったことでネット界隈では随分と話題となった。先月(9/23~25))に開催された「Oculus Connect 2」(開発者向けイベント)にザッカーバーグが登場し、「次世代のプラットフォームになる」とも語っている。
15年、マイクロソフトは現実空間にホログラムを投影するHoloLensを発表、一方のアップルもドイツの新興AR企業Metaioを静かに買収していたニュースが公表されて衝撃が走った。

そうしたなか、SCHOLARでは東京大学先端科学技術研究センター兼同大学大学院情報理工学系研究科の廣瀬通孝教授をお迎えし、いまもっとも注目されているVR・ARについての講義が行われた。

廣瀬教授の専門は、主にシステム工学、ヒューマンインタフェースで、VRではその黎明期から今日まで様々なプロジェクトにもたずさわっており、VRの生き字引のような先生だ。

私は、なぜ廣瀬教授のARコンテンツが「万世橋・交通博物館 思い出のぞき窓」なのだろうと不思議に思っていたが、廣瀬教授は実は筋金入りの「鉄道マニア」だったので納得した次第だ。

私はエンジニアではなく、一介のマーケッターにすぎない
私がここで語る内容は、マーケティングコミュニケーションの人間が語ることなので、物足りないあるいは専門家(例えば、日本バーチャルリアリティ学会など)からみれば厳密でないこともあるかもしれないが、そのことはあらかじめご承知を願いたい。


■思いのほか歴史あるVirtual Reality

講義の冒頭、廣瀬教授からVRについての簡単な概説があり、過去にも何度か繰り返し注目されたり話題なったことがあるとの話しだった。

VRというのは、ごく最近になって現れた技術ではなく、VRのコンセプトや技術の萌芽は、この分野の先駆者と言われているアイバン・E・サザランドの68年の研究にまでさかのぼる。彼の教え子のひとりには、パーソナルコンピューターの父と称されているあのアラン・ケイがいる。

その後、米国のマイロン・クルーガーが83年に出版した"Artificial Reality"という書籍を発表し、以降、ARという言葉がかなり知られるようになった。ARといえば、最初はこちらを指していた。

このARは、インタラクティブアート的なコンテキストで語られ、古くてコンセプチュアルな言葉であり、今日ではVirtyal Reality(仮想現実)という言葉が広く一般的に使われ、この古い意味でのARという言葉自体は最近ではめったに聞くことはない。

この"Artificial Reality"というコンセプトに現在もっとも活かしていると思われるのは、東大発のベンチャー企業として知られるteamLabが、視覚効果や音響効果を駆使して様々なインタラクティブ・デジタルインスタレーションを手がけている。

さて、かつてのVRといえば、いずれもまだコンピュータグラフィック(以下、CG)はマシンも制作も高価な時代で、大きな展示会(エキスポなど)や国際的なイベントで近未来のテクノロジーの可能性をお披露目(デモ)するため、あるいは学術的な研究の成果ためになされていた時代だった。

しかし、21世紀の今日、ようやくVRやARはコンテンツ主体の実利的な利用目的になってきた

毎年世界最大級の「ものづくり専門展」として開催されている「日本ものづくり ワールド」(総称)の一環として、「3D&バーチャルリアリティ展(IVR)」もあわせて開設されており(東京のみ)、すでに23回(2015年)を数えているほど歴史があることからも、これが最近の新しい技術ではないことがわかるだろう。


■繰り返されてきたVirtual Reality(仮想現実)への関心

私がVRというものに出会ったのは80年代末から90年代初頭、まだ広告代理店の傭兵マーケッターでマルチメディアという言葉がさかんに喧伝されていたころだった。

またまた、こうしたCG制作に携わっている友人たちが数人いたことで、彼らからVRの話しをよく聞いていた。中には、米シリコングラフィックス社の高額なマシーンを導入したゲーム開発者もいて、わざわざ見せてもらに出かけたこともあった。
そうした事情から、私は比較的早くからVRとの接点があった。

21世紀になり、いくつかのベンチャーやスタートアップでマーケティングに携わってきたが、私が最後に在籍していたベンチャーが実はこうしたVR企業だったのも奇縁だろう。

当時(07〜08年)、セカンドライフという言葉とともに、VR(業界内ではメタバースと呼んでいた)が国内でも一般にも認知されるようになり、国内ネット企業も続々とVRビジネスに参入し、専門メディア(THE SECOND TIMESなど)が開設され、トヨタ自動車を筆頭に大手企業のVR活用が話題となっていた。

08年には、グーグルも3D仮想世界LivelyでついにVRに参入してきた。だが、たった6か月で撤退を表明した。私自身、参入してきたときよりもむしろサービス閉鎖表明の方が衝撃的だったことをいまでも覚えている。

その後、3D仮想世界の熱狂は嘘のように急激に退潮し、こうした仮想世界のビジネスに参入していたネット企業も続々と撤退してあたかも衰退したような状況となった。

そうした"ブーム"が去ったあと(08年11月)、私はゼロ年代のVR業界を総括するブログ『仮想世界もリセッションか?』(4回連載)を書き、その『追記:仮想世界もリセッションか?』というブログの最後では以下のように述べた。

「それでも敢えて言う。今日、停滞をしている仮想世界ではあるが、仮想世界はやはり進展していくと。」

今日、ウエラブル、IoTなどのテクノロジーの急速な伸展、先述の主要プレイヤーがスタートラインについたことで、ようやく本格的な活用時代が到来した。


■Augmented Reality(拡張現実)の登場

ゼロ年代の3D仮想世界の去ったあと、注目されるようになったのがこのAR=拡張現実だ。これは先の"Artificial Reality"とは異なる。

こちらのARは、ある周囲環境(主に風景や建物など)の一部に、デジタルデバイスを活用してヴァーチャルな情報(テキスト、画像、イメージなど)を表示(付加)することをいう。

今日ではARといえばこの拡張現実を示すのだが、このARもVRの一種ということもできるだろう(そうでないという人もいる)。このARは、現実の環境(建物や背景)に様々なデジタル情報を重ね合わせて表示する技術なので、完全に人工的な世界構築を目指しているVRとは異なると主張する人たちの意見もある。

ARが日本でもっとも注目されたのは、09年にGPS(位置情報)を活用したiPhoneアプリの「セカイカメラ」だろう。
また、12年に東京駅丸の内駅舎保存・復原 完成記念イベントとして開催され、人が殺到しすぎて中止になったほどのプロジェクションマッピング(Projection Mapping)を見たことのある人も多いと思う。

プロジェクションマッピングは、CGや多彩なデジタルコンテンツとプロジェクタなどを活用し、建物や物体、あるいは空間などに対して映像を映し出す技術でこれも一種のARだ。

今年のなり、マイクロソフト、アップルもAR領域に参入してきた。後者が買収したMetaioもAR企業で、なんとあのVolkswagenのプロジェクトから派生したテクノロジー企業だそうだ。しかも、アップルでは、マイクロソフトが開発したばかりのHoloLensチームから、なんとその主要な技術者を引き抜くという荒技なのでその本気度がわかろうというものだ。


■VR・AR、これからの可能性と2つ方向性

これからの可能性や方向性としては、私自身は大きくは2つあると考えている。

1つは、MHD(ヘッドマウンドディスプレー)を着用したいわゆる没入型だ。
私も一度だけOculus VRを体験したことがあるのだが、それは言葉では表現しきれないし伝えられないと思う。体験したものだけにしか感覚がわからないと思う。

このタイプのVRは、スポーツ、コンサート、ゲームなどのエンターテイメント分野を中心に、旅行、歴史など観光資源のVRコンテンツ利用、3Dパノラマ効果による3Dエクスペリエンスなどが実現できるもので、主にコンシューマー向けのビジネス展開が有望視されている。

スポーツやコンサートなどはドローンによるカメラワーク(撮影)なども加わり、こうしたエンターテイメント分野では新たな体験の次元に入るだろう

また、最近ではオンラインでのいわゆるVirtual EXPOが増えつつあるが、そうしたイベントでの活用も期待される。それにより、従来とはまったく異なるユーザー体験が提供できるようになる。
さらに、リアルで開催されている展示会イベントも、それまでのようにネットの映像中継を見ているのとは違い、実際の会場にいるような臨場感を、こうしたHMDを活用することで提供可能となるだろう。私だったら、なによりまずアップルの新製品発表会を体験してみたいと思う(^_^)。

サムスンとOculus VRは来月(11月)、初めての仮想現実(VR)のHMD「Gear VR」を、99ドルという価格で一般消費者向けに発売を開始する(サムスンがスマホのみ連動)。国内でも、ソニーが来年(16年)にはプレーステーション用の新しいHMDを発売するという。

また、パナソニックとNTTでは、20年に開催の東京オリンピックへ向け、VR視聴体験を提供できるように開発を進めている。
こうしたテクノロジーは、ヘルスケアビジネス分野でも間違いなく大きく貢献するだろう。

ARでは、例えば、ある街や場所でスマートフォンやPadなどをかざすと、昔の街並みが映像として再現されるようなもの。さきに紹介したドイツのMetaioでは、Timetravelerを利用すれば、ベルリンを訪れた旅行者にベルリンの壁があった当時の様子を見ることができる。

こちらも、今後はさらに伸展と多様な分野での活用・利用が期待されている。
今後は、周辺機器を含めて国内外の様々な企業の参入が相次ぐことだろう。

また、プロジェクションマッピングはARより先に様々な分野で活用されるだろう。

例えば、このテクノロジーはすでに英国ロイヤルオペラ、ラスベガスでの歌舞伎イベントにまで活用されている。今後もこうしたステージ(演劇やコンサート)演出や各種イベントなどで、かつてレーザー光線が人気となったように、演出道具として大いに期待れている。


■意外なVRプレイヤーが多いカナダ

ところで、こうしたVR・ARのテクノロジー開発は意外なことにカナダが盛んだ。

カナダ・モントリオール大学デザイン研究大学院で開発されているHYVE・3D(ハイヴ・3D)がある。その特筆すべき最大の特長は、特別なメガネ・HMDなどのVR装置なしの裸眼で3Dホログラムを活用するというもの。

すでに、3D-VRの技術は、HMDなどのデバイスを必要としない次元に突入している。こちらは、まずはエンタープライズ分野での導入が進むだろう。

もうひとつのHolusは、カナダのスタートアップ企業のH+ Technologyが開発した技術で、こちらも裸眼で3Dホログラムを楽しめる技術だ。
これはきっと、コンシューマーマーケット、特に家庭向けゲームなどのエンターテイメント分野で利用や支持が広がるだろう。

将来、ウエラブルとIoTが進化すれば、特別なウエラブル端末なども不要で、VRやARを気軽に楽しめるのが普通になり、かつてはSFと考えられていた世界がもうすぐ実現される。

世界的スポーツ飲料メーカーのゲータレードはブランディングを目的としたVRコンテンツを制作、グーグル・グラスも新たなプロジェクトへ進化し、フェイスブックでは360度全方位動画によるVR体験の提供を開始した。


■そしてDigital Ambient Societyへと進化する

そうしたすべての環境がデジタル化され、これからは3D的仮想世界と拡張現実の各々の技術が融合し、Digital Ambient Societyと私が定義している社会へとますます加速していくだろう。

デジタルを活用すること、デジタルを普通に使うことが特別なことではなく、すでに「日常」である社会だ。そうした時代の人々のコミュニケーションは、一体どのようなものになっているのかも興味が尽きない

13年3月、3D仮想世界の3Di株式会社が解散したニュースに接したとき、「3Diの解散によせてーーCommunication Metamorphosesという視点で考えた」というブログを書いた。
その中で、私は以下のように述べた。

「将来的な技術の進展がもたらす時代ーーそれはウエアラブルコンピューティングやデジタル・アンビエント社会などーー、何らかの斬新で付加価値の高い新しいコミュニケーション体験(変容)を提供できるサービスが登場し、3D仮想世界コミュニケーションが活用される時代が再び到来するかもしれないことは、もちろん付け加えるまでもなく想像に難くないだろう。」

このとき、はじめてデジタル・アンビエント社会=Digital Ambient Societyという言葉を私は使った。
以降、個人ブログ(The Blog Must Go On)でも当ブログでも折に触れて言及しているが、もとより私の勝手な定義であるので認知されているわけではない。

しかし、近い将来、デジタルサイネージのように、空間などでネットワークに接続したディスプレイや映像・情報を表示するシステムや機器を必要とせず、なんらかのウエラブル端末を携帯(身につけて)さえしていれば、あらゆる空間や場(環境)すべてがスクリーンとできる社会が到来する。

私個人はデジタル・アンビエントが日常となっている世界を一刻も早く体験してみたいものだ。
究極のVR体験は、『新スタートレック(TNG)』でお馴染みのホロデッキ(『DS9』ではホロスイート)だろうと思ってはいる(;^^)ヘ..。

ところで、仮想世界が、熱狂から退潮しつつあるとき、VRは所詮はオタクのものですよねという人がいた。これは、ソーシャルメディアが台頭してきたときに、ブログはもう古いですよねというのと同じだ。
これに限ったことではなく、流行・廃りあるいは表層しか見えていないとこいう発言が毎度のごとく繰り返されるのだ。

さて、こうして最先端の研究開発や第一線研究者の人たちを招き、ほかではなかなか知ることができない話しをうかがえるSCHOLARは、毎回じつに刺激的で貴重な集まりで楽しみなのだ。
次回は記念すべき第10回目。10/27(火)、京都大学大学院 情報学研究科システム科の大関真之先生による講義。科学教育、そして社会を変える思考のヒントとのことで楽しみだ(^_^)。


<10/27(火)>大関真之「サイエンス教育を変える「理論物理学」の方法」」
http://scholar10.peatix.com/


(関連リンク)
▼AR/VRが1500億ドル(18兆円)産業へとブレークするための7つの条件
http://jp.techcrunch.com/2015/07/09/20150708the-7-drivers-of-the-150-billion-arvr-industry/

▼VRが現実を拡張するその先で、ヒトは「認知」の新たなステージを獲得する
http://wired.jp/innovationinsights/post/wired/w/virtual_reality_changes_us/?user=normal

▼フェイスブック、携帯機器に仮想現実取り込み目指す
http://jp.wsj.com/articles/SB10063581187792594737804581231620976306838?reflink=fb

▼現実空間にホログラムを投影する「HoloLens」デモがすさまじすぎて必見レベル
http://gigazine.net/news/20150430-microsoft-hololens-demo/

▼現実とCGをブレンドする「HoloLens」。MS新HMDの正体
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/rt/20150617_707456.html

▼マイクロソフト「HoloLens」の第一印象--かつてないAR体験を実現するヘッドセット
http://japan.cnet.com/news/commentary/35059369/

▼Appleが定評のある拡張現実スタートアップMetaioを買収していた
http://jp.techcrunch.com/2015/05/29/20150528apple-metaio/

▼アップル、拡張現実への本格的な参入が明らかに
http://readwrite.jp/archives/23803

▼アップルがマイクロソフトHoloLensの技術者を引き抜き。アップルメガネが登場?
http://japanese.engadget.com/2015/09/06/hololens/

▼現実と仮想を完全融合、最新VRがすごい!
http://toyokeizai.net/articles/-/55130

▼卓上に3D映像が浮き上がる?「Holus」で広がる可能性
http://nge.jp/2015/06/14/post-107649

▼伝統芸術×最新テクノロジー
http://dentsu-ho.com/articles/3027

▼ゲータレード、世界初の「VRマーケティング」を実施。MLBのスター選手になろう
http://digiday.jp/brands/gatorade-enters-game-first-vr-experience/

▼グーグル・グラスは「Project Aura」に生まれ変わっていた
http://www.gizmodo.jp/2015/09/project_aura.html

▼フェイスブック、360度全方位動画に対応
http://jp.wsj.com/articles/SB12208348323212744301304581251871687818838

<廣瀬・谷川研究室>
http://www.cyber.t.u-tokyo.ac.jp/ja/

<SCHOLAR:facebook公式ページ>
https://www.facebook.com/SCHOLAR.tokyo


(おすすめブログ)
●仮想世界もリセッションか?(1)
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/624212.html

●仮想世界もリセッションか?(2)
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/636856.html

●仮想世界もリセッションか?(3)
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/665339.html

●追記:仮想世界もリセッションか?
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/704975.html

●3Diの解散によせてーーCommunication Metamorphosesという視点で考えた
http://blog.marketing.itmedia.co.jp/macume/entry/350.html

<SCHOLARブログ>アーカイブ
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/cat_50673.html

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〓 The Blog Must Go On 〓
http://blog.livedoor.jp/macumeld/
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梅下武彦

梅下武彦

コミュニケーションアーキテクト兼ブロガー。20世紀は広告代理店の傭兵マーケッター、21世紀はベンチャー企業のマーケティング責任者を数社で歴任。現在、マーケティングコミュニケーション領域の戦略立案や設計(最適化)、アドバイザーとして活動をする一方、主にスタートアップ支援を行いつつSocialmediactivisとして活動中。Digital Ambient Society、Communication Metamorphosesが進行しつつある今日、そうした多様な社会現象・事象、時代情況を独自のマーケティング視点で語るコラムとしたい。

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