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» 2016年2月12日 更新

ハイ・コミュニケーション私論 コミュニティ運営における「3つのレッスン」ーーJapan NYC Startups Meetup運営者を招いて〜ニューヨークでのミートアップ運営で学­んだこと

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私的公開日誌@160212.01

昨年10月、ようやく日本語でも利用できるようになったMeetup(共同創業者&CEO スコット・ハイファーマン)というサービスある。

このニューヨーク(以下NYC)発のサービスは、今日では世界約180カ国、2,500万人が利用している世界最大級のローカルコミュニティ・交流プラットフォームで、私は日本語で提供されるまで恥ずかしながら実は知らなかったのだ(^_^;)。
国内でもすでに2,200グループ、13万人のユーザー(私もその一人)がいるサービスとなっている。


■設立は14年前の02年

サービス開始は、最初のSNSサービスと言われているFriendster(フレンドスター)設立と同じ02年と実は古く、誕生のきっかけは9.11米国同時多発テロ事件で、この惨劇をきっかけにNYC市民同士のリアルな会話や対話の場の必要性を感じたことが設立に至った大きな要因だった。

そのサービスが、15年10月からようやく日本語でも利用できるようになったのは、友人の市川裕康さんの尽力の賜だろう。
従って、facebookのように全世界で15億人近いユーザーを抱えるサービスと比較すると、ユーザー数では比較にならないほど少ない印象があるだろうが、地域密着とリアルなつながりとコミュニティ形成支援を理念にかかげて運営されきたことが大きな特長だ。

そういう点では、現在のようなオンラインで世界中がつながり、コミュニケーションや交流を目的としている他のSNSやコミュニティサービスとは一線を画し、あくまでもリアルなコミュニティが軸であり、そのためだけのサービスなのだ。
シングルタスクサービス(企業)であり、無駄に他のソーシャルメディア(SNS)に追随することなく現在まで発展してきた。

便利なソーシャルテクノジーが次々とリリースされ続けているにもかかわらず、今日においてもユーザーに支持され、さらに新規登録者を獲得できているのは、やみくもにスケールすることを追わずにブレることなく、着実にユーザーに寄り添いながら歩んできたからだろうと個人的には感じる。

サイトには「Made in NYC」の文字が誇らしく添えてある。


■Masa Okunishi(奥西正人)さんについて

さて、この日のゲストスピーカー奥西正人さんは在米18年のエンジニア

このたび一時帰国したこともありその奥西さんをお招きし、NYCで立ち上げたJapan NYC Startups Meetupで1年で800人もの仲間を現地で集めた秘訣、コミュニティ運営のコツなどを語るということで、チャンスだと思って出かけた。参加者は20名ほどだった。

奥西さんは、97年にアメリカ南部に6ヶ月の留学のはずが、02年Syscom (米) 入社、04年NYC転勤、11年世界一周旅行、13年医師評価・予約ベンチャーZocDoc(ゾックドック)のエンジニア、15年Japan NYC Startups (Meetup) 設立、そして今年に入り、iTuneを利用したポッドキャストコンテンツ"Rising Startups"という新しいサービスをローンチしたばかりだ。

そのNYCでは、毎月1回テック系のミートアップが開催され、なんと5万人もの人たちが集まるそうで参加費は10ドルと実に安い。
お話しで印象的だったのは、ビジネスモデルに関する質問がタブーとなっているとのことだが、これには思わず「ニヤリ」としてしまった。私もスタートアップとユーザーをつなぐミートアップに参加することがある。そこでもこの質問をする人は必ずいるので、それは内外を問わないのだな。要するに儲ける仕組み(収益構造)話しは、ほかのビジネス系ミートアップでたっぷりとしてくれよという意思表示なのだ。

その奥西さんが立ち上げたのがJapan NYC Startups Meetupで、日本に特化したテックコミュニティだ。
日本または日本人+テクノロジーをコンセプトに15年1月に旗揚げし、16年1月現在で800人の参加者がいるそうで、集まりは毎月第1月曜日、60〜70名ほどの参加者で以下の概要で開催されている。

・オープニング
・Meet your neighbors
・スピーカー(15〜20分ほど)
・Q & A
・グループディスカッション
・アナウンスメント
・ネットワーキング


■コミュニティ運営について「3つのレッスン」

今回、奥西さんからコミュニティ運営について、下記の3つのキーポイントが語られた。

(1)他にはない独自性あるグループを作る
・テック系のグループはいくつも存在するが、似たようなテーマや内容ではなく、日本・日本人とスタートアップに特化したコミュニティとして立ち上げたこと。コミュニティでもマーケティング発想のdifferentiation(差別化)は重要である。

(2)参加者同士のコミュニケーションこそが鍵
・リアルイベントでは、"最高のごちそう"はなんといってもそこに集う人たちである。参加者同士のコミュニケーションが円滑になって交流が促進できるように配慮することが、最大の"もてなし"であり重要なファクターである。

(3)ミートアップは定期的(継続的)に開催する
・コミュニティにおける集まりは、コンスタント(例:毎月1回、隔月1など定期)に開催し続けることが、運営者側は大変でも"コミュニティ感"の醸成には大切で不可欠であること。また、日にちや曜日、開催場所もレギュラー(固定)化しておく方がコミュニティ感が得られやすい。

私自身、様々なコミュニティ(グループ)などの運営に携わってきた経験からも、上記の中では特に(3)は大いに実感し納得できることだった。
「去る者は日々に疎し」とはいうことわざがあるが、オンラインかリアルにかかわらず、コミュニケーションが疎遠で円滑にいかない状態や環境だと、どうしても参加コミュニティへの帰属意識も徐々に薄れ、やがて集まりから足が遠のく(忘れ去られる)原理が同じように働くのだなと、改めて気づかされた次第。


■グループではなくコミュニティへの希求

ところで、このブログを書いている最中、イベント管理サービスPeatixがイベント参加者、同じ興味・関心などを持つ人が集まることができる「グループ機能」を正式にリリースしたニュースが飛び込んできた。

こうしたサービスは、古くはリクルートATND、everevo、EventRegist、Doorkeeper、tixee、Zusaar、Tickets With Youなど、競合は数多くあり手数料などを含めて過当競争気味だ。

今回のPeatixのグループ機能によるコミュニティプラットフォーム強化戦略は、こうしたサービス群の中で独自性を提供するという、同社自らがピボット(事業転換)だと表明している。
他のサービスもPeatixに倣うか、あるいは各々がほかに独自性ある機能やサービスを開発するのか今後も注目したい。

現在では、facebookなどのグループ機能を活用して勉強会、趣味の集まりや飲み会などのリアルイベント開催の案内・告知が活発化している。
すで、いくつかの企業で「アンバサダーマーケティング」を積極的に推進しているが、特に企業とユーザーがリアルな場で一緒に楽しんだりコミュニケーションするイベントがやはり人気だ。

オンラインだけではなく、小規模でも実際に会うことで生まれるコミュニケーションの意義と価値に企業も気づきはじめている証拠だろう。オンラインの伸展でいつでもだれとでもつながっていることで、生のコミュニケーションへの兆しがむしろ高まりつつある状況だ。

かつて、ソーシャルテクノロジーにより世界中がつながるることで、多様性が共有されたり育まれれるはずという希望があった。

しかし、実際には「フィルターバブル」(イーライ・パリサー)によりむしろ同質化や画一化が進行することで多様性の排除をもたらしたように、オンラインでの気軽に「弱いつながり」(東浩紀)が伸展し加速する一方、リアルで強固なつながり(コミュニティ)への希求が高まっている状況はというなんとも不可思議な人間の精神(心理作用)を垣間見る。

こうしたことは語ると長くなるし本論ではない。これについては別の機会にじっくりと論じてみたい。


■コミュニティ支援がマーケティングを制する時代か?

14年12月、私は『ネット社会で、改めてリアルな場、リアルなコミュニケーションの意義について考えた〜10 over 9 reading club 2014年活動を振り返って』の中で下記のように述べた。

「一つの場に集まり、空気感を共有し、ライブでインプロビゼーションする感覚に近いと思う。本でも人でもセレンディピティは、やはりリアルな場、リアルなコミュニケーションにまだまだ多くを依存していると思う。」

さて、こうしたリアルな集まりの増加していることもあり、主催者・参加者ともに誰でもイベントへの出費はできるだけ抑えたいところだ。

今回の参加費は無料だった。主催者Meetupからはビールやソフトドリンク類、軽食(サンドイッチ類)が提供されたのも嬉しくありがたかった。
さらに、この日の会場は、Goodepatchの新オフィスをご厚意でお借りしたとのこと。

最近、スタートアップの新オフィスを訪れる機会が多いのだが、それらの環境はどこも内装がおしゃれであったり遊び心に溢れていたりと羨ましく、20世紀的な企業のオフィス環境とはまるで異なることを実感する。どこも、シリコンバレーやNYCのベンチャーのように、居心地がよく開発やクリエイティブに最適なオフィス環境である。
また、同社に限らず、いくつかのスタートアップやベンチャーでは開催趣旨(理念)やテーマに納得できれば、社外のこうした集まりやイベントなどに会場を積極的に貸し出してくれる企業が増えているのも助かるし嬉しいことだ。

そうした市場ニーズの追い風をタイムリーに受け止めるべく登場したサービスが、15年夏にリリースされた「ナヲナス」だ。
同サービスは、活発に開催されているコミュニティイベントなどに、企業側が新商品や新サービスなどのサンプリング、モニタリングの場として使うことができるもので、企業とのマッチングによるコミュニティマーケティング支援サービス
例えば、ビール好きなコミュニティがあり(^0^;)、そこが集まりを開催する場合、参加者に対してビールの新製品を企業などから無料で提供してもらうことができるような仕組みだ。

おっと、話しを本題に戻そう。
奥西さんご自身、今後は日系スタートアップのためのカンファレンスなどもNYCで開催するというビジョンもお持ちだ。
米国発のスタートアップというと、NYCは全米で2位を誇る多さにも関わらず、どうしてもシリコンバレーが有名であるし、日本人も多くが訪れているし入ってくるニュースや情報量も圧倒的にシリコンバレーエリア発に偏っている。
今後の奥西さんのますますのご活躍とコミュニティの発展、NYC発の情報にも大いに期待をしたい。

最後に、前から気になっていた「ソースの二度付け禁止 名物串カツ! 串カツ田中 渋谷店」で二次会を開催した。残ったむくつけき男8人がさんざん飲んで食べてなんと一人1,000円ちょっとだったのは、懐の寂しい私には実にありがたかった\(^O^)/。


(関連リンク)
▼『Japan NYC Startups Meetup』コミュニティ運営者を招いて〜ニューヨークでのミートアップ運営で学­­んだこと
http://www.meetup.com/ja-JP/TokyoCMMeetup/events/228422786/

▼[Meetup開催レポート]ニューヨークのミートアップ運営で学んだこと[Japan NYC Startups Meetup]の経験から
http://bit.ly/1Q4Ujrc

▼Masa Okunishi(奥西正人さんのサイト)
http://masaokunishi.com/

▼在米17年の日本人が語る「エンジニアにチャンスがある街」、ニューヨーク
http://www.lifehacker.jp/2015/08/150828nulab_ny_interview.html

▼市川裕康「デジタル・キュレーション」
http://gendai.ismedia.jp/category/ichikawa

▼ミートアップのパイオニア「Meetup.com」に学ぶ、「リアルな出会い」だからこそ生まれる価値
http://www.lifehacker.jp/2015/04/150413meetup_community.html

▼【Interview】待望の日本語対応!世界最大級のローカルコミュニティ交流プラットフォームに大接近
http://techable.jp/archives/32623

▼世界最大級のローカルコミュニティ交流プラットフォーム「Meetup(ミートアップ) 」が初めて日本語でも利用可能に
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000015519.html

▼世界で2300万人のユーザを誇るミートアップのためのサービス「Meetup.com」が日本語に対応
http://thebridge.jp/2015/10/meetupcom-into-japan

▼『ソーシャル&リアルがポイント。今求められる新しい出会い、学び、コミュニティの形~「ミートアップ」とは』
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/3422

▼世界最大級の地域交流プラットフォーム「Meetup」が日本語対応!近所の仲間を作ろう!
http://bit.ly/1onbAWq

▼Meetup(サービスサイト)
http://www.meetup.com/ja-JP/

▼延べ200万人動員、イベント管理サービスのピーティックス「グループ機能」を正式リリース、コミュニティプラットフォームとして事業転換
https://www.value-press.com/pressrelease/156776

▼企業がコミュニティに対してダイレクトにスポンサードや商品タイアップを依頼できる「ナヲナス」
http://thebridge.jp/2015/08/nawonas

▼ナヲナス(サービスサイト)
https://nawonas.com/


(おすすめブログ)
●ネット社会で、改めてリアルな場、リアルなコミュニケーションの意義について考えた〜10 over 9 reading club 2014年活動を振り返って
http://blog.marketing.itmedia.co.jp/macume/entry/710.html

●指令!「愛」を獲得せよーーアンバサダーマーケティングは21世紀的な囲い込み戦略か(序論)
http://blog.marketing.itmedia.co.jp/macume/entry/718.html

●指令!「愛」を獲得せよーーアンバサダーマーケティングは21世紀的な囲い込み戦略か(本論)
http://blog.marketing.itmedia.co.jp/macume/entry/720.html

●誰がためのSNSーーFacebookにおける転換、そして「友達」とは何か、それは誰のことか?
http://blog.marketing.itmedia.co.jp/macume/entry/652.html

●【書評】セレンディピティや多様性が失われ、「類は友を呼ぶ」だけの世界になってしまうのか?ーー『閉じこもるインターネット』
http://blog.marketing.itmedia.co.jp/macume/entry/671.html
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〓 The Blog Must Go On 〓(個人ブログ)
http://blog.livedoor.jp/macumeld/
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梅下武彦

梅下武彦

コミュニケーションアーキテクト兼ブロガー。20世紀は広告代理店の“傭兵マーケッター”、21世紀はベンチャー企業のマーケティング責任者を歴任。現在、マーケティングコミュニケーション領域の戦略立案や設計、アドバイザー・メンターとして活動している。また、様々なソーシャルメディアで活動するSocialmediactivisとして、現在をDigital Ambient Society、Communication Metamorphosesと定義し、そうした多様な社会現象・事象、時代情況を独自のマーケティング視点で語るコラムを執筆中。 ソーシャルテクノロジー社会、Marketing DisruptionとCommunication Ecosystemの関係を探求している。

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