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» 2016年2月23日 更新

ハイ・コミュニケーション私論 The Community for the rest of us(前編)ーー「コミュニティフォーラム2016」に参加して

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はじめて「コミュニティフォーラム2016」に参加した。
このイベントは、毎年2〜3月に開催され、今年ですでに11回目を迎えたとのこと。
様々なNPO、市民活動グループ、プロボノ、ソーシャルデザインなどに関心のある人たちが、年1回こうして一堂に会して相互の知見をシェアすることが目的だ。

コミュニティに対する考え方、コミュニケーションのあり方や方法、運営(マネジメント)における課題など、そうした多様な現状を知ることができるまたとない機会だと思って出かけた。
当日はあいにくの冷たい雨天だったが、200名ちかくの参加者で会場は熱気に満ちていた。
気づき、示唆、学び、確認など意義深い時間となったので、自分自身への"振り返り"とともに、例によって皆さまにもお裾分けブログとしたい。

私がこのイベントを知ったのは、1月に友人主催の『コミュニティマネジャー感謝の日』というイベントに参加し、CRファクトリー代表の呉哲煥さんとご縁を得たことがきっかけだ。
呉さんは、NPO、市民団体などのコミュニティ支援やマネジメントを通じた人材育成、コンサルティングなどを手がけるNPO法人の代表を務めるかたわら、そうした様々なコミュニティの運営状況・状態とその発展や達成度などのパフォーマンスとの相関関係を、大学と共同で調査研究する「コミュニティキャピタル研究会」も行っている。

今年、フォーラムのテーマは「"強くあたたかい組織"を社会に増やすために」と題し、主催はCRファクトリー、共催にはCANPANプロジェクト、日本財団で、その財団ビル2階大会議室にて開催された。
当日のプログラム内容は以下の通り。

(第1部)基調講演
・NPO法人マドレボニータ 代表理事 吉岡マコ氏
・NPO法人CRファクトリー 代表 呉哲煥

(第2部)分科会
<分科会Aテーマ>理念共有・浸透
・NPO法人チャリティーサンタ 代表理事 清輔夏輝氏
・NPO法人こまちぷらす 副代表 北本若葉氏
・NPO法人マドレボニータ 理事 高橋葉子氏
<分科会Bテーマ>関係性づくり
・NPO法人コモンビート 理事長 安達亮氏
・NPO法人ダイバーシティ工房 代表理事 不破牧子氏
・一般社団法人CAN net 代表理事 杉山絢子氏
<分科会Cテーマ>メンタリング(個別支援)
・NPO法人日本ブラインドサッカー協会 事務局長 松崎英吾氏
・非営利型株式会社Polaris 取締役 大槻昌美氏
・NPO法人CRファクトリー 代表 呉哲煥

(第3部)振り返り&トークセッション
<懇親会・ネットワーキング>


■コミュニティ運営における重要な「3つの観点」

このフォーラム開催にあたり、呉さんは昨年8月から今年の1月の半年間にわたり、NPO18、社団法人1、任意団体1、株式会社2の計22の団体へのインタビューを行い、上手く運営されているコミュニティや組織におけるマネジメントについて調査を実施した。

それら調査結果を「工夫・仕組み・施策」としてピックアップしてそれらをどんどんポストイットをしたが、145の施策とそれによる250の効果にまで膨れあがったそうだ。施策に対して効果の数が大きいのは、1つの施策で2つの効果を得られるものなどがあるためだ。
次に、これらに「意図と効果」を切り口に、各々が上手くいっている理由や創意工夫や仕組みなどの近い内容をグルーピングし、最後にグループ間の相互関係・因果関係を考察して全体の連関図にまとめ上げた。

この日のフォーラムでは、こうした調査と分析から導き出された知見を、参加者たちと共有した。

それは、以下の3つの重要な観点あるいは取り組み(構造)として提示された。

(1)理念共有・浸透
ほとんど誰でも理念の共有が大事だとわかっているが、浸透させるのは至難である。浸透というのは、常にそれが行動指針、それに基づいての活動を継続ないしは発展させるということである。

こうした理念の共有や浸透させるために実施している中で一番多いのが、リアルな対話や会話を通じたイベントやリクリエーションである。メンバー同士で一緒に食事会をしたり、年に数回合宿を行っている団体が実に多く、こうしたアクティビティを通して共有を浸透するようにしていることがわかる。

今日、メールやメッセンジャー、チャットなど、誰でもがオンラインで情報共有や交換ができる。外部との連絡はもとより社内での意思疎通もメールだけで済ますことができる。したがって、人と直接会話をする機会は意図的ないしは意識的に作り出さなければならない時代である。
私もいくつかベンチャーで経験があるが、同じフロアにいてもこうしたツールでやりとりをしているだけで、1日中会話をしないで済ますことがあった。

だからこそ、直接会話をすることが意義や価値を持つようになる。
あるクリエーターと仕事をした時の話しだ、直接会ったことはなかったが、メールだけでやり年をしていて誤解が生じてしまった。地方在住なので、直接会うことができなかったが、電話で直接話をすることでそうした誤解や行き違いを氷解させることができた。

ところで、7〜8年前、「ICTスポーツ大会」というのに参加したことがある。これはベンチャーのいくつかの企業が参加して開かれる大運動会で、毎年約500人もの人たちが参加していた。
主催者に話しを聞くと、普段、なかなか時間がなく会話をすることが少ないメンバー同士が一緒に汗を流し、勝利のために団結し、そのあとに飲みにケーションを通じ、親交や絆を深めることで仕事にも良い影響や効果がもたらされるとの話しがあり、それはとても納得できることだった。

(2)関係性づくり
このテーマに関する施策が数としては一番多かったとのこと。
ここでは「チェックイン」が紹介された。

これは、新メンバーを迎え入れるいわゆる新人歓迎会で、どこの組織でも必ず行っているだろう。しかし、飲み会を漠然と開催すればよいということではない。

特に新しいメンバーが入ってきた場合、みなと早く溶け込んでコミュニケーションしやすい環境、組織に馴染んで力を発揮しやすい状況を用意することが重要視されている。初めて他のメンバーたちに会う瞬間でもあり、ほかのメンバーたちと緊張感や違和感なく会話が楽しめ、居心地のよいコミュニティだと感じてもらうよう配慮する必要がある。

ついメンバー同士の会話に夢中になってしまい、新人が一人ポツンと飲んでいたり会話の輪から置いてきぼりにされないように気をつけること。こうしたメンバー同士の食事会やリクリエーションを通じ、相互理解を深め結びつきを強くできるようにしている。

また、いくつかの団体で導入しているのが「ニックネーム」で呼び合うようにしていることだ。
フラットな組織であること、愛称でお互いを呼び合うことで親しみや愛着がより深まるように工夫している。

(3)メンタリング(個人支援)
これは、組織とは、結局は個人の集合体であるので、個人のメンタルケアが重要なのはわかっていても、実際には業務に追われてどうしても個々のメンタル面までは把握仕切れないし、組織が成長や発展してくると、どうしてもそちらが優先されてしまいがちになり、個々の人たちをフォローしきれなくなってしまう。

しかし、今日では精神面でのケアについては大企業ではカウンセリング制度や専門カウンセラーを採用しているとこもあり、効率性より人間関係がそのまま組織に及ぼす影響が大きなコミュニティにおいては不可欠な施策であり、それと同時に最も配慮しなければならないことだろう。

仕事へのストレス、対人関係の悩みはもちろん、将来やキャリアについての迷いや不安を抱え込んだままで仕事を続けていると生産性も落ちてくる。
これは、メンバーひとり一人の成長がそのまま組織に発展につながることが多い小さな組織では特に重要だろう。

個人を支援するために多くが行っているのが、一対一による個人面談でケアすることだ。
この場合、改まって面談会を設定するというより、月に1回程度、サシメシ(一対一)でランチやお茶会などに誘う仕組みなどを用意し、気軽に話しや相談ごとを切り出しやすいように工夫している。

ほかにも、年に数回、全社でファシリテーション会を行い、定期的に集合知やノウハウなどをシェアするイベントを開催し、メンバー個々人のキャリアアップや成長を促進できるような施策を行っている団体が多かった。

このブログを書くにあたり、このフォーラムのためにまとめられ、当日配布された35ページちかい小冊子『強くあたたかい組織をつくるリーダーのための指南書』(トップの写真)を読み直してみると、あらためてこの半年間の調査と分析を通じて得られた知見やエッセンス、ノウハウがぎゅっと詰まった貴重な資料(ガイドブック)だと感じる。

一方では、こういう声もあるだろう。気軽に始めるコミュニティだから、強くあたたかい組織というような意志堅固に構えず楽しく運営したいだけだと。確かにそういうコミュニティの方が実は多いだろう。

しかし、夢や想いを描いているうちは楽しいが、いざ実現してみると実に様々な困難にぶち当たる。
また、コミュニティそれ自体も生き物で進化するので、程度の差こそあれそうした課題は大同小異である。つまり、その壁は高くはないかもしれないが、似たような壁に直面するだろう。

そういう意味では、今回の発表された内容は「The Community for the rest of us(普通の人々のためのコミュニティ)」にも十分に役立つはずだ。


■いまこそ求められる「コミュニティマネジャー」とコミュニティマーケティング

最近特に耳にするようになった言葉である。

私の周辺にも、こうした職種に携わるあるいは支援するビジネスに関わっている友人は多い。先進的な企業でも、コミュニティマネジャーという役職はコンセンサスがほとんどない職種である。

米国では、そうした多種多様なコミュニティマネージャー同士の対話や知見(ノウハウ)を共有するため、全米からだけではなく世界各地から多種多様な人たちが集うカンファレンス「CMXサミット」が開催されている。

このカンファレンス自体、すでにアムステルダム、ロンドン、カラカウ(ポーランド)、オスロ(ノルウェー)、シカゴ、フィラデルフィア、香港など世界各地で「TED」のように次々に開催されているそうで、いずれ国内でも「CMXジャパンサミット」が開催される日も近いのではないかと心待ちにして期待している。
また、今後はソーシャルメディアにおいても、特にコミュニティマーケティングが重要視されるようになるだろう。


後編では、イベントに参加して気づきたこと、示唆、私なりに考えたことなどについて述べたいと思う。

(後編に続く)


(関連リンク)
▼コミュニティフォーラム2016
http://www.crfactory.com/wp/forum2016/

▼コミュニティキャピタル研究会
http://communitycapitallabo.jimdo.com/

▼CANPANプロジェクト
http://fields.canpan.info/

▼日本財団
http://www.nippon-foundation.or.jp/

▼コミュニティ参謀日誌
http://sanbou.pne.club/

▼『Japan NYC Startups Meetup』コミュニティ運営者を招いて〜ニューヨークでのミートアップ運営で学­­んだこと
http://www.meetup.com/ja-JP/TokyoCMMeetup/events/228422786/

▼[Meetup開催レポート]ニューヨークのミートアップ運営で学んだこと[Japan NYC Startups Meetup]の経験から
http://bit.ly/1Q4Ujrc

▼コミュニティマネージャー同士の対話・ノウハウ共有の必要性から生まれたカンファレンス「CMX Summit」とは?
http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/43271

▼「コミュニティはデジタルマーケティング戦略の次のフェーズになる」 全米からコミュニティマネージャーが集った「CMX Summit East」レポート
http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/43456


(おすすめブログ)
●気づきや経験を教えあう、シェアするサービスが続々登場 ─ 活況を呈するスキルや経験、ノウハウのコミュニティ
http://blog.marketing.itmedia.co.jp/macume/entry/588.html

●コミュニティ運営における「3つのレッスン」ーーJapan NYC Startups Meetup運営者を招いて〜ニューヨークでのミートアップ運営で学­んだこと
http://blog.marketing.itmedia.co.jp/macume/entry/777.html

▼ITベンチャースポーツ大会
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/605467.html

▼今年も開催されるITベンチャーのためのスポーツイベントーースポーツを通じたコミュニケーション
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/976528.html

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プロフィール

梅下武彦

梅下武彦

コミュニケーションアーキテクト兼ブロガー。20世紀は広告代理店の“傭兵マーケッター”、21世紀はベンチャー企業のマーケティング責任者を歴任。現在、マーケティングコミュニケーション領域の戦略立案や設計、アドバイザー・メンターとして活動している。また、様々なソーシャルメディアで活動するSocialmediactivisとして、現在をDigital Ambient Society、Communication Metamorphosesと定義し、そうした多様な社会現象・事象、時代情況を独自のマーケティング視点で語るコラムを執筆中。 ソーシャルテクノロジー社会、Marketing DisruptionとCommunication Ecosystemの関係を探求している。

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