ニュース
» 2012年11月13日 更新

初心者が書く、初心者のためのCRMマーケティング 第2回 「CRMのマーケティングモデルを知る」〜戦略層(経営戦略)編〜

 今回、ご紹介するのは第1回コラムで記載したピラミッドの最上部に位置する"戦略層(経営戦略)"。CRM戦略の3要素である、「①企業モデルの個客エージェント化」「②収益機会のLTV化」「③顧客セグメンテーションのダイレクト化」について解説していきます。

①企業モデルの個客エージェント化

ここで言う"個客エージェント"とは、顧客の購買・活動・意思を代行する「カスタマーアウト」の考え方を持つことを指します。聞き慣れない言葉かもしれませんが、これまで唱えられてきたさまざまなマーケティングコンセプト、企業モデルの変遷を振り返りながら見ていきましょう。

1970年代までは供給者がマスに対して一律の活動で効率よく販売する「プロダクトアウト」の考え方から来るマス・マーケティングが主流でした。その後、顧客ニーズが細分化すると共に販売者の視点から市場ニーズを把握した上で販売する「マーケットイン」の発想へ。1980年代後半以降はミスミの創業者である田口弘氏が生み出した「マーケットアウト」という企業モデルが登場。これは従来の"販売代理型"とは異なり、企業が顧客の立場に立ち、利害を代弁する代理人(エージェント)として機能する"購買代理型"のモデルとなります。この進化は同時に企業がマスからセグメントへと顧客を見る視点の変化をもたらしました。

一方で、1980年から1990年にかけて企業が顧客を細かくセグメントして他社製品・サービスとの差別化を図る多品種化を進めたため、顧客に対して提供される選択肢と情報量が大幅に増加。実際、大手自動車メーカーはこの年代に基本車種を99種から150種と1.5倍に。大手オフィス家具メーカーは取り扱い品種を2万種から3倍の6万種にまで増やしています。これにより、顧客にとって購買決定に至るまでの選択要素が増え過ぎ、関心が低い商品・サービスに関しては積極的に活動しなくなる傾向に。「どうでもよい」といった態度となることで顧客のニーズが曖昧化。企業からは「見えない顧客」「もの言わぬ顧客」と言われるようになります。

また、"個客エージェント"を語る上で成熟社会の到来という側面も見逃せません。「国民生活に関する世論調査(総理府)」によると、今後の生活の力点として、非必需的、非生産的、娯楽的なソフトな部分である「レジャー・余暇活動」を選ぶ人が1984年に27%であったのに対し、1999年には32%と向上。「国民経済計算年間(内閣府)」の調査結果からは、2001年から2006年にかけて「娯楽・レジャー・文化」への個人消費が実質ベースで4割近い大幅な伸びが見てとれます。こういった消費分野では消費・購買理由に必然性が薄く、ニーズの内容が個人差で大きく異なるため、これまでの属性データ(年齢、性別、職業など)からニーズを読み取りにくいという「顧客ニーズの混淆化」が起こりました。

このように、現代において「ニーズが曖昧・混淆になった顧客」に対して臨むためには、企業モデルの個客エージェント化が求められます(下記の図参照)。顧客自身、ニーズが曖昧だからこそ、必要な時期に(ジャストタイミング)自分の最適なものを作り(カスタマイゼーション)、探し(マッチング)、推奨して(レコメンデーション)くれれば助かるし、自ら探す場合には1ヶ所(ワンストップ)で終わらせたら利便性を感じます。さらには、ニーズだけではなくウォンツに対応して必要な製品・サービスをセットで提供してくれる(メタプロダクト)企業が必要とされているのです。
crm_model.jpg
②収益機会のLTV化

ビジネスをする上で「どこに、どれだけの収益機会があるのか」を考えることは当然であり、このポイントを押さえなければCRMのマーケティング戦略はそもそも価値がなくなります。そこで、「LTV(Life Time Value/顧客生涯価値)」に焦点を当て、収益機会を顧客の軸から見てみます。LTVを定義する4つの側面として「個客シェア」「商品範囲」「顧客時間」「顧客範囲」が挙げられます。

「個客シェア」に関しては、既存顧客との関係性を強めて顧客ロイヤルティをあげ、既存顧客・既存商品・サービスをもって個客内シェアをあげることを目的とします。ただし、これだけでは"新規顧客"へアプローチができず収益機会を最大化することはできません。「商品範囲」と「顧客時間」という観点で重要なキーワードは、大きな消費に付随して短期的に起こるイベント型の"派生需要"と、その後継続的に発生するアフター型の"節目需要"です。

 "派生需要"が発生するケースとして、マンション購入世帯を例にとってみましょう。マンション購入世帯は、一般の世帯と比べて白物家電やカーテンなどの内装品だけではなく、その他の消費へ"派生需要"を生み出します。実際、マンション購入後1年で見ると、自動車やPCで約2倍。ビデオカメラでは5倍弱の高消費世帯であると言われています。また、"節目需要"に関しては、入学・就職・結婚などのライフイベントに発生する需要のことを指します。BtoBビジネスを例に出すと、コピー機などの事務用品の購入に伴うネットワーク接続サービスや補充品の"節目需要"が発生するケースです。

このように、「商品範囲」や「顧客時間」を把握することで、派生需要と節目需要を取り込める可能性が高まります。最後に「顧客範囲」についてですが、特に新しい産業や事業を行う際に大切になってきます。一般的に新規事業の95%は失敗すると言われている背景には、新規顧客開拓の難しさが挙げられます。そこで、他社の顧客データベースを自社の顧客開拓チャネルとして"範囲"を広げて活用する考え方が大事になります。

③顧客セグメンテーションのダイレクト化

「顧客をセグメントする=ワン・トゥー・ワン」と思う方もいるかもしれませんが、あまりに細かくワン(個)をセグメントすると、商品・サービスの開発コストが増大する割には期待した成果が出ません。戦略的セグメンテーションとは、「売上(Value to serve)増効果全体と提供コスト(Cost to serve)のトレードオフを考慮したセグメンテーション」を指します。

では、具体的にどんなセグメンテーションを行えばいいのでしょうか。ここでは、直接的な"買いモード(買う気になっている状態)"情報を求めて需要にダイレクトなものにすることが肝となります。つまり、「買うかもしれない顧客」を探すのではなく「買おうとしている顧客」の情報を探す"ダイレクト・セグメンテーション"。例えば、カーナビを売る場合であれば、やみくもに年齢や購入車種、家族構成などの属性でセグメントするのではなく、「ここ2〜3年カーナビを買い替えていない顧客」にセグメントを設定した方が買う可能性は高いと言えます。このようなセグメンテーションを可能にするための情報として「POI(Point Of Information/情報接点)」情報が有効です。コンビニなどで活用されている「POS(Point Of Sales/販売接点)」情報も十分に役立ちますが、POI情報を分析することで潜在化している顧客ニーズをキャッチすることが今後は求められてきます。

その他、「eCRM戦略」や「コンダクター事業の創造」などの戦略もあります。詳しくは『CRM―顧客はそこにいる(村山徹/三谷宏治+アクセンチュア著)』をご覧いただければと思います。それでは、次回は「知識層(顧客インサイト)」について言及していきます。

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

プロフィール

長島 威年

長島 威年

1983年生まれ。7歳までアメリカ在住。2006年、株式会社インテリジェンス入社。求人原稿のライター、ディレクターを経験。2009年、編集部にて企画、取材、執筆を担当。その後、リアルイベントを展開するDODAアカデミー立ち上げ。現在、CRMマーケティング担当。

カテゴリ

  • Webサイト構築
  • ソーシャルメディアマーケティング

「マーケター通信」購読一覧