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» 2012年10月26日 更新

コミュニケーターとしてのキャラクター活用の現在 第3回 リアルイベントとソーシャルメディアで進化が加速する"ゆるキャラ®"

 前回予告した通り、今回は10/20-21に開催された「ゆるキャラまつり in 彦根2012」についてです。二日間で88,000人が来る大盛況のイベントでした。

イベント自体のレポートはWisdom Blog連載「ビジネスにおけるキャラクター活用をご覧いただくとして、"ゆるキャラ"の今日的な特徴である、リアルイベントとソーシャルメディアの活用について考察していきます。

1021彦根_015.jpg  そもそもの大前提として、何らかの目的や狙い、誰かに伝えたいメッセージがあって、そのためにストーリーや世界観、性格づけが成されているのが「キャラクター」です。

 マンガやアニメ、ゲームなどのストーリーや世界観に基づいたコンテンツがベースのキャラも、イラストやグッズがベースのファンシーキャラも、企業や団体の広告・広報のために一から作られたキャラも同様で、そこが単なる絵や人形との違いです。

大袈裟に言えば、魂が込められた存在として、作者や発注者以外の非当事者にも認められているかどうか、ということです。

  そういった意味で、今年で五年目の「ゆるキャラまつり in 彦根2012」に登場した非公式を含む計300体近くのキャラクター達には、着ぐるみというリアルなコミュニケーションを可能とするユニークな外見の「身体」はあっても、個性や性格がまだまだ見えにくい「キャラクター」以前のレベルのものも、まだ多数あったように思います。

これは、そもそもの活用目的や狙いが曖昧、または目的と手段、戦略と戦術がきちんと整理されていないが故の当然の帰結で、特に「街おこし」「地域活性化」といった耳触りの良いキーワードのもと、地方自治体など行政団体が作ったキャラクターに多く見受けられる傾向です。

縦割り組織や担当者の短期間での交代などの弊害があるとはいえ、税金で予算化された、または市民ボランティアの協力を前提とした活動であればこそ、費用や労力に見合った成果を出すために工夫と熱意、組織としての取り組みが必要です。

 

 月刊広報会議2012年10月号の 「ゆるキャラは要る?いらない?」特集で筆者が取材を受けた時に"ゆるキャラ年表"を作ってみましたが、ブログや動画投稿サイト、mixi~Twitter~Facebookと、ソーシャルメディアの進歩に合わせて続々と話題の"ゆるキャラ"が登場していったことを、あらためて確認しました。

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1021彦根_017.jpgくまモン」「バリィさん」「やなな」など、現在人気を得ている"ゆるキャラ"達の活動をみると、着ぐるみの「身体」(「やなな」は微妙ですがw)を使ってのイベント出演や地域に根差した地道な活動を継続的に続けており、その様子を、ソーシャルメディアを使って画像付きでこまめに発信している点が共通しています。 

そうした活動を続けることで、生きた存在としての"ゆるキャラ"に熱心なファン(サポーター)が集まり、彼ら・彼女らが起点となって、敷居の低い楽しいネタとして拡散が進みます。

それらのやり取りが可視化されることで、注目と評判がさらに集まり、地域内外のメディアに取り上げられるケースも増え、住民や商店街の幅広い層に受け入れられるようになります。

 どうしても外見が似通ってしまいがちな"ゆるキャラ"が大量に集結する今回のようなイベント会場では、個々の存在アピールが大変でしょうし、予算や表現などの制約条件も多いかと思います。

とはいえ、

  • どんな人格や性格か、口調や語尾で差別化を図りつつ、普段からTwitterやFacebookで発信することで、メッセンジャーとしての信頼や信憑性を得るのに必要な親近感や愛着を自然な形で高めていくことも可能。
  • そういった下地があってこそ、初めてリアル世界における「身体」としての着ぐるみの存在意義が出てくる。

のではないでしょうか。

 80年代から90年代に登場した各地の国体や博覧会のマスコットキャラクター(個人的には科学万博 つくば'85の「コスモ星丸」が好きでした)は、どうしても露出機会が限られるため、地域内にしか知られず、イベント終了後は忘れ去られてしまう一過性の存在が多かったように思います。

 そのような状況だったのが、2000年代以降、ソーシャルメディアが普及し始めた頃から様相が一変した感があります。ちょうど同時期にみうらじゅんさんが"ゆるキャラ"を提唱し、週刊SPA!の連載やイベントを開催したことをきっかけとして、サブカル趣味のファン同士がネットで盛り上がりました。

 決定的だったのは、テレビ東京「テレビチャンピオン」の『ゆるキャラ王選手権』が放送された2006年です。

この年デビューした「ひこにゃん」がYoutubeで注目され、mixiやTwitterの普及が2008年の「せんとくん」誕生時の炎上とその後の市民権獲得につながっていったわけで、「ソーシャルメディアなしに"ゆるキャラブーム"は成しえなかった」、と言えるでしょう。

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 今回取り上げたリアルイベントとソーシャルメディアを活用したコミュニケーション活動のケースは、テレビアニメやマンガ、テレビCMなどの日常的露出がどうしても限られる場合でもキャラクターを普及させたい時、例えば新たなファンシー系キャラクターや絵本などのキャラクターをローンチする際の参考にもなりますし、後ほど別の視点でも検証していきたいと考えています。

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 最後に、10/19にボイジャーから発刊された『ゆるキャラ論 ~ゆるくない「ゆるキャラ」の実態~』が、今回原稿を書く上で大いに参考になったことを記しておきます。

 「戸越銀次郎」「大崎一番太郎」などのキャラクター開発を手掛け、現在も運営に携わる犬山秋彦さん(本名:藤野頼隆さん)と、地方公務員出身、月刊ガバナンスなどで"ゆるキャラ"に関する鋭い事例レポートを連載しているライター杉元政光さんの共著で、お二人の文章に加え、みうらじゅんさんや「まんべくん」騒動で話題になったエム社社長・佐藤健次郎さんへの独占インタビューも載っていて読み応え十分、力作です。犬山さん、杉元さん、どうもありがとうございました!

 電子書籍版、近日発売されるペーパーバック版、ぜひご一読をおすすめします。

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プロフィール

野澤智行(のざわともゆき)

野澤智行(のざわともゆき)

1964年栃木県生まれ、千葉大学文学部行動科学科卒業。ビデオリサーチを経て、アサツー ディ・ケイで、コミュニケーション領域でのキャラクター開発・活用・効果測定・分析までの業務を担当。日本広告学会会員、日本マーケティング・サイエンス学会会員。

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