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» 2012年11月 6日 更新

コミュニケーターとしてのキャラクター活用の現在 第4回 物語性の有無によるキャラクター分類(1)・・・ストーリー系とファンシー系

 もう一週間近く前になりますが、ウォルト・ディズニー社のルーカスフィルム買収と、スター・ウォーズエピソード7の2015年公開予定の発表報道には驚きました。

買収額は40億5000万ドル(約3224億円)。これでディズニーが不得手としてきた大人男性にとってのエバーグリーンのコンテンツを扱えるようになったわけで、まさにコンテンツ・イズ・キングの現状を示すニュースだと言えます。

今後、日本のアニメやゲームなどクール・ジャパンを構成する人気コンテンツもさらにグローバル化が進み、欧米・アジア・中東など海外資本による資金提携や買収の機会が増えていくものと思われますが、そういった動きが現場のクリエイターや製作スタッフの皆さんの待遇改善に繋がることを祈ります。

 あらゆる意味でボーダーレス化が進む中、今のソーシャルゲームやネット動画、ゆるキャラなど、新規参入キャラクター達のどこに源流があって、今後どんな展開に可能性があるのか整理することを目的として、今回からは、世間に現在数多存在するキャラクターを分類する試みに取り組んでみます。

題材・モチーフでいうと、人、宇宙人、ロボット、動物、植物、お化け、妖精、食べ物、名物、特産品など様々なものがあり、人そのものと擬人化された存在に大別されます。

それぞれについて、性別、年齢、外見・フォルム、頭身、喋るかそうでないか、ゆるいかゆるくないかなど、表現したい世界観のためにどんな設定にするのか、クリエイターにとっては大問題でしょうが、それらはあくまでもテクニカルな要素に過ぎません。

ということで、まずは出自となる媒体や開発の狙いなど、ビジネスモデルによる分類から。

 

1.「ストーリー系」キャラクター

 まず、マンガやアニメ、ゲームなどのコンテンツが母体の、「ストーリー系」キャラクターがあります。

イギリスで1902年に本が出版された「ピーターラビット」、日本では少年倶楽部の1931年新年号で連載開始した「のらくろ」など、古くは小説や絵本、マンガで語られるストーリーの理解と感情移入を高めるために、絵で表現された登場人物や動物がキャラクターでした。

最近でもライトノベルの売れ行きを大きく左右するのが、挿し絵で描かれるキャラクターのイラストだったりします。同じことはテレビゲームやソーシャルゲームにも当てはまります。

 週刊少年ジャンプのマンガが原作のキャラクターなど、ストーリーや登場キャラのパーソナリティーが明確で、原作者と出版社が一緒になって育てながら、テレビアニメ化されて一気に浸透、幅広い層で人気を得るケースが多いです。

原作ファンの支持が予め見込めるため、アニメ化や実写ドラマ化、劇場映画化、グッズ化など展開しやすく、同人誌などN次創作の拡散も見込める一方、往々にしてストーリーや設定の大幅改変に拒否反応を示したコアファン達が怒って炎上するリスクも多々あります。

 なお「ストーリー系」キャラクターは、幅広い層の需要が見込める「キッズ・ファミリー系」と、深夜アニメに多い、若者およびかつて若者だった一部層の熱烈な支持が見込める「ニッチ・ヤング系」に大別されます。

キッズ・ファミリー系」は、食品・飲料、外食産業、旅行などのマーチャンダイジングに幅広く使われ、「ニッチ・ヤング系」は、映像ソフトや音楽ソフト、ショーや舞台・ミュージカルに代表されるライブイベントなどのエンタメビジネスでマネタイズされるのが一般的です。

 もとはキッズ系のコンテンツだったのが、シリーズ継続やリバイバルを経て、二世代・三世代化とニッチ層の増加が進み、ファミリー向けとコアファン向け両方の展開が可能になっているものも多く見受けられます。

冒頭に紹介した「スター・ウォーズ」や「バットマン」、日本における一連の「仮面ライダー」や「ウルトラマン」などがそうです。

 最近は両者の棲み分けがさらに曖昧になってきており、少年ジャンプ原作でも「ニッチ・ヤング系」に分類される、オタクや腐女子など濃いターゲット向けに、作品中に登場するキャラクターそれぞれに熱烈なファンがついているものが多数です。

コンビニのコラボキャンペーンでも、「ニッチ・ヤング系」のキャラクターが日常的に使われるようになって久しいです。

 

2.「ファンシー系」キャラクター

 主にイラストやグッズから生まれたのが、「ファンシー系」キャラクターです。

グリーティングカードのキャラとして1981年に誕生した「ケアベア」、日本で1975年に初めてグッズが発売された「ハローキティ」などサンリオのキャラクター、「リラックマ」などサンエックスのキャラクターが代表的です。

 アニメ化やテーマパークでの活用、劇場映画化など、キャラクターの浸透にしたがって展開領域が広がり、設定が変更されることもままありますが、基本的にはストーリーやパーソナリティーが強調されず、ファン各自が自分の想いを託せる存在として機能するものが多いです。

 また、これは個別キャラによってどこまで許諾して展開するか異なりますが、どんなキャラやタレント、企業とコラボしても、それなりに馴染んでしまうアイコンとしての臨機応変さや便利さも無視できないものがあります。

 例えば「ハローキティ」は、日本の「カワイイ」を示すシンボルとして海外セレブにも人気で、「なめこ」や「チョッパー(ワンピース)」、「ガンダム」、「ダースベイダー」、「リング」シリーズの「貞子」まで、あらゆるキャラとコラボを続けています。

可愛くてキテレツなご当地キティは、ご当地キャラブームの下地を作った存在として、日本中の土産物屋や高速道路サービスエリアで売られ続けています。

くまのプーさん」などのディズニーキャラや「スヌーピー」など、元々は欧米で絵本やマンガで親しまれてきたものでも、日本では「ファンシー系」キャラクター的な位置づけで扱われ、認識されているものも多く見受けられます。

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 キャラクターをタレントに置き換えてみると、「ストーリー系」と「ファンシー系」は、それぞれ以下のような役割と特徴を備えていると考えられます。

  • 「ストーリー系」キャラクター → 俳優、歌手
  • 「ファンシー系」キャラクター → モデル、お笑い芸人

 「ストーリー系」キャラクターは、俳優と同じく決まった筋書きのドラマや映画などで役柄を演じることで、憧れや共感、一体感を生む存在になり得ます。

耳触りがよく、感情移入できる歌詞や曲でメッセージを伝える存在の歌手とも、似た立ち位置にあると言えるでしょう。

同じ「ストーリー系」でも、「キッズ・ファミリー系」は、お馴染みの人気俳優や大御所の歌手、「ニッチ・ヤング系」は、個性派の舞台役者や売り出し中のアイドルやロックバンドと言ったところでしょうか。

 俳優・歌手と同じく、マンガ雑誌での連載開始やテレビアニメ化、提供スポンサー集めなどデビューまでのハードルが高い「ストーリー系」キャラクターと比べ、「ファンシー系」キャラクターは、見た目や表層的なインパクトがあれば何とかなりそうだという印象を持たれがちです。

ですが、たとえ幸運なデビューを果たしたとしても、他との差別化を果たせないまま一発屋として人気が長続きしないもの多数、一部の成功ケースのまわりは死屍累々だったりする点が、モデルやお笑い芸人の世界と似ているかもしれません。

 長くなってしまいました。次回は、企業や団体の「オリジナルキャラクター」について整理してみます。

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プロフィール

野澤智行(のざわともゆき)

野澤智行(のざわともゆき)

1964年栃木県生まれ、千葉大学文学部行動科学科卒業。ビデオリサーチを経て、アサツー ディ・ケイで、コミュニケーション領域でのキャラクター開発・活用・効果測定・分析までの業務を担当。日本広告学会会員、日本マーケティング・サイエンス学会会員。

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