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» 2013年1月24日 更新



先日死去された第48代横綱・大鵬こと納谷幸喜さんは圧倒的な強さと端正なルックスで、
高度経済成長期の1960年代「巨人、大鵬、卵焼き」と子供達の大好きな物の代表格でした。
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この「巨人、大鵬、卵焼き」という流行語は、1961年、通商産業省(現経済産業省)の官僚
だった堺屋太一元経済企画庁長官が 「子供達はみんな、巨人、大鵬、卵焼きが好き」と会見
で話したことから広がったそうです。

今回、堺屋氏は当時のことを振り返り、次のように述べています。(産経ニュース

  「圧倒的な大鵬の強さにみんなが憧れを抱いた時代だった。
  当時は高度経済成長期のまっただ中で、みんなの憧れが1つに向かっていた
 mini_oshima.gif  「大鵬の取組の時だけは銭湯の女湯ががら空きになった」って言うんですから
  すごい人気です! きっと皆でテレビ観戦に夢中だったんでしょうね。 
  そう考えると、今って、国民的人気者や娯楽って思いつかないなぁ。
  当時は嗜好や娯楽、余暇の過ごし方が今ほど多様化していなかったのかも。


こんな時代、娯楽の王様だったテレビコマーシャルは多くの人に自社のメッセージを伝える
有効なマーケティング手段でした。

シャンプーや洗剤などでおなじみの P&G は、かつて、
「自社の宣伝がどれだけの人々の目に触れるとシャンプーが何本売れるか」という
相関関係を分析し、広告を見た人の数が多いほど売上も伸びるという結論を得ました。
この分析結果は事実として広く受け入れられ、「広告を見た人の数」つまり企業からの一方的
な情報発信が何人の目に触れたか、が広告やマーケティング・キャンペーンの重要な評価
指標として普及していきました。
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しかしインターネットやソーシャルメディアの登場により、今や、状況は一変しました。

趣味や嗜好は多様化し、余暇の時間の過ごし方は人それぞれ。
YouTubeを見たり、Twitterでつぶやいてみたり、Facebookでやり取りしたりと様々です。
さらに情報もインターネットで検索すれば多くの情報が手に入るようになりました。
商品の使い心地やお店の対応、安く購入できるお店やアフターサービスの良し悪しまで
消費者間で発信されやり取りされる情報がオンライン上に溢れかえっています。
人々は企業が広告などをつかって発信する情報よりも、口コミやレビューサイトの記事を
より重視し、参考にするようになっているのです。

こうした変化の中にあっても、マーケティング評価指標はかつての「広告を見た人の数」を
そのまま「サイトへのアクセス数」や「インプレッション数」などオンライン用に読み替えて
使われ続けてきました。
しかし嗜好の多様化と情報量の変化により企業と顧客の関係性も大きく変わっている事、
そして、こうしたマーケティング指標だけを追っていては限界がある事にいち早く気付いた
企業があったのです。
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そう。P&Gです。
彼らはソーシャルメディアが及ぼす影響を把握、分析、予測することに取り組み、
マーケティング戦略に活かすことを始めているのです。


コンサルティング会社 KDPaine & Partners社のケイティ・デラヘイ・ペイン氏によると、
P&Gは数年前、取引のある広告代理店すべてに対して、こう宣言したそうです。

  今後、「広告を見た人の数」を基準として広告費を支払うことはしない。
  「広告を見た人の数」はどうでもいい。
  当社が重視するのは、エンゲージメント だ。


ビックリした担当者たちが質問します。
「エンゲージメントってなんですか?」と。

P&Gの回答はこうでした。

   人々が何かをクリックし、何かを購入し、何かをダウンロードし、
   何かをリツイートし、あるいは当社を気に入っていると発言したなら、
   そこには生きた消費の兆しがあるはずだ。
   我々はそれに対して投資をしたいと考えている。

    20130124_4.jpg
 mini_oshima.gif うぅ!「生きた消費の兆し」だなんて、
   なんだかとってもセクスィーな香りがするセリフじゃあーりませんか。
   でも「エンゲージメント」を指標にするには具体的にどうすれば良いのでしょう。

   

それではもう少し「エンゲージメント」について詳しく見て行きましょう。
ペイン氏はオンライン・チャネルの活用方法に基づいて、エンゲージメント・レベルを
次の5段階に分けています。

 ■レベル1 :Searcher / 検索する人
  インターネット上で情報を検索して活用しますが、ソーシャルメディアは基本的に
  無視します。このグループを的確に反映するのがユニークビジター数です。

 ■レベル2 : Lurker / 表に出たがらない人
  ソーシャルメディア上の会話を傍観しているのみのユーザーです。
  一定の頻度を上回る場合はリピーターとして追跡することも可能です。

 ■レベル3 : Casual / 気軽な参加者
  ソーシャルメディアに軽い気持ちで参加するユーザーです。自社に対してコメントする/
  フォロワーになるといった人数の比率などの指標で特定できるかもしれません。

 ■レベル4 : Active / 積極的な参加者
  他の人々に向けてリツイートし、頻繁にコメントを投稿します。

 ■レベル5 : Defender / 私設の大使
  彼らは非常に強い影響力を備えブランドを支持・推奨・擁護してくれる存在です。

ここで重要なのは 「アクセス数」や「インプレッション数」
などの数の大きさではありません。
P&Gがいち早く気付いたのは、一人ひとりのエンゲージメント・
レベルを高めていくマーケティング施策の重要性なのです。
つまり戦略的な顧客コミュニケーションにより、レベル1の
単なる検索者をレベル5のロイヤリティの高い自社のファンへ
と変えていく能力こそが今日のマーケターに求められている
のです。
 mini_oshima.gif  エンゲージ・レベルを上げて自社の強力なファンに
  なってもらうためのマーケティング施策を設計・実行し、
  改善していくことを目指す時、アクセス数やインプレッ
  ション数だけを追っていても意味がないですもんね。
  ソーシャルメディア時代のための新しいマーケティング
  戦略と指標が必要なんだなぁ。

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そのためにも、まずはフォロワー数やレビュー数、利用頻度が高いチャネル、活用状況など
から現在のエンゲージ・レベルを明らかにすることが不可欠です。
また、ソーシャル・ネットワーク分析を行い友人やフォロワーなどのつながりを把握することで、
ソーシャル・ネットワーク上で影響や口コミが広がる経路や、コミュニティ内でもっとも影響力が
大きいのは誰なのかを予測することが可能になります。

多くのフォロワーを持ちボディケア商品についての発言が多い個人を特定し、さらに発言内容
からヘアケア商品にどんなニーズや考えを持っているかを分析できれば、最適なキャッチコピー
で集中的にモニターキャンペーンやプレゼントキャンペーンを実施することも可能です。

大鵬関が活躍した当時は、「みんな」と一括りにされていた消費者は、今、ソーシャルメディア
上で一人ひとりが発言し、情報を発信し、行動しています。
ソーシャルメディア上のデータを分析することで、重視すべき個人やチャネル、最適な提案内容
や対応、コンテンツの種類などを明らかにし、戦略的な対策が取れるのです。
 mini_oshima.gif なるほど!
   ソーシャルメディアって、顧客へのメッセージ発信や顧客とのコンタクトツールとしては
    もちろん、そこにある膨大なデータを分析することで「新たな顧客情報の源泉」として
   位置付けることもできるんですね。

   顧客が今どんなニーズを持っているのか、どんな感情を抱いているのか、そしてどんな
   アクションを取っているかを理解する事は、顧客理解を深めてマーケティング施策を設計
   する上で、非常に重要なことですものね。
   ソーシャルメディアって、大きな可能性を秘めているんだなぁ。



ソーシャルメディアのための指標は、企業が掲げる目標や対象者などによっても異なります。
かつてのように、画一的な「広告を見た人の数」という指標だけでは、この複雑な企業と顧客の
交流を測ることはできないのです。


P&Gの取り組みはまだまだ始まったばかりであり、正念場という見方もあります。
しかし「生きた消費の兆し」をソーシャルメディア分析から掴みとり、新たな指標として活用しよう
とする取り組みはとってもセクスィーですよね。
彼らは従来の評価指標にとらわれない、ソーシャルメディア時代のマーケティング戦略と指標を
既に見据えているのです。
 mini_oshima.gif ソーシャルメディアのための新たな指標の大切さを再認識した私。
  セクスィー・ポイントを 5ポイントと、卵焼き3つをGet しました★
 
  20130124_6.jpg

 

<参考文献>
ホワイトペーパー
 「ソーシャルメディアのための新たな指標
  ~ソーシャルメディアがビジネスに及ぼす影響を把握、理解、予測する」

   ※本ホワイトペーパーは下記サイトでダウンロードが可能です。
   http://www.sascom.jp/download/wp_SocialMediaMetrics_ws1207/


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プロフィール

大島 玲子

大島 玲子

SAS Institute Japan株式会社 でBtoBマーケティングのキャンペーン企画/管理を担当。愛犬と一緒に、サッカー観戦をするのがお気に入りの時間。

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