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» 2013年4月23日 更新

目指せ! セクスィー・データサイエンス・マーケター ザックザックとデータを作り出す「無作為化」


買物や食事などでお世話になるクレジットカード。使いすぎには気を付けなくちゃいけませんが、使用額に応じてポイントが貯まる上にとっても便利ですよね。そんな日々お世話になっているカード会社から時々、「リボ払いのご案内」なんてハガキを受け取ること、ありませんか?実はリボ払いの歴史にも、分析が潜んでいるのです。

この「リボルビング」は1980年代、アメリカの金融専門コンサルタント、リチャードとナイジェルによって開発されました。彼らはクレジットカード業界が見逃しているとてつもない商機、つまり「顧客の行動パターンに注意すれば利益率の高い顧客と低い顧客を判別できるようになる ということにいち早く気が付いたのです。彼らが分析により突き止めたありがたい顧客とは、高額商品をポーン!とクレジットカードで買い、36回払いなんていう長期払いで利子と一緒にゆっくり返済してくれるお客様でした。利益率の高い顧客は的を絞ったサービスを提供して徹底的に囲い込み、逆に利益の少ない顧客はライバル会社に押し付けてしまえば良いと彼らは考えました。20130419_1.jpg

「なーんだ、当たり前じゃないか」なんて言わないでくださいっ!それ以前のクレジットカード業界ではこんな素敵な顧客も、それ以外の顧客も、すべて同じように一律サービスで対応していたのです。
mini_oshima.gif   これ、大いなる損失ですよね。でも、周りを見回すと、
  「優良顧客」をきちんと定義し、把握できている企業って意外少ないのかも。

彼らはこの分析結果をすかさず商品に活かし、業界で初めて残高繰り越しのできるリボルビング機能を搭載したカードを提供し始めました。「本当に大事なお客様」を理解し的を絞ったこのカードは大当たり!リチャードとナイジェルはカード事業だけを分社化し、驚異的な成長率と利益率を実現しました。これがアメリカの大手クレジット会社 キャピタル・ワンの始まりです。

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mini_oshima.gif  く~!ノッケからセクスィー!
  もう、会社の始まりからしてセクスィーすぎるじゃないですかっ!


現在のキャピタル・ワンは創業時のスタイルを継承し、徹底した分析主導型のサービスを提供しています。例えばキャピタル・ワンに電話をすると、カード番号と暗証番号を入力するようにアナウンスが流れます。番号を入力した途端リアルタイムでその口座の履歴と顧客属性の分析が行われ、例えば、毎月利用残高を確認するためだけに電話をかけてくる顧客には
 「現在のお客様のご利用残高は¥35,800です。請求金額についてのご質問は1を、
   支払い方法については2を押してください」
といったニーズを予測したアナウンスが自動で流れるように設定されているのです。残高を確認できた顧客はスムーズなサービスに満足し、コールセンターのオペレーターが時間を取られることもありません。
もっと拡販の可能性がある顧客の場合は瞬時にそれを判断し、担当者に電話をつなぐことも可能です。電話にでる担当者は画面に表示された顧客属性と最適な提案商品の分析結果を確認しながら、顧客の好みやニーズにあった商品を提案することができるのです。
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mini_oshima.gif   すごい!お客様も満足するし、キャピタル・ワンも収益を上げている。
  本当に、分析を武器にしているって感じだなぁ。

  でもなんでキャピタル・ワンはこんなことが実現できているんだろう?
  顧客属性や市場データなど持っているデータは競合企業も一緒でしょ?


彼らの本当の強みは、実験を恐れず、常にテストを繰り返している所にあります。2006年に彼らが新製品や新しい広告戦略、そして契約条件のために実験した件数は、なんと28,000件!すごい件数です。これらの圧倒的な数の実験を支えている彼らの本当の武器は、過去データだけに頼らない「無作為抽出テスト」「ランダム化比較実験」と呼ばれる手法を活用した点にあったのです。
mini_oshima.gif   無作為化?ランダム化? うーん。どういう意味でしょう。


過去データを分析する際には、その時々の条件や要因などを考慮する必要があります。そもそも社内に適当な分析用データを保有していないことだって考えられます。こんな時に有効なのが「無作為抽出テスト」です。無作為抽出テストは、無作為に抽出したサンプル対象者ごとに異なった扱いをし、その結果の因果関係を分析する手法です。

例えばダイレクトメールの見出しを、「初年度利息、マイナス2%!」 と 「期間限定!特別サービス利息」の2種類準備し、無作為に分けた2グループに両方試してみてどちらの成功率が高いかをテストしてみるのです。過去のキャンペーン履歴データがなくても、リアルタイムで行動データを生み出すことができるのです。

キャピタル・ワンは見込み顧客60万人の郵送リストを使って、この大規模なテストを実行しました。彼らは無作為に10万人ずつのグループに分け、それぞれのグループに異なる金利の引下げ率や期間、タイミングを組み合わせた6種類のダイレクトメールを送りました。一人ひとりに個別の事情や条件があるかもしれませんが、60万人という大きな母数を確保することで特異性は相殺され、それぞれのグループは統計的に似た集団として考えることができるのです。これこそが無作為化の強みです。
この大規模調査のおかげで、キャピタル・ワンはもっとも反応率が高い割引利率と期間を見つける事ができました。
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ちなみに他社における同様の実験で、もっとシンプルかつ真理に迫っているものがあります。勧誘ダイレクトメールの右上にニッコリとほほ笑む女性の写真を入れるだけで、写真がなかった場合に比べて男性の応答率が跳ね上がる、なんて結果が出ているんだとか。その影響は金利を4.5%引き下げたのと同じ効果があるというから驚きです。
mini_oshima.gif   まったく・・・・・。これだから男性は・・・・・。
  でも
無作為化ってスゴイ!
  金利を4.5%下げることなく、大きな反応が期待できるんですから!
  (あくまで男性限定ですケド)

  それにしても
金利4.5%と笑顔の女性。
  こんな比較、なかなか思いつかないですよね。
  無作為抽出テストの成功の秘訣は、過去の考えに固執せず
  顧客自身も気付いていない「真の声」を実験から見つけ出すかが重要なんですね。
  
  

無作為抽出テスト、ランダム化比較実験は、実はWebマーケティングでも一般的に活用されています。検索エンジンマーケティングの広告文やWebページなど異なる2種類の反応や結果を比較し検証していくA/Bテストなどが代表的なものです。

キャピタル・ワンは無作為抽出テストという武器を手に徹底的な実験を繰り返し、試行しながらそれを検証しビジネスチャンスをつかみ取るという勝ちパターンの仕組みを社内のあらゆる部署に根付かせていきました。分析を業績に結び付けるスパイラルが社内のあるゆる部署で回り続けることにより、他社がマネしたくてもマネできない強みを獲得できたのです。

mini_oshima.gif  過去から蓄積されたデータを分析するだけでなく、
   実験や試行を通して作り出されたデータを分析対象に加え、
   その結果を素早く
ビジネスに活かす仕組みを作ることが
   キャピタル・ワンの本当の武器だったんですね。

   無作為化の威力と可能性に気付いた私。
 
 セクスィー・ポイントを 5ポイントと、ゴールドカード3枚をGetしました
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 <参考文献>
 『その数学が戦略を決める』  イアン・エアーズ[著] /山形 浩生[翻訳]  文藝春秋
 『分析力を武器とする企業』   トーマス・H・ダベンポート, ジェーン・G・ハリス [著]

 

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プロフィール

大島 玲子

大島 玲子

SAS Institute Japan株式会社 でBtoBマーケティングのキャンペーン企画/管理を担当。愛犬と一緒に、サッカー観戦をするのがお気に入りの時間。

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