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» 2014年1月24日 更新

ノロウィルスやインフルエンザなど感染症の拡大に関するニュースが続く今日この頃。手洗いや消毒方法の特集などもよく見かけるようになりましたよね。

実はこの手洗いや消毒という、今日の医療現場では当然と思われていることにも、アナリティクスが活用されていたのです。

例えば、「近代看護教育の母」として知られるナイチンゲール。
若い頃から数学や統計に強い興味を持っていた彼女は、実は非常に優れた「統計学者」でもありました。
ナイチンゲールはイギリス軍看護師団のリーダーとして派遣されたクリミア戦争で病院内の劣悪な衛生状態を目の当たりにし、その改善に努めることで傷病兵の死亡率を劇的に引き下げることに成功しました。さらに統計に関する知識に基づきイギリス軍の戦死者に関するデータを分析し、その死因の多くが戦闘で受けた傷そのものではなく、治療や病院の衛生状態によるものである事を明らかにしたのです。
さらにすごいのは統計になじみのうすい国会議員にも分かり易いよう、グラフを用いたビジュアル化により誰にでも納得してもらえる報告書を作成した事。
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まだまだ棒グラフや円グラフですら一般的に認知されていない時代に、自ら考え出した表現方法で多くの人を説得し、医療衛生改革を実現したのです。
mini_oshima.gif 素晴らしいっっ!
 私、2014年最初のセクスィーをナイチンゲールさんに捧げます!
 統計学を用いて、衛生状態と死亡率の相関関係を明らかにしただけでなく
 グラフを用いて関係者を説得し、そして仕組みを最適に変えていく。
 アナリティクス全開です、セクスィーですっ!

でも、アナリティクスに基づく主張が常に受け入れられるとは限りません。
とっても残念なケースをご紹介しましょう。

ナイチンゲールがクリミア戦争に旅立つ10年前、ウイーン産科病院の産婦人科部長イグナッツ・フィリップ・ゼンメルワイスは産褥熱の原因を研究し始めます。
彼の上司は産褥熱は予防不可能だと主張していましたが、ゼンメルワイスは検死解剖室を出て来たばかりの医学生が検診した女性は死亡率が極めて高い事に気が付いたのです。ヒントになったのは、同僚のコレチカが死体解剖の授業中に過ってメスで指を切ってしまい、その後、感染症にかかり死亡してしまった事でした。
当時、病原菌の存在はまだ知られていませんでしたがゼンメルワイスは産褥熱が感染すると結論づけ、患者を診る前に塩素入り石灰水で手を洗えば死亡率が12.24%から2.38%へと激減することを発見したのです。
mini_oshima.gifわぁ!こちらもセクスィーじゃないですか!

 産褥熱による死亡率も激減したんだし、
 ゼンメルワイスさんの主張は受け入れられたんですよね?


残念ながらゼンメルワイスの主張は十分な科学的根拠を提示していないとして当時の常識を覆すことはできず、他の医師から認められませんでした。一日に何度も手を洗うのは時間の無駄だと反論され、彼は結局、職を失ってしまうのです。
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mini_oshima.gif 感染症予防で、手洗いが重要な事は現在では常識なのに・・・。
 せっかく科学的根拠に基づいた主張をしても、
 周りの理解を得られないと、仕組みを変えることができないんですね。
 
 今、医療の現場ではどんな動きがあるんでしょうか?


1992年、カナダ人医師ふたり、ゴードン・ガイヤットとデヴィッド・サケットは「根拠に基づく医療」(EBM=Evidence- Based Medicine)なる宣言を発表しました。彼らの基本発想は次のようなものでした。
「治療法の選択は最高の根拠に基づくべきで、最高の根拠とはできれば統計からくるべき」というものです。決して統計調査だけを頼りにするべきではなく、治療法の決定において、統計的な根拠がもっとも大きな扱いを受けるべきだと主張したのです。

EBMのもっとも有名な成功例が「10万人の命キャンペーン」と呼ばれるものです。
医療改善研究所所長ドン・バーウィックはEBM調査に基づき、大規模統計から患者の口を頻繁に掃除すれば感染率が大幅に下がることを明らかにしました。また集中治療室の多くの患者が胸の中心静脈カテーテルの挿管後に感染症で亡くなっていることに気付き、統計的な手法を用いることで系統的な手洗いにより感染リスクを大幅に下げることも発見したのです。
本来避けられる死を防止するためのEBMに基づくたったの6つの病院変革をアメリカ3000以上の病院導入しただけで、たった18ヶ月で12万2342名の死亡を減らすことに成功したのです。
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mini_oshima.gif 18か月で12万人の命を救っただなんて、すごい!!
 ゼンメルワイスさんが見たら、きっと喜びますよねっ。
 うぅ。これで、ゼンメルワイスさんも浮かばれるってもんです。
 

根拠に基づいた医療は、今や、診療決定にも広がっています。
「Isabel(イザベル)」という診断プログラムは、医師が患者の年齢や性別・症状を入力するだけで、最も可能性が高い診断一覧を表示してくれます。
「Isabel」のデータベースには11,000種類以上の病気を多数の臨床結果や実験室での結果、患者の病歴、個別の症状と関連づけて分析することが可能なのです。
一人の医師の知識や経験の限界を超え、可能性を提示することが可能になったのです。
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海外だけではありません。日本の医療現場でも、様々な取り組みが進んでいます。

例えば国立循環器病研究センターは、電子カルテなどの診療情報を含めたさまざまな医療情報を必要なときに収集し、臨床研究に活用できるようにするため、多様なデータベースやファイル形式のデータを集約・分析するデータ統合環境を構築し、医療情報の収集と高度な統計手法を用いた解析の実施を実現できる環境づくりを進めています。

また
日本のがん医療の拠点として全国のがん患者に最先端の医療を提供するとともに、がんの病態解明と治療開発に向けた先端的な研究を行っている国立がん研究センターでは、同時並行で多数行われる各臨床試験のデータ集計を効率的に行い、新しい治療法の安全性や有効性を科学的に検証するためにアナリティクスを活用しています。

 mini_oshima.gif 最新の医療現場にも、アナリティクスにもとづいた
 「根拠に基づく医療」は、
着実にひろがっているんですね。
 これで安心して病院に行けます、私!

 医療でのアナリティクス活用を学んだ私。
 セクスィー・ポイントを 5ポイントと、手洗い用石鹸3本をGetしました。
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<参考文献>
 『その数学が戦略を決める』  イアン・エアーズ[著] /山形 浩生[翻訳]  文藝春秋
 

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プロフィール

大島 玲子

大島 玲子

SAS Institute Japan株式会社 でBtoBマーケティングのキャンペーン企画/管理を担当。愛犬と一緒に、サッカー観戦をするのがお気に入りの時間。

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