ニュース
» 2014年1月20日 更新

炎上を恐れないコンテンツマーケティングの理論と実践 医療分野から小さく、そして大きく穴を開けることを決めたGoogle「スマートコンタクトレンズ」の鮮やかな2つのポイント

先日、米グーグルが「スマートコンタクトレンズ」の開発を明らかにしましたね。

f:id:rmuroya:20140118143758j:plain

(画像引用元:http://jp.techcrunch.com/2014/01/17/20140116google-shows-off-smart-contact-lens-that-lets-diabetics-measure-their-glucose-levels/

 

Google の先端技術研究所 Google10+ 件 [x] が開発した Smart Contact Lens は、二層のソフトコンタクトに微細なセンサーとチップ、アンテナを挟んだ構造で、(当初の) 用途は医療用。

涙に含まれるグルコースを監視することで、糖尿病患者に血液検査より楽な血糖値管理の方法を提供するとともに、今後はLEDを内蔵して、着用者に血糖レベルの急激な変動を警告する機能も検討しています。(引用元:http://japanese.engadget.com/2014/01/16/google-led/

 

  

Google Glass」の国内販売が開始された後のニュースだったため、「Googleグラスのコンタクトレンズ版が登場か!?」と期待された方も多いと思います。 

(現時点ではGoogle社からの正式アナウンスはなく、あくまでゲッコー・アンド・カンパニーによる並行輸入販売) 

 

このニュースを見たとき、私は違う意味で驚きました。前職では医療機器の品質保証を担当しておりまして、違う視点で驚いてしまったのです。

執筆陣のなかでこのような経歴をもつのは私くらいだと思いますので、なぜこれが鮮やかな戦略なのか、おせっかいかと思いますが情報共有させていただければと思います。

 

 

ポイントは2点です。

1.極めてシンプルな構成であり、低浸襲性を追求していること

2.スマートコンタクトレンズの用途を「医療用」とフォーカスしたこと 

 

 

1.極めてシンプルな構成であり、低浸襲性を追求していること

聞き慣れないことばかもしれませんが、医療機器においては「侵襲性(しんしゅうせい)」 というものが重要なファクターとなります。

 

侵襲とは、「病気」「怪我」だけでなく「手術」「医療処置」のような、「生体を傷つけること」すべてを指す。なぜなら、病態であれその治療であれ、侵襲に対する生体の反応は同じであり、それを知らずして(侵襲を以て)人を治療することはできないからである。 ーーーwikipedia「侵襲」より

 

要は人のからだに何らかの影響を及ぼすもののことですね。


コンタクトレンズとは、角膜に接触(コンタクト)させて使用するレンズの形態をした器具でして、国内においては薬事法の分類により、検査用を除く視力補正用などの一般的なコンタクトレンズは「医療機器(クラスⅢ)」とされています。

 
このクラスⅢのリスクの程度は 「副作用又は機能の障害が生じた場合に人の生命や健康に重大な影響を与える恐れがあるもの」と定義されており、「医療機器(クラスⅢ)」で求められる品質水準を満たすためには、様々な技術的な試験をクリアする必要があります。

 

 

もう一度、Google「スマートコンタクトレンズ」の構成部品をみてみましょう。

 

Smart Contact Lens は、二層のソフトコンタクトに微細なセンサーとチップ、アンテナを挟んだ構造

 

このようにミニマムな構造・構成となっており、角膜を傷つける恐れや、電源を有していないため、感電による影響もないでしょう。

 

ハードウェアの構造上、コンタクトレンズの製販における規制の壁を突破しやすいようになっている、というのがポイントですね。

 

 

しかし、いくら技術が優れていようが、解決できるものには限界があります。

テストを合格するには、データで証明できる「数値的な基準」のほかに、「基準の範囲の定義」というやっかいなものがあります。

 

前者については実験データを提出さえすれば問題ありませんが、後者の定義の解釈については、言葉というものは全ての事象を表現するにも不完全であるために、含みのある言葉によって定義されていれば属人的な判断に近づくこともあります。

 

このときに発生する「基準解釈問題」を解決するのが次に述べるポイントです。

 

 

2.スマートコンタクトレンズの用途を「医療用」と定めていること 

もしこれが「糖尿病患者の血糖値管理に役立つ」ものではなく、「iPhoneの画面操作時等に役立つ」ものでしたら、そう簡単にFDAの試験評価担当者の腰はあがらないでしょう。 「万が一の万が一の万が一」まで考えるのが品質担当ですからね。

 

しかし、Googleの戦略は鮮やかです。 

こちらの図をご覧ください。

f:id:rmuroya:20140120125818p:plain

(画像引用元:http://gigazine.net/news/20091015_diabetes_in_us/) 

 

 

ご存知のとおりアメリカは肥満大国であり、年間では7万人が糖尿病により亡くなられているようです。

規制当局であるFDA側からしても、糖尿病患者を減らす使命を背負っているため、この Googleの「スマートコンタクトレンズ」の製造販売を反対するわけにもいきません。むしろ推奨・応援する立場にあります。

 世界中の頭脳が集まるGoogleにかかれば、技術的な課題は解決できると思いますので、「糖尿病患者の血糖値管理に役立つ」という用途を打ち出し、このようにFDAの背中を押してあげて、「基準解釈問題」をもクリアできるようにデザインしたのだと推測します。

 

「糖尿病患者の血糖値管理に役立つスマートコンタクトレンズ」で実績ができれば、搭載する部品を変えたり増やしたりして、様々な用途に拡大していくはずです。

 

iPodの登場により音楽鑑賞のスタイルが変わったり、facebookの登場によりソーシャルグラフが変わったりと、「テクノロジー」が世界を変えてきましたが、このような医療機器の分野となると「法規」の壁が立ちはだかります。

 

リーンスタートアップということばあるように、プロトタイプを市場に投入してから改善を重ねてプロダクトの質を高める手法はあるが、医療機器などのハードウェアとなると人体への影響があるため勝手は異なるものです。

「パソコンの時代」が終わり「インターネットの時代」となり、そして「ウェアラブルの時代」に。

 

これから次々と市場に変革が起ころうとしているなか、医療分野から針穴を開けることを決めたGoogle「スマートコンタクトレンズ」は、このような規制に縛られる業界への挑戦の好事例となると思います。

 

OK Glass! 

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

プロフィール

室谷良平

室谷良平

オリンパスでの医療ITシステムのQAを経て、2013年にITスタートアップ企業の株式会社リビジェンに入社。現在は「Smart Survey」のマーケティングを担当。

カテゴリ

  • Webサイト構築
  • データ分析/効果測定
  • マーケティング戦略

「マーケター通信」購読一覧