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» 2013年1月16日 更新

マーケティングコンサルタント青葉哲郎の「成功のカギはマーケティング・イノベーションにあり。」 ~ディスニーワールドの新サービス「マジックバンド」、今春にもRFIDチップを活用した「MyMagic+」システム導入へ~

米国フロリダにあるディズニーワールドが大きく変わろうとしている。米紙ニューヨーク・タイムズによると、今春から来園者は、クレジットカードの情報等が埋め込まれたリストバンドを身に付けることで、現金やチケットが不要になるという。元キャスト(従業員のこと)の私としては、反応せずにはいられないニュースだ。

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ルームキー、チケット、ファストパス、クレジットカードとして機能する「マジックバンド」
(http://disneyparks.disney.go.com/blog/2013/01/taking-the-disney-guest-experience-to-the-next-level/)

■「MyMagic+」システムのインパクト

「MyMagic+」と呼ばれるシステムの導入によって、年間3000万人といわれるディズニーワールド来園者の体験が大きく変わろうとしている。この新しいリストバンド(「マジックバンド」と呼ばれる)の導入は、ディズニーテーマパークでの体験を現代の消費者行動に合わせ、より良いものにしようというディズニーの大きな計画の一角で、専門家たちは、その予算を$800 million ~$1 billionと読んでいる。

このリストバンドを身に付け、バンドをさっとスキャンするだけで、ポップコーンや園内の買い物ができるようになるが、埋め込まれているのはクレジットカード情報だけではない。RFID(Radio Frequency IDentification、無線自動識別)チップが埋め込まれ、これによってディズニー側は、マジックバンドをつけた来園者の行動を一部始終把握できるようになる。例えば、「あそこでグーフィーと握手をしたけれど、白雪姫には見向きもしなかったな」という具合だ。このようなデータがMyMagic+に集められ、マーケティングメッセージをよりカスタマイズできるようになるということだ。

■「マジックバンド」がもたらす、素晴らしい体験

ディズニーワールドの来園者は全員マジックバンドをつけなければいけない、というわけではない。しかし、マジックバンドを利用する客は「My Disney Experience」と呼ばれるウェブサイトやアプリを使用し、予めパーソナルデータを開示することができる。これによって、マジックバンドに埋め込まれた情報を読み取ったシンデレラや白雪姫が「こんにちは。今日は○○ちゃんの誕生日なのよね」と話しかけることが可能になるのだ。また、ディズニーワールドの新アトラクションである「Under the Sea」は、並んでいる間に、マジックバンドをつけている客と会話のできる「かもめのスカットル」がいるそうだ。

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(http://disneyparks.disney.go.com/blog/2013/01/taking-the-disney-guest-experience-to-the-next-level/)

アトラクションのショーや、その待ち時間にも、ゲストと言われるお客様の名前を呼んだり、ゲストに合う質問をすることで、今までのパークと全く異なる体験をすることが出来るようになるだろう。キャストも、ゲストの名前を呼んで接客し、好き嫌いを理解した上で食べ物を提供することができるようになるのかもしれない。

■子供のプライバシーと「My Disney Experience」に登録するメリット

米国では個人のプライバシー問題は注目されている話題で、「自分の情報はまだしも、子供については・・・」と懸念を示す人々は多い。My Disney Experienceでは、どれだけの情報を開示するかを選べるようになっている。自分の名前をキャストに知らせるか、ディズニーワールドに滞在中、または帰宅後にスペシャルオファーの知らせを受けたいか等だ。他にも「もし、マジックバンドをなくしたら」等、迷うゲストを見越して、見逃せないインセンティブも用意している。マジックバンドを利用することによって、家を出る前に3つのアトラクションの「ファストパス」を選択でき、その時間になるとバンドが知らせてくれたり、花火やパレードの際にVIP席に座ることが出来るそうだ。旅行に行く前から、ディズニー体験をスタートできる。入園したらまずファストパスのために走ることもなくなるだろう。

米国では、フェイスブックやインターネットを筆頭に個人のプライバシーについての議論が続いているが、ディズニーはそれを承知であえて、RFID導入を選んだ。この記事によると、RFIDチップを導入しているリゾートは、ディズニーが最初ではないそうだが、ディズニーテーマパークの入園者は全世界で、年121.4million(約1億2100万人。ほぼ日本の人口に等しい)と憶測されており、この影響は計り知れない。

■まとめ~新しい体験の創出による新次元のサービス

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(https://disneyworld.disney.go.com/plan/my-disney-experience/)

My Disney Experienceのページには「あなたのディズニーワールド体験を全く新しいレベルへ」というメッセージが掲げられている。考えてみて欲しい。従来の「見て!あの鳥しゃべってる!」から「見て!あの鳥、僕に話しかけてる!」と変わるだろうし、キャラクターから自分の名前を呼ばれるということは、子供にとって感動的な体験を与えることになるだろう。RFIDチップの導入によって、子供のディズニーテーマパークでの子どもたちの体験が文字通り、全く別のレベルになる。

フロリダでうまく成功させることができれば、数年後には世界中のディズニーテーマパークで子供たちがリストバンドを着ける日が来るのだろう。これまでの素晴らしい体験を失わないようにさせつつ、新しい世代の感覚に合わせて、次世代体験をさせようとするディズニーの取り組みにはワクワクさせられる。遠くない将来に、東京ディズニーランドで体験できるのを楽しみにしたい。

ITmediaオルタナティブブログ「青葉哲郎のスマイル航海日誌」

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プロフィール

マーケティングコンサルティング会社 サイコス 青葉哲郎

マーケティングコンサルティング会社 サイコス 青葉哲郎

1971年生まれ。イオン、マイクロソフト、インテリジェンス、リクルートエージェント、リクルートを経て、2009年11月マーケティングコンサルティングのサイコス株式会社を設立。マーケティングに関する総合コンサルティングを提供し、広告販売などは行わず、マーケティング部門や経営効率化支援に特化して広告主側に立った助言を行っている。

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