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» 2013年8月19日 更新

WebアナリストのUX戦略思考 ソーシャルゲームにおけるKPI分析の現状と展開(基本編)

このシリーズでは、ソーシャルゲーム(以下 ソシャゲ)のKPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)について考えます。これを取り上げた理由は、一般的なウェブサイトにおけるKPIとは異なる視点であり、割りと新しい分野ということで、ソシャゲ分析の面白さ、そして難しさを少しでも知ってもらおうと考えたことにあります。今回は"基本編"ということで、既知の内容が多いかもしれませんが、参考までにご覧いただければと思います。

1. ソシャゲの基本KPI

下の資料にある通り、売上金額から逆算することでそれぞれのKPIに分解することができます。
参考:ソーシャルゲームのKPI分析とサービス洗練 徹底入門(p.11)

ソーシャルゲームのKPI分析とサービス洗練 徹底入門 p.11

基本的なKPIは大きく6つあり、それぞれについて簡単に説明します。

・インストール数

ゲームを始めようと思ったユーザ数ということになりますが、インストールしただけでプレイしていない可能性もあります。継続率に関係していることから、日次でのインストール数を用いることが多いようです。

・DAU(Daily Active Users)

1日当たりに1回以上活動のあったユーザ数のことで、ユニークユーザ数を意味しており、月単位の指標としてはMAU(Monthly Active Users)が用いられます。活動というのは、何かのきっかけによってログインしただけの場合も含まれるため、すべてのユーザがプレイしているとは限りません。また、セッション数や訪問回数に当たる指標については、各社の基準において取得されているものと考えられます。

・DPU(Daily Pay Users)

1日当たりにお金を支払ったユーザ数のことで、アイテム課金やガチャなどの課金種類によっても分けることができます。ECサイトで言えば、1日当たりに商品購入したユーザ数ということであり、そう捉えると、購入する対象の性質が異なるだけという考え方もできます。

・継続率

特定日にインストールしたユーザのうち、後日活動したユーザの割合ということになるため、資料にあるDAU/Installというのは厳密に言うと補足が必要かもしれません。例えば、特定日にインストールした100人が翌日に50人活動していれば翌日継続率は50%で、7日後に20人活動していれば7日後継続率は20%となります。その他にも算出方法がありますが、詳しくはこちらの記事を参照してください。

・課金率

1日当たりに活動したユーザのうち、お金を支払ったユーザの割合ということになり、DPU/DAUで算出します。DAU自体は、広告出稿などにより急増する指標であるため、課金率が極端に下がる場合があるということになります。

・課金単価

特定日にお金を支払った1ユーザ当たりの支払い金額のことで、ARPPU(Average Revenue Per Paid User)とも言われ、売上金額/DPUで算出します。ARPU(Average Revenue Per User)は、分母がDAUとなり、活動した1ユーザ当たりの支払い金額のことです。

上記以外にも、チュートリアル突破率、アクティブ率、セッション当たりの接触時間、そして広告やバイラル(クチコミ)に関連する指標などは押さえておく必要があるでしょう。

2. 基本KPIの弱点

ここでは、売上に直接関係する基本KPIでは補いきれないと考えられる3つの要素について説明します。

a. 外部要因に影響されやすい

外部要因は大きく2つあり、広告出稿(テレビCM、リワード広告など)によって急増する"スパイクノイズ"、ユーザ意向(気まぐれ、曜日変動など)によって定常的に変動する"ホワイトノイズ"に分けられます。変動の大きい指標はKPIに適さないということはあるにしても、なぜデータ分析する上でノイズとして扱われるのかというと、収益に関係するユーザを正確に把握できない可能性があるからです。DAUはその代表とも言える指標であり、それを分母とした継続率や課金率がKPIとして妥当性があるとは言えないということになります。(Web系サービス運営でKPIを決める時に気を付けるべき3つのポイント

b. アクションに繋がりにくい

誰が、いつ、どこで、どのような行動をした(する)のか?それはなぜなのか?を考えることが分析であり、そこから改善提案を行うわけですが、KPIの役割は、それらに繋げるためのきっかけ、つまり問題発見にあることが多いと思います。そのためには、多種多様な条件をいかに分類してユーザの行動を的確に把握するのかが鍵になります。ユーザセグメントという観点だけでも、定着度や課金度などがあり、またそれらをどのように量的に表すのかを検討しなければならず、試行錯誤が必要です。

c. 笑顔かどうか分からない

これについては、そもそもKPIで把握できる対象ではないかもしれませんが、ゲームというのは楽しさや面白さを提供するサービスであるため、究極の課題として取り組むべきことだと思っています。楽しんで使っているかどうかというのは、ヒトの心理にまで踏み込むということであり、それには行動から心理を読み取る必要があります。これには、データマイニングや定性評価(ユーザビリティテスト、アンケート調査など)、または心理学、行動科学における知見を柔軟に適用することが望まれます。

基本KPIには以上のような弱点がありますが、だからと言って必要がないということではなく、これをもとに新たな指標を検討する、参考値として比較分析するなど、様々な活用の仕方があります。

3. まとめ

サービスをより良くするためには、それぞれの指標や手法を相互補完的に扱うという姿勢がとても大切です。旅行先でのトランプや帰省先での将棋は楽しいものであり、そこには自然な笑顔や会話が生まれ、心地よい"場"としての空間になります。これはソシャゲでも実現できることであり、プランナーによる面白い企画に加え、データ分析によるチューニングを継続的に行うことによって目指すべき方向性と言えるのではないでしょうか?次回は、今回の基本を踏まえてもう少し発展させ、事例などを用いた内容にしたいと考えています。

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プロフィール

若狹 修

若狹 修

ウェブ解析を軸としたKPI設計、マーケティング施策、コンテンツ改善のコンサルティングに従事。現在、原点である人間工学を基に、ユーザ調査など様々な分野のアプローチを相互補完的に活かした研究と提案を行なっている。

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