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» 2013年9月10日 更新

WebアナリストのUX戦略思考 ソーシャルゲームにおけるKPI分析の現状と展開(活用編)

前回の基本編では、ソシャゲの代表的な基本KPIの定義と特徴について解説しました。活用編となる今回は、基本KPIの弱点を押さえたうえで、どのようなアプローチでKPIを設定し、どうやって改善に結び付けていくのか、またそれはなぜ?なのかについて考えます。

1. KPI分析の取り組み

下の資料は、基本KPIであるDAU(Daily Active Users)を行動の"頻度"によって分類している事例です。
参考:サービスの盛り上がり具合をユーザの数(DAU)から読み解く方法(p.9)

サービスの盛り上がり具合をユーザの数(DAU)から読み解く方法 p.9

つまりユーザセグメンテーションによって、ノイズとして扱われることもある外部要因と、ゲーム自体の問題発見につながる内部要因が影響しているユーザ層(分類の組み合わせ)を分かりやすくしているのです。この例をはじめとして、KPI分析の各種アプローチを見ていくことにしましょう。

・DAUとセッション数の頻度

上の資料では、直近30日間のDAUと1日当たりのセッション数で分類しています。ある程度長期における全体DAU、そしてユーザ層別DAUの推移を比較し、"ユーザの支持"がどの分類またはユーザ層に関係しているのかを説明しています。全体DAUで大まかな傾向を把握し、トレンドを期間で区切ってユーザ層別DAUを比較するというアプローチは参考になります。

・5日間のDAU頻度(連続性)

DAUを評価指標から捨てた会社の話
当該日を含む5日間のDAUで分類し、5日連続の場合を"定着ユーザ"として位置付けています。他社のKPI分析をうまく取り入れ、スパイクノイズとホワイトノイズを考慮した指標を検討、定着ユーザが売り上げの大半を説明しているという結果を出しています。また、ノイズを排除しているだけのように見えて、ユーザ層の洗い出しを行なっており、さらなる洗練に向けて頻度だけではなく"時間"にも着目している点が印象的です。

・特定期間の継続率に着目

ネイティブになって今までの常識が通用しなくなる。そもそもKPIって何だ!?
インストールから7日以上経過したユーザをDAUとして取得し、継続率が急低下する期間、つまりインストール後のスパイクノイズを除去しています。また、"QAU(Quarterly Active Users)"という四半期でのユニークユーザ数をKPIとして設定し、月次イベントなどによる影響を小さくしています。

データマイニングから見えてきた、大熱狂!! プロ野球カードにおけるKPI活用事例
インストールから30日以上経過してもログインしている"ベースユーザ"と、それ未満の"フォローユーザ"を区別し、継続率が横ばいになる時期で分類しています。カードゲームの事例として、データマイニング手法の決定木によって「カードの強化合成の行動回数」が継続率と関係していることを明らかにし、"ゲーム内の行動"に着目しているところは興味深いです。

以上から、ある行動を量的に表すために"頻度"あるいは"時間"を測るとして、どんな行動を取るのか・いつの期間を見るのか・どこを起点にするのか、という点には留意した方が良いと考えられます。

2. 改善における着眼点

次に、ゲームの改善に向けてKPIをどのように扱い、ポイントを見極めていくのかについて説明します。

a. 態度変容の理由を突き止める

ユーザ層別の指標に分解することで、それぞれの行動の傾向や変化が分かりやすくなりましたが、ここからが本番です。つまり、KPIを設定することが目的なのではなく、それを使って改善することが目的ということです。態度変容には大きく2つの視点があり、"ユーザ層別の行動の変化"と、"ユーザ層自体の切り替わり"に分けられます。例えば後者の場合、各ユーザ層を成長度合いでレベル分けし、それが向上または低下したユーザのゲーム内・外行動を調べ、きっかけとなった行動、その前後状況を特定して改善に着手するという手順になります。(ドリコムの分析環境とデータサイエンス活用事例 pp.31-37)

b. 収益貢献との関係を明らかにする

改善は正しいことですが、企業活動を行なっていくためには"費用対効果"を考えなければなりません。それは、改善による収益と費用を明らかにすることであり、優先順位を付けるのに役立ちますし、企業内のステークホルダーを説得するための材料にもなります。誰もがサービスを良くしたいと思っていて、数ある候補の中からどれを選択すれば良いのかを考えていると思います。そのために、ユーザの支持や定着、そしてユーザ層の態度変容が収益にどう影響するのかを把握し、伝える必要があるのです。

c. 基本KPIは参考値として位置付ける

基本KPIには弱点があり、それだけを見ていてもあまり意味はありませんが、上の事例のように様々な活用の仕方があります。事業の成長度合いやモデルによって異なりますが、KPIを絞り込んでそれだけを見ていればOK、というほど分析は甘くないと思っています。現状の有効指標以外にも目を通し、外れ値であってもそれが何かのサインである可能性もあり、日々の細かな変化を読み取る意識が大切になります。データはヒトの行動を表しており、その変化を理解するのは容易なことではないです。

3. まとめ

ソシャゲには、前回取り上げた基本KPIの他にも様々な指標があり、下記資料(SlideShare)を参照して全体像をつかみ、それぞれをさらに改良するというのも一つの手だと思います。
 ・How to Define Just Right KPIs for Game Operation(pp.11-13)
 ・The Game Life-Cycle and Game Analytics: What metrics matter when?(pp.9-14)

「サービスをより良くするために、ユーザ行動を分析して心理(真理)を探求すること。」、これはソーシャルゲーム分析に触れ、能動的に知ろうとしたことで「分析」について再認識したことです。そう考えると、ウェブ解析などと大きな変わりはなく、それらの知見やアプローチを相互に活かせると思っています。ヒトの気持ちを理解する、理解しようとする姿勢というのは何においても重要で、それについて自分自身がどう思うのか、どうしたいのかということを伝える必要があります。これは簡単なことではありませんし、摩擦が生じる可能性もありますが、やるしかないのです。それが、ヒトの笑顔につながることを信じて。

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プロフィール

若狹 修

若狹 修

ウェブ解析を軸としたKPI設計、マーケティング施策、コンテンツ改善のコンサルティングに従事。現在、原点である人間工学を基に、ユーザ調査など様々な分野のアプローチを相互補完的に活かした研究と提案を行っている。

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