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» 2013年10月 3日 更新

WebアナリストのUX戦略思考 量が質に転化する、ビッグデータを有効活用する方法とは?

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(この記事は、UX Magazine に協力して「When Does Quantity Become Quality? How to navigate big data」の内容を翻訳したものです。)

「私が昨日気づいたのは、量が質に転化するときに何が起こるのか、我々は今はじめて見ることになるということだ。」
ガルリ・カスパロフ(チェスの世界チャンピオンを15年間保持した人物)6ゲーム中の第2戦で追いつくために、IBMのディープブルーに対して勝利したあと

UXデザイナーの定義や能力に関して、あなたの考えが何であろうと、人間とコンピュータのインタラクションにおけるインタフェースに取り組むということは疑いようがないだろう。したがって、それに関連する技術とユーザ行動の幅広い理解が、より良いユーザエクスペリエンスを生み出すために必要であることは言うまでもない。

現場のUXデザイナー、ストラテジスト、そしてアーキテクトは、ビジュアルデザインまたはソフトウェア開発のバックグラウンドがあり、専門分野のリサーチ経験を求める機会が増えている。そのスキルは、ビジュアル・インタラクションデザインを超えて定性と定量手法を組み合わせ、ユーザ行動の動機を理解することによってUXチームでの不足を補うのである。

統計及びバイオインフォマティクスに関わる技術は、A/BテストとヒートマップのようなUX活動の一部として、ユーザ行動を調査するのに一般的に見られ、すでにかなりの割合で活用されている。ユーザビリティテストの実施は増え続け、ユーザ行動のナレッジベースの深さと幅は着実に拡大している。

「ビッグデータ」がITとビジネス部門で脚光を浴びるなかで、データ分析のコンセプトと実践がリサーチ分野から来ていることは知られている。そのため、ビジネスインテリジェンスとユーザ中心設計の交差点では、それらの業務にさらにインパクトを与えるために、ユーザ調査の知識を持ったUX専門家への要求と機会の両方が発生するのだ。

定性と定量手法によって、徴候(何が起こったのか?)を根本原因(なぜ起こったのか?)に関連付けて問題を扱うことができるようになる。

マーケティングにおける誇大な話題から離れて、実際に挑戦するのは、多くの資源から高速に大量のデータを収集して処理することである。これはいわゆる、3V(Volume:容量, Velocity:頻度, Variety:種類)のことを表している。あなたが情報の海を案内することができるように、ここでは、適切なコースに導くためのデータ分析と指標について、いくつかの普遍的なポイントを紹介しよう。

定性と定量

一般的なユーザビリティ評価は、定性または定量データで扱われる。定性リサーチャーは、パターンと傾向を明らかにするために対象についての幅広い質問をする。この調査方法は、伝統的なリッカートスケール(主にオンラインでの顧客調査に見られる)に象徴され、その質問や回答は、比較または高度な分析にはあまり向いていない。

定性データのより複雑な例は、システムに対するインタラクションのビデオ映像、ナビゲーション経路における被験者観察、体験された事象についてのメモ、コメント、そして自由記述の回答である。

対照的に定量リサーチャーは限られた範囲で特定の質問をし、答えてくれた参加者から数値データサンプルを集める。

定量データは通常、匿名のユーザ統計、アイトラッキング、クリックマッピング、その他の手法で集められ、厳密な統計、数学、またはコンピュータ分析技術に対応することができるように、特定の測定基準に当てはめることで情報として関連付けられる。

いくつかの基本的な定量データの例は、成功率、タスク時間、エラー率、満足度のアンケート調査などである。しかし定量・定性の区別は必ずしも明確ではなく、あなたが定性調査の結果を照合するときに定性データを定量化することができ、さらに調べることができるのだ

様々なツールが存在するため、私たちは目的に合った適切なものを選択すればよく、2つの領域を区別する必要はないと考えられる。しかし、ユーザまたはユーザビリティ調査に割り当てられるリソースが不足しているときは、時間、コスト、そして人員が必ずしも満たされているわけではないので、定性または定量調査のどちらか一方を実施することは珍しくない。例えあなたのユーザビリティ調査が、専門のエージェンシーに外注されることになっても、それらを気に掛けることは重要であり、調査計画や結果の詳細を確認する必要があるだろう。

定性または定量?

あなたが、定性または定量調査だけから引き出される結果を扱っているとき、いくつかの共通の落とし穴がある。また、それによってユーザビリティ調査・テストにおいて、補完的に両方を組み合わせることが最も良い方法であるということを理解することになるのだ。

あなたは常に、ユーザに正直に接することでその態度、感情、行動を記録し、ユーザビリティにおける直接のフィードバックを論理的に仮定するはずである。しかしユーザの意見は実際に何をして、どう考えるのかをすべて反映しているわけではないということを示す多くの文献と調査がある。定性調査は、ユーザが考えていることが何なのかをより明らかにしてくれそうだが、彼らがどのように、なぜそれをするのかについて必ずしも示すことはできない。

定性分析は、はっきりした明確な方法で行動仮説のテストと確認を可能にする。しかしながら、特定のより詳細について分析し、掘り下げることができるのかについては、質問の複雑さによって制限を受ける。それでも、全体像を組み立てるためには非常に価値のあるツールであり、ユーザビリティ研究を始めるにあたって必要とされ、UX実務のスタート地点であるのは確かだ。またそれは、結果としてコンテクストを生み出し、定量調査における選択と集中を提供するのである。

定量調査の利用は、多くの組織で"諸刃の剣"として現れる。そして、数字だけに頼ることに関わる多くのリスクがある。集められたデータの容量と詳細は、意思決定者のために強力な洞察を提供する。しかし、情報を取得して、処理するのに必要とされる努力を考慮すると、バックグラウンドノイズから役立つ洞察を見つけるのは簡単ではないだろう。

ユーザインタラクションのコンテクストを少しも理解せずに、自由に解釈した根拠に基づいて、誤った結論を急ぐこともあるかもしれない。多くの動機と理由が、1回のマウスクリックにあった場合に、一連のアクションを修正解釈してまとめるのがどれだけ難しいのかを考えることだ。

定性調査だけでユーザ行動を把握できると考えるのではなく、定性調査の結果を証明するために定量調査を活用することが重要である。簡単な例では、ユーザがシステムを遅すぎると感じているのに、ベンチマークテストによって他よりも速いことを証明したのであれば、別のユーザビリティの要因から問題が起こっている可能性を探ることが大切である。

同様に、タスク完了率は高いが多くの誤りが記録されているのであれば、それはインタフェースあるいはワークフローの問題を見つけることが重要なのかもしれない。ユーザの複雑な行動を扱うとき、すべてのアクションと判断の要因を考慮することは不可能である。これは、調査において定性と定量データの複数の傾向を精査し、組み合わせようとする良いきっかけになる。そして、あなたは地道に正しい方向に進み続けることができるだろう。

おわりに

収集しているすべてのデータにおいて、その価値の意味するものが何なのかを一歩引いて考えることが大切である。調査というのは、適切な結論になるようにできるだけ的確な質問をすることである。提案としては、指標を定義してデータを集めること自体にそこまでの価値はなく、その代わりに、私たちが理解してアクションすることができるように努力すべきであるということだ。

データは、私たちの意見と仮定の証拠を見つけるために利用されるべきではない。データは、より良い行動理解のために多くのユーザに接する機会を与えてくれる。ルイス・ローゼンフェルドが指摘しているように、これは、UX専門家の大きな責務として存在しているのだ。それらの導入を推進する前に、見解についてのより厳しいテストと確認を行う必要があるだろう。

UX実践者に届けられたメッセージの一つとして、ロルフ・モリッシュのDialogDesign が、レンタカーサイトのユーザビリティパラメータを考察した"Comparative Usability Evaluation 8"では、「あなたのレポートに定性と定量の結果を組み入れよう。そして何が起こり、なぜそれが起こったのかを提示しよう。」とある。定性と定量調査手法を適用することで、徴候(何が起こったのか?)を根本原因(なぜ起こったのか?)に関連付けて問題を扱うことができるようになる。

これらに留意して、あなたが次のUX調査プロジェクトに定性と定量データの両方を含めて考察することを望む。

マイケル・レイ(Michael Lai

マイケル・レイは、UXアーキテクトとしてインフォグラフィック、データ視覚化を特に専門としてフリーランスでコンサルティングを行なっている。多くの異なる産業(サービス業、IT、科学、工業)において、ユーザ調査、トレーニング、グラフィックデザイン、ビジネスアナリシス、情報アーキテクチャなど、UXに関連する業務を担当。休日には、iPhoneアプリとハードウェア統合、スタートアップ、非営利団体の活動に取り組んでいる。

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プロフィール

若狹 修

若狹 修

ウェブ解析を軸としたKPI設計、マーケティング施策、コンテンツ改善のコンサルティングに従事。現在、原点である人間工学を基に、ユーザ調査など様々な分野のアプローチを相互補完的に活かした研究と提案を行っている。

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