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» 2014年6月22日 更新

脱サラ女子大教員の憂鬱。。。 ポスト「きずな」社会は息苦しい

 震災を契機にして、早期の復興を実現するための言葉として「きずな」が至る所で叫ばれ、日本は一気に「きずな」社会になった。日本人が「きずな」を深め、被災者を慮って、今、自分にできることをしよう、という趣旨は瞬く間に日本国中に広がった。大震災のような緊急事態に対処するには「きずな」は確かに役に立った。東電管内の計画停電を受け入れ、節約に努め、ボランティアを行う土壌が構築された。一見、素晴らしいことのように思えるが、その副作用は恐ろしい。

 大震災から3年経ち、「きずな」は当初の意義から外れ、その副作用が出始めている。ポスト「きずな」社会の息苦しさを感じるようになった。近年、日本に居住する東アジア系外国人の排斥が強まり、日本に帰化している人々の過去を暴き、攻撃し、日本人同士であっても、自分と意見の合わない者を激しく非難する事例が次々と現れてきた。一部の日本人がなぜこれほどまでに「きずな」を拠り所にして同質性を求めるのか理解に苦しむところである。

 社会生活を営む上では「許容する」という行為が重要である。「白河の 清きに魚も 住みかねて もとの濁りの 田沼恋しき」ではないが、規則を1ミリも違えずに杓子定規に生活することは息苦しい。今回の都議会で自民党男性議員がみんなの党女性議員に対して性差別的な不規則発言を行ったのは良くない行為ではあるが、これをもって自民党都議連を即座に解体せよ、というのは行き過ぎの行為だ。次の選挙で都民がそれぞれの判断をもって投票し、その結果として自民党議員が落選するのは何も問題がない。民主主義国家ならそうすべきだ。わたしの知っている日本人は相手の気持ちを考えて行動し、ある程度の不愉快な行動を許容して、お互いが気持ちよく過ごせるように気を遣う国民だったように思う。

 最近は、特にインターネット上での発言を中心にして自己中心的な行動をとる者が多くなっている。これは「きずな」を背景とした(ネット上の)マジョリティに属していれば、どんな発言をしても怖くない、という心理が裏にあるからではないか。「あいつは悪いことをしたし、他の人も叩いているし、匿名だし、俺も言っていいよね」という心理が見える。最近は相手が悪いこと=明確な法律違反や倫理違反をしていなくても他の人が叩いているから、と言う理由だけで自分も攻撃に加わる輩もいる。

 以前から、IT業界内では、システムエンジニアに物事の白黒をはっきりつけたがる傾向が増えてきたことを危惧する声があったが、インターネットが普及して利用者が増えたことで、この傾向に拍車が掛かったのではないか。危惧の内容はこうだ。コンピュータはYes/Noの判断しかできない。オンかオフしかないのである。SEはシステム設計の過程で、Yes/Noの判断を何度も繰り返す。そして、それが私生活にも及び、家族、恋人、友人に対してもYes/Noの判断を迫るようになる。

 現在のインターネット上のコンテンツもこのYes/Noなど二者択一の判断を求めるものが多い。社会生活上で判らないことがあれば、ググると即座に答えが出てくる。インターネット利用者は物事を知っているか、知っていないか、の二者いずれかの状態になり、判らないから調べている、という状態がほぼなくなる。Google検索では検索結果の上位がマジョリティの意見であり、これだけを鵜呑みにして、その他のマイナーな意見を吟味する努力をしなくなる。結果として、多くのインターネット利用者が、まるで全員が究極の選択をしたかのようにマジョリティの意見に集約されていく。その中でマイナーな意見に対しては無視するか、新たな犠牲者として攻撃するか、のどちらかが選ばれる。マイナーな意見の発言者も減ることになる。

 最近のこういう状況を見るにつけ、デジタル・ディバイドは、情報を持つか、持っていないかの状態を脱し、次の段階に入っているのではないか、と考えるようになった。それは、情報に翻弄されるか、否か。自らが攻撃されやすい有名人、知識人、富裕層などの人々はインターネット上での過激な発言を控え、自分を安全なコミュニティの中に置き、その中で生活を謳歌し、そうではない人々、低収入、低い地位など社会生活に不満のある人々が依然としてインターネット上の2チャンネルやTwitterで魔女狩りを行っている。ポスト「きずな」社会として、インターネット上を中心にした交わらない2つの階級に分かれた社会ができはじめているのではないか。日本の格差社会はますます広がり、これら二分割された社会は溝を深め、日本国民は収入などの尺度による別々のコミュニティに属し、コミュニティ内でのコミュニケーションに終始し、交わらなくなるのだろう。こうして、第2次世界大戦後に日本に現れた希有な社会である「日本国民1億総中流」社会は消えていくのかもしれない。

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齊藤豊

齊藤豊

約20年間の外資系ソフトウェア企業勤務を経た脱サラ女子大教授

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