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» 2013年10月24日 更新

リード研究所 blog Webから大型商談を出すことはできるのか?「B2Bビジネスにおける顧客行動分析とKPI設定」セミナーレポート

こんにちは、リード研の小柴です。

秋と言えばセミナーの季節ですね。僕も10月22日に開催されたアクセス解析イニシアチブ(a2i)主催の「B2Bビジネスにおける顧客行動分析とKPI設定」セミナーに参加してきました。当日のプログラムは以下の2部構成です。

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今日は第2部ネクスウェイ浅井さんによる「店舗matic」Webマーケティング事例セッションについて、レポートしましょう。


■『Webきっかけの商談って、規模が小さい?』BtoB高額商材におけるWebの役割を再定義する

「店舗matic」はネクスウェイさんが開発・販売する小売業向けのSaaS版グループウェアで、利用価格が5年間で2千万円~1億円となる比較的高額なサービスです。この商材をWebでマーケティングするにあたって浅井さんのチームが抱えていた課題は、『Webきっかけの商談って、規模が小さい』ことだったそうです。


という問題意識のもと『Webで大型商談を作れないのか?』ずっと考えていた浅井さんは、吉越 浩一郎さん(元トリンプ・インターナショナル・ジャパン社長)の著書と出会い、「Web」と「営業」の役割を再定義するヒントを得たそうです。それまではWeb上で製品への問い合わせ/引き合いまで求めていたのに対し、浅井さんはWebの役割を

  • ターゲットユーザーが業務課題やその解決法を示すコンテンツに触れて、"「そうだよね」って気づく"
ことに絞り込みました。これにより商品アピールのプライオリティが下がるので、ユーザーニーズに沿ったコンテンツの制作にフォーカスできるようになります。


■オウンドメディア構築へ:コンテンツもナビゲーションも、ユーザー視点で作り直す

コンテンツ企画にあたっては、まずユーザーのタスクフロー(認知ゼロの状況から、製品を活用してベネフィットを得られるまで)を定義し、各タスクごとに該当するユーザーニーズと、各ニーズに対応すべきWebおよび事業部(営業)の役割をブレイクダウンしていったそうです。コンテンツ置き場には自社ドメインから独立させた商材専用サイト(店舗matic 良いお店創りポータル)を構築し、事例/活用ノウハウ/独自リサーチなど、ユーザーの興味軸でコンテンツを配置しています。いわゆるオウンドメディアですね。

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そして、ここが一番ユニークな点ですが、それまではとにかく「リード獲得中心」だったサイトナビゲーションを「関連コンテンツへの誘導中心」に180度転換し、【専用サイト上では個人情報を積極的には取らない】方針を立てられました。つまりリードジェネレーションではなく、"リードナーチャリング用サイト"という位置づけを鮮明にされたわけです。ユーザーの立場からすると、興味あるコンテンツを開こうとするたびに個人情報入力/ログインさせられるのは面倒ですから、この方針は歓迎されますよね。当然ながらサイト運営上のKPIもCVRではなく回遊性(1セッションあたりのPV)に変わります。

この転換を可能にした要因の1つに、長年の営業で培った個人情報の蓄積があります。特に今回は業界特化&高額というニッチ商材なので、ターゲット企業のキーマン情報は既に社内で持っているわけですね。となれば、新規獲得よりもエンゲージメントが重視されるのは自然な流れです。また前述した独自調査からも、購入プロセスの初期リサーチ段階では、ユーザーは個人情報を開示したがらないことが判明していたそうです。


■高額商材のマーケティングにもWebは使える!:マーケティング+営業とユーザーの共感を育てよう

さてオウンドメディア構築後、KPIである回遊性は以前に比べて倍増し、大きな成果をあげられました。ただし資料請求が半年間に数件しか出なかったということで、さすがにそのままでは事業をドライブできません。そこで高まったエンゲージメントをパイプラインに繋げるために"Web閲覧行動可視化ツール"を導入してセッション履歴をユーザーに紐付け、さらに自社製システムでユーザーの回遊行動にスコアを付与した上で、商材購入に興味がありそうな見込み客情報をセールスフォース上で営業にパスする仕組みを実装されました。その結果、営業アポのうちWeb閲覧履歴のみのユーザー比率が90%以上(残りは資料請求者)、また有効商談数のうちWeb貢献率が77%(営業自力案件は23%)という成果を出すことができたそうです。浅井さんのチームが導き出した経験知、

  • 高額商材のマーケティングにもWebは使える
  • 閲覧のみのセッションは宝の山

は、BtoBのデジタルマーケティングにたずさわる人たちにとって、力強い後ろ盾と言えるのではないでしょうか。最後に、浅井さんが提示された『Webで成果を出す3つのポイント』を紹介しておきましょう。

1)営業との目線の合致
・目的意識が合致することで営業部門の協力度が上がり、それがコンテンツ増(事例など)→営業からのフィードバック増→ニーズとコンテンツのマッチ度up→自社メディア活性化→有効リード増という好循環に繋がる。そのためにはマーケティング側も営業のゴールを常に意識して、購買サイクルに沿って6ヶ月/1年単位で施策を考える必要がある。

2)データ集計時間をゼロに
・実際にオウンドメディアの運用を始めると、PDCA用のデータ集計に膨大な時間がかかる。セールスフォースなどの基盤にできるだけデータを集約し、自動集計することで、浮いた時間を「人にしかできない事」に使うべき。

3)共感を育てていくスタンス
・ニッチ商材ではリストが限られているので、テレマで何度もコールするなどの焼き畑施策を行うと、あっという間に焼け野原になってしまう。効率性一辺倒のコミュニケーションから、共感を育てるコミュニケーションに転換することで、ユーザーもサプライヤーも両方ハッピーになる関係性を作る。その為に、テクノロジーを徹底活用する。

特に、最後のポイントが心にしみました。「リードナーチャリング」の訳語としてよく「見込み客の育成」という言葉を使ってしまいますが、"顧客を育てる"ってベンダー本位な上から目線を感じてしまいますよね。「見込み客」ではなく「共感」を育てるマーケティングこそ、ユーザーから愛される仕事になりえるのでしょう。

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プロフィール

小柴豊

小柴豊

調査会社を振り出しに、出版社、ソフトウェアベンダを経て、2000年に@IT参加。現在はアイティメディアでリサーチやリードジェネレーションのサービス企画などを担当。

カテゴリ

  • Webサイト構築
  • ソーシャルメディアマーケティング

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