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» 2014年8月15日 更新

アカデミックが見た社会 自分らしい働き方のためのキャリア支援対策

皆さん、こんにちは。お盆で帰省中の河野です。

先日は、私立大学連盟が主催する新任教員向けFD推進ワークショップに参加してきました。当日の様子は私のFacebookにも公開しておりますので、もしご興味がありましたらご覧ください(参考:2014年8月8-9日 FD研修@浜松)。

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図1.FD研修での模擬授業の様子

その中で大学教員の職能として、以下の4点に関する説明がありました。ちなみに今回のFD研修は、以下のうち、1の教育に関するスキル向上を目指した取り組みです。

  1. 教育
  2. 研究
  3. 大学運営
  4. 社会貢献

上記の職能は、いずれも大学教員として必須ではありますが、大学の状況や自身の職位(教授、准教授、助教)などによって重視すべき項目は異なります。若手であれば研究や教育が重視されますし、学科長や学部長、教務委員長など役職付きともなれば大学運営や社会貢献が求められるようになります。これまでの記事でも教育、研究、社会貢献については度々紹介してきましたので、今回は大学運営について紹介します。

私自身は、大学では就職委員会(キャリアデザイン科目やインターンシップ、企業説明会などの企画)、エクステンション委員会(地域貢献や情報発信を考える委員会)、情報教育専門委員会(プログラミングや情報リテラシーに関する授業方針の検討)などの委員会活動に関わっています。以下では、就職委員会で提案した『自分らしい働き方のためのキャリア支援対策』を紹介します。なお、公開できる範囲で一部内容を修正しておりますので、ご了承ください。

1. 就職委員会の活動目的

就職委員会の活動の目的は、「情報大の学生一人ひとりが自分に合った仕事に就けるよう支援すること」であると考える。更にいえば、「学生がその後の人生を自らの意志で切り拓いていける力を醸成すること」ともいえる。真に面倒見のよい大学とは、決して学生に手取り足取り教えるのではなく、上記のような能力と精神を備えた学生を世に送り出すことのできる大学であると考える。そのために、就職委員会やキャリア課(旧就職課)、その他の関係者が連携して学生のキャリア支援に取り組む体制が望ましい。

2. 就職支援活動

現在、キャリア課主導のもと、つながりのある企業を中心に学内企業説明会の実施、教員の企業訪問の検討など、学生に対する就職支援活動を進めている。その活動目的は、学生の就職率(特に就職率B:進学者を除いた就職率)の向上に加え、採用企業の実績といった広報面での効果も期待されていると考える。より多くの学生にとって就職のチャンスがあることに価値がある。

その一方、学生の職業観不足や企業側の学生理解不足、現行の採用システムなどに起因する企業と学生の採用ミスマッチにより、3年以内の早期離職率が問題視されている[1]厚生労働省の資料によれば、大卒者の3年以内の離職率は、3割を超えている(図2)。そのため、学生にとって自分に合った仕事や働き方の選択は、非常に重要な課題といえる。本学においてもキャリアデザイン科目やインターンシップなどのキャリア教育に力を入れているものの、学生が自らの働き方について考える機会はそれ程多くなく、職業観・人生観が十分に醸成される状況までは至っていない。

学生一人ひとりが自分に合った仕事や働き方を選択できるためには、現在行っている就職支援活動以外のキャリア支援対策が必要となる。当然一人ひとりが理想とする働き方は異なるため、必ずしもある学生にとって優良な企業が、多くの学生に適した企業とは限らない。そこで今後は、卒業時の就職率だけでなく、その後の離職状況や働き方の変化も含めた追跡調査が求められる。

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図2.3年以内の早期離職率の推移

3. 働き方に関する意識の変化

3.1. 主体的な行動選択

学生が自らの働き方について考え行動できるためには、主体性が不可欠である。経済産業省の提示する社会人基礎力[2]においても、前に踏み出す力(アクション)として主体性が挙げられている。人が主体的な人生を送るための人生哲学書としては、スティーブン・コヴィー著の『7つの習慣』が有名である[3]。自分自身の内面を変えていくことで、周囲に影響を与えるインサイド・アウトの考え方(図3)をベースに、人生で成功するための原則を説いている[3]。行動の結果は選択できないが、どう行動するかは自分で選択できる。

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図3.インサイド・アウトとアウトサイド・インの考え方(Wizfanより)

人が成功するためには、内なるボイス(内発的動機)に耳を傾け、「自分のありたい姿」を見付けることが不可欠である(図4)。内なるボイスとは、人の「才能」「情熱」「良心」と世の中の「ニーズ」の4つが重なり合った、人生をかけて果たすべき「貢献」である(フランクリン・コヴィー社より)。内なるボイスに従った職業選択ができることは、成功への第一歩につながる。

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図4.内なるボイスと4つの側面(リクルートマネジメントソリューションズより)

3.2. ワーク・シフト

現代社会においては、新卒一括採用、終身雇用という慣習が徐々に崩壊しつつあり、個人も自分自身の強みを生かし、自立できなければ生き残りが難しい時代といえる。一方、個人の労働に対する価値観は、年収や役職などの物質的なものから、やりがいや仲間などの精神的なものへと変化しつつあり、働き方のパラダイム・シフトが起きつつある。

リンダ・グラットン著の『ワーク・シフト』では、テクノロジーの進化やグローバル化、長寿化、環境問題の深刻化などの世界的な変化に伴い、人々の働き方がどう変わっていくのかが語られている[4]。図5では、人々の働き方が変わる中で、主体的に築く未来を選択するために求められる3つのシフトが挙げられている[5]

第1のシフトでは、これまでの広く浅い知識しか持たない「ゼネラリスト」は、テクノロジーの進化によって仕事がなくなってしまうことが指摘されている。そのため、これからニーズが高まりそうな職種を選び、高度な専門知識と技術を身に付ける「専門技能の連続的習得」が求められる。

第2のシフトでは、未来では様々な社会的課題を各分野の専門家が協力して解決するようなイノベーションが極めて重要になると指摘されている。そのためには、世界規模のコミュニティの中で、多様性に富んだ人達とのコラボレーションが重要となる。

第3のシフトでは、これまでの大量消費から「情熱を傾けられる経験」が重視される時代となることが指摘されている。そのためには、生き方や価値観のシフトが必要であり、働くことで得られる充実した経験こそが、人々の幸福感につながる。そこで重要となるのは自分自身の選択であり、自分がどういう人間なのか、人生で何を大切にしたいのかをはっきりと意識し、選択肢を吟味しなければならない。

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図5.ワーク・シフトの要旨

3.3. あたらしい働き方

本田直之著の『あたらしい働き方』によれば、これからは「自分で会社を選ぶ力」が間違いなく必要になると指摘されている[6]。人々の価値観・職業観が多様化する中、これまでのようなランキング基準ではなく、自分にあった会社を選ぶ力が求められる。自由なあたらしい働き方を実践する企業へのインタビューの結果、会社選びの基準として「6つのクライテリア」が提案されている(ダイヤモンド社書籍オンラインより)。以下の6つのクライテリアの中で、どれを重視するかを自分の価値観と照らし合わせて考えることが重要である。

  1. 仕事:仕事に対するやりがい(楽しさ、自由度、社会的インパクト)
  2. 時間・場所・休日:労働条件(勤務時間、在宅ワーク、休日)
  3. 給与:評価:仕事の対価(給料や評価の仕組み)
  4. 会社・経営者:会社の様子や経営者の人物像(規模、成長率、利益率、ベンチャー志向)
  5. 環境:会社の場所やオフィスの雰囲気(田舎 or 都会、楽しく or 伝統的)
  6. カルチャー:組織風土(企業理念・哲学、競争意識)

4. キャリア支援対策の提案

上記を踏まえ、『自分らしい働き方のためのキャリア支援対策』として、以下を提案する。

<学生による働き方の選択>

  • 就職希望調査(Jナビカード)登録時に「情報大版働き方のクライテリア」に回答する。
    • ※情報大版働き方のクライテリアは、就職委員会で検討する。
  • 回答はWebでの収集が望ましいが、難しい場合は用紙に記入して収集する。
  • とにかく学生に聞くだけでも、働き方を意識するきっかけにはなる。

<企業が重視する働き方のヒアリング>

  • 学内説明会を実施した企業を中心に、企業が重視する働き方のヒアリングを行う。
    • ※すべての項目に正直に回答してもらうことが原則。
    • ※その中でも特に重視する項目を5つに絞って回答してもらう。
    • 仮に嘘を付いても、本当に求める学生は応募して来ないため、結果的に効果はない。
  • 収集した企業のクライテリアは、就職支援で利用できるようデータベース(DB)化する。
    • 誰もがいつでも閲覧できる状態にしておくことが望ましい。
  • 最初のうちは情報が少ないが、徐々に増えてくればDBとして有用である。

<企業の求人検索システム>

  • 企業のクライテリアを検索できるシステムを開発し、就職支援に利用する。

上記の情報収集、求人検索システムについては、MoodleMaharaをベースに調査を進めていく。

参考文献

[1] ^ 日本経済研究センター,"3年以内の早期離職率3割の衝撃:学生、企業双方に多大なコスト",経済百葉箱,2011年度番外編⑥,2011.7.
http://www.jcer.or.jp/report/econ100/pdf/econ100bangai20110715.pdf
[2] ^ 経済産業省,"社会人基礎力",http://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/
[3] ^ スティーブン・コヴィー,"7つの習慣-成功には原則があった!",キングベアー出版,1996.12.
[4] ^ リンダ・グラットン,"ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉",プレジデント社,2012.7.
[5] ^ 竹永亮,"「ワーク・シフト」の要旨",SlideShare,2013.1.
http://www.slideshare.net/makototakenaga1/ss-22860538
[6] ^ 本田直之,"あたらしい働き方",ダイヤモンド社,2013.6.

まとめ

今回は、学生の働き方をベースとしたキャリア支援対策について紹介しました。ここまでご覧になってお分かり頂いたかと思いますが、提案内容自体はあまり詰められていません。どうしても、まだまだ検討不足のところがあります。ですので、こういうアイディアはどうだろうか?とかこれも検討する必要があるのでは?というご意見がありましたら、どうぞお寄せください。

興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、是非情報交換したいと思います。それでは、どうぞよろしくお願いいたします。

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プロフィール

河野義広

河野義広

東京情報大学教員。ソーシャルメディアの社会的影響をテーマに「学生のパーソナルブランディングによるキャリアデザイン」、「教育現場でのソーシャルメディアの認知・指導方法」などを研究中。実生活すべてが研究対象。

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