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» 2014年10月 7日 更新

コミュニケーションとマーケティングとオレとオマエと男と女と酒 アマゾンが1億円をかけ、ハリーポッター発売日に行ったプロモーションとは

アメリカのオンライン小売大手、Amazon。

詳しい説明は今更不要かと思いますが、その「利益のすべてを投資に回す」という経営方針もまた有名ですね。
彼らは内部留保をほとんど持たず、儲かった分のほとんどを新商品開発やプロモーションに回してしまうため、うなぎのぼりの株価と比べ、利益率は極めて低い水準を保ち続けています。もちろん、配当もありません。

今回は、そのAmazonが行ったキャンペーンの中から一つをご紹介したいと思います。
CEOのジェフ・ベゾスは、第三者にはとてつもなくリスクが高い賭けに見えても、自分が信じたことには躊躇せずトライすることで有名ですが、このキャンペーンもその一つであったと言えるでしょう。


時は2000年7月。
すでに人気が爆発していた「ハリー・ポッター」シリーズの第4巻、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』の発売日が近づいていました。

書店には長蛇の列が予想され、発売日に本を手にできない人も現れるのではと考えられていました。
そんな中ジェフ・ベゾスはこの新刊に対し、

    ・定価の40%引きで販売すること
    ・必ず当日に届けること
    ・配送料はプレミアム会員と同様

という、常識外れの約束を発表します。

当然のごとく予約は殺到し、その数25万冊以上。
このキャンペーンは当初から1冊あたり5ドル以上の「赤字」が出ると分かっており、売れば売るほど会社が苦しくなることは明白でした。

今でこそ時価総額15兆円に迫ろうかというAmazonですが、当時はまだその1/10程度。さらにその頃、Amazonの株価は1週間で半値近くまで下落するという局面も迎えていました。
この大きな賭けは、アナリストや株主から冷ややかな目で見られます。


そして発売日当日。

そこには、大好きな本を手に取ることができた子供。それを見て喜ぶ親。そして、配達業者の従業員までもが「これほど感謝されたのははじめて。この仕事をやっていてよかった」と述べる光景が広がっていました。

結果的に、約1億円程度の赤字を計上することになりましたが、このキャンペーンは、当時まだ開始して3年の小売会社「Amazon」の名を広く世に知らしめる大成功に終わり、当初この計画に猛反対していたというプロモーション担当幹部も「振り返ってみれば、完璧にジェフが正しかった」と後に述懐しています。


もちろん、ジェフ・ベゾスのような天才的な判断は難しいかもしれませんが、プロモーションを行う際は、「関係者全てに利益をもたらす」という理想型を忘れないようにしたいものですね。

このエピソードも含め、Amazonの歴史を詳細に綴った『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』はオススメですので、ご興味のある方はぜひご一読ください。


ジェフ・ベゾス 果てなき野望

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筆者:渡邊徹則

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プロフィール

渡邊徹則

渡邊徹則

株式会社Version7代表取締役。Web・コンテンツ制作、分析、マーケティングなどを手掛ける。 執筆業では、主にソーシャル、EC、海外サービス、メディアなどが専門。Twitter / Facebook @brigate7

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