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» 2013年11月11日 更新

価値観経営の時代。ソーシャルメディアが変えるマーケティング 評判は企業の資産?~ソーシャルメディア時代のレピュテーション(評判)マネジメント~

今回はレピュテーションマネジメントについてお話していきたい。

聞きなれない言葉かもしれないが、レピュテーションとは評判といった意味で、それを管理するという事だ。

なぜレピュテーションマネジメントという概念が出てきたかと言うと、近年企業は会社の評判(ブランドと言っても良いかもしれない)が無形の資産として重要であると認識しているからなのだ。

ソーシャルメディアの発達によって、一消費者が気軽に全世界に発信できる時代になった。企業にとってそれらの声を無視する事はもはやできなくなってきているという事でもある。場当たり的な危機対応では企業の評判をコントロールする事は難しくなり、評判を維持する、向上させるという事を組織として対応しなければならなくなっているということでもある。

ではレピュテーションをマネジメント(管理)するということはどういう事だろうか。

1.危機を察する

ソーシャルメディアを中心に世の中で自社や自社のブランドがどのように語られているかをモニターして急な変化や動きを早く察知するということが重要だ。これはソーシャルメディア分析ツールや、簡単なものでいえばYahoo!が提供しているリアルタイム検索などでもある程度は可能である。
知らなければ対応は出来ない。当たり前の事だが、今問題となっている企業の中にはそれを怠ったために事後対応が後手にまわり大きなダメージを被ったといった事例が多くある。

2.ネガティブ情報にどう向き合うか

自社に対するネガティブ情報を見つけた時にどう対応するかも、評判の管理には大きな問題だ。
これは米国でのコカ・コーラ社の事例が参考になる。コカ・コーラはその成分が非公開であることで様々な噂が飛び交うようになった。そこで広報担当者は役員会に「噂をウェブサイトに公表し、それに対し社としての公式見解を掲載すべきだ」と主張したのだ。
悪い噂には蓋をしたいという旧来の思考を持つ経営陣は難色を示すが、最終的にはこの公開するという選択を行う事になった。

悪い噂をウェブサイトに掲載するということは、知らなかった人にもその噂を広めるようになり藪蛇ではないかというのが大方の意見だったが、公開後そういった悪い噂はほとんど聞かれなくなった。

噂というのは真実がわからない事から起こる。分からないから憶測でいろいろな意見が飛び交い、それが等比級数的に広がっていくのだ。しかし公式のウェブサイトに噂とその根拠が無い事を明示されれば、ほとんどの消費者は納得するし、その真摯な姿勢に感銘を受ける事になる。結果的に噂は沈静化することになるのだ。 例えば次の会話のような感じになるだろう。

情報公開が無い場合
A「ねえ、○○社のジュースには中毒になるような成分が入っているらしいよ」
B「え、やっぱりそうか、怪しいと思ってたよ」
A「でしょ、それで売上を上げるなんてひどいよね」
B「もう○○社のジュースは買わない事にしよう」

B「ねえ、○○社のジュースには中毒になるような成分が入っているらしいよ」
C「え、マジ!もうぜったい○○社のジュースは飲まないことにするよ」

以下繰り返し

情報公開を徹底している場合
A「ねえ、○○社のジュースには中毒になるような成分が入っているらしいよ」
B「え、でも公式サイトには政府の調査機関が示した安全という証明が掲載されてるよ」
A「そっか、じゃあそれはただの噂話かもしれないね。」

噂は収束

これは、特に誇張をしているわけでもなく、自身が同じ立場であってもそうなる可能性が高いのではないだろうか。そもそも公式サイトの情報すら信じないと言われれば手の施しようもないが、それはおそらく他の部分で顧客対応が悪い、製品が良くないといった別の問題が原因なのかもしれない。

このように、レピューテーションマネジメントの大原則として、ネガティブな情報も公開し、正しい情報を伝える努力をするという事がある。「消費者はきっと分かってくれる」は通用しないのだ。

3.評判を向上させるには

評判は維持するだけではなく向上させるという姿勢も重要だ。そこで注目されるのが「アドボカシー・マーケティング」。これは一時的には自社の利益には反しても顧客にとっての最善を追求するというも。アドボカシーとは「擁護」「支持」というような意味だが、企業の論理ではなく、顧客の論理からのマーケティングという事になる。

自社に在庫が無い場合、その場で買わせたい店員は「こちらの商品ならすぐにご用意出来ます」といって次善策を示す事もある。しかし、ここで他の店舗の在庫状況をわざわざ聞いて、「○○というお店なら今すぐに買えますよ」と伝えたらどうなるだろうか。一時的には他社の商品を買うわけだから売上は減るかもしれない、しかし顧客にとっては最善の策がとれたことで満足度は高くなる。そしてその満足を提供してくれたのはまぎれもなくこの他社の店を教えてくれた店員であるから、次に買うときはこのお店でという店舗に対する忠誠心は逆に高くなるだろう。

これを実践して急成長し、Amazon社に買収された会社がザッポス社という靴のオンライン販売会社。希望の商品がなかった場合、他の靴のオンラインショップを最低3件は探し顧客に提示する、返品はいつでも対応する、特別な事情があれば利益度外視で対応するという顧客主義を貫き忠誠心の高い顧客層を形成し、利益をあげるようになった。 ただ、このザッポス社も利益を考えずに顧客に奉仕する、いわゆる滅私奉公的なものではなく、数値管理は徹底しており、全体的には高収益の事業を展開している。

日本でこのような対応をすると、本当に滅私奉公をしてしまい、会社が傾いてしまうという事にもなりかねないが、数値管理+顧客への徹底した対応というバランスを取ることで大きな評判という資産を得ることに成功しているのだ。

まとめ

レピュテーションマネジメントの原則は
1.世の中の噂や評判を傾聴する
2.ネガティブ情報も原則公開しその対策を公表する
3.顧客体験を重視した営業戦略を取り入れる

という事になる。
評判を管理するということと、コントロールするということとは別だ。評判はコントロール出来ないという原則に立って、その評判をどのようにマネジメントしていくかが現代の企業に問われている事は間違いない。

参考図書

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プロフィール

石田陽之

石田陽之

株式会社サイバーブリッジ代表取締役、中小企業のSNS活用&リスク管理、海外企業の日本マーケティングコンサルタント。

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