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» 2013年2月23日 更新

元・百貨店マーケッターが見た【住宅業界】の明日 『ものづくり系特有の見方』をどう打破するか

 この業界に関わってからそれなりの月日が経過しましたが、いまだに戸惑うこ
とがあります。

 それは住宅業界が買い手から観ると明らかに生活提案型にもかかわらず、売り
手側の大半の方々が『ものづくり』系からの発想をする方々が多く、現在の駆け
込み需要からいったん下降マインドに陥ると、とたんに買い手側ニーズとのミス
マッチが明確になってしまうことが懸念されるのです。

■ 消費者の直接的な声が付加価値に

 これまでの売り手(=企業)はメーカーにせよサービス業にせよ、消費者の声に
応える形で成長してきました。
買い手の「こんなことはできないか」「こんなことに困っている」など、消費者
の直接的な声を調べ、その要望に応えることで個々の商品に付加価値が生まれ、
売り手である企業が作った製品が売れていくことで、企業の成長につながって
いたのです。


 ところが、みなさまご存じの通り人口減少に伴う成熟社会に入ったことで、
個々の買い手の「困りごと」は少なくなってきました。
アンケートなどを駆使して買い手(=お客さま)にいくら尋ねても、小さな困り
ごとしか出てこないか「別にこれといって困っていることはない」と言われて
しまう。
つまり、買い手(=お客さま)の思っている課題に沿った、その課題を解決する製
品・サービスという関係が崩れてしまいました。
関係が崩れてしまっている以上、これまで成功してきた方法と違うアプローチを
取る必要があるのですが、住宅のように既に成熟した製品やサービスについては
過去に成功した方法論でやり続けてしまうと、各々の小さな困りごとに対する小
さな改善に終わってしまいます。

その時々の状況・気分により関心を変える

 違う切り口で観てみましょう。
弊社《ハウスネットギャラリー》の解析で得られるレポートを眺めていると、検索
キーワードが実に多岐にわたります。
家を建てたい、またリフォームしたいと考えている閲覧者の関心である検索
キーワードからひもとくと、誰もがみな同じモノをほしいというにはあまりにも
複雑なキーワード。
さらに、同じ閲覧者であっても、その時々の状況・気分によって様々な側面
に基づく多様な行動をしています。

 つまり、その時々の状況・気分によって同じひとが大きく関心先を変えるなか
いままでのカテゴリー分けの意味が失われてきています。
従来のように、昼だけ、夜だけといった瞬間的なポイントをとらえた調査結果で
「たとえば30歳男性独身、メーカー勤務」氏の像を描いたとしても、調査時の気
分で回答したデータだけを観て、その方のが本当にほしいものは分かりません。

 それで、売り手(=企業)側はどんなお客さまにも受け入れてもらえるように
無難な改良改善を実施してきています。
でも、現場でその商品を売る担当者からすれば、どれもこれも中途半端。
困ったことに23区内にお住まいの方々に向けた企画住宅が、建築基準法上の
斜線制限により、23区内で売りたくても売れない、という企画住宅もあります。

つまり、昔のように爆発的なヒット商品が登場することは困難なこと。
そのような状況をうけ、あらゆる情報が集約される大手メーカーの開発責任者
たちを中心に「もう今までの方法では無理」という声も伝わってくるようになって
きました。

■ 完成引き渡し後に不平不満が爆発

 たとえば、プラン作成する前にヒアリングをしますが、目の前のお客さまを
前に、あれにも困っている、こんな悩みがある・・・と、個別に「困りごと」を
ヒアリングすることで、問題点と設計のヒントは浮かび上がるでしょう。

 でも、それらの困りごとにひとつひとつ応えるだけでは限界があります。
たとえば企画型住宅でも対応できるかもしれない、すでに顕在化しているAと
いう問題、Bという問題、Cという問題。
それぞれに対応することで、自社の住宅の【型】に組み合わせていく方法
だと、その見込客(施主)にとって平均点は確保できるかもしれません。

 ただ、本来の住宅とは各々の課題に共通する本質をとらえ潜在的なニーズ
を追っていかないと、画期的な商品・サービスはできないと思います。
たとえば【完全注文住宅】を標榜する以上、いままでのように顕在化した
問題点を【点】で捉えていったのでは、完成引き渡し後に『こんなはずじゃ
なかったのに・・・』という不平不満が一気に顕在化します。

 ではどうすればいいのでしょうか。
残念ながら「これさえやっていればOK」といった正解はありません。
しかし、少なくとも違ったアプローチが必要になります。

■ものづくり系の方々が小馬鹿にしてきたことが
  生き残りの鍵

 その解決策が【心理学】であったり【観察】であったり【ヒアリング能力】で
あったりするわけですが、同時にお客さまの関係性を維持(マネジメント)してい
くノウハウも必要になります。

 そのほとんどすべてを網羅しているのが小売業。
【公】に守られることより、【公】に規制されることが多かった小売業では、来
店するお客さまの行動を観察する『行動観察』、店頭での声かけに代表される
『アプローチ』、ご来店いただいたお客さまを買いたい気持ちに仕向ける『VMD
(ビジュアルマーチャンダイジング)』買っていただいたお客さまに何度も買って
いただくための『CRM(顧客関係性マネジメント)』が発達しました。
※私の職歴では、30年前から《CRMのゲンバ》が仕事場でした。
  当時の抽出基準のひとつであった、RFMセルコードがもつ矛盾(売れない)を
  身にしみて感じておりました。

 これから訪れる【冬の時代】を前に、ものづくり系の方々が小馬鹿にしてきた
女性を前にした【サービス業】としての切り口が、これからますます重要に
なっていくことは間違いありません。

    ネクスト・アイズ株式会社 早坂     http://www.nexteyes.co.jp/

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プロフィール

早坂 淳一

早坂 淳一

中立の立場で住宅全般に関する対応を承るネクスト・アイズ(株)にて【ブチョ~】と呼ばれる立場で《ハウスネットギャラリー》という注文住宅リフォームポータルサイトを運営しながら、《ハウスネットギャラリー》でわかったお客さまの興味/関心と、あちこちから直接、間接的に聞いてくる市場/行政/政治の動きを掛け合わせて、主に新しいことを立ち上げるような仕事をしてます。

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