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» 2013年3月30日 更新

元・百貨店マーケッターが見た【住宅業界】の明日 暮らし=消費プロセス全体にわたるサービス価値をどう磨く?

■ 形のない自社のサービスの良し悪しを体系的に眺める

「サービスによる差別化」「脱価格競争」「経験価値の提供」「顧客満足」。
新聞やネットで上記の言葉はよく観ますね。
現在では、飲食、金融、レジャーといった経験を売るサービス事業はもちろん、
家電、自動車、住宅でさえ、商品の価値だけをアピールすればよかった時代から
暮らし=消費プロセス全体にわたりお客さまの要望に応え、付加価値を提供しな
ければならなくなりました。
しかし、どうすれば形のない自社のサービスの良し悪しを体系的に分析し、他社
に負けないようにできるのでしょうか?


■ Step1:お客さまに提供する価値の確認、発見

 サービスを評価する上で、規準を決めることが最初の工程です。
それは、「企業が何を価値としてお客さまに提供したいのか」という企業の狙い
と、「お客さまが自社にどんな価値を期待しているか」というお客さまのニーズ
によって決まります。
たとえば私の場合、弊社会員のみなさまを《ハウスネットギャラリー》にご掲載
させていただくにあたり、会員各社さまのWebサイトやパンフレットを隅から隅
まで読み込んだり、会員各社さまに直接聞いてみたり、場合によっては他社の方
々にも聞いてみたりして、会員各社さまの企業理念、戦略、提供したい価値、競
争状況などを深く理解していきます。

 一方では、会員各社さまがターゲットとする消費者とは、いまはどのような商
品・サービスを好み、どんなことを付加価値と感じ、何を不満と感じているのか。
いろいろな調査データや弊社のお客さまに直接聞いてみながら把握していきます。

 前者の物の見方を「企業のレンズ」、後者を「顧客のレンズ」と呼びます。
ただし、これらが最初からぴたりと一致することはまれ。
よって、客観的なサービス評価を行うためにも、両方の視点を持っておくことが
重要になります。


■ Step2:プロセスの分解、接客タイミングの想定

 次に自分自身でお客さまの視点に立ち、一連の消費プロセスを分解します。
たまたま自分の体験である社内業務システムの入れ替えにかかる体験を書いて
おりますが、社内業務システムを買って設置するだけでも、相当な手間ひまが
かかります。

 同時に、各々のタイミングで顧客と企業の間に発生し得る接点(接客のタイミ
ングとその内容)の可能性を列挙していきます。競合他社のベンチマークを行う
こともひとつの手ですし、机のうえでは気付かない接客のタイミングを探るため
自分が顧客として一連のサービスを体験しながら、いろいろなヒントを得ます。 


■ プロセス別にお客さま向けサービスを評価、
   満足度との相関を分析

Step1、2を行うことで、サービスを評価する尺度と分析の単位を得ることがで
きます。これに基づき自分たちの営業活動(個々のお客さまとの接客・打ち合わせ
スケジュールなど)毎に、


 ○ 自社が提供したい価値がきちんと具現化されていて、明確にわかりやすいか
 ○ その価値は、競合他社に比べて優位性を持っているのか
 ○ 競合他社が持っていて自社に足りない要素は何か
                           などを評価します。


 納得性を高めるため、たとえば担当者だけという【自分だけでの分析】だけで
はなく、OB施主に直接、自社の接客対応(打ち合わせの満足度や引き渡し後に
発生する不具合への対処)に関する評価をしてもらうという方法も有効です。
このような評価を繰り返し続けることで、自社のお客さまが得る最終的な満足度
と、それを形成する自社の接客スキル(サービス要素とも言えます)との因果関係
が明らかになります。 


■ 課題の特定、解決策の考察

 これらのプロセスを通じて課題を【見える化】し、各々の課題に対する対応策
を考えていきます。けっして短くない社会経験から自分なりに考えている内容な
のですべての業態・立場において当てはまるわけではありませんが、ピント外れ
の内容ではないと思います。


 ○ 戦略づくり
  
  先に述べたように、追求したい戦略、提供価値そのものがお客さまのニーズ
  から外れていることは多々あります。
  この場合、お客さまに対し自社はどうありたいか、という概念(コンセプト)
  対象とするお客さまはどんな方々(ターゲット)、自社で提供できる価値の再
  構築を検討します。
  社内的には、それまで慣れ親しんできた企業のレンズを新しい顧客のレンズ
  に切り替えることになるので大きな価値変換になりますが、社内の根回しを
  慎重に行わないと、社内で"浮いて"しまいます。


 ○ 戦術づくり

  次に、自社が提供しようとしている価値とお客さまのニーズにずれはないが
  その実行力に問題が残る場合があります。
  カリスマ経営者の一人だった元カーライル・グループ(アメリカン・エキス
  プレス・RJRナビスコ・IBMの会長・会長兼CEOを歴任)ルイス・ガースナー氏
  も「実行こそが、成功に導く戦略の中で決定的な部分なのだ。(中略)世界の
  偉大な企業はいずれも、日々の実行で競争相手に差をつけている」と語って
  います。


 ○ マネジメントの改善

  現時点での戦略とその戦術には問題はないけれど、事業環境の変化やお客さ
  まからの声(フィードバック)をうけ、自社サービスのあり方を進化させてい
  く自己学習性に問題がある場合もありえます。
  個々人では意識が高くても、組織になると自己学習による改善効果が見えな
  くなってしまうことは、あらゆる組織で起こりえることです。

  この場合、経営陣が主体となる【戦略】、マネジメントが関与できるも経営
  のリーダーシップが主体の【戦術】というより、マネジメント(中間管理職)
  の工夫で改善できる可能性が高い活動なのです。

  いまでは、どの産業でもひとつの戦略が通用する期間は年々短くなっていて
  これからの企業が競合他社に負けないためには、ひとつの緻密な戦略ではな
  く、むしろ組織としての柔軟な学習性にあると言われています。
  
  上記の取り組みは経営陣だけではなく、むしろマネジメント層を中心に自社
  サービスの有効性を検証したり、部下に対してPlan-Do-Check-Actionを
  繰り返すマネジメントに取り組んだほうが、組織としての基礎体力が向上し
  10月から訪れる【注文住宅・冬の時代】を乗り切る策のひとつになることで
  しょう。


自社のサービスの良し悪しを体系的に眺め、課題を特定して改善につなげるには
それなりの段階を踏まえる必要があります。
でも、やることが明確になれば、各々の段取りは日々のちょっとした改善の繰り
返しと自分でいろいろなモノやサービスを利用するときにちょっと違う切り口で
眺めてみることだけ。
増税に伴う【注文住宅・冬の時代】の前にできることは、まだたくさんあります。

ネクスト・アイズ(株) 早坂 淳一 http://www.nexteyes.co.jp/

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プロフィール

早坂 淳一

早坂 淳一

中立の立場で住宅全般に関する対応を承るネクスト・アイズ(株)にて【ブチョ~】と呼ばれる立場で《ハウスネットギャラリー》という注文住宅リフォームポータルサイトを運営しながら、《ハウスネットギャラリー》でわかったお客さまの興味/関心と、あちこちから直接、間接的に聞いてくる市場/行政/政治の動きを掛け合わせて、主に新しいことを立ち上げるような仕事をしてます。

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