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» 2013年7月 8日 更新

元・百貨店マーケッターが見た【住宅業界】の明日 "低価格"で継続しない客か"低価格"だけど継続する客か

今回は"低価格"だけど継続する客は、高価格だけどすぐに関係が
切れてしまう客より、商売上ずっとありがたいというお話を
自身の体験をもとに。

 私の前職経験が"1回あたりのお買上金額に左右されることなく
いかに長くお買い上げいただくか"という仕組みをつくり運営する
仕事が長かっただけに、住宅業界の保守性と熾烈な値引合戦を
理解するまで、だいぶ時間がかかりました。

■ "バーゲン客"は"上顧客"ではない

 "ありがたい客"と聞いて、すぐに思い浮かぶイメージとして
"たくさんお買い上げ"いただけるお客さま、というのは異論が
ないと思います。

でもファッション(服・雑貨)は、ほぼ2週間毎に大半の商品が
入れ替わることで売場の鮮度(常に新しい商品が入っている)を
演出しています。
"たくさんお買い上げ"いただけるけど"お買い上げいただくのが
バーゲンだけ"というお客さまは、粗利益率が低いことから
あまりありがたくないのが本音なのです。

もっとも良いお客さまが"シーズンはじめに定価でたくさん
お買い上げいただくお客さま"。
シーズン当初は選べる在庫も豊富、個々の商品の粗利益率も
高いことから、バーゲン時と同じ金額をお買い上げいただいても
儲けが増えます。

ただし、"シーズンはじめに定価でたくさんお買い上げいただく
お客さま"は、選別眼が肥えているほか、さまざまな業種・業界で
あらゆるサービスを体験している方々が多いことから、そう簡単
にたくさんお買い上げいただくわけではありません。
優秀な販売員が必要になりますが、優秀な販売員は高給料なのが
あたりまえです。

■ "低価格"だけど継続している成功例は"インクジェットプリンタ"

一方、商品が入れ替わったり商品が無くなって困るのは、消耗品
・メンテナンス・補修部品。
たとえば、A4のコピー紙の在庫が切れて文房具宅配会社に発注
したら"入荷まで3日かかるので、お届けは1週間後になります"
では、困ってしまいます。
(いまでは考えられませんが、20年前は割と普通のことでした)

この方法でもっとも成功しているのが、"インクジェットプリンタ"。
ブリンタ本体は数千円程度なのに、インクを全色買うだけで数千円
という世界。
いまでは100円ショップでもインクが買えるように、インクの製
原価はたかが知れていても、他メーカーのインクを使うことはでき
ません。

紙はいろいろ選べますが、きれいなプリントをするには高級な紙
が必要。
1枚単価が数百円を超える紙も、ごく普通に売ってます。

つまり最初のお買い上げ単価が低くても、最初にプリンタを選んで
いただければ販売員の技術や手間をかけなくても、消耗品をずっと
お買い上げいただくことで儲かる仕組みなのです。

■ "インクジェットプリンタ"の時間軸を、住宅に置き換えてみると

 これを"住まい"という長い時間軸に置き換えてみましょう。

新築、または中古住宅リノベーションといった最初のコストを
抑えざるおえない状況だとしても"日々の暮らし"とは、あらゆる
商品・サービスがつながる分野。

お客さまの事情によって、最初のコストを抑えなければいけない
お客さまだとしても、あらゆる商品・サービスの紹介・販売を
きっかけにそれらのOB施主との関係を維持しておくことで、
定期的に訪れるメンテナンス・紹介・建替え・住み替えにつながる
わけです。

これは"インクジェットプリンタ"におけるインクや紙の関係と
いっしょ。
"ブリンタ"が壊れても、実際には微妙に合わないことが多々あっ
としても、予備で持っているインクの互換性やいままでの使い勝手
を考えて同じメーカーのプリンタに買い換える例が多いようですね
プリンタのメーカーを変えると、印刷設定方法がガラッと変わりま
し、純正にこだわる方々は"再生インク"など絶対に買いません。

"プリンタ"を指名買いするのと同じようにみなさまの会社とOB施主
との関係性はできているとすれば、各々の販売に必要な接客スキル
さほど難しいわけではありません。
※専門分野における対応力は必要ですが"ヲタク"や"マニア"な
 高い専門度を持つ方ほどひとあたりがヘタクソなことは経験上
 多いです(笑)。

でも、住宅業界については"サービス業"や"プリンタ"ではあたりまえ
の"低価格"だけど継続する顧客がたくさん存在している売り方・商品
・サービスについて、なかなか首尾良くいっていない例が大半。

 その答えは簡単です。

それば、入口である"みなさまに対する第一印象"からして"サービス業"
や"プリンタ"と違っているから。

いくら構造・性能が良くても、自分たちが考えるサービスを売りに
していても、そもそも初回契約で(新築・新規で中古住宅を購入しての
リフォーム)でお客さまの評価と信頼を勝ち得ない限り契約していただ
けることはありませんし、読者のみなさまの存在そのものを、いまから
建てようとお考えのお客さまに分かっていただけないことには、集
すらできません。

"みなさまに対する第一印象"とは、売り方テクニックやノウハウ
対応できる話ではなく、みなさまの経験に基づく"基本的考え方"
しっかり"基本的考え方"をお考えいただいたうえ、接客対応から
展示場、事務所、職人さんたちの工事技術や対応などといった、
お客さまが接するすべてに配慮すること。

大切なことですが、自社Webサイトなどで言っていることと営業
担当者が言っていることが同じこと。

そのようなことを継続していくことで、自社の媒体や営業マンが
伝えたことに新鮮な驚きや発見を感じていただくこと。

そのため《いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どうやって・いくらで》
を段取りして、ずっと続けていくことは理想なのですが、継続してこなす
ことは新規客にとても高い住宅を1棟づつ売ることよりも遙かに難しい
です。
継続していくことは、ノウハウやテクニックではないですからね。

でも、どんなに遅くても10月以降は《どうやって》というノウハウや
テクニックだけでは、継続して売上を維持していくことが難しいことは
間違いないようです。

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プロフィール

早坂 淳一

早坂 淳一

中立の立場で住宅全般に関する対応を承るネクスト・アイズ(株)にて【ブチョ~】と呼ばれる立場で《ハウスネットギャラリー》という注文住宅リフォームポータルサイトを運営しながら、《ハウスネットギャラリー》でわかったお客さまの興味/関心と、あちこちから直接、間接的に聞いてくる市場/行政/政治の動きを掛け合わせて、主に新しいことを立ち上げるような仕事をしてます。

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