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» 2013年2月19日 更新

ハイ・コミュニケーション私論 「漏れ落ちた人々」とGeek Meritocracy社会〜 NTT R&Dフォーラム 2013 ブロガーミーティングに参加して

NTT武蔵野研究開発センタに行くため、一年ぶりに三鷹駅に降り立った。
世間ではバレンタインデーだったこの日、私は昨年に続き「gooLab NTT R&Dフォーラム 2013」のブロガーにありがたくも当選した。

2月といえば、昨年も参加した「NTT R&Dフォーラム 2012」への参加、「Social Media Week Tokyo 2012」で来日したTumblrのCEO David Karpと、居酒屋で一緒に楽しく飲んだことくらいしか私には想い出がない。

昨年はじめてこのフォーラムに参加した時、とにかくMITmedia Lab石井教授の話が聞きたくて応募したが、展示会場などはわからなくて右往左往していた。

今年の参加ブロガーは15名ほどで、業界テック人向けイベントなので全員が男性。しかし、みな丸一日費やすこのイベントのために集まった人たちだ。参加者はプレス扱いなので、一部を除けば写真(ビデオ)撮影はどこでも許可されている。

今年は、昨年のような講演の代わりに思わぬユニークなワークショップが用意されていた。私にはそれが非常に興味深く充実した時間だった。




(1)濱野智史氏によるワークショップ

当日13時から始まったワークショップの目玉は、社会学者・批評家として知られている濱野智史氏を招いて行われたもの。朝配られた手元資料にも記載がなく、開始時にはじめて知った。
このワークショップは、今回参加したブロガーミーティングのために独自に用意されたもので、私にはこれが実に面白く楽しすぎる内容だった。

濱野氏はご存じの方も多いと思うが、『アーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたか』(NTT出版)を著す一方、『前田敦子はキリストを超えた:〈宗教〉としてのAKB48』 (ちくま新書) を執筆するほど、当のご本人が筋金入りのAKB48オタクである。

もっとも、現在ではオタク3人を主人公にした『ビッグバン☆セオリー』(スーパードラマTV)というシチュエーションコメディが人気なほど、オタクはの価値は上がっていると思う。

この日のワークショップは、題して「ネット社会における生活空間の変容と未来〜技術革新は市場変化にどう追いついていくのか?」だ。
内容は、平成の20年間、テクノロジーがもたらした情報化社会の歴史、産業(社会)構造の大転換と、若者の非正規雇用者が増大したことにをテーマとしたもの(共著『平成史』[河出ブックス]に詳しい)。

今回、濱野氏とそうした"平成史"を代表する20代の若者3人が招聘され紹介された
その若者たちは全員オタク、なかでもアイドルオタクだ。

かくいう私も、他の人からみればオタクだろう。何を隠そう(別に隠すこともないが)「スタートレック」オタクなのだ。

私が宇宙や未来に関心があるのも、小学生の時に見た「スタートレック(TOS)」の影響が特に大きい。
スタートレックの特別版DVDは各シリーズを、「週刊スタートレック」は全352冊揃え、その他の書籍類(『スタートレック エンサイクロペディア』、『スタートレック生物学序説』、『スタートレック脳科学大全』、『スタートレック 指揮官の条件』ほか)も数冊本棚にある。
それらすべてに費やした総額は80万円ちかく。とにかく「スタートレック」が大好きなのだ(ほかの宇宙ものでは「Babylon 5」のみ。早くシーズン4&5の国内未DVD化なんとかして)。

ところで、2年ほど前、EvernoteのCEOのPhil Libinのブロガーミーティングに参加した時、彼の口から「Geek Meritocracy」(ギーク・メリトクラシー)という言葉が発せられた。
これは、ある特定の物事(モノやヒト、コト)に熱中し、人よりも優れた知識を持つ人や能力を発揮する人たちのこと。Geekはオタク、meritocracyは能力主義、能力主義社会などと訳されるので、オタク能力主義(社会)とでも考えればよいだろう

さて、先の3人の若者は、世間的にはニートと言われ、濱野氏によれば「漏れ落ちた人々」(これキーワード)ということになる。
しかし、そうしたオタクたちの感性や知見が最新のテクノロジーと融合することで、新しいサービス、ビジネスや産業の創造に寄与するのではという視点でワークショップは進んでいった。
3人はAKB48など、いわゆるアイドルオタクなので、朝に特別ツアーで見学した3D映像・音響技術(後述)に彼らの感性から着想するコンテンツのあり方を提示することで話が白熱した。

今回、もう一人グラフィックファシリテーター(登録商標)のやまざきゆにこさんという女性が参加されていた。
彼女はワークショップの内容を、何枚も壁に貼ってある大きな用紙にイラストで描いて可視化いく人だ。
「言葉」と「文字」だけでは伝わらない思いや理解をつなぐのが、彼女の役割である。

今日では図解の有用性や重要性が説かれているので、会議やみなが話し合っている内容を適宜図解化(可視化)していくグラフィックファシリテーションのニーズは、これからもさらに高くなるだろうと感じた次第(もちろん「スタトレヲタ」も描かれていた)。
この時の様子は、グラフィックファシリテーター視点からみたそのグラフィックとともに、やまざきさんの下記のブログにもアップされているので、あわせてご参照を願いたい。

私自身、技術が大きく進展した20世紀的工業社会の発想や視点では、もはやこれからの社会はよい方向に行くとも思っていないし、イノベーションも無理だと思っている。
現在のテクノロジーは、既に21世紀的な着眼点やフレームワークが必要で、そうした点ではまさに今こそ真に「パラダイムシフト」は必要とされている。


若年層が正規雇用先を確保できないのは、なにも日本に限ったことではなく、隣国の中国や韓国はもとより、欧州や米国などを含め全世界での共時的な大きな課題である。
テクノロジーが、「ノマド」や「ワークシフト」という新しいライフスタイル(ワークスタイル)を創出すべき、あるいは貢献すべきサービスや製品が真に創出することが必要とされている。

3Dプリンタが当たり前の社会になれば、クリエーター(デザイナーなど)や手に技術のある人は自分で制作したものを、オンラインで全世界に発売することが可能となるだろう。
そう遠くない将来、例えば、海外などに旅に行き、そこでインスパイアーされたイメージから作品を制作し、オンラインで販売し、その収益で滞在費や帰国の費用を捻出するなんてこもあるだろう。

(親や学校から)敷かれたレールの上(大学を卒業して大きな企業で社畜と呼ばれながら)を走るのではなく、むしろニートと呼ばれている人々が自由闊達に働いて生活していける社会こそ、これからの世界が目指すべきものであると私は本当に思っている。

マルクスの『ドイツ・イデオロギー』に叙述されたように、「今日はこれをし、明日はあれをし、朝には狩りをし、午後には魚をとり、夕には家畜を飼い、食後には批判をするということができる」ような、そうした就労形態はテクノロジーがもたらす社会として、数年を経ずして到来するだろうと想像してみる。

そうした時は、「漏れ落ちた人々」ではなくGeek Meritocracy社会となっているだろう。
しかも、それは私たちが"今の感覚"で想像する以上に早く。


今日、ものすごいスピードで進展するテクノロジーは、一部には人々の仕事を奪い、それを持てまして幸せをもたらしていないとの意見もある。たしかに、仕事にかんしていえば、ルーティンワークは、効率化からどんどんテクノロジーに置き換えられている分だけ、人員は不要となりテクノロジーに職を奪われているのは事実だろう。

しかし、現在では様々なテクノロジーがマーケティングコミュニケーションを、20世紀的なものとは劇的変えつつある。これからはテクノロジーが、逆に人間ならではのクリエイティブ力やワークスタイルに貢献する時代になるかもしれないと思う。

私の考え方は、果たしてオプティミスト過ぎるだろうか。



(2)今年の展示について

昨年は、スマートフォン、Pad(タブレットという言葉は嫌い)端末など、いわゆるスマートデバイスに関する技術やコンテンツが多かったように記憶している。

今年のテーマはクラウド、ビッグデータに関するものが多く、またPC、スマートフォン、Padなどのデバイスでシームレス利用できる技術やサービスが、やはり多かったように思う。

この日は、最初に研究所(gooLab)オススメ展示の特別ツアー「3D映像音響システムのよる遠隔地との空間共有(高臨場感共有のための高定位感三次元映像音響再現技術)」を体験
これを簡単に説明すると、3D映像と音響パースペクティブをリアルタイム波面合成技術により、限りなくリアルに近い空間再現性を創出する技術ということ。

例えば、この技術をコンサートに応用できれば、実際にライブ会場に出かけなくても、その場にいるかのような体験が可能だ。サッカーの試合であれば、スタジアムでなくパブリックビューイングでも、まるで試合しているスタジアムで実際に観戦しているかのような臨場感を味わえるようにする技術だ。

完全に製品(サービス)化するのは、まだ技術的に克服しなければならない課題がいくつもあり、こちらの製品化には5〜10年スパンかかるようである。

さて、今回の展示会(全部見てはいないが)で私の目を一番引いたのは、「CloudCipher」(クラウドサイファー)である。
これはクラウド管理型暗号技術で、データを暗号化し開示制御でき、許可された人だけが端末を選ぶことなくシームレスに利用できるテクノロジー。
数年来言われているユビキタス社会は、着実に実現しつつある。

Dropbox、Evernote、GoogleDrive、iCloud、Microsoft SkyDriveなど、いずれのクラウド環境でも利用できる。今回、私が実際に見せてもらったデモはDropboxだった。
上記の様々なクラウドサービスは、セキュリティへの懸念から、企業によっては利用を禁止しているところも多い。

ただし、これは既に国内ではサンブリッジ社が企業向けに提供している「CipherCloud」(名称も似ている)とはどこが違うのかなど、技術者でない私は残念ながら詳らかでない。

昨年末には、Gmailアカウント乗っ取り(不正アクセス)事件が多発し、ユーザーに激震が走った。私も06年からのGmailユーザーなのだが、だからといっていまさら利用するのはやめられない。これは、Yahooメール、Outlook.com(旧Hotmail)などでも同様だろう。

この技術(CloudCipher)が利用できるようになれば、個人でも企業でもユーザーを一挙に獲得できるだろう。
私なら、明日からでもすぐにでも使いたいサービス(技術)である。

こちらは、年内には製品(サービス)化してリリースする予定だとの話で実に楽しみである。

それでも、不正アクセスや情報や盗もうとする人たちとセキュリ技術とのイタチごっこは続き、残念ながらそれがなくなることはないだろう。


最後に、課題が2つ。

1.昨年も感じたのが、時間が少なすぎた。
朝渡されるガイドブックを見て興味のもを先にピックアップしておくのだが、それでもそうして選んだおいたものですら、全てを見て回ることができなかった。

2.食堂が混む。
やはり何千人と集中して集まるので、食事時になるとどうして研究所内のレストランは混雑する。並んでいる待ち時間まで含めると、食事には相当の時間を割かれる。


ん〜、「マーケッター通信」なのに、またもマーケティングに直接関係ない内容を寄稿してしまった。

 

▼NTT R&Dフォーラム2013

▼NTTセキュアプラットフォーム研究所

▼濱野智史(twitter)

▼「グラフィックファシリテーション」

▼市場を動かすアイドルヲタ(←!)のハート@gooラボイベント(やまざきゆにこさんのブログ)


 
<参加ブロガーのブログ一覧>
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プロフィール

梅下武彦

梅下武彦

コミュニケーションアーキテクト兼ブロガー。20世紀は広告代理店の“傭兵マーケッター”、21世紀はベンチャー企業のマーケティング責任者を歴任。現在、マーケティングコミュニケーション領域の戦略立案や設計、アドバイザー・メンターとして活動している。また、様々なソーシャルメディアで活動するSocialmediactivisとして、現在をDigital Ambient Society、Communication Metamorphosesと定義し、多様に激変する社会現象・事象、時代情況を独自のマーケティング視点で語るコラムを執筆中。 ソーシャルテクノロジー社会におけるMarketing DisruptionとCommunication Ecosystemの関係を探求している。

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