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» 2012年11月 8日 更新

目指せ! セクスィー・データサイエンス・マーケター ラスベガスで無料お食事券をもらう理由


私、旅行が大好きで、日々、旅行やショッピングで航空会社のマイレージをシコシコ貯めています。頑張って貯めたマイルを特典航空チケットに交換して旅に出るのが小さな幸せなのですが、時々、ふと、「こんなにマイルを乱発して、この航空会社、大丈夫なのかしらん?」と心配になることがあります。まぁ、余計なお世話ですが。

今日は、こんな小市民な心配を吹き飛ばしちゃうような、「顧客向けポイントプログラム」を使って顧客データを集め、そのデータを分析し倒すことで利益を 26.6% もアップさせた企業をご紹介します。


計算しつくされたスーザンの笑顔


その企業とは、ラスベガスにもカジノホテルを持つ、世界最大のカジノ運営会社であるHarrah's Entertainment。 有名カジノホテル「シーザースパレス」などもこちらの系列です。

今、ラスベガスでは、映画「OCEANS 11」にも出てきたドでかい噴水を作ったり、水の都ベニスを再現してゴンドラを浮かべちゃったり、ニューヨークの摩天楼をジェットコースターで駆け抜けたりと、各カジノホテルは巨大でド派手な施設でエンターテイメント度を上げ集客しようと競い合っています。そんな中、Harrah's は、「顧客ロイヤリティ」を育てるためのマーケティング手法に投資の重点を置いた企業なんです。

彼らは、「Harrah's Total Rewards」という、ポイントプログラムを提供しています。会員にカードを発行し、カジノで遊ぶたびにポイントが貯まり、景品やクーポンなどの特典が受けられる、ま、どこにでもあるポイントプログラムです。

彼らがセクスィー!なのは、ここからです。

まず、Harrah's は、各プレーヤーが今まで自社のカジノで遊んだ内容や使った金額、さらに今現在、どれだけ勝っているかをリアルタイムで把握しています。その動的データに、プレーヤーの年齢や性別、居住地の平均年収といった属性情報を掛け合わせて分析することで、似たような特徴を持つ顧客グループ(セグメント)ごとに共通している行動パターンを見つけ出しているのです。

これにより、例えば、
「うはー! Harrah'sではお金スッちゃったなー。
 ラスベガスにはまた来たいけど、次は別のカジノに泊まろっと。」
といって、知らない内にHarrah's を去っていきそうな顧客を発見し、引き止めることができるようになったのです。

例えば、こんなケースを想像してみてください。

シェリー(仮名):34歳の女性、上中流居住地に在住
属性情報や同じセグメントに属する顧客の行動パターンから彼女が一晩でスッても苦痛でない金額は900ドル、72,000円程度だとシステムが自動計算します。シェリーがスロットに夢中になり上限の900ドルを使ってしまったあたりで、指示を受けたカジノ・スタッフのスーザンがそっと近づき、笑顔で、
「お得意様への特別プレゼントです」
とシェリーのお気に入りのレストランの無料食事券を差し出すのです。

データ分析の結果に基づいたスーザンのナイスな顧客対応により、損はしてしまってもなんとなく楽しい経験をしたという印象が残り、シェリーの満足度は悪くはないものになりました。つまりHarrah's は、各プレーヤーが何万円、何十万円までなら負けて損をしてもカジノを楽しみ、また次回来てくれるかということまでを個人単位で予測できているのです。

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 mini_oshima.gifのサムネイル画像 こ、怖い。怖すぎます。あの、スーザンの笑顔の裏にそんな計算が!
  素直なワタクシ、危うく、人間不信になる所でした。
  でも、彼らが本当にスゴイのは、分析に基づいた仕組みを作り上げた所なんです。

彼らは、各プレーヤーの将来の利用頻度や利用額を予測することが可能になっただけでなく、収益性が高いのに競合ホテルに奪われてしまいそうなプレーヤーを分析で見つけだし、現場のスーザンが即座に特別サービスを提案できる仕組みを作ったのです。

彼らは「真心」だけのおもてなしでは到底気づけない顧客の変化をデータから読み取り、分析結果に基づいて顧客対応を行う仕組みを作り上げることで、お客様の満足度を上げているのです。その結果としてお客様の再訪率を上げ、収益をあげる顧客を作り出し、Harrah's のファンにすることに成功しているのです。

この結果、Harrah'sの売上のほぼ 50% はマーケティング活動によって生み出されるという、マーケターとしては羨ましい成功を収めました。

データを分析に、分析結果をアクションに


こうした成功は、ポイントプログラムを始めれば必ず付いてくる「オマケ」ではありません。

とある航空会社では、従来、顧客の搭乗回数だけを見てプログラム特典のサービスを決めており、プラチナ会員に手厚いサービスを提供していました。ところが改めて、正規料金か格安料金か、コールセンターに電話して余計なコストをかけたかどうか、そして利益率の高い路線に乗ってくれたかどうかを分析し直したところ、なんと、プラチナ会員のほとんどは利益をもたらしていないことが分かったのです。

 mini_oshima.gifのサムネイル画像 がーん!!!
  これじゃあ、超優良顧客を作り出すどころか、ちゃんと収益をもたらして
  くれている顧客が不満を感じ、ライバルの航空会社に行っちゃうかも!

Harrah's は、ポイントプログラムを活かし、顧客情報と、顧客の正確な行動を把握することに成功しただけでなく、それを徹底的に分析し、分析結果を日々の業務で活用することにより、真の優良顧客を作り出すことに成功したのです。
harrahs5.jpgのサムネイル画像  

  mini_oshima.gifのサムネイル画像 うーん。グレート・セクスィー・データサイエンス・マーケター!
    「データを分析に、分析結果をアクションに」。この2ステップが大事なんですね。


ということで、この2つの大事なステップを認識できた私。
セクスィー・ポイントを 16ポイント Get しました★★★

 

pointget.jpgのサムネイル画像のサムネイル画像のサムネイル画像 


 <参考文献>
 『その数学が戦略を決める』  イアン・エアーズ[著] /山形 浩生[翻訳]  文藝春秋




 

追記

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プロフィール

大島 玲子

大島 玲子

SAS Institute Japan株式会社 でBtoBマーケティングのキャンペーン企画/管理を担当。愛犬と一緒に、サッカー観戦をするのがお気に入りの時間。

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