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» 2013年2月21日 更新

目指せ! セクスィー・データサイエンス・マーケター 弱小野球チームファンが球場に通い続けちゃう理由

ワールド・ベースボール・クラシック3連覇に向け侍ジャパンが始動し、イチロー選手は移籍後
初のキャンプに参加、日本の各球団もキャンプ開始と野球ファンに楽しみな季節となりました。
球場でビール片手に観戦するのは、テレビとは違った生の興奮がありますよね。
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今回は米メジャーリーグで分析を武器に顧客ロイヤリティを獲得し重要な収入源であるシーズン
チケットの更新率をアナリティクスの力で6%も上昇させた、ピッツバーグ・パイレーツの取り組
みを紹介します。

あの桑田選手が在席したことでもお馴染みのピッツバーグ・パイレーツ。残念ながら強豪チーム
でも、潤沢な財政基盤を持つチームでもありません。かつては圧倒的な強さを誇ったそうですが
近年は長い低迷が続いており、1993年から20シーズン連続で負け越し中!
実はこれ、全世界の全てのスポーツチームにおける最長の負け越し記録なんだそうです。
さらに下位低迷と相まって観客動員数の低迷に悩まされ、緊縮財政を強いられています。
 mini_oshima.gif  うひゃ。
   チーム成績が振るわず、球場に来てくれる観客も減って、その結果、
   収入減に苦しみ、選手の補強もできない。だからさらに成績が悪くなる。
   うーん。なかなか脱出が難しい負のスパイラルですね。

 


分析が勝ち取った価値ある一勝


ピッツバーグ・パイレーツは、この負のスパイラルを断ち切るために、アナリティクスを武器に、
顧客を球場に呼び集め、収益を上げるための闘いに取り組み始めたのです。

チケットを買って球場で観戦してくれるファンが増えれば、入場チケットはもちろん飲物や食事、
チーム関連グッズなどの売上増が期待できます。なかでも継続的な安定した収入を期待でき
るのがシーズンチケット(年間予約席)の販売です。

分析に取り組む前は、全てのシーズンチケット契約者を対象に更新時期にダイレクトメールを
郵送し、更新の案内をしているだけでした。しかし顧客データやチケット購入履歴データなどを
統合し分析に取り組んだ結果、シーズンチケットを毎年更新している顧客の「行動パターン」
が見えてきたのです。
これにより顧客を、「更新の可能性が高いグループ」「条件次第で更新しない可能性が高いグ
ループ」「更新の可能性がほとんどないグループ」という3つの顧客グループに分類することが
できるようになりました。

その結果パイレーツはシーズンチケットの購入を止めようかと悩んでいる顧客を事前に予測し、
ピンポイントで「チケット更新キャンペーン」を実施することが可能になりました。
このキャンペーンは大きな成果をあげ、チケット更新率は前年度比で6%向上しました。
観客動員数と収益性の増大に大きな影響を与えるシーズンチケットの更新率を上げたことで
大幅な増益につなげることができたのです。
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 mini_oshima.gif  スゴイ!
   チームの戦績や財政が苦しい中、ずっと応援してきてくれた大事なファンには
   ずっと応援していて欲しいですものね。
   顧客行動を分析して、離れて行っちゃいそうな人を予測するって、セクスィー!



顧客の「体験」を向上する
彼らの本当にセクスィーな所は、実はここからです。
彼らは、より固定ファンを増やし観客動員を拡大するためには、ファン一人ひとりの「体験」を
向上させる必要があると考えました。そこで分析を駆使することで、ファンのニーズや嗜好を
理解しファンが望むサービスを充実させて顧客ロイヤリティを醸成することを目指したのです。

パイレーツのビジネス・アナリティクス担当シニア・ディレクターのJim Alexander氏は、次のよ
うに述べています。

   私たちは、売上を拡大すると同時に、ファンの皆様の体験も向上し続けています。

 mini_oshima.gif  むむ?ファンの体験を向上するってどういうことでしょうか?
   球場での体験と言えば、チームの応援ってことだから、
   チームを強くして一試合でも多く勝っていこう!ってことかしらん?


パイレーツは、試合の勝敗だけではなく、チケットの購入から球場までのアクセス、売店での
食事やグッズの購入、施設の使い心地やスタッフの対応など、ファンが球場で体験する全て
の要素に注目したのです。
そこで彼らはシーズンを通じて収集されるファンのアンケート数千件の分析を開始しました。

このアンケートは「売店」「試合中のエンターテイメント」「プロモーション」「施設」
「ブランド」の5つのカテゴリーに分かれており、全体の満足度と最も相関性が高いのはどの
カテゴリーのどの体験なのかを特定する狙いで実施されました。
アンケート分析の結果ファンの満足度と最も関係性が深かったのは、「売店」「家族への配慮」
「座席の雰囲気」「チケット購入体験」の各要素であることが判明しました。
そこでパイレーツでは特にこの分野を強化しファンの満足度を上げることに成功したのです。
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 mini_oshima.gif  なるほど!
   顧客体験って、野球観戦ひとつをとっても、いろんな場面があるんですね。
   そして、その一つ一つの体験が積み重なって、「野球観戦って楽しい!」っ
   ていう感想に結びつくんですね。

   ビールを買う時のスタッフの人との軽快なやり取り、座り心地の良いシート、
   家族と一緒に楽しめる子供向けのプレゼントなんかも楽しい気分を
   グッグググと盛り上げてくれますよね。

   一番満足度に直結している要素をカテゴリーごとに整理し明らかにする事で、
   顧客の真のニーズを理解しただけでなく重点的にテコ入れすべき分野が判明し、
   ロイヤリティを上げることに成功したんだ。


商品・サービスの価値の中で、品質や機能といった直接的なものでなく、購入前や使用時、
そして使用後に顧客が経験する気分や雰囲気といった感覚的で付加的な価値のことを、
顧客経験価値」と呼びます。価格が少し高くても、「雰囲気がいい」 「対応が早い」
「Webサイトの使い勝手が良い」などの理由から購入するなんて事ありますよね。私達は
自分でも気づかないうちに自然と「顧客経験価値」を評価しているのです。

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もちろん性能や機能、価格などは直接的かつ重要な差異化要因です。パイレーツの場合は、
チームの勝率やスター選手などがこれに当たります。
しかしファンが球場に来る前、そして球場で思う存分に楽しめる環境を整え、満足度の高い
体験を提供することで、顧客経験価値を高め、新たな強みを手にすることができるのです。

顧客経験価値を高める上では、アンケート分析や顧客行動分析に基づいて、顧客が本当に
必要としているもの、評価基準にしている要素を正しく理解することが必要不可欠です。
さらにWebサイトや販売窓口、コールセンターなど顧客とのあらゆる接点を「顧客経験価値」
の観点から管理し、連携をとっていくことも重要です。
パイレーツは分析を行うことで、自ら新たな価値を獲得することに成功したんですね。


分析を武器にした、顧客経験価値をさらに高めるためのピッツバーグ・パイレーツの新たな
シーズンは既に開幕しているのです。

 mini_oshima.gif「顧客体験の向上」の重要性に気付いた私。
   セクスィー・ポイントを 5ポイントと、ピッツバーグパイレーツの
   開幕戦チケット3枚をGet しました★   

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プロフィール

大島 玲子

大島 玲子

SAS Institute Japan株式会社 でBtoBマーケティングのキャンペーン企画/管理を担当。愛犬と一緒に、サッカー観戦をするのがお気に入りの時間。

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